翌日の午後、結音達は格納庫に集合していた
結音は公務中の父様と連絡が取れずメールだけしておいた
後は連絡待ちである
結音はわくわくが抑えきれず一番乗りで発進した
「結音、発進する!」
上空に上がると、皆を待ちきれずくるくると踊る様に飛んでいた
鼻歌まで飛び出し、はしゃぎ過ぎの結音だった
一方、地上ではミーナとバルクホルンが管制塔から観察していた
他の者もそれぞれの場所で見ていた
皆が上空に上がると、結音は事前の打ち合わせ通りに芳佳の側に来た
一番手は芳佳である
「芳佳、やるのじゃ」
「はい!」
初めてなので勝手が分からず、取り合えずタンデム体制に入る事にした
芳佳の後ろに回り込み、腰に手を回し、頭を芳佳の背中に付けて、集中する
魔力が流れる感じがした
「どうじゃ。魔力を感じるか?」
「はい! 何か力が湧いてくる感じ」
結音は流れる魔力を強めてみる事にした
どの位まで出来るのか分からないので、慎重に、少しずつ
「わわっ!? どんどん魔力が高まってきます」
「芳佳、シールドを張ってみるのじゃ」
「分かりました! わっ!!」
いつものより大きなシールドが展開した
結音が魔力を増すと、シールドはどんどん大きくなっていった
「芳佳、体調に変化はないか? 気分が悪くなっていないか?」
「大丈夫です。ただちょっと魔力で火照る感じがします」
いつの間にか、ただでさえ大きな芳佳のシールドが、より巨大になって展開していた
結音は大きさに驚きつつも、冷静に次の行動を指示した
魔力量が上がっているなら、強化も出来るはず
「火照る? ふむ。シールドは大きくなるだけか。強化は出来るか? 分厚くするイメージかのう」
「やってみます。……んー」
芳佳はお腹に力を入れる様に魔力を込めた
広がっていたシールドがひゅっと縮まると高密度のシールドか出来ていた
「凄いよ芳佳ちゃん!」
「ああ、これならどんなビームも防げるぞ」
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双眼鏡で様子を見ていたミーナとバルクホルンは思わず声を漏らした
「なんて大きさのシールドなの……」
「はっ! 魔力が凝縮する!?」
芳佳の前には高密度のシールドが発生していた
「ちゃんと記録をしているな! 魔力を計っておいてくれ」
バルクホルンが興奮気味に管制員に指示を出す
彼女もこんな魔力は見た事がなかった
「? 二人が離れた?」
結音と芳佳が離れてもシールドが消えたりはしなかった
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「芳佳、吾はタンデムを解く、シールドがそのまま維持出来るか試すのじゃ」
「分かった、結音ちゃん」
二人が離れてもシールドは維持されたままになっていた
「芳佳どうじゃ、きつくはないか?」
「大丈夫だよ、結音ちゃん。結音ちゃんに貰った魔力がみなぎる感じがするよ」
「魔力の残量はどうじゃ? 消費量は増えていないか?」
結音は芳佳の周りを飛び、変わった様子が無いかチェックしていた
「大丈夫だよ。普通のシールドよりちょっと減るのが早い気がするけど、いきなり無くなっちゃう感じじゃないし。まだしばらく使えるよ」
特に変わった所も無いので、芳佳でのテストを終了する事にした
「そうか。芳佳、今回は終了しよう。もう良いのじゃ」
「うん。分かった」
芳佳はシールドを解除すると、一息ついた
「ふう。……まだ魔力が残ってる感じがする」
「何か変に思う事はないか? どんな些細な事でも良い、気が付いた事はないか?」
「別に変わった事は無いみたい。大丈夫」
そう言って、結音を安心させる様に抱きついた
「わっ、芳佳、何をするのじゃ」
「だって結音ちゃん、心配そうだったから」
「吾の事は良いのじゃ。全く。……次はリーネの番じゃ」
結音は芳佳から離れて、リーネとのリンクを試す事にした
芳佳で何となくやり方を掴んだ結音は、リーネの後ろに回ると手を背中に当て、魔力で背中をそっと押した
芳佳の時とは違い、魔力を流すとすぐに離れてみた
密着しなくても出来るかどうか試してみるのだ
「わっ。魔力が高まる……」
「リーネ、何か魔法を使ってみるのじゃ」
「はい、やってみるね、結音ちゃん」
リーネは固有魔法‘鷹の目’を使ってみた
結音と訓練した時の様に視界がきゅっとなると、いつもより遠くがはっきりと見えた
「結音ちゃん、いつもより遠くが見えます」
「ふむ。プローブとのリンクはどうじゃ?」
「やってみます」
リーネはプローブをいくつか射出するとすぐにリンクした
もう既に手慣れた物になっていた
「凄い…… 前より風が良く見える気がします。あ、エーテルの濃さが違う所がある。……それでエーテルが流れるんだ……」
リーネはエーテルの世界に魅了されている
エーテルが湧き出したり、対流したり、幻想的な世界であった
「リーネ、射撃テストをするのじゃ。帰って来るのじゃ」
リーネは、はっとして結音の方を見た
結音は分かっているという風にうなずいている
「ごめんなさい」
「まあ良い、幻想的なのは分かるが、また今度、暇な時にな」
「はい」
そう言うと背負っていた銃を手に取った
持って来たのは狙撃用対装甲ライフルである
既にバルーンの準備もしてある
リーネはいつもの訓練と同じ様にチャンバーに弾丸を装填し、的を狙う
まずは通常弾だ
狙い撃つ!
