後日、結音は自分の固有魔法に‘アクセル(強化)’と名付けた
統合軍でも前例がないらしく、希少な魔法となった
支援系と言うのも珍しい
まだ実戦で使う機会もないが、結音は使うつもりは無かった
だがもし危機的状況になったら、ためらうつもりも無かった
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予測班からのネウロイの襲撃予報もなく、待機状態のリビングで、結音達は思い思いにくつろいでいた
結音はスマホで扶桑からの手紙を読んでいる
その結音の頬からいつの間にか涙が落ちていた
テーブルで勉強していた芳佳は、ふと結音を見た時に気付いて驚いた
「結音ちゃん、どうしたの! 何で泣いてるの!」
結音は手紙から目を上げ優しくふふっと笑った
「何でもないのじゃ。各地の戦線より、扶桑に礼状が届いておった。それがまとめて送られて来たのじゃ」
「礼状? 結音ちゃん、何かしてあげたの?」
結音は涙を拭いて、笑いながら言った
「バリアシステムじゃ。あれで助かった者達が、扶桑に礼状を寄越したのじゃ。墜落して動けなくなったストライカーがバリアを張り続けて助かったとか、ビームの直撃を防いで助かったパイロットとかな。どこに出して良いか分からなかった手紙が扶桑の吾宛に送られて来たのじゃ。開発部で預かっておったのを転送してきたのじゃ。結音式と言えば吾じゃからの」
「結音ちゃん、嬉しかったんだね」
「命を守るためのバリアシステムじゃ。使う方法を知っていて、使わずに放っておく事は出来なかったのじゃ。危機的状況のウィッチを助けるために開発したシステムじゃ。助けられて本望なのじゃ」
「じゃあ、何かお祝いしないと。何が良いかなあ。結音ちゃんは何か食べたい物ある?」
芳佳は自分の事の様に喜んだ
どうやら夕食は少し豪華になりそうだ
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「おー、いたいた。ユネー、ちょっと来てくれないか。おやっさんが結音式はユネに聞いた方が早いって。頼むよー」
シャーリーは結音を見つけると頼み込んで来た
「ストライカーの改造か? 素人が余りいじる物ではないのじゃ」
結音は呆れ顔で答えた
「そんな事言わずに頼むよー」
「しかたないのう。すぐに行くから待っておるのじゃ」
……………
格納庫へ向かいながら結音は聞いた
「今度は何をしたんじゃ?」
「失礼な! まだ何もしてないぞ」
「まだ?」
「あー、いや言葉のあやで……」
シャーリーは明後日の方を向きながら答えた
「……それで何の用じゃ」
「おやっさんが結音式をいじったらもう少し速くなるって言うんだ。どうにかしてくれ。頼むよ」
「やれやれ、とうとうソフトにまで手を出すか。業が深いの」
「そんな事言うなよー、ユネだって速いの好きじゃないか」
「吾の好きなのはジェットじゃ、速いだけでは駄目なのじゃ」
結音とシャーリーはジェット談義で熱く語った事もある仲である
主にシャーリーはスピードに、結音はパワーと性能にこだわりを見せる
二人の夢が目の前にはもうすぐ手に届きそうな所まで来ていた
「クロ、シャーリーの機体の整備記録と部品の消耗記録を出すのじゃ」
二人は格納庫に到着しシャーリーのストライカーの所までやってきた
「おやっさん、ユネを連れてきたぞ」
「吾に用とは何じゃ」
P-51Hのメンテナンスハッチを開けて中を覗き込んでいた大男が、立ち上がって振り返った
「おうご苦労さん。実はな、俺がこれ以上の改造は無理だと言ったんだが聞いてくれなくてな。後は結音式をいじる位だと、うっかり言っちまったんだ」
「そんな事だろうと思ったのじゃ。しかし、部品の記録を見たのじゃが、ほとんど損耗しておるのじゃ。一体これはどうしたのじゃ?」
「そこの嬢ちゃんが勝手に新品の部品を使ってくれたおかげで使える部品が無くなっちまったんだ。今あるのは使い倒した奴と精度が悪くて使えなかった奴だけだ」
「だって使えるのが他に無かったんだ! いてっ!」
