IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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観艦式 前日

 

 

 元革命軍基地。10年前に激戦を繰り広げたこの土地は、現在は国連の管理下に置かれている。しかし五年前から一般公開され、多くの観光客を呼ぶ島として有名だった。

 

 沈んだ船を漁礁としてスキューバーの名所の一つとして。かつての戦いを伝えるために破壊されたMSの残骸は自然に飲まれ幻想的な風景を産み出している。そんな光景が有名となり多くの観光客で賑わう。そしてそんな生々しい光景を見て人々は戦争の凄惨さを、あの時、TVで流れたあの映像を思い出すのだった。

 

「閣下、後方よりドイツ艦隊旗艦《ビスマルク二世》です」

 

「うむ…」

 

 イギリス海軍ライオン級戦艦二番艦《テレメーア》のブリッジから敬礼を返したワイアットは真横を通るビスマルク二世を見送る。

 

「警備状況はどうかね?」

 

「はい、既に早期警戒機が絶え間なく警戒を行い、現在第四種警戒体制を発令し警備に当たっています。マスコミなどの一般市民は既に基地に上陸。現在は国連軍第4大隊が警備にあたっています」

 

 元革命軍基地には一般の招待客や各国のマスコミたちが厳しいチェックを通って上陸。翌日の観艦式に向けて準備を進めていた。

 

「こちら第四大隊からテレメーア。現在、島内に異常なし」

 

「こちら国連軍、第二艦隊。周辺海域に展開完了。警戒を続ける」

 

「了解、警戒を続けよ。いつ女性主義派が暴れだすか分からんからな」

 

「了解」

 

 灰色と白の都市迷彩を施されたジェガンたちは島内を警戒し、いつでも安全装置を外せる準備をしていた。

 

「やっぱり警戒が尋常じゃないわね。ここを女性主義派が襲うっていうのは本当みたいね」

 

「なんか肌がピリピリします」

 

 日本の記者団に混ざっていた渚子も既に到着しており確信した。ここで何かが起きるのだと…。

 

 かつての戦地、元革命軍基地での観艦式の準備は着実に進んでいた。

 

ーー

 

「首尾はどうです、艦長?」

 

「一夏くんか…順調だよ。3時間後には本隊と合流できる。明日には観艦式の艦隊と合流できるだろうね」

 

 伊吹の艦長。源艦長は糸目のような目で艦橋から見える海を眺める。

 

「第一艦隊と合流できればケンタッキーもエクスキャリバーも居ますからね。早々、手出しできませんよ」

 

「違いない、女性解放戦線の残存戦力じゃ艦隊攻撃なんて無理だからな」

 

「だからこそ気になります。解放戦線の動きは活発化している一方。この観艦式になにか仕掛けてくる可能性が…」

 

「うむ…」

 

 少し浮かれている艦橋要員に対して一夏は不安を募らせる。それに対して源も静かに警戒していた。

 

「実に凪いだ海だ、天気も良い。こう言う時は甲板で昼寝でもしたいぐらいだ」

 

「艦長?」

 

「あの時…日本にミサイルが飛来した白騎士事件の時も…こんな静かな海だったなぁ」

 

 源の声が静かに艦橋に響くのだった。

 

ーー

 

「すげぇ…織斑隊長のユニコーンだけでもお腹一杯なのに…伝説の機体、勢揃いだぜ」

 

「俺、生きてて良かった」

 

 伊吹MS格納庫。Ζプラスが並ぶ中、一夏の《ユニコーン・ブレイブ》ラウラの《バンシィ・ケーフィ》シャルの《ナラティブガンダム》鈴の《甲龍・改五》箒の《赤椿・弥生》千冬の《明桜・肆式》。革命軍大戦で名を馳せた伝説の機体たちが並ぶのは壮観であった。

 

「整備して良いの?」

 

「良いのか?」

 

「俺、崇めてたいんだけど…」

 

