IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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時とは残酷である

「ラウラ~!」

 

「シャルか、久しぶりだな!」

 

「EUの産業会議以来だね!」

 

 元IS学園地区。そこに作られた戦史博物館。その港に集合していたのは旧IS学園メンバー。彼女たちは観艦式参加のための迎えをここで待っていた。

 

「久しぶりね…って色々とデカ!」

 

「皆、忙しくて会えなかったからな」

 

「鈴、箒。お前たちとは10年ぶりだな」

 

 シャルにラウラ。鈴に箒たちは再開を喜ぶ。10年ぶりとは思えない喜び方で再開を喜んだ四人は、本当に楽しそうだった。

 

「セシリアは?」

 

「先に行ってるよ。《テレメーア》に座乗してるって連絡が来たから、観艦式会場で会えるんじゃないかな」

 

「そうか。この観艦式はイギリスが主催だからな」

 

 イギリスが主催の観艦式。それで発生する燃料代など諸々は、自前で払うボランティア形式になっている。前例のないタイプの観艦式だが、それでも国連軍含めて多数の国からの参加が集まった。

 

「私は民間人だからここだけど、ラウラは軍の首脳陣じゃない。ドイツの艦艇に乗ってると思ってたわ」

 

「私も鈴の言うとおりに言われたのだがな」

 

 MSの登場によってイージス艦のみの艦隊では火力不足とされ、各国で軍艦の設計が大艦巨砲主義に巻き戻っていた。分厚い装甲はMSの携行武器での撃破を困難にし、手数を増やした対空砲で落とすという思想に戻ったのだ。

 ラウラもドイツの最新鋭艦《ビスマルク二世》に座乗する予定だったのだが。

 

「護衛のシュヴァルツ・ハーゼを置いて来た。お前たちと行きたかったからな」

 

「お前にそんな事を言われるとはな…」

 

「本当に柔らかくなったわね。ラウラ」

 

「10年前はそんなに堅かったか?」

 

「「「そうだね」」」

 

「む、シャルまで…」

 

 ラウラの反応に全員が笑い、その場が明るくなる。

 

「そう言えば、一夏と教官は?」

 

「あぁ、それなら…」

 

「来たわよ」

 

「これが噂の《伊吹》か…」

 

 来航したのは巨大な空母。それを見たシャルとラウラは感嘆する。

 

「これが不沈艦《伊吹》」

 

「まさか、元とはいえ国連軍の旗艦に乗れるなんてね」

 

「あそこだ。織斑先生と一夏は」

 

 二人が感心している時、箒は甲板に立つ二人を見て指を指す。そこにはすっかり立派になった一夏と、片腕のない千冬の姿があった。

 

ーーー

 

「久しぶりだな。ラウラ、シャル」

 

「一夏も久しぶり~。10年前よりガッチリしてるねぇ」

 

「うむ。軍人らしくなったな一夏。活躍は聞いていたぞ」

 

「それは光栄だな。ラウラ・ボーデヴィッヒ参謀長」

 

「よせ。こう言う時はただのラウラで居たいものだ」

 

 ラウラはこの10年間で、若く女性でありながらもこの地位まで辿り着いたのは、一重に軍を支配していた女性主義のタカ派の者たち、つまり国を使って私腹を肥やしていた者たちを一掃した功績が大きい。それに加えて彼女の知識と民衆の人気に後押しされたのも大きな要因の一つだ。

 

「ねぇ教えてあげる。ラウラって結婚するんだよ」

 

「「「え!?」」」

 

 シャルの放った爆弾に、思わず一同が驚く。それは、一歩引いた場所から彼女たちを眺めていた千冬も同様であった。

 

「え、誰よ!」

 

「まさか…教え子に越されるとは……」

 

「どこの馬の骨だ!」

 

 鈴、千冬、箒がラウラを問い詰める。あまりの圧に彼女が固まっていると、シャルが続きを話す。

 

「転生者のクロイだって。あのウーンドウォードに乗ってた」

 

「「「アイツか!」」」

 

「招待状は送るつもりだ。結婚は決まったが半年ほど先だ。今は招待客のリストアップをしているところだからな」

 

「千冬姉…涙拭きなよ」

 

「これは嬉し涙だ!」

 

「八割方そうだろうね」

 

 既に察した一夏が千冬にハンカチを差しのべるが、彼女は依然と涙を流していた。悔しさ1割、情けなさ1割、喜び8割といった所か。

 

「千冬さんは一生独身だとばかり…」

 

「私だって婿は探してるんだ!」

 

 まぁ、レジェンドofレジェンドの千冬に手を出そうとする勇者は、中々現れないのが現状だ…が……彼女は今年で35歳である。

 

「お前たちも、もう27だぞ…所帯は持って損ではない」

 

「10年前は、ラウラにこんなこと言われるなんて、誰も想像できないわよ…」

 

「時代の移ろいと言うのは残酷なものだな…」

 

「私もお父さんからお見合いの話が絶えないよ…」

 

 鈴、箒、シャルの3人は、ラウラの言葉で嫌な現実を思い出してしまった。

 

 こうして、現実に打ちのめされた一同を乗せた伊吹は、観艦式の会場へと向かうのだった。

 

 

「私だって女なんだぁぁぁぁ!」

 

 

 


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