ルーラー喚ぼうとしたら、なんか違うのが来たby聖杯 作:陣代高校用務員見習い
みなさんバレンタインはいかがでしたか?
私は女性サーヴァントのみんなたくさんから貰えました。
………材料を自分で集めたり、男性サーヴァントにチョコをあげていたような気もしますが。
sideキシナミ
アーチャーさんが、冬木市のセカンドオーナー『遠坂氏』の邸宅で異常が発生したのを察知。
その時会議中だった自分・アーチャーさん・藤丸君、夜更かしをしていたはくのん・セイバー・マシュちゃん・モードレッドさん・ジャンヌさん・ルビーが一度居間に集まる事になった。
ロマンさんにも映像越しに参加してもらっている。
ちなみにイリヤちゃんとクロエちゃんは既に寝ていたから除外、小学生だしね。
そして自分達は、この世界での最初の戦闘を見る事になった。
………いや、正確にはこれは『戦闘』ではない。
むしろ『蹂躙』もしくは『処刑』と言うべきかもしれない。
「……………」
先程まで奇怪なダンスをしながら遠坂邸の結界をすり抜けていた黒いサーヴァント。
それが圧倒的な存在感を放つ金色のサーヴァントによって討たれた。
金色のサーヴァントの背後の空間が歪んだと思ったら、無数の宝具を射出し黒いサーヴァントを串刺しにしていた。
…………ふむ、みんなどう思う?
「英雄王ですね」
「間違いなく英雄王ギルガメッシュです」
「…まさしくAUOです、本当にありがとうございました」
うん、AUOだ。
他にあんな英霊いないよね。
ちなみにコメントは上から順に藤丸君・マシュちゃん・はくのんである。
「待て奏者にはくのんよ。
そなた達、あの金ピカと面識があるのか?」
うん。月の裏側から脱出する時に色々力を貸してもらったんだ。
…………あれっ?
「何を言っておるのだ奏者よ!
月の裏側からの脱出は余と一緒だったではないか。
余はあのような者は知らないぞ!?」
「私は少々微妙なところだな。
あの英霊に関しての記憶は多少あるが、やはり月の裏側で出会った記憶は無い。
マスター、君も英雄王と出会っているのかね?」
「…記憶が虫食い状態だけど、間違いない。
あんなジャイアニズムの塊、一度見たら忘れられない」
はくのん、AUOと言えば?
「…ウザい武器自慢」
固い床。
「…美味しい飴」
走ると鎧が五月蝿い。
そして何よりも
「「…AUOキャストオフ!」」
うん。自分達が会ったAUOは同じだね。
「なるほど、そういう可能性もあるのか。
マスター達は月の裏側に落ちている。
月の裏側はあらゆる可能性が『同時に』存在する空間だ。
同じ人物の性別違いや選択違いがいたり、異なるパートナーとの契約の記憶があったり。
おそらく、マスターとセイバーが、キシナミと私が組んでいた可能性もあるのだろう。
それと同様に、マスター達が英雄王ギルガメッシュと月の裏側で契約する可能性もあったという事なのかもしれん。
その場合、私とセイバーは月の裏側の攻略には参加しない事になるから、私達は英雄王とは面識が無いというわけだ」
なるほど。
つまり、今の自分は『セイバーと一緒に月の表裏を生き残った、男性の岸波白野』にいくつかの選択違いの記憶が追加されている状態なのか。
ひょっとしたら、現在進行系で月で暴れているタマモナインと契約していた可能性もあったかもね。
そういえば、藤丸君もAUOと面識があるんだね。
「はい。契約はしていませんが、特異点擬きで時々出会う事がありまして。
あと、カルデアには幼い頃の英雄王、通称『子ギル』がいます」
子供の頃は賢王だったというから、その時の姿か。
《見る限りでは、冬木に現れた英雄王は野良サーヴァントではなく、魔術師によって喚び出された聖杯戦争の参加サーヴァントのようだ。
まさか、あの英雄王を喚びだすとはね……》
まともにコミュニケーションをとるのも困難ですよね。
AUOとお話するのは本当に大変でした。
あれだけ我が強いと令呪の強制力を弾く可能性もあります。
そもそも『王の財宝』の中には令呪のストックがありましたから、おそらく令呪強奪や令呪無効化もできるでしょう。
《聖杯戦争を勝ち抜くのに、強力なサーヴァントを求めるというのは分かるよ。
でも、強力過ぎるサーヴァントは魔術師の手に負えないという事をセカンドオーナーは理解しているのかな?》
カタログスペックだけで選んだんですかね?
喚び出した時に即殺されなかっただけマシなんでしょうが。
AUOに殺された黒いサーヴァントですけど……
《あれは『暗殺者』のサーヴァント、それも典型的なアサシンである『ハサン・サッバーハ』達の1人だろうね》
AUOが前に言っていた『破産』………じゃなくて『ハサン』が彼でしたか。
自分達が月で出会ったアサシンは、気と体術で透明化した上で即死パンチを打ってきた御仁でしたよ。
素手で剣とやり合っているのを見て「中国武術ヤベェ」と心底思いました。
「キシナミ、一応言っておくが、月で戦ったアサシンは非常に特殊な例だからな?
本来のアサシンはマスター殺しがメインで、直接的な戦闘力はかなり低いからな?」
「…敵マスターへの直接攻撃がペナルティとられる月の聖杯戦争では、かなり致命的」
むしろペナルティ上等という認識でいかないと、ムーンセルではハサンは戦えないみたいだね。
ロマンさん、ハサンの能力で特筆すべき点はありますか?
