俺のサーナイトがバグってて夜しか眠れない   作:libra

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言ったろ?
新作が出るまでに完結させるって(二回ぐらい目標達成を頓挫させながら)


超越者

 立ち会っていた審判がチャンピオンの勝利を宣言しようと口を開く。それをユウキは手で制す。

 なぜと疑問符を浮かべる彼に対し、ユウキはサーナイトをもう一度見るように促す。

 

 戦闘不能になったはずのサーナイトが辛うじてといった体でありながらも再び立ち上がっていた。心なしか、さっきよりもしゃんとしているように見える気がしなくもない。

 

『メガシンカでは届きませんでしたか』

 

 戦意があったとしてもメガシンカが解けた以上は戦闘不能である。職務に対する勤勉さと、サーナイトの今後を思って審判は止めようとするが凄まじい圧を感じて動きを止める。

 

「そうだね、君はジュカインにまた勝てなかった」

 

 彼を止められるであろう少年は、止める事無く、それどころか真逆の行動を取っていた。

 

『はい……』

「それで、君はどうする? そのコンディションじゃ、逆さになっても勝てないよ?」

 

 おもむろに、身に着けたメガストーンに手を伸ばすサーナイト。

 

『メガシンカ……トレーナーとポケモンの絆によって起きる進化を超えたシンカ……』

 

 伸びた手がメガストーンを掴む。

 

『素晴らしい響きです、でも……』

 

 掴んだストーンを地面に転がさせる。微弱なサイコパワーによって弾みの付いたメガストーンはゆっくりとカルマの方に向かって転がっていく。

 

『……足りません、私とご主人様の絆を証明するには……まだ』

 

 飛ばす思念は切れ切れ、立ち姿もボロボロで押せば倒れそうな有り様。

 しかし、ただならぬ気配を漂わせていた。

 

『力も……速さも、何より……特別でないのが、ただ一つでなければ……』

 

 残りかすのようだったサイコパワーが激しく燃え上がる。

 

『……証明にならない!』

 

 光が弾けた。

 

 

 

 光が弾けた時、そこには見知らぬポケモンが居た。

 

「そう、勝てないのなら……障害を、限界を……打ち破ればいいのです」

 

 頭は少しばかりスマートに、胸の結晶はスカーフを思わせる形状になって首を覆っていた。

 

「サーナイト……なのか? 今のはテレパシー……じゃない!?」

「はい、私です。思考でなく、口で話しているのです」

 

 スカートのように足を覆っていた部位は後ろに纏められ、心なしか動きやすそうに見える。

 

 新たな姿を発現させたサーナイトの姿がそこにあった。

 

「そうでなくっちゃ!」

 サーナイトの変化に頬を緩めるチャンピオン。明らかにバトルジャンキーの表情である。

 

 

「本当にまだやるのか?」

「はい」

「……姿が変わっても、変わらない所は変わらないな」

「私はまだ倒れていませんから……いえ、私たちの絆を示すまで倒れる訳にはいかないのです」

 

「……そうか」

「いつもごめんなさい。ご主人様には苦労ばかりかけて……」

 

 目を伏せるサーナイトに対し、カルマはどこか呆れた声音で続ける。

 

「自覚があるなら自重してくれ……そうじゃなくてだな」

「はい?」

「うん、俺は後ろから見てる事しかできない。足手まといだ」

「そんな事は……」

 

「だからな、俺はお前が勝てるって信じ続ける事にするよ」

 

 カルマの言葉に互いに笑みを浮かべ合う。

 

「……はい! 次は勝ってきます!!」

「ああ……勝ってこい」

 

 

 主従の語らいが終わるのを律儀に待っていたチャンピオン達に、再び対峙するサーナイト。

 

「……バトル再開!」

 

 どこかヤケになった風な審判の合図と共に駆け寄る両者。

 新たな姿となったサーナイトの動きは先とは比べようがない程に速く、軽やかになっていた。それでもメガジュカインのそれには届かない。

 

 風を切り裂く音を立てながら振るわれる白い足。頭を捉える軌道だったそれを頭を下げる事で躱すジュカイン。

 蹴りが外れたことでできた隙に飛び込むように、腕を突き込む。

 いつもの事ながら……否、いつもの様にサーナイトはテレポートでそれを躱す。跳んだ先は、ジュカインの攻撃範囲から離れた後方。

 

 放たれる光線の雨。

 数も範囲も――おそらくは威力も――増したそれは、対象たるジュカインに食らいつかんと一斉に襲い掛かる。

 それは光の檻のように。緩やかな曲線を描いたそれらは絶妙な間隔で以ってジュカインを絡め取る――かに見えたが、大人しくやられる訳がない。手からエネルギー弾を撃ち出し、檻の一部を相殺、技の範囲から抜け出した――が、まだ終わらない。残った光線が急激に向きを変え、背中に牙を突き立てんと迫りくる。

