ソードアート・オンライン ー白き剣士の英雄譚ー   作:和狼

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お待たせ致しました。
相変わらず頭の中のイメージを上手く文章にする事が出来ず、更新が遅れてしまいました……。


カンザシ「まったくだよ。一話更新するのに約一ヶ月も掛かってるとか、そんなんで大丈夫なの? 完結出来るの?」


うっ……。


ハジメ「まあまあカンザシ。和狼さんは毎回文章の前後がきちんと噛み合う様に試行錯誤して、文字数だってなるべく長くなる様にそれなりに頑張ってるんだぜ。今回の話だって8,000字を越えてるんだぞ」


そ、それなりにって……。


カンザシ「……ハジメ……今のは何気に私のよりも酷いと思うよ……」


ハジメ「えっと、その……ごめんな、和狼さん……」


…………ま、負けないもん。年齢を重ねる毎に自分のガラスメンタルは、其の強度を増してるんだもん。だから負けたりしないんだもん。


ハジメ「お、おお……」


カンザシ「い、意外とタフなんだ……」


……取り敢えずアレだ。
そろそろ本編始めるから、お前らとっとと行け。そんで──






──ちょっと悶えて来い!


「「しかも何か反撃効果付きだったぁ!!?」」






※ 2016/05/31:活動報告を1件更新しました。




Stage.4:ボス戦前夜 / 気付 イタ 気持 チ

 

 

 

 

 

実務的な議論は一切行われなかった前日の会議ではあるが、しかし、プレイヤー達の士気を上げる効果は有った模様。

結果として、第一層迷宮区の二十階はかつて無いスピードにてマッピングが行われ、会議の翌日、十二月三日土曜日の午後には、ついに最初のパーティーがフロア最奥にて巨大な二枚扉を発見したのであった。

 

 

其の日の夕刻、場所は再び《トールバーナ》の野外ステージ。

余計な茶番も乱入も無く始まった会議は、ディアベルが最新版の攻略本を取り出し、第一層ボスの情報を確認する事から始まった。

 

 

其れによれば、ボスの名は《イルファング・ザ・コボルドロード》。

武器は右手に斧、左手にはバックラー。四段有るHPバーの最後の一本が赤くなると曲刀カテゴリの湾刀(タルワール)に持ち替えて、ボスの攻撃パターンも変化する。

更に、《ルインコボルド・センチネル》という名の取り巻きが三匹おり、HPバーが一本減る度に更に三匹再ポップ、合計十二匹相手する事になる、との事。

其の他にも、使用するソードスキルや其の攻撃範囲、剣速、ダメージ量などが事細かに表記された攻略本には、裏表紙に【情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります】という、真っ赤なフォントにて表記された注意文があった。

 

 

「ところで、ハジメくんはベータの時に一層のボスと闘った事は有るかい?」

 

 

「え? あ、はい。有りますよ」

 

 

「ならば、此処に載っている情報に誤りは有るかな? 此のガイドの信憑性を疑っている訳ではないのだけれど、念の為にね」

 

 

「いえ、大丈夫です。俺が憶えている限りの情報と全く同じですよ。ただ、裏表紙にも書いてある通りに内容が変更されている可能性が有りますので、充分に注意するべきだと思います」

 

 

「そうだね。ありがとう」

 

 

元ベータテスターであるハジメからの裏付けも取れた事で、ボスの情報はより確実なものとなる。

其れにより、死者が出る危険性が高く、慎重を期して二、三日は掛けて行うべきであった面倒な偵察戦を省く事が出来る為、此れにはディアベルを含め多くのプレイヤーが喜んだ。

 

 

「……それじゃ、早速だけど、此れから実際の攻略会議を始めたいと思う! 何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担も出来ないからね。みんな、先ずは仲間や近くに居る人と、パーティーを組んでみてくれ!」

 

 

必要な情報も揃い、ではそろそろ本格的な会議を始めようかという事で、其の前準備として周りのプレイヤーとパーティーを組む様にと呼び掛けるディアベル。

現在会議に集まっているプレイヤーの数は、前回の会議から変わらず四十八人。レイドの上限は、最大六人のパーティーが八つの合計四十八人である為、意図的にあぶれようとしない限りは綺麗に八つのパーティーに分かれる計算である。

