ソードアート・オンライン ー白き剣士の英雄譚ー   作:和狼

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皆様こんにちは。和狼でございます。
『Parallel』の更新もせずと何新しいのを投稿してやがるんだ、と仰りたいかと存じますが、此処は一つ大目に見て頂きたく存じます。

……いや、その、ちゃんと筋の通った文面にしようと頑張っているのですが、中々思うようにいかないんですよね、コレが……。
……そもそもの話、需要……有るのかどうかちょっと心配なんですよね……。自己満足で書き始めたのが強いですから……。

で、ちょっと息抜きにと、ふと思い付いたネタをやってみようかなぁ……という訳で、今に至っております。
出来ればこっちも中途半端にはしたくないかな……。

あー、『出来れば』とか『なるべく』って言葉ってイイわ〜。中々進まなくても『やる気は有るんだ』ってのが伝えられるから。

てな訳で、本作品も宜しくお願いしまーす。




Stage.0:異世界 ヘト 逃 ゲタ 少年

 

 

 

 

 

「……ごちそうさま」

 

 

少し広いリビングにて、昼食を食べ終えた少年が礼儀正しく、しかし呟く様な音量で食後の挨拶を唱える。

其れに応える声は無い。

だが其れは、少年の声が小さいが故に相手に聴こえなかったからではない。言葉が意味する通り、少年の言葉に応える者が誰一人として居ないのだ。

 

 

少年には両親が居ない。聞いた話によれば、物心付く前に、唯一の肉親である姉と共に両親に捨てられたのだとか。

其の姉も今は居ない。其れどころか、随分と家に帰って来てすらいない。

其れもそのはずで、姉は少年を一人残し、単身ドイツに仕事に出掛けているのだから。出掛ける前に聞いた話によれば、一年は戻れそうにないのだとか。

 

 

──そうなった原因は、俺に有るんだけどな……。

 

 

姉の事を考える度、少年は決まって表情を暗くする。もしも自分が姉の邪魔にならなければ、もしも自分にもっと力が有ればと、後悔の念に押し潰されてしまうのだ。

 

 

兎にも角にも、少年はずっと一人で過ごして来たのだ。

幸いにして、姉からの仕送りや、中学に入ってから始めた複数のバイトのお陰で生活費にはさして困ってはいないし、幼い頃から数をこなして来ている為、家事・炊事に関しても問題無く(こな)せている。

 

 

……だがしかし、生活に何の支障も無いからといって、其の生活が決して充実しているとは限らない。

ズバリ言おう。少年は心の内に寂しさを抱え込んでいる。中学生という多感な時期の少年が長い事一人きりで暮らしているのだから、当然の結果だと言えよう。

故に、少年が一人での生活に充実感を感じている筈も無い。毎日の食事だって、作り甲斐なんて殆ど有りはしない。

 

 

「さてとっ!」

 

 

そんな少年だが、しかし決して何時も気分が沈んでいるという訳ではない。

今もこうして、先程までの暗い雰囲気が嘘だとでもいう様に、急に元気良く意気込み、自分が使った食器を片付け始めた。

 

 

──沈んでる暇なんてねえよな。何せ、今日は待ちに待ったあの日なんだからな。

 

 

手早く洗い物を終えると、少年はいそいそとリビングを後にして、自室が有る二階へと上がる。

そして自室に入ると、ウォールラックからヘッドギア状の機械と、一本のゲームソフトのパッケージを手に取る。

 

 

ヘッドギア状の機械の名は《ナーヴギア》。

此れは、仮想空間の中に飛び込んでプレイするという、非常に斬新な発想のゲームを動かす為のゲームハードだ。詰まり、自分自身がゲームの世界に入り込めるという事だ。

そして、其のナーヴギアを使っての世界初のVRMMORPGとして発売されたゲームこそ、少年が今まさに手に持っている其れであり、タイトルを《ソードアート・オンライン(通称SAO)》という。

 

 

少年がこのゲームに手を出したのは、ある意味では当然の結果とも言えるだろう。

 

 

