初めての旅、果たしてどうなっていくか
上手く描けるように頑張りました
楽しんでもらえたら、嬉しいです
見渡す限りの新緑色一色の大地に一陣の疾風が奔る。その疾風の正体は言うまでもなく次元と凛華を乗せたユアンである。
「すっ凄いね、ユアン。私たちを背負っても、こんなに早く動けるなんて!!」
九本あるうちの一本の尻尾を背もたれにしながら背に乗る凛華は、その速度に感動を覚える。そんな凛華の言葉が嬉しいのかユアンは「ウォン」と誇らしげな声を上げる。
「ねぇ次元!!ユアンが凄いよ!!」
「はっ当然だ!!誰の相棒だと思ってやがる」
凛華の言葉に次元もまた誇らしげにユアンの頭を撫でる。そのどこか子供っぽい姿は、普段どこか大人っぽい次元の姿を知る分、微笑ましく思い凛華から笑みがこぼれる。
「それにしてもだいぶ、緑が多くなってきたね」
「師匠や節バァの話と一致するな。それにこの香り。新緑の草のカーペットの先に、俺たちが目指す森があるわけだしな。ハーマッシュは近いぞ、凛華、ユアン!!」
「うん!!」
「ウォン!!」
次元の言葉に凛華とユアンは楽しみだと言わんばかりに頷く。二人の返事に満足した次元は再び視線を前へと向ける。
――――僅かに漂ってきている、爽快で奥深いハーブの香り。ユアンも凛華も感じてるだろうな。
嗅覚を刺激する香。そして節バァから聞いた話に、否応なしに期待が高まる。
既に目の前には、薄っすらと巨大な森の影が見え始めていた。
森の入り口にたどり着いたユアンは何処で一度停止し、次元と凛華の二人を降ろす。下りた二人は持てる荷物を背負い、目の前の巨大な森を見る。
「すっごく大きいね」
「ああ、森っていうか一種のジャングルに近いな。これが『ハープフォレスト』か」
互いに森の感想を述べる。森の一本一本の木が大きく悠に50メートルはあろうか言う巨大さだ。それが何百と集まってできた森は、確かに一種のジャングルと言えよう。
「さてっと、凛華。ここから先は危険区だから、俺とユアンからは余り離れるな。どこから猛獣たちが襲い掛かってくるかわからねぇからな」
「う、うん。分かったよ」
次元の忠告に改めて凛華は、自分がどこへ向かうのかを自覚する。それでも今から見る生の食材や初めて見るであろう食材への好奇心が、恐怖を上回る。それに自分が一人ではないという事もまた、凛華を安心させる。
「大丈夫。行こう、次元にユアン」
「そうか。よし、行こ」
凛華の決意の瞳を見た次元はゆっくりと森へと入っていく。それを追うように凛華が、その後ろをユアンが追って、三人は森へと入っていった。
森に入った瞬間、三人の嗅覚に様々なハーブの香りが漂ってくる。香り深い物もあれば、爽快な香りのモノまで漂っている。
「さっきから香り漂ってきてたが、此処はスゲェな」
「うん。でも、それでいて全く香りに酔う感じがしないよ」
新緑の森が奏でる香りの合唱に二人はただ感動を見せる。そうしながらも二人は森の奥へと進んでいく。
「確かハーマッシュは、この森の奥にあるんだよね」
「ああ、節バァの話だと、森の中心部に群生してるらしい。今のところは、猛獣の姿はみねぇが…」
「次元?」
凛華と何気なく話していいた次元が突如口を閉ざす。その事に疑問を持つ、凛華だが、よく見ればユアンもまた次元と同じ方向をにらみつけている。
気が付けば、先ほどまで静かだったはずの森が慌ただしく揺れている。同時に自分たちに突き刺さる視線。
「次元…」
その視線は明らかな敵意と味への好奇心を含んでいる。生まれて初めて感じる殺気に凛華の体は否応なしに震える。無意識か、その手は次元の服の袖を握っている。そんな震えた凛華の手を次元が握る。
「あっ…」
「心配すんな。節バァとの約束だ。しっかり護ってやるからよ」
「……うん!!!」
前を見つめ告げる次元の言葉と、手から伝わる温かさに震えが収まる。それに気が付けば、自分の腰のあたりにすり寄り安心させるように、頬摺りするユアン。二人のおかげで先ほどの恐怖は完全になくなる。
――――来る
気配がより明確になる。次元は拳を握る。その瞬間―――――
「キィィィ!!」
グルーモンキー(哺乳獣類)捕獲レベル6(ただし群れならば27)
四方八方の木々と四方の地面に、緑の体毛をした小型の猿たちの群れが現れる。口からよだれをたらしている。明らかに次元たちを餌として見ている。
――――威嚇で追い払えれば楽だが…
そんな中でも次元は全く動じずに、出発前に次郎と節乃に言われた事を思い出していた。
『そうじゃ、次元よ。今回の旅じゃが、一つ縛りを設けようと思う』
『縛り?』
『そうじゃ、今回たとえ猛獣に襲われても威嚇を禁ずる』
『威嚇を?』
『そうじゃ。分かったの』
『因みに、もしも破ったりしたら、私がお仕置きするからね』
『全力で守ります!!!』
そのようなやり取りがあり、次元は威嚇を封じられている。
――――四方八方から襲い来る猿たちと闘いつつ、凛華を護るか
困難な状況。されど、次元に諦める選択肢はあり得ない。
「ユアン!!」
「ウォン!!」
「「「「キィィ!!」」」」
次元の叫びを合図に、グルーモンキーたちが襲い来る。