そう言ったシャーリーの頭を大男が殴った
「ばかもん! 自分の命を預けるストライカーを玩具にするな! 何だってこんな事したんだ?」
「だってジェットが来るんだろう? 今の内に出来る事をやっておきたいんだ」
頭を押さえながら涙目になって言った
「やっておきたい事?」
結音は首をかしげる
「ああ、レシプロで音速を越えたいんだ。そりゃあジェットの方が簡単だけど、レシプロだって出来ない訳じゃない。それにこのノウハウはジェットにも生かせると思うんだ!」
シャーリーは身を乗り出し、勢い込んで言った
「ふう。なぜそれをミーナに言わぬ? 理由があるなら許可を取れるじゃろうに?」
結音はため息をつきそう言った
「言ったさ! でも取り合ってくれないんだ」
「やれやれ、日頃の行いじゃな」
結音は首を降った
「ユネー。お願いだ、頼むよー」
シャーリーは結音に抱きつき懇願した
結音はしばらく考え込むとおやっさんに向かってこう言った
「おやっさん、今の部品で第三世代への改修は可能か? もしもの時のために予備機は残さねばならぬぞ」
「第三世代だって! 無茶だ! 確かに部品数は格段に減らせるが。新造する部品もあるぞ」
「ユネ、第三世代だと部品が減るのか?」
抱きついているシャーリーを引き剥がすと、結音は頭の悪い生徒に向かうようにこう言った
「機械部品と言うのは必ず損耗する。高速で動くエンジンやストライカーならなおさらじゃ。結音式を標準装備しておるストライカーには制御に魔導回路を積極的に使用しておる。例えばエンジンのピストンにはカムが必要じゃが、これを魔導制御にする。そうするとカムが不要になると言う具合じゃ。消耗する部品が減れば安全性も耐久性も高くなるのじゃ。第二世代は元々あった機体、第一世代に結音式を乗せただけの機体じゃ。まだ古い機構を残しておるのじゃ。第三世代はそこから古い機構を取り除き、魔導制御にしておるのじゃ。第四世代なら新設計になるのじゃが」
そう言うとクロをスマホ化してなにやら文書を書き始めた
「おやっさん、どうじゃ出来そうか?」
「可能だ。けどなあ……」
「何じゃ反対か?」
「こいつに無茶させたくないんだよ! 放っとくと無茶するからな!」
「やれやれ、愛されておるのう、シャーリー。よし出来た」
そう言うとシャーリーのスマホがピロンと鳴った
シャーリーはそれを見ると怪訝な顔になった
「メール? ユネから? なんだいこのメール?」
「第三世代改修計画の申請書じゃ、これを持ってミーナを説得して来るのじゃ。説得材料も無しに話しても失敗するだけじゃ。失敗すれば計画はご破算になる。音速を越えたいなら、説得を成功させるのじゃ! 覚悟があるなら行って来るのじゃ!」
シャーリーははっとして結音を見た
「ありがとうユネ。行って来る!」
結音に抱き付いて頬にキスをするとミーナの所へ走り出した
いきなりの事にびっくりする結音
「……ふう。おやっさん、第三世代の資料は持っておるか?」
「ああ、こりゃ大変な事になりそうだな」
そう言うと周りの整備員に怒鳴った
「おい、おまえら、P-51を第三世代に改修するぞ。必要資料と図面は準備しとけ!」
結音の零式改とシャーリーのP-51Hは設計思想から異なる
結音の機体と同じ事をしても駄目なのだ
結音の結音式第3版をコピーしても動かない
ドライバが違うのだ
結音はP-51Hの資料をダウンロードしながら、これは徹夜になるなと思った
まだ14歳の結音には徹夜はきつい
子供の体の結音は夜になると眠くなってしまうのだ
前世では仕事はいつも定時上がりを身上としていたが、これもしかたないかと思った結音だった
折角の芳佳の夕食も楽しめなくなるなと、今から憂鬱になる結音だった
おやっさん達整備員と結音ちゃんは徹夜になりそうです
改修中にネウロイが来ると出撃出来なくなるので、予備機が必要なのです
徹夜明けにネウロイが来たら結音ちゃんは使い物になりそうもありませんw
ヘロヘロです
シャーリーのストライカーはP-51Hになってます
開発ツールのおかげで完成が早まりました