実の所、少年に対する周囲からの評判はあまりよろしくない。だが其れは、決して少年の素行に問題が有るからではない。

寧ろ、其の原因は彼の姉の方に有る。

彼の姉は、とある競技に於いて世界的な強さを誇っており、誰もが彼女に注目した。

……其れだけならば何の問題も無かったのだろうが、其の目は彼女の身内──詰まりは少年にも向けられた。《偉大な姉の弟》として見られ、常に優秀な姉と比較される様になった。成績が悪ければ「お姉さんの弟なのに」「出来損ない」などと罵詈雑言を浴びせられ、ならばと努力して良い成績を取っても、「流石はお姉さんの弟」「お姉さんの弟なのだから出来て当然」と、誰も少年の事を真に評価してはくれない。

挙句には、本来であれば味方であるべき筈の姉ですらも、「お前は私の弟だから大丈夫だ」と、苦しむ少年の事を真に理解しようとはしなかった。

一部の理解有る者を除き、姉を含めた誰もが少年の事を《個人》として見てはくれなかった。

 

 

……だがしかし、少年の受難はまだ此れで終りではなかった。

今より半年程前に、姉が注目を浴びる切っ掛けとなった競技の、二回目の大会が開催された。当然ながら姉は順当に勝ち進み、二連覇も夢ではなかった。

しかし、決勝戦を目前にしてとある事件が起きた。姉の二連覇を阻止する為として、少年は人質として誘拐されたのだ。

結果としては、姉は決勝を棄権し、少年を助けに駆け付けた。誘拐犯の逮捕にも見事に成功し、姉は少年の捜索に積極的に貢献したドイツ軍に恩を返すべく、一年間ドイツにて働く事になった。

此れで全て丸く(おさま)ったと思いきや、そうは問屋が(おろ)さなかった。

無事帰国した少年に待ち受けていたのは、理不尽に浴びせられる批難の言葉の数々であった。「お前の所為でお姉さんは優勝を逃した」「お前が誘拐されなければ良かったんだ」といった言葉は勿論、挙句には「お前が存在しているのが悪い」という、少年の存在そのものを否定するものまで出て来る始末。理解有る友人達の助けのお陰で徐々に鳴りは潜んで行ったが、未だに少年の事を快く思わない者は多く存在する。

 

 

一番の被害者であるにも関わらず、理不尽に悪者としてのレッテルを貼られる事となった少年は、とうとう堪え切れなくなり逃げ出した。

 

 

──自身を姉の比較対象として見る周囲の視線から、逃げ出した。

 

 

──理不尽に浴びせられる罵詈雑言の数々から、逃げ出した。

 

 

──自身を《個人》としてではなく《姉の付属品》としてしか見てくれない世界から、逃げ出した。

 

 

──そうしなければ自身を保てない自分の弱さから、逃げ出した。

 

 

──安寧を求めて、逃げ出した。

 

 

──自分の居場所……存在しても許される場所を求めて、逃げ出した。

 

 

そうして逃げた果てに少年が辿り着いたのが、電脳(ゲーム)の世界だった。

ゲームの中でならば、アバターという厚い鎧を纏う事が出来る。そうしていれば、決して素性を知られる事は無い。素性がバレなければ姉と比較される事は無い。《姉の付属品》として見られる事も無い。漸く《個人》として見て、接して貰えるのだ。

此処こそが自分が本当に居るべき世界なんだと、少年が嬉々としてのめり込んで行ったのは当然の結果だと言えよう。やがてSAOの存在を知り、少年が此れに食い付くのもまた(しか)りである。

 

 

──閑話休題。

 

 

時刻は間も無く午後一時。SAOの正式サービスが開始される時刻だ。

少年はナーヴギアの電源を入れ、パッケージから取り出したROMカードをスロットへと挿入する。数秒で主インジケータが点滅から点灯へと変わる。

其れを頭に被り、顎の下でハーネスをロックし、シールドを降ろしてから、少年はベッドに横たわる。

此れで準備は万端であり、後は定刻を待つのみ。

そして──

 

 

──13:00

 

 

運命の時は来た。

シールドの内側に表示されたデジタル時計にて其れを確認した少年は、目を閉じ、笑みを浮かべ、期待と興奮で高まる心臓の鼓動を抑えながら、魔法の呪文を唱えた。

 

 

「リンク・スタート!」

 

 

其の瞬間、少年──織斑(おりむら)一夏(いちか)の意識は現実の肉体から切り離され、虹色のリングをくぐり抜け、全てがデジタルデータで構成された仮想空間へと飛び込んで行ったのであった。

 

 

 

 

 

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