俺のサーナイトがバグってて夜しか眠れない   作:libra

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めでたい!
めでたいのに......タグにコメディと謳っているのに......正直すまないと思っている。


休養ってどういう意味だったっけ?

「最近忙しくてですね、ストレスが溜まってたんですよ」

 ストレッチをしながら、ユウキは言った。

「だから気分転換したいなと......父さんたちが言うには強いらしいじゃないですか、そのサーナイト」

 

 まず、ユウキがこの店に訪れ常連になった。

 その口コミでセンリ、それに続いてトウカジムの門下生が常連になった。

 ジムに納品しに行くときに、センリや門下生とは度々バトルしていたがユウキは中々時間が取れず、不足した木の実を買い足しては足早にどこかに向かうのを繰り返していた。

 今日は珍しくも時間があるらしく、道路の脇に広がる空き地でバトルをしようとしていた。

「チャンピオン様にそう言われるのは光栄だな」

「まだまだ未熟ですよ、僕は......今日はあくまでお試しなので、1on1でいいですかね?」

「1体ずつか?」

「そうです、僕はこいつで行きます」

 

 ユウキが繰り出したのはジュカイン。

 くさタイプとしては速い部類のポケモンであり、多彩な技を操るポケモンでもある。

 

「で、本当にやるのか?」

『やります、いつかは戦う事になるのですから予行練習としては申し分ないでしょう?』

「......一応今日は体を休める日のはずだったんだがなぁ」

 止まる気配のないサーナイトを前に、カルマは頭をかいた。

「まあ、やれるだけやってみろ」

『はい!』

 

 

 ジュカインは速かった。

 一度の踏み込みで、テレポートでも使ったのかと言わんばかりの距離を一瞬で潰しサーナイトめがけて尻尾の一撃(アイアンテール)を振り下ろした。

 が、それをテレポートで回避し、そのままサイコキネシスで反撃をする。

 勢いよく地面に押し付けられた事で砂煙が舞い上がるが、煙が晴れ、そこから現れたジュカインは大したダメージを負っているようには見えなかった。

『流石に強いですね......』

「手加減つきのジムリーダーと違って、本気のエースだろうからな」

 

「リーフブレード!」

 瞬きする間に、サーナイトの目前に現れ腕を振るうジュカイン。

『甘いです』

 サイコキネシスを利用し、それを片手で受け止める。

 体を掴む、それは防御だけでなくそのまま反撃に移れるという事――。

 受け止めたのとは逆の手、文字通りフリーハンドの手が光を帯びる。

 

 サーナイトはそこまで攻撃力の高いポケモンではない。

 だからこそ、サイコキネシスを自分にかけることでその攻撃力の低さを補っている。サイコキネシスの強化の分も含めればそれなりのダメージを出せるはず......だった。

 

 効果抜群の技を受けたというのに、ジュカインは先ほどと同じように立っていた。

 躱したというわけでもなく、確かに胸元に焦げ跡がついている。

 

 咄嗟にテレポートで後ろに下がるサーナイト。

「つじぎり」

 まるで、転移する場所が分かっていたかとでも言うかのようにテレポートを終えたサーナイトの後ろにジュカインは立っていた。

 人の目では目視できない速さで振るわれた腕がサーナイトを捉えた。

『ぐっ! がっ!』

「サーナイト!」

「続けてリーフブレード!」

「こっちにこい!」

 

 間一髪。

 追撃に放たれた斬撃を受ける直前でテレポートが発動し、サーナイトは危機を脱した。

 オボンのみを投げ渡しながら、カルマは額に浮かんだ汗を拭う。

「結構粘りますね」

 それに倣うように、ユウキもジュカインをきずぐすりで回復させる。

「正直、ここまで一方的にやられるとは思ってなかったよ......」

 互いにポケモンを回復させ、第2ラウンドが始まる。

 

「エナジーボール!」

 先ほどまでとは打って変わって、遠距離攻撃を撃ちあう展開になっていた。

 攻撃をしては、それを打ち消し、反撃に放った攻撃を逆に相殺される。

「攻撃力はほぼ互角ですか......アイアンテール!」

 それなりの距離を置いていたはずだったが、一瞬でその距離をつめる。

 そして振るわれるアイアンテール。

 それをテレポートで回避するサーナイト。

 

 初動の焼き直し――にはならない。

「左だ!」

 ユウキの指示に従い攻撃を繰り出す。

 振るわれた爪はサーナイトの胴に深々と突き刺さった。

『......⁉』

 攻撃の勢いに押し上げられたサーナイトめがけて再びアイアンテールが襲い掛かる。

 ダメージを受け、怯んだサーナイトに躱す術はなく――アイアンテールが直撃した。

 

『......ぐっ』

 サーナイトは辛うじて立っていた。

 直撃の瞬間発動したサイコキネシスとリフレクターが致命的なダメージを、ギリギリのところで踏みとどまるまで軽減させていた。

 カルマが用意していたオボンのみをがっつくように飲み下す。

「まだ、やる気なのか?」

『......私はまだ倒れていませんよ』

 その瞳の闘志に陰りはなく、カルマに彼を止める言葉を出すことを許さなかった。

 

「凄いサーナイトですね......自己流だとしたらとんでもない逸材ですよ、きっと」

「そこで言い切られないのがな」

「僕はまだまだチャンピオンとして若輩ですから」

「......子供の口から若輩って言葉が出てくるかよ。 で、うちのサーナイトはまだまだやる気みたいだが」

「そうですね、そろそろ時間も押していますし......そうだ、贔屓にさせてもらっているお礼に面白い物をお見せしましょう」

「面白い......? 碌でも無いの間違いじゃないのか?」

 

 ユウキは腕を――手首に巻かれた腕輪を――掲げた。

「ポケモンは不思議な生き物で、その生態のすべてを解明できてはいないそうです」

 腕輪にはまった石が光を帯びる。

「もしかしたら既存のものとは違う進化系がいるかもしれないし、突然変異で全く違うタイプになるかもしれない......」

 腕輪と共鳴するかのようにジュカインの腰の辺りも輝きだす。

「まあ、ある人の受け売りですけど......ね」

「それがその面白い事というやつか?」

 腰から広がった光はやがて、ジュカインの全身を覆いつくした。

「まあ、その一つと言えるでしょうね」

 ジュカインを覆った光は一瞬一際強く輝き、霧散した。

 

『......』

「これは......」

 ――まるで、進化の様じゃないか。

 

 

 メガシンカ。

 通常の進化とは違い、戦闘中にしか発生しないものの、メガシンカしたポケモンは従来の同族を圧倒する程のパワーを発揮できる。

 メガシンカを果たしたジュカイン――メガジュカインは、従来の姿の時点でサーナイトを圧倒していた。

 ただでさえ、強かったジュカインがメガシンカをして更に強くなったらどうなるか......それは言うまでもない事だろう。

 元々高かった素早さに更に磨きがかかり、攻撃力や特殊攻撃力も強化されている事から反撃の機会も、回復する間も与えられず――ついに、その体を地面にゆだねた。

 

 

 ――完敗だった。

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