IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第二十五革 幽霊船

 

 

 

 

 

 

 

太平洋のとある海域にて衝突した副旗艦サダラーンはその船体を大きく揺らし止まったのだった。

突然の衝撃に艦内の全ての人員がもみくちゃにされ軽くパニックになっていた。このサダラーンには民間上がりの者が殆どのせいでこう言った場合に馴れていないのだ。

 

「各ブロック、状況を報告しろ!」

 

「艦艇部、浸水がないが確認を急がせろ!」

 

「第二戦闘配備、繰り返す第二戦闘配備!!」

 

艦内に鳴り響く放送のお陰で何とか統制が取れつつあるが状況が分からず迂闊に動けないのが残念だ。

混乱しているブリッジを何とか収めたユイトはポケットに突っ込んだ通信機を手に取った。

 

「敵襲か?」

 

「分からん、とりあえずお前はパイロットスーツで待機しろ」

 

通信の相手は彼の側近であるクリアだった。クリアはベッドの横に投げ捨ててあったパイロットスーツを持つとすぐに着替える。

 

「城崎双子!前方にある艦の調査だ、攻撃するなよ!」

 

「「了解!!」」

 

一番最初に甲板に上がってきたのはヴァイエイトとメリクリウス、親衛隊のシュンとシュリだ。二人は元気良く声を出すとそのままゆっくりと前方の艦に向かっていく。

 

「こちらです!」

 

二人が向かうとその先には先程、偵察に出ていたハイザック3機がモノアイを激しく光らせて位置を知らせる。

そのうち1機が不明艦のブリッジを指して何かを訴えかけている。

 

「誰も居ない?」

 

「おかしいね、姉さん」

 

「そうね、兄さん」

 

人がいるべきブリッジには人影はなくその代わり窓に黒い物が張り付いてる。そんな光景に疑問を覚えつつ空母の外周部を見回り始める二人だった。

 

ーー

 

「艦艇部、異状なし!」

 

「外殻は少し歪んでますが航行に影響はないかと」

 

艦艇内部は乗員が、艦艇外部は水陸両用のMSが確認したが何も問題が無かった。その事実にひとまず安堵の表情を浮かべるユイト。

 

「報告は聞いたっすよ…」

 

「大変じゃない」

 

「まぁな…」

 

「こちら城崎シュンです、敵の空母に人影はありませんでした」

 

駆けつけたカゲトとケイを迎えたユイトはシュンの報告を聞いて怪訝な顔をする。巨大な空母が無人で太平洋を流れているなんて馬鹿げた話、聞いたことが無い。

 

「これは、調べた方がいいすっね」

 

「あぁ、そうだな…」

 

楽しそうに笑うカゲトに若干引きつつもユイトは答える。濃霧に無人艦なんてまるでB級ホラーのゴーストシップだ。

 

ーーーー

 

急遽編成された調査隊は大きく分けて四つの隊に分けられた。各々が全て違うルートを進行し内部を調査する、MS隊は艦内に入れないので外周部の監視だ。

 

「よし、行くぞ…」

 

軽く自分の装備を確認すると甲板から艦内に侵入する。ユイトの後ろにはクリアとカゲト、ケイニそれに歩兵が数名。

重い扉をゆっくり開けるとそこに広がるのは暗闇、どうやら完全にこの船は活動していないらしい。

 

「暗いな…せめてどこの国かを確認したいが…」

 

懐中電灯を片手に呟くユイトだが後ろにいたカゲトがすぐに見つけていた。

 

「コイツは凄い、原子力空母だ…」

 

「え、原子力空母ってアメリカの」

 

「それ以外無いに等しいっすよ…」

 

ケイニの質問に答えつつカゲトは懐中電灯を持っていない手で飾ってある名前のホコリを軽く払う。

 

「エンタープライズ級、二番艦…名前は無し」

 

「二番艦?そんな物は…」

 

「非公式だろうっすからね、それにこれは航空空母艦じゃないかも…」

 

今までの感じてきた感覚を信じればこの船は空母ではない。甲板には艦載機は無し、あるのは大型のヘリのみだ。原子力空母にしてはおかしい。

 

「う、なんだこれは…」

 

「う、うぇ…」

 

