ルーラー喚ぼうとしたら、なんか違うのが来たby聖杯   作:陣代高校用務員見習い

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お待たせしました。
今話で一区切りとなります。
皆様今まで読んでくださり、本当にありがとうございました!


魔術師達の帰還

sideキシナミ

 

 

 

冬木で過ごす、最後の日。

それはあっという間に、時間が過ぎていった。

 

顔馴染みになった商店街の人達に挨拶をしたり。

御近所さん達にも挨拶したり。

特に大河さんを始めとした藤村組の皆さんは、自分達との別れを本当に悲しんでくれた。

大河さんとは再会の約束をしたけど………お祖父さんの雷画さんは、あの様子では気づいていたかもしれない。

これが今生の別れであると。

ちなみに自分達と行動を共にしていた言峰綺礼神父曰く

 

「君達はあまりにもこの街の人々と馴染みすぎた。

暗示で君達に関しての記憶を完全に消すのは、もはや不可能だ。

おそらく、『いなくなった君達を気にしない、追わない』というような暗示をかける事になるだろう」

 

との事だ。

あちこちへの挨拶を済ませ。

最後の食事として、両チーム合同でバーベキュー大会を行った。

その最中に冬木聖杯戦争のライダー組が飛び入り参加したり、ライダーの真名を聞いたカルデアチームが仰天したりしていた。

全くの余談ではあるが、この時エリちゃんも料理を作り、自分と藤丸君の口からエーテルが噴出する事になった。

 

食事が終わった後は、皆で家の大掃除をした。

……短い間だったけど、お世話になった我が家。

最後は綺麗にしていきたい。

そうこうしているうちに、ついに夜が来た。

自分達が帰る時が来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

今、自分達は大聖杯への洞窟の入口に来ている。

当然、カルデアチームも一緒だ。

そして、神父とはここでお別れだ。

 

「君達が洞窟に入ったのを確認したら、私は一度教会に戻る。

その1時間後にマスター達を召集し、調査を始める事になっている」

 

わかりました。

入ってから1時間以内に月やカルデアに帰ればいいんですね?

 

「…神父。今日一日、色々とありがとう。

貴方との麻婆談義、本当に楽しかった」

 

「礼を言うのは此方の方だ。

ハクノ、君のおかげで私は進むべき道を見つける事が出来た。 

本当に感謝する」

 

「…麻婆道に終わりは無い。

精進するんだよ神父」

 

「ああ‼」

 

うむ。こうやって麻婆の輪は広がっていくのだな。

………ん?アーチャーさん、どうしました?

なんか、微妙な顔をしていますが?

 

「………いや、なんと言うか。

こういう可能性もあるんだな、と呆れてな」

 

 

 

 

 

 

 

神父と別れた自分達は洞窟の奥へと進み、大聖杯の空間に到着した。

……カルデアチームともお別れだ。

 

「あの、キシナミさん。

本当にこの制服を貰ってしまっても?」

 

藤丸君は、かつて自分が月の表側で着ていた『月見原学園制服』を着ている。

うん。持って行っちゃっていいよ。

自分にはこの旧制服があるし。

 

「奏者には、余が選んだ服もある!

制服の1つや2つ、問題なかろう!」

 

「では、お言葉に甘えて。

この制服はいただきます」

 

何よりも、別れの時にも海パン姿なんて、いくらなんでもあんまりだろう。

 

「はははっ!それもそうですね!」

 

「…マシュ、ここでお別れだね。

最後に、もう一度揉んでいい?」

 

「ハ、ハクノさん!?流石にアレは御容赦を!」

 

「マスター。頼むから、最後ぐらいは真面目にやってくれ」

 

「…私はいつも真面目だよ?

自分の欲望に忠実で全力なだけで…」

 

「なお悪いわ!」

 

そうこうしているうちに、時間が来てしまった。

カルデアチームの足下から光が登り始めている。

 

「じゃあな!

色々と楽しかったぜ!」

 

「あんた達も月でまだ戦うのでしょ?

せいぜい頑張りなさい」

 

モードレッドさん、ジャンヌさん。

 

「本当にありがとうございました!」

 

「まさか、あの英雄王と戦わされるとは思わなかったわ。

でも、良い経験にはなったかな」

 

《今回の件、色々と参考になりそうな事がありましたからね~

戻ったら、整理してバックアップをとっておかないと。

そして………クックックックッ♪》

 

イリヤちゃん、クロエちゃん、ルビー。

 

《ここでお別れなのは、本当に残念だ。

あ~あ、もっとムーンセルの事とか聞きたかったな~》

 

《本当にありがとう、藤丸君と一緒に戦ってくれて。

僅かな時とはいえ、こういう共闘の記憶は大きな支えになるはずだ。

この前の合同会議の件は、僕が責任をもって解決するからね!》

 

ダ・ヴィンチちゃん、ロマンさん。

 

「キシナミさんやハクノさん達に出会えて、本当に良かったです。

なんか……新しい『先輩』が出来たみたいで嬉しかったです。

本当にお世話になりました!」

 

「フォォウッ!」

 

マシュちゃん、キャスパリーグ。

 

「キシナミさんハクノさん。

僕、頑張ります!

