テラフォーマーズ~凶星に挑む獣~   作:スペル

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お待たせしました!!
色々事件やらがあり、遅れましたが更新です!!

なんかチート的に書きすぎた気がするけど、まあタグにある力を使っていると思えば…‥…‥‥問題ないよね!

久しぶりなので、おかしなところがあったら教えてくださると、嬉しいです


08  FEELINGS OF THE ANGER 生存競争

大雀蜂のテラフォーマーがリョウの出す、威圧感からくる知らない脳機能(きょうふ)を抑え込み構えを取った瞬間、リョウはバッタの脚力を使い一気に間合いを詰める。

両者の間合いはおよそ10メートル。バッタの脚力を持つリョウにとっては、無いに等しい間合い。

 

「シィ!」

 

今まで多くのテラフォーマーを両断してきたリョウの蹴り。尾葉のセンサーにすら反応するか怪しい鋭い始動。普通のテラフォーマーならば、反応不可避の必殺の一撃。

その一撃を…

 

「じぃ」

 

「ッ―――!!??」

 

大雀蜂型のテラフォーマーは、いなして見せる。考えもしなかった結果に、リョウの動きが一瞬止まり、隙となる。

その隙を狙いすましたかのように、強力な毒を含んだ針を持った拳がリョウめがけて振るわれる。

 

「しまっ―――ぐぅ!!」

 

「じじぃ」

 

リョウがガードするよりも早く、テラフォーマーの鋭い一撃が体に直撃した。体格さゆえに宙へと跳んでいたリョウは、踏ん張る事も出来ずに壁まで吹き飛ばされる。

 

「じぃ」

 

リョウが吹き飛ばされた方向を見据えながら大雀蜂型のテラフォーマーは、先ほど感じた知らない恐怖(かんかく)を忘れて、人間(ムシケラ)を潰せた満足感に押しつぶされた。

 

そしてリョウだけではなく、他のメンバーにもバグズ手術を施したテラフォマーたちが牙をむく。

が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火星の上空。高速脱出機が空を飛行する中で、膝丸燈はサバクトビバッタ型のテラフォーマーの一撃の前に脱出機の壁に叩きつけられていた。

 

「じじぃ」

 

膝丸燈(ムシケラ)が死んだと思いこんだサバクトビバッタ型のテラフォーマーは、己が(リーダー)に言われた通り、脱出機を手に入れようとするが…

 

「ピクっ!」

 

ガタと何かが起き上がる空気振動を尾葉(センサー)が察知する。今のでもまだ潰れていないのかと、疑問を持ちながら振り返る。

そこには、図々しくも先ほどの人間(ムシケラ)が立っている。

 

「ハァ…不思議そうだな。バッタの脚力をもって何で、この人間(ムシケラ)は潰れていないって所か…」

 

人間(ムシケラ)の言葉になど興味はない。だからこそ、無視して仕掛けようとした瞬間

 

「ゴキブリのお前じゃ、飛蝗の脚力(その能力)は、使いこなせねぇよ。悪いが、俺は……ハァ、本物を知っている(・・・・・・・・)。ハァ…だから断言してやる!あの人の蹴りの方が凄かったし、何より確信的に言える…バグズ2号に乗っていたバッタだった人の方が、お前より強い」

 

その言葉と共に人間(ムシケラ)の背後に、二人(二匹)人間(ムシケラ)の姿を幻視した。

 

テラフォーマー(ゴキブリ)たちは、知らない。人間(かれら)の怒りを…そしてっその強さを…

 

 

赤き腕を持つ帝王(タスマニアキングクラブ)を宿すシルヴェスター・アシモフは、多くのテラフォーマーたちに囲まれながらも全く動じない。

 

「なぁ、ゴキブリども…俺の娘がよぉ。お前らのせいで病気なんだわ。俺よぉ、あの子が産まれたときに決めたんだわ…あの子がいるべき祖国(くに)(まも)…その為なら人間だって辞めるし…一部の国民から裏切り者と呼ばれ、石を投げられよとも敵わん。

 それを脅かす奴は、テロリストだろうが、ゴキブリだろうが、古代文明だろうが、何だろうが――――」

 

言葉を紡ぐ度に無意識にアシモフの腕に力が籠る。テラフォーマーたちの攻撃など、押しとどめても沸き上がる感情の前では、焼け石に水だ。

 

「必ず――――見つけだし、何処までも追い詰め…例え便所の裏に隠れようが、息の目を確実に止める」

 

それはテラフォーマーたちが、経験ない(しらない)感情。そして初めての脳機能(かんじょう)。それを抱いた時点で、テラフォーマーたちの結末は決まった。

 

 

