美城常務の犬   作:ドラ夫

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第7話 プロジェクト・クローネ

「高木統括、アイドルが集まりました」

 

「ご苦労、和久井くん」

 

 アイドルスカウトの旅から三日後、会社にいない間に溜まっていた仕事の片付けが終わり、地方に住んでいたアイドル達の引越しが済んだ。今からようやっと『プロジェクト・クローネ』を始められる。

 

 和久井さんと一緒に俺のオフィスを出て、左に向かって歩く。その後突き当たりを右に曲がった所にあるエレベーターに乗り、一階へ。エレベーターを降りてそのまま正面に少し歩いた所にあるこの部屋が、『プロジェクト・クローネ』の本部だ。

 

 俺がスカウトして来た四人のアイドルと、和久井さんがスカウトして来た三人のアイドル、それから一般公募唯一の合格者。そして最後に、俺が最初にプロデュースした五人のアイドルうちの四人、計十二名のアイドルがこの部屋に集まっている。

 この十二名こそ、『プロジェクト・クローネ』のメンバーだ。そして十二名全員が一流になる可能性がを秘めている、金の卵だ。それを上手に孵化させ、黄金の鳥に育てるのが俺の役目。美城さん風に言うなら、灰かぶりと魔法使いか。

 

「……漸く、ここまで来たわね」

 

 ドアの前。今から部屋に入る、と言う所で立ち止まり、和久井さんがそんなことを言った。きっと彼女の頭の中には、これまでの軌跡が巡っていることだろう。そしてそれは、俺も同じだ。

 

「そうですね、和久井さん。でも…まだまだここからですよ」

 

 でもそれは所詮頭の中の事で、俺達は進まなきゃ行けない。

 和久井さんは俺の言葉に頷き、ドアをノックした。部屋の中から一ノ瀬の楽しげな返事が聞こえてくる。和久井さんは少し笑った後はドアを開け、俺を促した。

 そして俺達は迷う事なく、部屋の中へと入っていった。

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

「おはよう、諸君。私が君達のプロデュースを任された高木美鳥だ」

 

 24の目が俺の方を一斉に見た。流石アイドルとアイドル候補生と言うべきか、目力が凄い。しかし俺もそれなりに人の前に立ってきた。怯むことなく、彼女達を見る。

 

「既に聞いてる事と思うが、君達は『プロジェクト・クローネ』として『アイドルアルティメイト』に出場し、優勝しなければならない」

 

 俺の言葉に、既にアイドルとしてデビューしている娘達が改めて決意した表情を見せた。

 『アイドルアルティメイト』。全てのアイドルの頂点を決めるアイドルの聖戦。

 日本だけではなく世界中の人間が注目するそれは、勝てば最高の名誉となるが、負ければ容赦なく敗者の烙印を押される。故に、普通のアイドルでは出場する事さへ躊躇う。

 僅か一年という短い期間のうちに、彼女達を『アイドルアルティメイト』で優勝出来るアイドルにする事が、灰かぶりをシンデレラにする事が、美城さんから俺に課せられた使命。

 

「早速だが、今から『プロジェクト・クローネ』内でのユニットを発表する」

 

 武内くんの『シンデレラプロジェクト』もそうだが、プロジェクト内でユニットを組む事は当たり前の事だ。

 ユニットを組む事でファン層を広げる事が出来るし、歌う曲の幅もぐっと広がる。代表的なところで、765プロの『フェアリー』なんかがそうだ。クールな曲からキュートな曲まで、実に様々な曲を違和感無く歌っている。

 そんな訳で当然、『プロジェクト・クローネ』もユニットを組むことにした。

 

「まず一ノ瀬くんと宮本くんの二人でユニットを組んでもらう。ユニット名は『レイジー・レイジー』だ」

 

 今も隣同士に座っている一ノ瀬と宮本さん。俺が二人でユニットを組む事を告げると、二人して笑いながら抱き合った。きっと、あの二人なら良いユニットになるだろう。

 

「次に鷺沢くんと橘くんの二人でユニットを組んでもらう。ユニット名は『デジタルブックス』だ」

 

 この二人は、和久井さんがスカウトして来たアイドル候補生だ。この二人は仲が良いと和久井さんから聞いている。実際、今日もここまで一緒に来たみたいだしな。それに俺が見た限り、身体能力的な相性も良い。

 物静かで、儚げなアイドル。そんなユニットになってくれれば幸いだ。

 