色々と辛い事もあるけど、人類の歴史を取り戻すために。

そして何よりも、僕自身が生きるために!

だから、皆さんも………」

 

藤丸君。

ああ、そうだね。

 

「…私達の戦いの最初の動機も『生きるため』だった。

そして、それは今も変わらない」

 

自分達も生きるために頑張る。

そして、いつの日かまた会おう!

 

「はい‼」

 

 

 

 

 

そうして。

星見の魔術師とサーヴァント達は。

自分達の世界に帰っていった。

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side藤丸立香

 

レイシフトの浮遊感が消え、光が収まってくる。

目を開けると、そこは見慣れた場所だった。

あぁ、帰ってきたんだな。

 

「お帰り、藤丸君」

 

ただいまドクター。

 

「今回は全員無事に帰ってこれたよ。

念のため、藤丸君とマシュはメディカルチェックを早めに受けてくれるかい?」

 

「わかりましたドクター」

 

「あ~あと……その…」

 

「……ドクター?」

 

ドクター、どうかしました?

 

「……藤丸君は、1週間ぐらい単独行動は控えてくれ。

常に男性サーヴァントが側にいる状態を維持してくれないかな」

 

え?

 

「……女性サーヴァントのみんな、藤丸君を自室に引きずり込もうと虎視眈々としているみたいなんだ」

 

……………

 

「ちなみに『例の3人組』は、藤丸君のマイルームに四六時中いるみたいなんだ」

 

……………

 

「だから…落ち着くまでは…」

 

……………キシナミさん、ハクノさん。

僕、頑張ると言いましたが。

……早くも心が折れそうです。

 

「…ん?この反応は!?マズイ!」

 

ドクターのその声がきっかけになったかのように、レイシフト施設に警報が鳴り響く。

ドクター、これは!?

 

「『例の3人組』に、藤丸君の帰還を気づかれた‼

騒ぎになる可能性があったから、あの3人には伝えていなかったのに!」

 

そうこうしているうちに、外から戦闘音が。

 

 

 

 

 

「『炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)』ァァァッ‼」

 

「『牛王招雷・天網恢々(ごおうしょうらい・てんもうかいかい)』!

ふふ……あははははっ!

矮小十把、塵芥に成るがいい!」

 

「むんぬぁ!まだまだぁっ‼」

 

「あらあら、まあまあ♪」

 

「ぐはっ‼ここまでか……ご武運を……!」

 

 

 

「…ごめんなさい」

 

「ぐあっ!………マスター申し訳ありません…どうか御無事で…」

 

 

 

「シャアアアア‼」

 

「ぐっ!悪ぃなマスター……生きてくれよ……」

 

 

 

 

 

そ、そんな!?

あの3人がこうもあっさり!?

マズイ!早くゴールデンと呪腕さん、メル友の玉藻を連れてこないと………‼

 

 

 

 

 

そして

 

僕の目の前で

 

扉が切り裂かれて

 

そこには………

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideキシナミ

 

…………なぜだろうか。

今、藤丸君がかつてないレベルの危機に襲われているような気がするのだが。

 

「いやキシナミ。

彼は自分の拠点に帰ったのだから、そんなピンチがあるはずないのだが?」

 

う~ん、考えすぎかな?

 

「…次は私達の番。

桜?聞こえている?」

 

《はい!

ムーンセル帰還用プログラム、展開。

対象は岸波白野typeA、岸波白野typeB、アーチャー・無銘、セイバー・ネロ、ランサー・エリザベートの計5名。

行き先は月の裏側、サクラ勢力の拠点入口に固定。

…準備完了です。

いつでもいけます!》

 

「…わかった。皆、大丈夫?」

 

「余は問題ない!

商店街の皆からの餞別も、ほれこの通り」

 

「私も問題ない。

ガスの元栓もしっかり閉めてきたしな」

 

「私は忘れ物はしてないけど、ちょっと物足りなかったわね。

野外ライブが出来たのは最高だったけど、町を見て回る時間ほとんど無かったし~」

 

自分も大丈夫、いつでも行けるよ。

 

「…では桜。ムーンセルチーム、帰還する」

 

《命令承諾。転移、開始します!》

 

自分達の足元から、光が登り始めた。

…この光は、カルデアのレイシフトと同じ?

 

「…キシナミ」

 

ん?どうかしたはくのん?

