ストライクウィッチーズ 天翔ける皇女   作:純菜

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9-6 シャーリー、音速を越える時が来たのじゃ

結局、ストライカー改修計画は徹夜せずに済んだ

ミーナが皆の体調を考慮したからである

ネウロイの襲撃予報の時期が重なってしまったので、それを考慮したのだ

そしてなんと、予測通りやって来たネウロイをリーネがたったの一撃で撃墜してしまった

アウトレンジから中心を狙って撃った一発が、ネウロイのコアを撃ち抜いたのだった

何となく魔力の通し方が分かってきた気がします、とリーネは言うのだった

 

ストライカーの改修は予定通りに進んでいる

シャーリーは作戦中ずっと、早く新しい機体に乗りたいとぼやいていた

 

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「シャーリー、改修内容を解説する。よく聞くのじゃ」

 

シャーリーはブリーフィングルームで神妙な面もちで結音の話を聞いていた

興味があるのか、他のメンバーも静かに聞いている

大型ディスプレイ化したコンに、ストライカーの図解や図面が表示されている

 

「改修された機体は便宜上P-51HSと名付けた。SはシャーリーのSじゃな。いわゆる専用機じゃ」

「おー、なんかカッコいいな」

 

シャーリーはキラキラした目でパチパチと手を叩く

 

「公式に第三世代改修機第二号となったのじゃ。誇って良いぞ。さて、大幅に不要な部品を削除したため、軽量化が実現した。これにより加速性能、速度、旋回性能、航続距離が向上した。と言っても元々軽量なストライカーでは効果は微増と言った所じゃ。一方、機構を魔導制御としたため魔力消費が増加した。これにより戦闘可能時間が減少しておる、注意するのじゃ」

「うーん、それってデメリットの方が大きいんじゃないか? と言うか、改修する意味はあるのか?」

 

シャーリーは腕を組み考え込む

他の者も顔を見合わせる

 

「確かにその通り。じゃが、代わりにソフト制御が可能になったのじゃ。これならセッティングを変えられるのじゃ、いつでもな。例えばシャーリー待望の高速セッティングに飛行中でも変更可能になるのじゃ」

「おおっ! それって今まで戦闘用に諦めてたセッティングを試せるって事か!? スーパーチャージャーのセッティングもいじれるのか!?」

「無論じゃ。気圧、温度、湿度、エーテル濃度、あらゆる状況から最良のセッティングを選択出来る様になったのじゃ。リーネには感じて分かるじゃろうが、エーテル濃度の変化でストライカーの速度が変わってしまうのじゃ。シャーリー、飛んでいる時に突然機体がバタつく事はなかったか? 急に息苦しくなったりはしていないか?」

「あー、なるなる。急に重くなる感じがするんだよ。壊れそうな振動するし」

「それはエーテル乱流に巻き込まれておるのじゃ。それを避ければ安定して飛べるはずじゃ」

 

大型ディスプレイにはエーテルの流れに突っ込むウィッチが表示された

結音の指摘に納得するシャーリーだった

 

「HUDにエーテル濃度を表示すればコース選定も出来よう。プローブリンクの方がなお良いのじゃがな。リーネの様に感じられる様になるまで行けば、フィーリングで飛べる様になる。風になれるのじゃ」

「おお! 風になれる! 良いなそれ!」

 

目をキラキラさせて、今にも飛び出して行きそうなシャーリー

 

「まずは基本セッティングからじゃ。それが済まぬと、まともに飛べぬぞ。それにエンジンその物は変えていないが、セッティングが変わっているのにいつもの感覚で使うと、大変な事になりかねぬ。安定して飛べるまでは我慢じゃ。よいな」

「ちぇー。分かったよ」

 

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シャーリーは様々なセッティングを試し、慣熟訓練も終了させ、いよいよ音速への挑戦となった

シャーリーはミーナを説得して見せたのである

ここまで来るのは長かった

シャーリーは以前、結音がやって見せた様に、慣れないながらも計画書や資料を作り、ミーナに何度も挑んだ

そうしてついにミーナを説得してのけたのである

ミーナの根負けであった

シャーリーはいつの間にか結音のやり方を学んでいたのである

 

P-51HSは変な振動もなく大きな螺旋を描いて上昇していた

シャーリーが元々音速を越えようとしていた方法は、エンジンの出力アップだった

そのため排気量を上げたり、軽量化のためクランクシャフトを限界まで削ってみたりとかなり無茶な改造であった

素人仕事で精度が出ていないエンジンはバランスを崩していたのである

その崩れはプロの整備員達でも分からない僅かな物であったが、高速で回るエンジンは、それが振動となって現れた

振動する事でロスが生じパワーが上がらなくなり、それを解消しようと更にパワーを上げようとする悪循環であった

 