弾丸は吸い込まれる様にバルーンに当たった
もう2kmの狙撃はかなりの命中率になっていた
「どうじゃリーネ、何か変わった事は?」
「威力が上がった気がします。バルーンなので手応えはありませんけど……」
「では予定通りターゲットドローンを射出する」
結音は現場で待機させていたクロから20m級ネウロイドローンを射出した
ドローンは模擬戦用のダミーファンネルで、あらかじめプログラムされた行動を取る事も出来る。今回はシールドのみ装備して、移動はしない設定だ
ダミーファンネルはネウロイの攻撃をかわすため、幻影符によって、ウィッチの姿を模したファンネルである
これによってウィッチが攻撃されるのを減らすのである
そしてファンネル機能もあるので、ミサイルとバリアは標準装備だ
ネウロイドローンはターゲット用にネウロイの姿を模してある
幻影なので実体はないが、バリアで自動防御するので手応えはある
リーネは再びライフルを構え、レバーを引いて次弾を装填する
狙い撃つ!
弾丸がドローンに当たる寸前、バリアが射出されたがそれを貫通してドローンを破壊した
通常であればウィッチの撃つ銃弾でさえ止められるバリアが、あっさりと貫通したのである
「どうじゃ。バリア付きじゃ」
「さっきより手応えはあります、でも……」
「よし、ならばバリア5枚で行くのじゃ」
結音はクロからドローンを再び射出した
狙い撃つ!
今度はバリアを5枚射出したドローンだったが、結音の魔力によって強化された弾丸はあっさりと5枚抜きをした
「ふむ。威力は5倍以上と言う事か。威力の測定はまた今度じゃな」
後には二人も控えている
結音の魔力にあまり差があっては結果に影響するかもしれない
結音は後ろ髪を引かれつつ次の準備にクロからドローンを射出した
「誘導弾を試してみます」
リーネはポケットから弾丸を大事そうに一発だけ取り出し、ライフルに装填すると、先程と同じ様に構えた
これは結音の作った式神弾である
無駄には出来ない
まだリーネが作るには修行が足りなかった
ロックオン 狙い撃つ!
ライフルなのにロックオンマーカーが出ると、視界がきゅっとなった
弾丸は、バリア5枚をあっさり貫通しドローンに吸い込まれる様に当たった
「さっきより威力が上がった気がします」
「ふむ。ネウロイのビームを防ぐバリアを貫通するか……」
(あぁ、早く測定したいのじゃ)
結音が少し考えていると、暇な間、周りを飛び回っていたルッキーニが乱入してきた
「はーい、次はわたしだよー」
「ん? そうじゃの。始めるとするか。ルッキーニ、少しじっとしておるのじゃ」
「早く早くー」
結音はルッキーニの後ろに回り、先程と同じ様に、背中を魔力でそっと押した
「にゃは~。凄い凄い~。よ~しいっくよ~」
いきなり飛び出したかと思うと、高速で飛び始め、くるくると旋回した
「きゃふ~」
かけ声と共にルッキーニの前に魔法陣が展開した
ルッキーニの固有魔法の‘光熱’である
有効範囲の狭いこの魔法は、自らを弾丸としてネウロイに突っ込む危険な魔法だ
結音は彼女の固有魔法を今まで見た事がないが、魔法陣の輝きが大きいと感じていた
それを見て結音はドローンを射出した
「ルッキーニ、今度はバリア10枚で行くのじゃ。さあ来るのじゃ」
「わかった~。いっくよ~…… わきゃ~」
固有魔法を展開してドローンに突っ込むルッキーニ
その前にバリアが10枚射出された
綺麗に並んだバリアを打ち破り、ルッキーニはドローンを粉砕した
「ルッキーニ、どうじゃ。魔力の消費は激しくないか?」
「んー、平気みたい。ずっと使いっぱなしじゃないんだし、これくらい大丈~夫だよ」
「そうか。しかし10枚を打ち抜くか……。ふう。次はシャーリーじゃな」
「おー、待ってたよ。いよいよだな」
「シャーリー、無茶だけはしないのじゃ。良いな」
結音は念を押しておく
「大丈夫、分かってるさ。心配すんな」
待ちくたびれたシャーリーの後ろに回り、魔力でそっと押した
「おー、凄いな。じゃあ行って来る!」
魔力の高まりを感じて、シャーリーはストライカーを加速していく
(約束だからな、無茶はしない。ああでも、めいっぱい跳ばしたいなぁ。音速、超えられるかなぁ)
いつの間にか音速には届かないまでも、世界最速記録を超えているのに気が付かないシャーリーである
(これは本当に音速を超えられるかもしれぬな。じゃが音速に機体が耐えられるかどうか。送り込む魔力にウィッチがどれだけ耐えられるかも分からぬ。やりすぎには注意せねば)
ウィッチもストライカーも壊しかねない力を手に入れた結音は慎重に使おうと決意するのであった
結音の固有魔法 アクセル(強化)
対象となるウィッチの魔力を強化する支援系固有魔法
魔力を渡す訳ではないので、魔力切れしたウィッチには効果がない
銃弾やシールドの効果を上げる
特に対象となるウィッチの固有魔法には効果が大きい
魔力の消費量が増えるので諸刃の剣でもある
注入する魔力を増やすと強化率も上がるが、限界を越えたウィッチがどうなるかは分からない
またストライカーのリミッター以上に強化するとストライカーが動かなくなってしまうので注意が必要