尚、レイドに加わる事が出来るパーティーの数は八つまでである為、上限ピッタリの現状に於いて意図的にあぶれようとすれば、レイドには参加出来なくなる。其れでも攻略に参加する事は可能だが、其の場合は双方に於けるステータスの確認が出来なくなる為、適切な支援などは望めないだろう。デスゲームと化している現状に於いて其れは、恐怖や不安などといった感情を大きくするだけの材料にしかならない。よって、意図的にあぶれる事は得策とは言えないだろう。

 

 

「えーっと……カンザシは俺と一緒、って事で良いのか?」

 

 

「うん」

 

 

そんな中ハジメはというと、即効でカンザシと組む事が決定した。

嫌な顔一つせず即答するあたり、余程ハジメの事を信用しているという事なのだろう。……或いは其れ程までに、ハジメ以外のプレイヤーとパーティーを組む事を考える余地など無いという事か。

其れはさて置き。

ハジメとしては意図的にあぶれるつもりは無い……というよりも、あぶれようという考え自体持っていない為、残り四人のメンバーを捜すべく動こうとする。

 

 

「ハ〜ジメ〜!」

 

 

「うおっと! ……よう、ナギサ」

 

 

その矢先、ハジメの名を呼ぶソプラノボイスと共に、一人のプレイヤーがハジメの背後から抱き付いて来た。

プレイヤーネームを《ナギサ》。

外見的特徴は、ライトブラウンのゆるふわとした少し長めの髪型に、深緑色の大きな瞳が特徴的な可愛らしい顔をしており、全体的には色白で、線が細くやや小柄な体型をしている。

が、其の背に背負っている武器は、どう考えても見た目とは不釣合いな大型の両手剣である。

 

 

「うんにゃ、昨日ぶり〜! カンちゃんもにゃっほ〜!」

 

 

「…………えっと……こんにちは。あと、カンちゃんはやめて……」

 

 

会話から判ると思うが、三人はお互いに面識が有る。詳しく説明すると、昨日の会議の直後にも今の様にナギサがハジメに抱き付いて来ており、其の際に、初対面であるカンザシとナギサはお互いに自己紹介をしているのだ。

ハジメとナギサの面識は、其れよりももっと前から。ナギサ達のパーティーが窮地に陥っていた所に、ハジメが助けに入ったのが出逢いの切っ掛けである。

尚、ナギサは其の時の事が切っ掛けでハジメに対して憧れを(いだ)いており、また、その後(しばら)く行動を共にする内にハジメに懐き、ハジメの事を慕う様になったのである。

 

 

「え〜ッ!? カンちゃんて呼び名、可愛いと思うんだけどな〜?」

 

 

「……理由は言えないけど、あんまり其の呼び方はして欲しくない。それに、()()()にカンちゃんって呼ばれるのは……何だか変な感じがする……」

 

 

さて、此処で一つ非常に重要な注釈を入れておこう。

此のナギサというプレイヤー ……外見や声質、名前などで勘違いしてしまいそうだが、実を言うと其の性別は──なんと《男》であるのだ。所謂(いわゆる)《男の娘》という奴である。

此の事実には、ハジメやカンザシを含め、彼と出逢ったプレイヤーの殆どが教えられるまで全く気付く事が出来ず、教えられた際には、其の大半が非常に驚いていた。

余談だが、カンザシはハジメに馴れ馴れしく抱き付く見た目女の子なナギサに対し、本人も知らずして嫉妬の念を(いだ)ていたりする。男だと判ってからは、そういった感情はすっかり無くなっているが。

 

 

──閑話休題。

 

 

「え〜!? 別に男がカンちゃんって呼んでも良いじゃ……あいたッ!?」

 

 

「本人が嫌だっつってんだからやめたれって。あといい加減本題入れやボケェ」

 

 

『カンちゃん』という呼び名に不満を漏らすカンザシに、尚も食い下がろうとするナギサであったが、突如として話に割って入って来た第三者によって後頭部を軽く叩かれ、(たしな)められた。

