俺のサーナイトがバグってて夜しか眠れない   作:libra

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書いている途中でどっちが主人公だっけとなる。
最終決戦だから比較的力が入っているはず。


絶対強者

 宣誓とも挑発とも取れる台詞と共に、手首のメガバンクルを掲げ、それと同時にジュカインの姿が輝き始める。

 

 光が弾け、先の姿よりも強大な存在になったジュカイン――メガジュカインが現れる。

 ジュカインはメガシンカする事でドラゴンタイプになる。パワーアップはすれど、フェアリータイプであるサーナイトを相手取るには不利なタイプになる。

 

「アイアンテール!」

 それがどうしたとばかりに行われたメガシンカ。それはタイプの不利と同時に多大な恩恵をジュカインに与えていた。

 能力の上昇もそうだが、最大の利点はこの尻尾を切り離す能力だろう。

 切り離された尻尾は高速回転しながら硬質化し、まるでドリルのようにサーナイトに向かって突っ込んで行った。

 

 しかし、意表を突く事はできてもただ何の芸も無く直進するだけ。躱すことは容易い。

 反撃とばかりにサイコキネシスを放つも、跳ね上がったステータス(すばやさ)が被弾を許さない。

 ジグザクに跳ねながらサーナイトに近づいていくジュカイン。

 

「リーフブレード!」

 指示と同時に、脚をたわめ大きく跳躍する。

 サーナイトはそれに迎え撃つ姿勢を見せ――

 

「サーナイト後ろ!」

 

 ――空気になりつつあったカルマの声に後ろを見る。そこには空気を切り裂きながら襲い掛かってくるジュカインの尻尾。

 挟み込まれる前にテレポートにより離脱。当たるべき障害がなくなったことで同士討ちが発生する……なんて事はなく、宙返りしながら定位置に尻尾を戻すという芸当を見せるジュカイン。宙返りの勢いを活かし、すぐそばに現れたサーナイトに尻尾を叩き付ける。

 よろめいたサーナイトに続けざまに追い打ちを掛けるように蹴り飛ばす。

 分身ではなかったのか、苦悶の表情を浮かべながら立ち上がるサーナイト。メガシンカを獲得してからの初めてのダメージらしいダメージかもしれない。しかし、その目に宿る闘志には全く陰りはない。

 

 瞬きする間にサーナイトに駆け寄るジュカイン。

 腕を大きく振るい、一太刀。渾身の一撃は当たる寸前にテレポートをされた事で空を切る。

 外れた。そう認識した瞬間、指示を待つまでも無く後ろを向く。そこには、避けると同時に反撃を仕掛けんとするサーナイトの姿。

 伸ばされた腕を掴み、地面に叩き伏せ今度こその一太刀。今度は触れた部分から光になって溶けて行った。

 

「上だ!」

 

 指示が耳に届いた瞬間、大きく飛び退く。

 メガシンカによって大幅に強化された脚力は、分身を囮にして放たれたはかいこうせんの雨からの離脱に成功させる。

 着地すると同時に、大きく跳躍。そのまま、技を撃ち切った後の硬直を狙って長大な尾を振るう。

 

『掛かった!』

 

 それを見たサーナイトはすくむ事無く笑ってみせた。

 急停止しようにも既に賽は振られている。勢いの乗った尾がサーナイトに襲い掛かり、それに彼は片手で触れた。

 

 それは、硬い壁にぶち当たったかのように。硬質化した尾は何かがきしむ音を響かせながらもその動きを止めていた。

 埋まった手には淡い光を、空いた手には冷気を。有利な状況だった筈だが、いつの間にか主導権はサーナイトの手に握られていた。

 手から迸る冷気がジュカインに食らいつく――前に、打撃の際の衝撃で動きを止めていたジュカインが再び動き出す。

 リフレクターによって止められた尻尾を切り離し、撃ち出す反動と重力の助けを借りてその拳を躱す。

 

 追撃に放たれる無数の光。

 それをエナジーボールで撃ち落としながら落ちていく。しかし、処理が追い付かずにいくらかの光がジュカインを掠めていく。

 