圧倒的な数の有利で面を制圧し襲い来る、グルーモンキーたち。だが、それよりも早く―――
「ノッキング!!」
「「「「ウキャ!!?」」」」
次元の鋭いノッキングが数十体のグルーモンキーたちの行動を不能にする。突然、自分たちの傍に現れた次元に驚愕をみせ、動きが一瞬静止する。その隙を見逃さず、ノッキングで動きが止まったグルーモンキーを踏み台に、更に群れの中心へと駆け込み、すれ違いざまに――――
「ノッキン!!!」
連続でグルーモンキーたちにノッキングを施してゆく。そして地上では、ユアンもまたグルーモンキー達と闘っている。
「グルル」
鋭く放たれる九本の尻尾が槍と化し、グルーモンキーたちを貫いてゆく。更に決して凛華に近づけない様に一歩も凛華の元を離れていない為、半径3メートルにグルーモンキーたちは近づけない。
目の前の狐の強さに、グルーモンキーたちが攻めあぐねていると――――
「ノッキン!!」
ドサと
数にすれば100はいたであろう仲間を物の数分で行動不能にした次元は、ユアンの隣へと並び立つ。
ここにきてグルーモンキー達は、目の前の二人の生物が、自分達よりも遥かに高位の存在と認識する。
「さて、まだやるか?」
ユアンの隣に立った次元は、未だに襲いあぐねているグルーモンキーたちに不敵に告げる。その言葉が合図になったのか、グルーモンキーたちは我先にと森へと消えていく。完全にグルーモンキーたちの気配が消えたのを確認してから次元は息を吐く。
――――思った以上に、護るってのは難しいな。普段の倍以上の時間かかっちまった
先ほどの防衛を思い出し、次元は自分の認識を改め、ふんどしを閉めなおす。
――――節バァの話だと、
自分の現在の実力と森のレベルを再確認しながら、次元たちは更に森の中心へと進む。
「ねぇ次元!!あれって…」
「っておい、言う前に走り出すな!!」
歩いている最中に何かを見つけたのか、凛華が次元の静止を振り切り駆けだす。突然の行動に反応が遅れた次元とユアンが、慌てて追う。
幸いにも凛華は、さほど離れていない場所で立ち止まっている。
「やっぱり…」
「何がやっぱりなんだ?」
「へ?あ…次元にユアン」
「あのな~、いきなり駆けだすなよな。どこから猛獣が出てくるかわかんねぇんだからな」
凛華の行動をたしなめる次元だが――――
「ねぇ見て見て次元!!ハーブチェリーだよ!!私、生で見るの初めてなんだ!!」
「お、おう。そうか」
予想外の反応を見せる凛華に、完全に飲まれ何も言えない。
ハーブチェリー(果実)捕獲レベル1以下
「ハーブの風味を持つサクランボか…俺も見るのは初めてだな」
「うん。最近は人工的に作れるようになってるけど、やっぱり天然物の方が風味が深いよ」
――――やっぱ、凛華も料理人なんだよな。師匠が言った通りだな。生の食材を前に料理人としての本能が抑えきれなかったのか…
キラキラとした目でハーブチェリーを見る凛華の姿に、次元は次郎から聞いてきた料理人という職業を思い出す。
それと同時に節乃からの注意も。
「よし、ユアン。何か食べれる獲物を捕まえてきてくれ。一度ここで休憩を入れよう」
「クオン」
次元の言葉にうなずいたユアンは、森へと駆けてゆく。その次元の言葉に凛華は「まだ入ったばかりだよ」というが――――
「初めての旅に加え生の食材に対して興奮して気が付いてねぇと思うが、結構消耗してるはずだ。安全が確立しやすい、入り口付近で一度休息を取るべきだろう」
次元の言葉を受け、自分の体に意識を向ける。改めて意識して体を感じると、確かにだるさを感じる。言葉の通り、自分が思っている以上に疲労がたまっている様だ。
だからこそその言葉に甘え凛華は「わかった」と答える。その言葉を聞いた次元は、辺りに意識を向ける。
――――今んとこ、猛獣の気配はないな。それにしても節バァの忠告を忘れてなくてよかったぜ
『よいか、次元や。こまめに休息をとるのじゃぞ』
『どうしてっすか?』
『アホたれぇツ!!』
『痛てぇ~~~』
『凛華にとっては初めての旅じゃ。それに女の子。体力的にも辛いはずじゃ、しっかりと休息を与えんとダメに決まっとるじゃろ!!』
『な、なるほど。了解です』
というやり取りを思い出し、次元は少し冷や汗を流す。そんな次元の反応に疑問を持つながらも凛華は何も言わずに黙っていた。
次元や凛華が休息の準備を始めている同刻、ハープフォレスト中心部。一匹のグルーモンキーが、わき目も降らずに駆けている。その顔は死への恐怖で彩られている。
「キィ!キィ!」
悲鳴を上げ、逃げているその瞬間―――――ガブゥ!!と巨大な口がたやすくグルーモンキーを飲み込む。グルーモンキーは、悲鳴すら上げる事無く人生を終える。
グシャグシャと不気味な音を立てつつ、その存在は悠々と歩を振り返る。その存在感は、紛れもなくこの森の王と呼ぶにふさわしい。
如何でしたでしょうか?
上手く戦闘描写を出来た自信がないので、次回ではもっと熱い勝負が掛ける様に頑張ります
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