尚、この《トールバーナ》を含む多くの町には《アンチクリミナルコード》と呼ばれるシステムが設けられており、其れによって如何なるダメージも無効化される為、叩かれた事でナギサに数値的なダメージが届く事は無かった。但し、叩かれた衝撃までは無効にはならなかったが。

 

 

「よう、ウツホ」

 

 

「ういっす、ハジメ。カンザシの嬢ちゃんも。つか悪いな。ウチのナギサが迷惑掛けちまって」

 

 

「あ、いえ、そんな……」

 

 

ナギサに代わりカンザシに非礼を()びるのは、《ウツホ》という名の男性プレイヤー。

クセの有る黒髪短髪に黒い瞳の細目。全体的にはやや()せ型で、百七十近くという平均的な身長と、ナギサと比べれば大分落ち着いた、悪く言ってしまえばあまり特徴の無い、所謂《凡人》タイプだ。

そんな彼は、デスゲーム開始時からのナギサのパーティーメンバーであり、彼もハジメと面識が有る。また、昨日の会議の直後にもナギサと共に会いに来ている為、カンザシとも面識が有るのだ。

 

 

「……其れよりも、本題っていうのは……その、パーティーの事ですか」

 

 

「軌道修正させちまってすまんな……。んでまあ、言いたい事はそういうこった。んな訳で、俺らとパーティー組まねぇか?」

 

 

さておき。

ウツホはカンザシの言葉に頷くと、親指で自身の背後を指差しながら、ハジメ達を自分達のパーティーへと勧誘する。

ウツホが指差す先には、更に二人のプレイヤーがおり、ハジメとカンザシとを合わせれば丁度六人となる。

断る理由なと特に無い為、ウツホの勧誘を受け容れるつもりでいるハジメは、隣に腰掛けるパートナー(カンザシ)へと意向を(うかが)う視線を向ける。視線を向けられたカンザシは、ハジメが言わんとしている事を理解すると、コクリと小さく頷いてみせる。カンザシも、ウツホ達と組む事に特に異存は無い様だ。

 

 

「えっと、俺達で良ければ喜んで」

 

 

「おう。ほんじゃま宜しくな、お二人さん」

 

 

「ああ、こっちこ──グエェッ!?」

 

 

「にゃっは〜〜! 宜しくねハジメ〜!」

 

 

「ちょ、ナギサ!? 絞まってる! ハジメの首が絞まってるから!」

 

 

ハジメとパーティーを組める事が余程嬉しいのだろう。ナギサは意図せずしてハジメの首に回していた腕に力を込めてしまい、結果、ハジメは首を絞められて苦しむ羽目となってしまう。

カンザシが慌てて止めに入るが、興奮しているナギサには彼女の声は届かず、結局は、ウツホが「落ち着かんかいこのボケがぁ!」と叫びながらナギサの頭に思い切り拳骨を落す事で止めたのであった。

 

 

何はともあれ、無事(?)にパーティーを組む事が出来たハジメ達。

彼らも含めて、会議に参加している全員がパーティーを組み終えたのを確認してから、ディアベルは本格的な攻略会議を始める。

出来上がった八つのパーティーを検分し、最小限の人数の入れ替えを行った後に、八つのパーティーそれぞれに役割を割り振る。

 

 

鉄板の様なヒーターシールド持ちのハンマー使いがリーダーのA隊は、壁役としてボスの攻撃を防ぎつつ、ボスのターゲットを取る。

 

 

斧使いのエギルがリーダーのB隊は、主力としてボスのHPを削る役割。

 

 

今回のレイドリーダーであるディアベルが率いるC隊は、A隊と交互に壁役とボスのタゲ取りを行う。

 

 

キバオウがリーダーのE隊は遊撃部隊であり、ボスにダメージを与えつつ、取り巻きのセンチネルがボス攻撃専門の本隊に近付くのを防ぐ。

 

 

長モノ装備のF、G隊は支援部隊であり、長柄武器に多く設定されている行動遅延(ディレイ)スキルをメインに使い、ボスやセンチネルの攻撃を可能な限り阻害するのが役目だ。

 

 

キリトが居るH隊はセンチネルの殲滅(せんめつ)に専念し、可能であればボスへの攻撃に回っても良いとの事。

 

 

そして、元ベータテスターであるという理由から、ハジメがリーダーを務める事となったD隊は……

 