 

「…とても楽しかったね」

 

……そうだね。

 

「…みんな、良い人達だったね」

 

藤村組の人達に、商店街の人々。

そして、カルデアチームの皆。

ああ、本当に良い出会いが出来た。

 

「…月での戦い、また頑張ろうね」

 

うん。頑張ろう。

 

 

 

目の前で、自分の分身である少女が微笑む。

と、同時に足元の光が強さを増し…

 

 

 

自分の視界と意識は光に染まっていった………

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideハクノ

 

 

 

 

 

どこまでも昇っていくような。

 

 

 

どこまでも墜ちていくような。

 

 

 

それがずっと続くかと思いきや、いつの間にか足が地面についたような感触が。

周囲の光が弱くなってきたので、そっと目を開くと…

 

「ふむ。ここは……月の裏側の『旧校舎』か。

なるほど。たしかに月の裏側を攻略するならば、既にある拠点を利用した方が効率が良いからな」

 

そうだねアーチャー。

私達が今いるのは『サクラ迷宮』の入口の樹の下。

…月の裏側での戦いの日々が、そして散っていった仲間達の顔が脳裏を掠める。

…今は頭を切り替えよう。

キシナミ、これからどうしようか。

最初はマイルームに荷物を置いてくる事になると思うけど、その後はどうする?

やっぱり、桜がいる保健室に行くのがいいかな?

……………キシナミ?

 

「………奏者?……奏者は…どこだ?」

 

……………え?

 

「なに‼キシナミがいない!?」

 

「そんな!まさか子豚の事、地上に置いてきちゃったの!?」

 

…キシナミが…いなくなってしまった!?

地上に残ってしまったのか!?

それとも、SE.RA.PHの何処かに飛ばされてしまったの!?

まさか、虚数空間に落ちたとか!?

…それとも…‼

 

《ハクノ先輩!聞こえますか!ハクノ先輩‼》

 

…混乱している私の耳に聞こえてきたのは、校内放送で私達に話しかけている桜の声。

…桜。キシナミが…キシナミがいないんだよ……‼

 

《…その、キシナミ先輩の件でお伝えする事があります。

急いで生徒会室に向かってください。

そこで待っている『彼ら』から話を聞いて下さい》

 

…『彼ら』?あの、桜は?

 

《……わたしはBBの緊急治療を行うので、同席できません。

BBの電脳体が8割近く破壊されてしまい、一刻の猶予も無いのです。

すいませんハクノ先輩、修復オペレーション開始の時間になってしまったので、わたしはそろそろ失礼いたします》

 

BBにもトラブルが?

一体、何が起きているんだ!?

 

「マスター。まずは落ち着け。

かなり酷い顔をしているぞ。

そして情報を集め、一つ一つ自分の出来る事をしていこう。

君達は、私達はずっとそうしてきただろ?」

 

アーチャー……そうだったね。

立ち止まらずに、進み続ける事が『岸波白野』の唯一の取り柄だった。

ちょっと動揺しすぎていたみたい。

……うん。私はもう大丈夫。

セイバー、その、大丈夫?

 

「………奏者の不屈さは知っているが、やはり心配だ。

それにずっと側にいた奏者がいないというのは……思った以上に堪える。

………だが、今はここで立ち止まっているわけにはいかぬ。

何もせずに泣いているようでは……それこそ余は、奏者の剣を名乗る事はできぬ!

だから、余は、私は諦めない。

奏者と絶対に探してみせる‼」

 

「それでこそネロね。

私のドル友なら、泣き顔なんて見せている場合じゃないわよ。

アイドルなら、いつもスマイル!」

 

「うむ!」

 

セイバー、エリちゃん。

私達は諦めない。

いつも通り、諦めない。

 

「皆、落ち着いたようだな。

そろそろ桜君の指示通りに」

 

うん。生徒会室に行こう。

 

 

 

 

 

…キシナミ。

私達は貴方との再会を諦めない。

絶対に諦めない。

だから………

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideキシナミ

 

 

 

……ここは…どこだ…?

 

 

 

to be continue?




というわけでここに完結。
…………え?まだ続きそうだって?
HAHAHA!冗談はよしこさんだ(震え声)



今話の補足

・この後、ぐだ男とザビーズはどうなる?
ぐだ男→次のイベントがハロウィン魔界村。
それ以降は2016秋~冬にFGOプレイヤーが経験した通りの展開に。
ちなみに持ち帰った『月見原学園制服』は、後日魔術礼装『月の海の記憶』に改造されました。
ザビ子→ザビ男の行方を探しながら、一応EXTELLA展開に。
ただし、『拠点は旧校舎』『BBやサクラファイブが自軍』『ザビ子が分裂しない』『タマモ勢力はタマモナインで内輪揉め状態』『赤茶はアンチセルの事を知らない』など変更点が多い。
ザビ男→???

・で、ザビ男はどうなった?
まぁ、フラグはたくさん立てましたからね。
彼が飛ばされたのは『あの世界』です。
ただ、『どういう状態』かは未定ですが。

・ここまで書いてみてどうだった?
一言で言うなら、本当に楽しかった。
二次創作を書いたのは初めてだったのですが、己の妄想を形にするというのは、思っていた以上に楽しかったです。
自分の文章力の低さや型月の設定の多さに頭を抱えたりもしましたが、今となっては良い思い出です。
またやるかは別問題だけどな(笑)
この作品の続きも考えてはいましたが、明らかに長くなりそうだからなぁ…





それでは良いお年を‼

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