テラフォーマー(ゴキブリ)どもよ、人間(おれたち)怒り(ちから)を思い知れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リョウを吹き飛ばした大雀蜂型テラフォマーもまた、サバクトビバッタ型のテラフォーマー同様に、アネックス一号を手中に収めんと動き出すが…

 

「おいゴラッ!!、何処に行こうとしてんだ」

 

後方より聞こえた声に、反射的に振り返る。そこには、服は破けているが無傷のリョウ(ムシケラ)の姿。

自慢の毒針(こぶし)を喰らってなぜ、立てる?まあいい、立つならばもう一撃喰らわせればいいだけの事。

そう判断し、拳を構えるが…

 

「折れちまった毒針ほど、哀れなものはねぇな。気が付いていないなら尚更だ」

 

人間(ムシケラ)は、地面から何かを掴み上げると、ポイっと宙へと投げる。それを見た瞬間、大雀蜂型テラフォーマーは、「じょっ!!??」と驚愕の声を漏らす。

 

「痛覚を持ってねぇってのも考えもんだよな」

 

リョウが放り投げたのは、大雀蜂型テラフォーマーの拳に付いていたはずの毒針。テラフォーマーが慌てて自の拳をみれば、自慢の毒針を含んだ拳はひび割れている。

 

「武装しなければ、ヤバかった。認めるよ、お前の拳を強い…だけどよ」

 

それは宣言。今まさに大雀蜂型テラフォーマーは、小町リョウにとっての敵へと認識したという事実。

だが同時に、リョウには気に入らない事がある。

 

「誰かが流したのか……それとも偶然か、必然か――――確かに実例がある。雀蜂と一番相性がいいのは、紛れもなく空手なんだろうな……だが、それをお前が使っている事が気にらねぇ!!」

 

バキィ!と投げた毒針を砕きながらリョウの体に変化が起きる。バッタの足に鱗と鋭い爪が覆い、腕を黒い羽毛と毛が覆い、顔は鳥を思わせるクチバシに爬虫類を思わせる牙と鱗が現れる。

 

「これは身勝手な怒りだ。正当性はない。が…俺はお前を赦さない」

 

そこには最早『人』は立っていない。今大雀蜂型テラフォーマーの目の前にいるのは、嫌悪感を感じさせる人間(ムシケラ)ではない。紛れもなく人間ではない怪物(ナニカ)が立っている。

 

「小町さんは俺の恩人だ。その力を研鑽を、ゴキブリ風情が、他の誰かが使っている。その事実が気に入らねぇ」

 

リョウの言葉と怒りに呼応するように、足元が大きくひび割れる。

 

「来い!格の違いを教えてやる!!」

 

武装色覇気×砂漠跳飛蝗×大猩々(ゴリラ)×火喰い鳥(ヒクイドリ)×(クロコダイル)

 

「じじぃ!!じょじ!!」

 

目の前に突如として現れた外敵に、大雀蜂型テラフォーマーは、沸き上がるそれを無視して中段の構えを取る。

 

「行くぞ!!」

 

「じぃ!!」

 

短い言葉と共に両者一気に地面を蹴る。一方は蜚蠊(ゴキブリ)の瞬発力×蛋白質(タンパクしつ)の加速。もう一方は、火喰い鳥(ヒクイドリ)の脚力×大猩々(ゴリラ)の筋力×バッタの脚力の合わせた加速。

必然。リョウの一撃が先に直撃する。ドガンッ!ともはや、人が放ったとは思えぬ轟音が辺りに響く。

ヒクイドリの鋭い爪をもって、テラフォーマーの間合いの外から放たれる蹴りは、問答無用にテラフォーマーの腕を切断する。

が…

 

「じぃ!!」

 

「あ?」

 

それは如何なる反応か。自分の腕が切断された瞬間、テラフォーマーは無事な方の腕で切断された腕を掴み上げると、まるで槍を扱うように切断された腕の端を、自慢の筋力をもってぶん殴る。

殴られた腕は加速し、蹴りを放った状態であるがゆえに一本足で立つリョウの膝に直撃する。

 

「うおっ!」

 

重心が一方に集まっていたがゆえに堪えることは出来ず、リョウは膝をついてしまう。その隙を逃さず、テラフォマーは残った腕でリョウのがら空きの頭めがけて、拳を振るうが…

 

「あめぇ!!」

 

腕を掲げることでリョウは、テラフォマーの一撃を防ぐ。しかし防ぐだけでは終わらない。

 

「じ!!」

 

「このまま握りつぶしてやんよ」

 

握撃。ゴリラの筋力に物を言わせ、テラフォマーの拳を砕かんとする。自分の自慢の拳が砕かれている事を察したテラフォーマーは、もう一つの武器である大顎を伸ばし、リョウへと噛みつかんとするが…

 

「読めてラァ!!」

 