 

「君達には、レイド全体の支援をお願いしたい。今回のレイドリーダーはオレだけど、ボスに関する知識が一番有るのは恐らく君だ……ハジメくん。後方から全体の戦況を確認して指示を出しながら、臨機応変に他の隊のサポートに回って欲しい」

 

 

ハジメがレイドの副リーダーとして指揮を執りながら、他の部隊のサポートをする事となる。

後方から、という部分に何やら引っ掛かる様なものを感じたハジメであったが、恐らくは気の所為であると思い、特に気にする事も無く、与えられた役割に対して「了解です」と快く頷くのであった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 

其の後、各部隊のリーダーによる簡単な挨拶と、ボス戦に於いてドロップしたお金(コル)やアイテムの分配方針の確認を行ってから、二回目の攻略会議は終了となった。

他のプレイヤー達が三々五々解散して行くのを見送ってから、自分達もと、席を立ってステージを後にしようとしたカンザシ達であったが……

 

 

「一緒に夜ご飯食べに行こ〜!」

 

 

と、ナギサ達に呼び止められ、夕食に誘われた。曰く、明日のボス攻略に向けて、より良い連携の為にお互いの親睦を深めようとの事。

確かに、何事に於いても他者との連携は大切であり、ボス攻略という難易度の非常に高い挑戦ともなれば、其れの重要性は尚更であろう。其の強化の為に連携を組む者同士の間で親睦を深めるというのは、中々に当を得た考えだと言えるだろう。

 

 

「……えっと……それじゃあ、お邪魔させて貰おう、かな」

 

 

その点も考慮した上で、カンザシは彼らの誘いを受ける事にした。

人付き合いが得意ではないカンザシとしては、正直に言って、やはり必要以上に他人と関わり合う事に気乗りはしない。

しかし、そういった思いとは別に、明日のボス攻略に対する不安や緊張を少しでも紛らわしたいという思いも有り、何方かと言えば後者の方が強い。なので、この際詰まらない意地など捨てて、思いっ切り気晴らしがしたいのだ。

それに、カンザシとしても、このまま人付き合いが苦手な事を理由(いいわけ)にして何時までも逃げ続けてばかりではダメだと解っている為、此れを機会に少しずつ人付き合いを頑張ってみようとも思っているのだ。

 

「えーっと……それじゃあ、D隊の親睦会を始めたいと思います。乾杯!」

 

 

「かんぱーい!」

 

 

兎にも角にも、ハジメの音頭で始まった『親睦会』という名目の食事会。

皆思い思いに時間を過ごし、それぞれに親睦を深め合って行く。

 

 

「ところでさぁ、ザッちー」

 

 

「……? なに、ナギサ」

 

 

「ザッちーはさぁ、ハジメの事をどう思ってるの?」

 

 

その最中、カンザシはナギサから、ハジメの事をどの様に思っているのかと訊ねられる。

因みに、《ザッちー》というのはナギサが新たに考えたカンザシの渾名であり、カンザシ本人も《カンちゃん》ではないならと承知している。というよりも(むし)ろ、渾名で呼んで貰える事を喜んでいたりする。

 

 

「どうって……ハジメは私にとっては恩人だよ」

 

 

「あー、うん。ザッちーもピンチの所をハジメに助けて貰ったんだもんね。けどさー、ボクが聞きたいのはそういう事じゃないんだよねぇ……」

 

 

さておき。

ナギサからの問い掛けに対して答えを返すカンザシであったが、其の答えはナギサが求めていたものではなかった様である。

尚、カンザシがピンチに陥っていた所をハジメが助けた事は、昨日の紹介の際にハジメが軽く説明している。

 

 

「……なら、どういう事を訊きたいの」

 

 

「ズバリ、ザッちーはハジメの事を異性としてどう思ってるのかにゃ〜、って」

 

 

「ふえッ!?」

 

 

「ぶうッ!?」

 

 

では何を訊きたいののかとカンザシが訊ねると、ナギサはニヤついた表情を浮かべながら、ハジメの事を異性としてどの様に思っているのか、と返して来た。

此れには、そっち方面には全くと言っていい程に免疫の無いカンザシは、ものの数秒で顔を真っ赤にして狼狽(うろた)え、恋愛事には鈍感であるハジメも、流石にド直球なナギサの言い回しには反応せざるを得ず、しかもその対象が自分という事で思わず吹き出してしまう。