《TopSecret》と表記された扉に手を掛けると電子キーが作動していないようで簡単に開く。その扉から広がる光景を見た歩兵の一人が想像絶する光景に嘔吐する。元少年兵の奴でもこれはキツかったようだ。

 

「やっぱりこうなってるよな…」

 

「これは、まさか…」

 

「あぁ、研究所だ…」

 

強烈に襲いかかる異臭に思わず顔を覆いながら懐中電灯で周囲を照らす。そこには壁に杭のような物で貼り付けられた白衣の男性の姿があった。

 

「内乱っすね」

 

「内乱?じゃあ、この子たちが暴動を起こしたって言うの?」

 

ケイニは自身の懐中電灯が照らす子供の死体を指差して言うとカゲトは黙って頷く。額に無数に穿たれた穴を見る限り撃ち殺されたのだろう。

 

「各班、状況報告」

 

「こちらB班、死体の山です」

 

「こちらC班、こちらも地獄絵図ですね」

 

「こちらD班、同じです…間もなく機関室にたどり着きます」

 

「使えそうなら起動しろ、光が欲しい」

 

「了解」

 

他のルートを辿った班も目にした光景は同じようで散々な物だったらしい。電気さえつけば楽なのだが主機が沈黙していると言うなら仕方がない。

強烈な腐敗臭に目をしかめながら前に進む。明らかに顔色が悪いクリアの手をしっかりと掴むと彼女はほんの少しだけ笑う。

 

「すまない…」

 

「気にするな…」

 

「私もしていいのよ…」

 

「…分かったっすよ」

 

ケイニもそれを見て手を差し出すとカゲトはいつも言う愚痴を一切言わずに手を掴む。おふざけと本気の違いくらい分かる。

 

「ちょっと待ってろ…」

 

ユイトはそう言うと倒れている子供の体を調べる。その行動に全員が疑問を持ちながらも黙って見つめているとなるほど…っと言う言葉を呟き立ち上がる。

 

「死んでから八日程か…」

 

「かなり最近だな…」

 

「艦内の空調が切れてから腐り始めたとしてもこの腐敗臭は強すぎる…時間は経ってない」

 

シャン…

 

税印に説明するように正面を後ろにした瞬間、何かを抜き放ったような音が静かな廊下にこだました。

 

「ユイト!!」

 

暗闇から現れたのは子供、やけに痩せこけているが動きは鋭く手にしたメスを真っ直ぐユイトに向けて刺し向けた。

 

「チッ!!」

 

焦ったクリアの声が鳴り響く中、ユイトは腰からコンバットナイフを取り出し弾き飛ばす。無手になった少年は逃亡を図るがそれは許さない、素早く蹴り飛ばしそのまま壁に叩きつける。

 

「グギャ!」

 

痛みに目を閉じる子供の首元には刃渡り20センチのナイフが紙一重のところで止められていた。

 

「狙いはいいが駄目だな、お前は実戦を知らなさすぎる…」

 

「ユイト!無事か?」

 

「まぁ、少しビビったがな」

 

必死に抵抗する子供を抑えながら駆け寄るクリアを見やる。気配が分からなかった…流石は戦闘のために生み出されたと言うだけあるだろう。

なにが起こるか分からないので腹に一発お見舞いして意識を刈り取ると歩兵に投げる。

 

「おっと…」

 

「そいつをサラダーンに連れてけ…拘束はしっかりな」

 

「分かりました!」

 

投げられた子供を上手くキャッチした歩兵は駆け足で来た道を戻っていく。どうやら生き残りが何人かいるらしい。

 

「やることは決まったな…」

 

「ユイト、まさか…」

 

「そうっすね、ここだけ助けないのはおかしいっすからね」

 

「また、こんな不気味なとこで…」

 

ニヤリと笑うユイトの意図を察したカゲトとケイニは手にした拳銃の弾倉を取り替える。クリアはその様子に少し驚きユイトを見る。

 

「さぁ、助けに行こうか…俺たちの同胞を」

 

 

 





今回はこんな感じで、今回は短めですが次回は最後まで書いていきます。
イメージ的にはガンダムSEED DESTINYに登場したロドニアのラボがベースっていうかそのまんまです。

それの皆さんお気づきですか、まだこの小説内でIS学園襲撃から六日しか経っておりません。


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