「次に大槻くんと小日向くんと五十嵐くんの三人でユニット組んでもらう。ユニット名は『パワフルキュート』だ」

 

 大槻さんは和久井さんがスカウトして来たアイドル候補生、小日向さんは俺が最初にプロデュースした五人のアイドルの一人、五十嵐さんは唯一一般公募で合格したアイドル候補生だ。

 恥ずかしがり屋な小日向さんを底無しに明るい大槻さんが引っ張り、五十嵐さんが纏める。そんな構図を思い浮かべている。

 それに、三人とも背丈がほぼ同じなのも決め手の一つだ。そんな事で?と思うかもしれないが、身長差がないという事はダンスをする際とても有利になる。

 

「次に星くんと木村くんと塩見くんと速水くんの四人ユニットだ。ユニット名は『R&V』」

 

 星さんと木村さんは俺が最初にプロデュースした五人のアイドルの中の二人だ。二人とも最近流行りの所謂『ロックなアイドル』というやつだ。そこに大人びてる速水さんと塩見さんを加えて、クールでアツいロックなアイドルユニットも目指してもらう。

 速水さんと塩見さんには今から何らかの楽器を習得してもらわなければならないが、あの二人なら大丈夫だろう。速水さんも塩見さんも、ああ見えて実は努力を惜しまない娘だ。

 

「そして最後に、城ヶ崎くんと一ノ瀬くん、宮本くん、速水くん、塩見くんの五人でユニットを組んでもらう。ユニット名は『LiPPS』。この『LiPPS』が『プロジェクト・クローネ』のメインユニットとなる」

 

 城ヶ崎さんは俺が最初にプロデュースした五人のアイドルの一人。俺がプロデュースした中では、かつて最もトップアイドルに近づいたアイドルだ。

 全員癖者だが、黙っていればかっこいいし、ある種のカリスマの様なものも持っている。きっとティーンズの憧れになってくれる。

 カッコよく、美しく。美城さんの言う『346のアイドル』らしさが最もあるユニットになるだろう。

 

「ソロ曲やユニット曲とうは後々発表するが、こういう曲にして欲しいという要望があれば出来る限り聞く様にする。活動方針についても同様だ。何か質問のある人は?」

 

 手を挙げたのは二人、城ヶ崎さんと木村さんだ。年功序列という訳じゃないが、何となく先に木村さんを当てた。

 

「曲は高木さんが作ってくれるのか?」

 

「そのつもりだ」

 

「へえ、高木さんが……いいね!メンバーも最高だし、アタシの心もロックに燃えてきたよ!」

 

 夏樹さんは星さんと塩見さん、速水さんに拳を差し出した。以前に組んだ事のある星さんが最初に動き、それを見た塩見さんと速水さんがそれに続いた。

 

「アタシは木村夏樹、これからよろしくな!」

 

 ゴツンと四人の拳がぶつかった。武内くんではないが、四人ともいい笑顔だ。

 

 その四人を皮切りに、他のユニットのメンバー同士も自己紹介をし始めた。元々、コミニュケーションが得意な娘が多い事もあってか、すぐに彼女達は打ち解けた様だ。

 

「ふむ、問題なさそうだな。それで、城ヶ崎くんは何かな?」

 

 アイドル達の嬉しい喧騒の中、俺が問い掛けると、城ヶ崎さんは悲しそうに言った。

 

「プロデューサー、アタシは『アイドルアルティメイト』出たくない、かな」

 

 その言葉に、部屋の中の空気が変わった。




ここでの『プロジェクト・クローネ』

【キュート】
一ノ瀬志希(18)
宮本フレデリカ(19)
小日向美穂(17)
五十嵐響子(15)

【パッション】
大槻唯(17)
城ヶ崎美嘉(17)
木村夏樹(18)
星輝子(15)

【クール】
塩見周子(18)
鷺沢文香(19)
速水奏(17)
橘ありす(12)



【ユニット】
『レイジー・レイジー』
宮本フレデリカ(キュート)
一ノ瀬志希(キュート)

『デジタルブックス』
鷺沢文香(クール)
橘ありす(クール)

『パワフルキュート』
大槻唯(パッション)
五十嵐響子(キュート)
小日向美穂(キュート)

『R&V』
星輝子(パッション)
木村夏樹(パッション)
速水奏(クール)
塩見周子(クール)

『LiPPS』
速水奏(クール)
塩見周子(クール)
宮本フレデリカ(キュート)
一ノ瀬志希(キュート)
城ヶ崎美嘉(パッション)
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