 不意に光が途絶えた。

 放たれた尻尾が明後日の方向に飛んだ後に、サーナイト目掛けて舞い戻って来たのだ。

 できた数舜の空白。その間にジュカインは綺麗な着地を決め、尻尾を躱したサーナイト目掛けエナジーボールを放つ。

 当然のようにテレポートで回避するサーナイト。跳んだ先はジュカインの傍でも宙でもなく、飛翔する尻尾の傍。直進する尻尾目掛け、冷気を纏った拳を叩き付ける。

 衝撃か、冷気か。軸がぶれた尻尾は減速し、力尽きたようにジュカインの元に辿り着くことなく地面に落ちた。

 それを見届ける事無く、再び跳ぶ――次は、ジュカインの背後。と、言っても距離があったが。

 距離があったためか、気配を察する事ができずユウキの指示があってようやく振り向くジュカイン。その視界に映ったのはそれを埋め尽くす光の雨。

 いつかの焼き直し。脚に力を込めた所で、ジュカインは違和感にうめく。はかいこうせんを放ったばかりだというのに、息を吐く間もなくテレポートで付近に跳んでいたサーナイトがそのサイコパワーで動きを封じていたのだ。

 ジュカインは非常に強力なポケモンだ。地力では負けなくとも、その戦闘経験においてはサーナイトに先んじるだろう。止められても一瞬。場所を絞ればもっと長引かせることができるが、それでも微々たる差。それでも、今この場面においては一瞬が全てを左右する。

 

 光が殺到する。

 躱せないのならば、防げばいい。

 幸いにも動きを止められているのは脚だけ。手と口が動くならばやりようはあった。

 寸断なく放たれるエネルギー弾が襲い来るエネルギーとぶつかり合い、消滅していく。

 

 迎撃しきっても息を吐く暇はない。脚の拘束が解かれていると気づくと同時に、襲い掛かる白い影。

 振るわれる拳に対し、腕の葉を剣に転じて、接近戦に応じる。

 ぶつかり合う炎と冷気と自然のエネルギー。相性的には不利だというのに力負けせず、拮抗させる。

 動きの止まったサーナイトを蹴り飛ばす。距離を取りざま、エナジーボールを放つ。

 対処しようと構えようとするサーナイト。それを待っていたとばかりに――今までよりも早く、速く、間合いを詰める。

 

 動きは迅速、振るわれる腕を前に瞬きする間もない。

 技の直撃をまともに受けたサーナイトは吹き飛ばされる勢いそのままに転がっていく。

 立ち上がったサーナイトの顔には色濃い疲労の色がにじみ出ていた。

 強敵との連戦、ジュカインとの一進一退の攻防、たった一体で六体のポケモンで挑むような難業に挑むという暴挙がサーナイトを着実に、確実に追い詰めていた。

 

 辛うじてという体で立ち上がるサーナイト。

 躱すどころか、防御すらできずにまともにリーフブレードを受けたせいか、その足はとても頼りなさげに見える。

 落とされた尻尾を定位置に戻しながらも、ジュカインがサーナイトに向ける目に油断はない。

 

「アイアンテール!」

 

 力強い指示と共に、開幕と同じ技を撃ち出す。硬質化した尾は金属のドリルのように、獲物を求めて飛翔する。

 サーナイトがゆらりと動く。対処しようとしているのか、それとも立っている事すら辛いのか……判断はできない。だが、ジュカインが自らの尾を追うようにフィールドを蹴る。テレポートをする余力があるようには見えない。サーナイトの敗北が現実味を帯びていた。

 

「サーナイト!」

 

 呼びかける事しかできない自分に歯がゆさを感じるカルマ。自分がれっきとしたトレーナー(競技者)であると認めはしても、それだけで実力が向上する訳でもない。トッププレイヤー達が競い合うような舞台において彼はほぼ完全に蚊帳の外に立たざるをえなかったのだ。

 

 転げるようにアイアンテールを躱すサーナイト。

 だが、ここまでだった。

 動きを止めたサーナイトに駆け寄るジュカイン。

 そしてそのまま――掬い上げるように腕を振るった。

 

 

 光が弾け、ドレスを纏ったような姿が本来のソレに戻る。

 メガシンカしても、その頂は高すぎたのだ。




次回、(多分)最終回。
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