 

「後ろ! 追いかけてきている!」

 

 ユウキの声に後ろを向いたジュカインは僅かにその表情を引きつらせた。

 しかし、続けて放たれた指示に笑みを浮かべる。

 跳び上がった事で、その視界にはサーナイトの姿がしっかりと映っている。眼下に映る標的に向けてジュカインはその自慢の尾を大きく振るい、それを撃ち出した。

 指示からその後の行動を読み取っていたのか、淀みなくサーナイトはそれを躱す。だが、その際に疎かになった制御によってはかいこうせんはあらぬ方向へと飛んでいく。

 連続して響く破砕音。

 ポケモンバトルにおいてはよくある事だろうが、壁に小さなクレーターが両手の数では利かない程に刻まれる。

 

 迫るアイアンテールをテレポートで躱したサーナイトはそのまま落下中のジュカインの傍へと跳んでいた。

 振るわれるリーフブレードをサイコパワーで無理やり押さえつけ、冷気の籠った拳を振るう――その間に意識が逸れた足目掛けて蹴りを繰り出す事で強引に技を止めるジュカイン。

 足を蹴られた事、無理やり蹴りを出した事、バランスを崩した両者はそのまま地面に落ちていく。

 互いに宙返りをし、隙のない着地を決める。コンテストのように動作の華麗さを競う場面ではないが、高評価を得ることができそうな程の満点の着地だった……ともかく着地すると同時に互いに再び駆け寄り合い技の応酬が始まる。

 地に足が着いているせいか、さっきよりも勢いの増した拳。冷気を纏ったそれを体に触れさせる事無く捌き続けるジュカイン。被弾はないが、防戦一方で反撃に移る事ができない。その上、纏われた冷気は膨大。一度、一度に受ける影響は僅かなものだが少しずつ、少しずつジュカインの体を蝕んでいた。

 

 風切り音から尻尾が戻って来る事を察したのか、サーナイトが距離を置く。

 距離を取られた事で生まれた僅かな時間、尻尾を定位置に戻しながらジュカインは腕を小さく振るわせる。

 緑色の腕の所々に付けられた氷塊。それが僅かな重みと冷気で以って常の機敏さを曇らせる。

 

 氷塊を払う間、当然の事ながらジュカインはサーナイトから目を離していない。

 ポケモンとしてのスペックが向上しているのか、それとも連戦の疲れが無くなっているのか……真相はどうあれ、あの姿に変わってからメガサーナイトであった時よりも放たれる技のキレと破壊力が増していた。

 そんな相手を前に、油断なんてしようがない。

 だが、少しばかり腕の方に意識が行っていた。それだけだった。

 

 一瞬。

 

 姿がブレた次の瞬間には、ジュカインは懐に入り込まれていた。

 反撃か、防御か、咄嗟に腕を振るおうにも間に合わない。そんな距離。

 ただ、手を突き出す。それで終わる距離。

 

 おんがえし。

 トレーナーの手持ちであるポケモンがその主人であるトレーナーに対して抱いている気持ちによってその威力を増減させる技。

 あまり使い勝手がいい技とは言えない。威力には目を見張る物があるとは言え、他にも同等の威力を叩き出す技は存在するし、ノーマルタイプである事から好んで使用するトレーナーは少ない。

 

 だが、先に言った通りこの技はトレーナーに対する心の持ちようによってその威力を増減させる。

 そのポケモンが持つ気持ちが途轍もなく大きな物だったら?

 同時にそれを放つポケモンが規格外であったなら?

 

 

 大気を震わせる音が響いた。

 駆け抜けた衝撃波は、クレーターの周囲の崩壊を促進させる。

 

 バトルフィールドから音が消えた。

 立ち尽くしたままの両者。そのトレーナー達も何も言葉を発する事ができず、ただ立っているだけ。

 

 壁の表面が崩れる音。どこからか聞こえてくる微かな風の音。

 誰かの喉が鳴る。

 

 ざりっと。何かが擦れる音がやけに大きく響いた。

 緑色の脚がフィールドを滑り、その体を仰向けに倒れさせる。

 

 光が弾けると共に、その体を小さくさせる。

 

 

 

 

 

「ジュ、ジュカイン戦闘不能! よって、勝者チャレンジャーカルマ!!」




正直、覚醒イベント書いた辺りで満足。

サーナイトの変身はアニメネタ。
カルマは一般人だけど、サーナイトがカルマの分も無駄に有り余った素養でゴリ押ししたって事でひとつ。
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