「「分かる」」

 

 様々な改良とアップデートを重ねているものの、その姿を変えることなく存在するこの5機は伊吹の格納庫の中でも異彩を放っていた。

 

「まぁ、ともあれ結婚というめでたい事があるのだ。この観艦式が無事に終われば旧交を温めるのも悪くないだろう」

 

「そうだね、セシリアにも会いたいしね」

 

「セシリアは式の事は知ってるからな」

 

「へぇ、そうなんだ。良いわよねぇヨーロッパ組は」

 

 伊吹に乗艦したと言っても船が少し物騒なだけで普通の船旅と対して変わらない。IS学園組はラウラの結婚話に花を咲かせていた。

 

「オルコットはどういう反応だった?」

 

「紅茶を吹いていましたね」

 

「ぷっ…想像できるのがまた…」

 

 千冬の質問にラウラが答えると、鈴はその光景を想像して笑う。セシリアも見合いの話が山ほど来ているらしいが全て断っているらしい。まぁ、ほとんどがセシリアの家柄と財産目当ての残念な男たちばかりだからと言うのが大きな理由だが。

 

「まぁ、ラウラが純粋無垢なのは皆知ってるから。どんな相手だと思ったけど転生者のクロイさんだとはね。少し納得するよ」

 

「日本にも居ただろう、転生者?」

 

「あぁ、小原光一だろ?あの人もイケメンだな」

 

「織斑先生と同い年じゃなかったですか?」

 

「うむ…」

 

 彼の話になると口を紡いで渋い顔をする千冬。そんな反応に一同は察する。

 

「フったもんな、千冬姉が…」

 

「「「「え!?」」」」

 

 そして帰ってきた一夏にバラされ、千冬はさらに押し黙る。

 

「三年ほど付き合っていた…」

 

「え、なんでフったんですか!」

 

「そんなに付き合ってて!」

 

「………」

 

 驚く一同に黙ってしまった千冬。だが彼女にもしっかりとした理由があった。

 

「…私は束と組んで白騎士事件を引き起こした。あの時は世界を私が変えられると意気込んでいた。宇宙における活動に無限の可能性を与えるISに武器を持たせ…その力を世界に示してしまった…」

 

 当時の千冬は思ってもいなかったのだ。こんな世界に成ってしまうと。女が男を虐げる世界など望んでいなかった。

 

「私は一瞬の快楽のために、世界の多くの命を犠牲にした」

 

「それは織斑先生のせいじゃ…」

 

「いや、始まりは私だ。その事実は変わらない…そのせいであんな凄惨な戦争が起きた。私の尻拭いを、私より年が下の子供たちにさせてしまった」

 

「千冬姉はその責任を償うために生きてる。だから断った」

 

 自分は幸せになってはいけないという強迫観念に似た感情を、千冬は10年も持ち続けていた。

 そして一夏もずっとあのユイトの背中を追い続けている。決して追い付く事のない背中を。

 

「本当に彼らはどんな人生を歩んできたんだろうね」

 

 鈴の言葉に全員が無言の同意を示す。10年経っても彼らの本当の思いは理解しきれないでいた。世界を恨みながら人を愛するなんて所業。尋常の領域ではなかった。

 

ーー

 

「ゼロ、各員配置についた」

 

「そう…」

 

 観艦式会場付近では既に残党軍が展開し、攻撃準備を進めていた。

 

「提供した新型機は使えそうか?」

 

「あぁ、素晴らしい性能だと、皆息巻いているよ」

 

「そうか…なら私は第二段階に入る。そちらは任せたぞ」

 

「分かった」

 

 立ち去るゼロの後ろ姿を見送り、残党軍のリーダーであるマティア・リンジャーは息を着く。50年近く生きてきたが、彼女ほど押し潰されそうな雰囲気を持っている人間は初めてだ。

 

「ただでは終わらんだろう…覚悟せねばな…」

 

 

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