スロットなんて運ゲーじゃねぇか!   作:SAIKAI

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第1話

ぼすぼす・・・ぼす

 

ちーん

 

ちゃららららーーー

 

おっ・・・

 

<げきあつ!ちゃんす!

 

おおぉっ

 

くるくるくる

 

ぼす

 

ぼす

 

<ちゃららららーーーリーチ!

 

うおおおおお、きたっきたきたあああああ

 

頼むぞ・・・もう2万円も飲まれてるんだっ

 

響 凶夜(ひびききょうや)は寂れたパチンコ屋の、あまり人気の無いスロット台の前で人生の岐路に立たされていた

 

現在22歳

一身上の都合により大学中退

一身上と言えば聞こえはそれほど悪くはないが原因は親父の借金である

 

普段から「NTR(ネトラレ)最高!」とか「なぁ、凶夜・・・幼女欲しくないか?」とか常々インモラルな親父だと思ってはいたが、なんだかんだ「妻LOVE(ラヴ)」と言ってたから、そういう冗談だと思っていたんだが

 

まさか浮気するとは・・・

 

しかも相手はJK(じょしこうせい)

 

凶夜家では家族会議(おはなし)の機会が設けられ

開幕一番(かいまくいちばん)でお袋(ふくろ)が包丁を握り、親父に躍(おど)り掛(か)かった

 

もうね、こりゃ親父は死んだな・・・とか

 

身内から犯罪者が・・・とか

 

俺の人生どこで狂ったのかなぁ、子供は親の犠牲だな・・・とか

 

俺は感慨深く、人生の深さについて考えたもんだね

 

しかし親父は持ち前のしぶとさで間一髪これを回避

 

親父の逃げきりか!?と思ったのもつかの間

 

近所が騒ぎを聞きつけて通報、ポリスメンのお世話になって大騒ぎになり、JKネタでそのまま親父は逮捕

 

結局それが決定打になって、離婚という酷いコンボを食らってしまった

 

人生そうウマくはいかないね

 

その後、俺は出所した親父側に引き取られたが(母親は行方不明でしかたなく)、親父は多額の借金を抱え失踪

 

その借金が俗に言う闇金(やみきん)だったらしく、ここ連日はヤクザなお兄さん達と華麗なる逃亡劇を繰り広げているというわけだ

もちろん家も差し押さえられ、手持ちは残金2万という最悪な状況

 

俺は思ったね、この状況を打破するためにどうしたらいいか

 

バイト?自販機漁り?密漁?窃盗?強盗?違うね

 

後半に至ってはもはや犯罪だ

人様に迷惑を掛けるほど俺は落ちぶれちゃいない

 

そんなこんなで俺が行き着いたのが昔、友人と数回だけ行ったことがあるパチンコ屋だ

ビギナーズラックなのか合計で10万は勝った、俺は思ったね1,000円が数時間で数万円に化けるここはエデンだと

 

と、数時間前までは思ってました

 

事務的にコインを台に流し入れて、ボタンを押す作業に没頭すること数時間

 

俺の残金は0円になり、台に置かれたコインは残り25枚

 

現金換算で500円

 

頼む・・・頼むっ!

 

某ギャンブルマンガの主人公ばりにスロット台へ願いを込め、くるくる回る絵柄を見つめる

 

「はぁ・・・はぁはぁ」

 

この数十枚のコインに己の運命が掛かっていると思うと呼吸が荒くなる

 

俺はドコで間違えた?

 

手段と方法はこれで本当によかったのか?

 

店のチョイスは?こんな寂れた店じゃダメだったんじゃないか?

 

寂れてるって事は当たらないからなんじゃないのか?

 

色々な疑惑が沸いては消え、後悔が津波の様に押し寄せてくる

 

頼むっ

 

願いを込め、3つ目のボタンを押す

 

ぼす

 

<ででっでれれれれーーーー・・・

 

画面にはこの台特有のキャラクター

丸に目と手足をつけただけの酷く適当なデザインのフィーバーくんが走り回っている映像が流れている、このままフィーバーくんがゴールすれば当たりなのだが・・・

 

<もうちょっと!

 

おおっ

 

画面にはゴール目前まできたフィーバーくんとそれを応援する観客が映し出され、風船が空へ飛ぶ映像に切り替わる

 

<ばひゅーん!

 

これは・・・めちゃめちゃ熱いんじゃないか!?

 

どきどき

 

風船が飛び去り、フィーバーくんがゴールへと駆け込む

画面には砂埃が映し出される

これが晴れた時に、フィーバーくんがゴールしていれば・・・

 

もくもくもく・・・

 

こいっ!こいこいこい!

 

<ざんねーん

 

砂埃が晴れると、ゴール手前で倒れているフィーバーくんの姿が!

 

「くっそぉぉぉおおおおおおおおお!!!」

 

勢いよく台座から立ち上がり、”空”を見上げて絶叫する

 

凶夜、魂の雄叫びである

 

 

終わったーーーグッバイ俺の青春(20代)

 

 

これで失うモノは何もない、あとは人間の尊厳くらいなもんだな

 

「もうだめだ、死のう」

 

圧倒的な絶望が心を支配し、思わず凶行を口にした時

 

ひゅう、と

 

ふいに凶夜の顔を風が撫でる、同時に草の強い香りが鼻についた

 

「え」

 

凶夜は思う

 

自分が居たのは寂れたパチンコ屋だったはずだ、と

 

そして、寂れたパチンコ屋に草の匂いがする風は吹くはずもなく

 

決して”見渡す限りの草原”なんかじゃない

 

「う、うえぇぇえええええ!?」

 

凶夜、本日二度目の絶叫

 

ど、どどど、どうなってるんだ?あれ?スロットは?パチンコ屋は一体ドコに!?

 

慌てて、周りを確認するが、やはり見渡す限り草しかない

 

唯一、凶夜がついさっきまで座っていたスロットの椅子だけが草原からにょっきりと生えていた

 

「げ、げ、んじつなのか・・・」

 

とても受け止められないが草原から生えている椅子がこれが現実だと自己主張しているようにみえた

 

これが現実じゃないなら、なんだと言うんだ

 

俺は草原の真ん中に椅子が生えているだけの夢をみる変人だったのだろうか

 

「いやいやいや、ももしかして神隠しとかそういうやつ・・・なのか?」

 

本人は気づいていないが

 

この日、響 凶夜は闇金から完全に逃げ切る事に成功したのである

 

もっともーーー混乱した本人がこの事実に気が付くのはもうちょっと先の話ではあるのだが

 

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