 

 

「きゅ、急に何を言い出すのっ……!?」

 

 

「いや〜だってさ〜、ザッちーはさ〜、ハジメに助けて貰ってからず〜っとハジメと一緒にいるんでしょ」

 

 

「そ。それは…… 一人で居るのが怖かったからで、ハジメを選んだのだって、ハジメ以外に頼れる人が居なかったからだし……」

 

 

「いや〜、だとしてもさ〜、好きでもない異性とずっと一緒にいるだなんて、中々出来る事じゃないと思うんだよね〜」

 

 

「そ、そんな事言われても……分かんないよ……」

 

 

今まで意識した事など殆ど無い感情を指摘され、どの様に対象して良いのか判らずに戸惑うカンザシ。

 

 

「…………でも……」

 

 

「でも……?」

 

 

「……はっきりとは憶えてないんだけど、私を助けてくれた時のハジメは、その……凄くカッコ良くて、優しくて、まるで私が憧れてるヒーローみたいだった……」

 

 

「〜〜〜〜ッ!!?」

 

 

それでも、カンザシは懸命に自分の胸の内に有るハジメに対する感情を言い表す。が、やはり慣れない感情である為に、恥ずかしさから其の顔は真っ赤である。

言われた側のハジメも、心を射抜かんばかりのカンザシの真っ直ぐな言葉と、圧倒的な破壊力を感じさせる彼女の紅潮した顔のダブルパンチの前に、ガタッ、と気恥ずかしさからテーブルに突っ伏してしまう。

更には、其の衝撃は周りで聴いていた他のメンバーにまで及び、各々目や口を押さえて昂揚した気持ちを抑えようとする。

 

 

「……ナギサ、もうその辺で勘弁しといてやれ。本人達どころか、俺達のライフまで()たんくなる……」

 

 

「…………うん、そうだね。そうしとく……」

 

 

逸早くある程度の落ち着きを取り戻したウツホの言葉で其の話題は終わる事となったのだが、皆落ち着きを取り戻すのに手一杯だったのと、気不味い雰囲気に呑まれて話し掛ける事を躊躇(ちゅうちょ)した為に、其の後暫くは沈黙続いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其の後、どうにか空気を持ち直す事に成功し、気分良く終わった食事会であったが、若干二名、気不味い空気が抜け切っていない者が居る。……言わずもがな、ハジメとカンザシの二人だ。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

四人と別れ、ここ数日借りている良質な宿(経費節約の意も兼ねて相部屋、料金は割り勘)に帰るまでの間、二人は気不味さ……或いは気恥ずかしさから終始無言であり、部屋に入ってからもお互いに顔を合わせられずにいる。

 

 

「お、お風呂先に入って来るね……」

 

 

「お、おう。ごゆっくり……」

 

 

先に其の空気に耐えられなくなったのはカンザシの方であり、逃げる様にしてバスルームへと駆け込む。

 

 

「…………の、覗かないでね……」

 

 

「お、おう……」

 

 

バスルームのドアを完全に閉める間際に、覗かない様にとハジメに忠告するカンザシだが、先の食事会での話題の所為で必要以上にハジメの事を異性と意識してしまってか、其の声にはあまり気迫は無い。

同様に気迫の感じられないハジメの返事を聴いてから、今度こそ完全にドアを閉めきってバスルームに引っ込むと、メインメニュー・ウインドウを開き、《装備フィギュア》の《武器防具全解除》、《衣服全解除》、《下着全解除》の三つのボタンをテンポ良く押して一糸(まと)わぬ姿となる。途端に襲って来た仮想の冷感を感じながらそそくさと脱衣所を通り抜け、ゆっくりとバスタブに身体を沈める。

 

 

「ふう……」

 

 

身体を包み込むお湯の感覚に一息吐いて落ち着くが、カンザシの頭の中は直ぐにハジメの事で埋め尽くされてしまう。

そして、ナギサに言われた言葉が頭の中でリピートされる。

言われてみれば確かに、一人になるのが怖い、他に頼れる相手が居ないという理由だけで、好きでもない異性と長く行動を……何よりも寝屋を共にするなど、普通であれば中々出来る事ではないのだろう。