黒く染まったクロコダイルの顎とヒクイドリのクチバシの力を使い、逆に大雀蜂の顎をかみ砕く。

 

「じじ!!??」

 

驚きの声。リョウが勝ったと確信した瞬間、ピィっとテラフォーマーが足元の毒針の破片をリョウの目にめがけ放つ。

 

「っ!!??」

 

勝利の確信。それゆえに見聞は緩み、その動きを読み切ることは出来ない。ほぼ反射的、如何なる人間であろうと反応してしまう反射的行動。ある意味で人間以上に野生的であるリョウの反応は著しい。

瞬きによる眼球の防衛。それにより視界が一瞬暗黒に染まる。そしてその一瞬の隙を突く様に、テラフォーマーは迷いも躊躇いもなく、もう片方の腕も自らへし折る。そして大雀蜂の翅を使い、上空へと飛び立つ。その瞬間、リョウはテラフォーマーが何を行ったのかを理解し、掴んでいた腕を離す。刹那、宙をういた腕をテラフォーマーは足を使い器用に掴み、上空へと身をひるがえす。

が、それを易々と逃すほど相手(リョウ)は甘くない。

 

「逃がすかぁ!!」

 

大外から弧を描く蹴り。しかし「じじぃ」とテラフォーマーも反応しせ見せる。が、完全には躱せずに片足の膝から下が切断させる。

 

「チィ」

 

仕留めきれなかったことに舌打ちをこぼしながら、リョウは人間の弱点である頭上を飛ぶテラフォーマーの姿を追う。

 

――――跳ぶか?いや、宙じゃ他の獣の能力(ちから)を使わないと有利に進められねえ。かといって、切り替えにはコンマの隙がある。迎え撃つしかないか…

 

視覚ではない、見聞をもってテラフォーマーの姿を捉えながら、その時を待つ。

 

 

「——————」

 

「—————」

 

テラフォーマーの羽音だけが辺りに響く。その中で、その時が来る。

 

「じょ!!」

 

「おらぁ!!」

 

加速し、昆虫ならではの不規則なホバリングからの特効。狙いは、人間(ムシケラ)の共通の死角、頭上。

しかしそれは強襲の奇襲だからこそ意味がある物。読まれていた時点で、その攻撃は半分以上意味を無くす。

動きを読んでいた(きいていた)リョウは、踵落としを放つ。タイミングはわかせない必殺。だが、此処でテラフォーマーは、更に一手打つ。

 

「じ――――じょ」

 

「にっ!!??」

 

折った腕に付いていた毒針を口の中に含み、射出する。大きく足を挙げているため、攻撃をやめる以外に回避の手段はない。しかしリョウはそれでも攻撃を選択する。

そうなれば、必然的に放たれた毒針はリョウの膝に襲い掛かり、突き刺さる。

ニヤリ。とテラフォーマーは勝利を確信する。大雀蜂の毒は並ではない。少なくと毒の侵入による痛みで、攻撃は打てない。あとは、毒が回るのを上空で待ちながら、削ればいいと考えていたが…

 

「フン!!」

 

ドゴン!とテラフォーマーの上半身を押しつぶす、踏みつけが炸裂する。

 

「じじぃぃ!!??」

 

その一撃の重さに上半身の一部がはじけ飛び、テラフォーマーは地面を派手に転がる。

 

「悪くはなかったが…あいにく様、生まれつき毒性が全く効かない体質(・・・・・・・・・・・)で、ある程度テラフォーマー(おまえら)と同じで、痛覚を無視できるんだよ」

 

地面に無残に横たわりながらもまだ文字通り虫の息のテラフォーマーに対して、リョウは淡々と知らないであろう事実を告げながら近づく。

 

「じ…じぃ…じ」

 

まるでリョウから逃げるように残った余力で、逃げようとするがそれで逃げれるはずもなく、リョウがテラフォマーへと辿りつく。

 

「じぃぃぃぃいいいいいいいい!!!」

 

「断末魔としては、無様だな」

 

その声の意味を聞いたリョウは、それこそ子供が無意識に無邪気に虫を踏み潰すかのように、先ほどの怒りを感じさせない無表情さで、大雀蜂型のテラフォーマーの息の根を潰した。

 

「さて、急ぐか」

 

テラフォーマー(ムシケラ)の事など即座に捨て置き、リョウは己の役目を果たさんと動く。

 

 

『怒りとは原動力。(ケモノ)の次なる選択肢が、戦士たちの未来を変える。』

 




せっかくの大雀蜂のテラフォーマーさんに活躍の場なく、退場させてしまった…
武人的なキャラで書いたのに、戦闘描写にそれポイことしただけで、終わったような
次に登場する奴は、もう少し活躍させてあげよう、うん!!

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