そこで結音は徹底的にバランスの精度を要求したのだった

振動によるロスを抑えるためである

試運転の時、回り始めたエンジンの音にシャーリーは驚いた

高音で鳴っていたノイズが消えているのである

ノイズか有るのが当たり前と思っていたシャーリーには衝撃的であった

 

「回転する物体から音がするのは大抵ロスを生じておるからじゃ。エンジン音が大きいから気付かなかったのじゃろう」

 

音のしないエンジン

それは理想であった

 

結音達の建てた計画は高高度まで上昇し、弾道軌道で空気抵抗を減らして降下して速度を得る

そこから水平に引き起こし、更に加速する

弾道軌道のままだと地面と激突してしまうからであった

過去に弾道軌道で音速に挑戦した例もあったが、機体強度が持たず、空中分解していたのであった

振動に耐えられなかったためと言われている

 

「こちらシャーリー。降下予定高度に到着」

「結音、了解。エーテルの乱れは許容範囲内。ガイドラインに従って降下開始。GOサインじゃ」

「了解。降下開始する」

 

弾道軌道に乗り放物線を描きながらシャーリーは飛んで行く

速度が上がるにつれ風圧がきつくなって行く

いつもなら躊躇う位の振動が出る速度に達しても、まだ余裕がありそうだとシャーリーは思った

 

「引き起こし高度に到達。水平飛行に移る。異常な振動はまだ出ていない」

「了解。ガイドに従い引き起こすのじゃ。ゆっくりな」

「分かってる。ブリーフィングもリハーサルも散々やったろ」

「心配くらいしても良いじゃろ」

「ありがとな」

 

急に機体を引き起こすと減速してしまうのだ

弾道軌道で助走の終わった機体は更に加速して行く

 

「シールド展開。音速に備える」

 

シャーリーは衝撃波に備えシールドを展開する

機体が少し振動し始めた

しかしシャーリーは自分がこんなにも落ち着いているのが不思議だった

いつもがむしゃらに、ありったけの魔力を注ぎ込んでも、加速しなかったストライカーが今はまだ余裕を見せている

自分はまだ飛べるぞと言っている様だった

 

突然どーんという音がしたかと思うと、嘘の様に振動が消え静かになった

 

「結音、どうなったんだ。振動が消えてる」

「マッハの世界へようこそ、シャーリー。おめでとう。ちゃんと記録しておる。世界初の音速を越えたウィッチの誕生じゃ」

「本当か!? 夢じゃないよな?」

「うむ。さあ帰って来るのじゃ。皆で祝うのじゃ」

 

減速して巡航速度に戻ったシャーリーは気が抜けたのか飛び方がふらふらしている

減速地点で待機していたバルクホルンはシャーリーに近づき肩を貸した

 

「大丈夫か!? 魔力が切れかかってるんじゃないか?」

「ああ、たぶん」

「あ、おいっ!」

「悪い。力が出ない」

 

急に力の抜けたシャーリーを背負ってバルクホルンは帰ってきた

結音も近づき肩を貸す

 

「やはり魔力切れの様じゃの」

「全く無茶しすぎだ」

 

バルクホルンは心配そうにしている

あらかじめ計画段階からこうなるのではないかと考えられていた

そのためバルクホルンは減速地点で待機していたのである

 

「へへへ。悪い」

 

シャーリーは力なく笑った

 

結音はそう言えばこの世界の宇宙開発はどうなっているのだろうと思った

シャーリーのモデルとなったチャックイェーガーはロケット機で世界最速を記録した男である

その技術が後の戦闘機やロケット開発に生かされる事になる

だがロケットが開発されている頃には、シャーリーは上がりを迎えている頃だろう

そしてそれは自分を含めて全てのウィッチにも言える

上がりを迎えるのを二十歳とすると、結音に残されているのは後六年、ウィッチとして自分に何が出来るのだろうかと考える結音だった

 

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後に、たった数カ月しか乗らなかったP-51HSはリベリオンに戻され、解析にまわされた

凝り性な扶桑の技術者達の成果や結音の斬新なソフト等はリベリオンの第五世代ストライカーに大いに生かされる事になった

その後、スミソニアン博物館で展示される事となった

世界初の音速を越えたレシブロストライカーとして

そしてその横にもう一機

彼女の乗った機体が並んでいた

 




冒頭でリーネちゃんが撃墜したネウロイって、原作でシャーリーが突っ込んだ奴じゃないですかねw

結音のストライカーも当然全機博物館入りです
場所はどこだろう?
どなたか良い場所知りませんか?
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