余程恋愛感情に対して無頓着であるか、或いはそういった感情を(いだ)いていなければ。

 

 

(…………私、ハジメの事が好きなのかなぁ……)

 

 

ではと、カンザシは自身胸の内に問い掛ける。自分はハジメの事が好きであるのか、と。

途端、カンザシは、自分の胸の鼓動が早鐘を打つかの如く速くなったのを感じる。胸に手を当ててみればバクバクバクバクと、やけに心臓が脈打つ音が大きく、鮮明に聴こえて来る。おまけとばかりに、顔も何だか逆上(のぼ)せたのとは違う意味で火照ってた様な感じとなる。

しかし、カンザシは其れが不快であるとは思わない。寧ろ何処か心地良くすら思えて来る。

 

 

(……ああ、私……)

 

 

カンザシは確信した。自分は、ハジメの事が好きなのだと。

そして思う──自覚してしまった以上、恐らく此の気持ちを抑える事は出来ない、と。

ならばどうするか?

決まっている──《伝える》の一択である。だが……

 

 

(……今は、まだ伝える時じゃない、よね……)

 

 

カンザシは、ハジメに気持ちを伝える事を渋る。

気持ちを伝えるのが恥ずかしいというのも有るのだが、其れよりも何よりも、今伝えるには時期が悪い。

というのも、明日はとても重要な第一層のボス攻略だ。今気持ちを伝えて余計な気を(わずら)わせ、ボス攻略に支障を来させてしまうのは非常に好ましくない。

伝えるのならば、ボス攻略が終わってからが良いだろう。

 

 

「よし!」

 

 

その様に結論付けたカンザシは、本当に逆上せてしまう前に風呂から上がると、部屋で椅子に腰掛けてメニューを操作していたハジメへと声を掛ける。

 

 

「ハジメ」

 

 

「お、おう。おかえりカンザシ。……どうかしたのか?」

 

 

未だに(ぬぐ)えぬ気不味さから戸惑いがちな声で返事をするハジメであったが、カンザシの真剣な声色と眼差しに気付くと直ぐに落ち着きを取り戻し、心配する様に問い掛ける。

 

 

「……その、ね……大事な話が有るの」

 

 

「大事な話?」

 

 

「うん。……でも、今はまだ言えない」

 

 

「言えないって……何でだよ?」

 

 

「明日は大事なボス攻略だから、ハジメに、余計な気を煩わせたくないの」

 

 

「…………」

 

 

「だから、ね……()らす様で悪いけど、明日のボス攻略が終わるまで待って欲しいの」

 

 

真剣に語るカンザシの様子からして、余程大事な内容なのであろうと推測するハジメ。

正直に言えば追求したいとところだが、折角のカンザシの気遣いを無視して聞き出すのはどうにも気が引けた為に、ハジメはカンザシの申し出に素直に頷く。

 

 

「……分かった。正直言えば気になって仕方がないけど、明日のボス攻略が終わるまで待つ事にするよ」

 

 

「ハジメ……ありがとう」

 

 

「明日のボス攻略、負けられない理由が一つ増えたな」

 

 

「うん。そうだね」

 

 

「絶対、勝って生き残ろうぜ」

 

 

「うん」

 

 

こうして、明日のボス攻略を必ず生き残って大事な話をする、という約束を交わした二人は、明日のボス攻略を必ず乗り越えてみせるという強い意気込みを胸に、その日は床に就くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((…………あれ……?))

 

 

しかし、後になってから二人は気付いてしまった……

 

 

 

 

 

 

──アレって……もしかして死亡フラグ(じゃね)……?

 

 

 

 

 






オリキャラ紹介




ナギサ

性別:男
武器:両手剣
容姿:『暗殺教室』の『倉橋陽菜乃』をイメージ。髪色はライトブラウンで、瞳は深緑色。




ウツホ

性別:男
武器:短剣
容姿:クセの有る黒髪短髪に、黒い瞳の細目。イメージは『ハイキュー!!』の『赤葦京治』。

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