《『ハサン・サッバーハ』という名前は、イスラム教の伝承に残る『暗殺教団』の教主に代々襲名されてきたものであり、該当者は19人だと言われている。
歴代ハサンは19人全員違う能力を持っていたらしい。
共通しているのは『気配遮断』スキルを持つ事かな?》
「奏者よ。暗殺者は既に死んでおるのだから、別に気にする必要は無いのではないか?」
さっきの戦闘、ちょっと違和感があってね。
「…AUOには気配を察知するようなスキルは無かったはず。
『王の財宝』の中には何かあるかもしれないけど、わざわざ自分で迎え撃ちに行くような性格ではない」
だからハサン迎撃は、AUOのマスターの指示の可能性が高い。
でも、そうなるとマスターはハサンの気配遮断を見破っていた事になる。
《それはいくらなんでも無理だろうね》
うん。つまり、さっきの戦闘には何かカラクリがあると思うんだ。
仮説はいくつかあるんだけど、ハサンの能力次第なんだよね。
「僕達が人理修復の過程で出会ったハサンは全員で5人。
でも1人はすぐに死んでしまったから、能力が分かるのは4人だけです。
呪殺能力を持つ『呪腕のハサン』、百人近くに分裂できる『百貌のハサン』、毒殺能力を持つ『静謐のハサン』、そして円卓の騎士を真正面から圧倒するほどの戦闘力を持つ『初代山の翁』になります」
「円卓の騎士を圧倒だと!?
それは本当に暗殺者なのか?」
「『ハサン殺しのハサン』を自称していました。
武器も武骨な大剣で、『聖者の数字』発動中のガウェインを圧倒していたそうです」
「…マジで!?」
あの借金取りのフルスペック状態を圧倒とか恐るべし。
しかし、その4人なら『百貌』が怪しいかな。
「…キシナミが言いたい事は、こういう事?
ハサンはわざと気付かれるように接近してAUOに迎撃される。
一見すると脱落したように見えるけど、ハサンは分裂能力があるから、実はまだ死んでいない。
脱落したと見せ掛けて、他のマスターの背後を狙っている。
屋外で死んだのは、他のマスターに見せつけるため」
うん。さらに言うならば、AUOのマスターとハサンのマスターはお互いの動向を把握している可能性が高い。
AUOを向かわせるための説得の時間が必要だからね。
ひょっとしたら、マスター同士で同盟を組んでいる可能性もある。
「それは恐ろしい組合せですね。
人海戦術で情報を集めて、圧倒的な戦闘力を持つ英雄王で他のサーヴァントを討つというわけですか。
しかも、隙を見て敵マスターの背中も狙う」
かなり有効な手だね。
この戦法の弱点は、AUOの扱いづらさが最悪だという点だけだろう。
しかし、AUOが出てきたとなると、今後どうするかな?
《あの英雄王が絡むと何が起きるか本当に分からない。
カルデアチームは原則的に、遠坂邸への接近は禁止すべきだろう。
極力関わりは持たない方がいい》
ムーンセルチームも同じかな。
規格外のサーヴァントだけど、聖杯戦争の正規参加者でもある。
たしかに性格はジャイアンだけど、民間人を虐殺したりするような性格ではないはずだ。
マスターもセカンドオーナーだから、進んで冬木市に被害を出すような事もないだろう。
なんかヤバそうだったら裏方でフォローするぐらいでいいんじゃないかな。
ふむ。あの後解散して、そろそろ寝ようかという話になったはずなのだが。
はくのん、何故自分は蔵に連れ込まれているのかな?
ついでに、何故自分は君に押し倒されているのかな?
さらに、何故自分に馬乗りになっているのかな?
こういう事はアーチャーさんにしてあげるべきだろう。
アーチャーさんなら居間にいるよ。
もっともアーチャーさんなら「年頃の娘がこんなはしたない事をするんじゃない!」とか説教するかもしれないけど。
「…キシナミをちょっと搾ろうかと。
朝までノンストップ」
…………………冗談だよね?
「…この後の返答次第。
キシナミ、さっきの戦闘の事だけど、最後のアレには気付いている?」
………なるほど、それが聞きたかったのか。
はくのんも気付いたという事は、自分の見間違いではないのだね。
自分も気付いているよ。
ハサンを宝具で串刺しにして、AUOが消える直前だよね。
映像越しで一瞬だけど、AUOと自分達『岸波白野』の目が合った。
自分達の存在が、あの裁定者に気付かれたかもしれない。
sideout
side???
下らぬ召喚者、下らぬ催し。
そう思っていたが………
なるほど、この記憶は『そういう事』か。
この催し、少しはマシになったやもしれん。
前に話したよな?「本来、我はおまえのような人間に倒される側なのだ」と。
ならば、我が雑種よ。
此度は、こちら側で貴様らを再び裁定してやろう。
有象無象の刃で、我にどこまで抗えるか、見せてもらおうではないか。
sideout
というわけで大半の予想を裏切り、AUOには敵のままでいてもらう事になりました。
これは初期からの予定通りだったりします。
AUOも本気になったわけではなく、ちょっと楽しみが出来たぐらいになっています。
……ところで、AUOの喋り方はコレでいいんですかね?
本当に難しい。
次回は例の乱戦になると思います。
また時間かかるかな。