IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第二革 ブロッサム -school side-

 

「ハハハハ!!」

 

IS学園の食堂、朝食で賑わう空間で大声で笑う少女…フィーリアは腹を抱え、目に涙を見せながら笑い続ける。

 

「そこまで笑わなくていいだろ…」

 

「全くだ、どれだけ惨めな目に遭ったか…」

 

「ハァハァ…女の園にぶち込まれた男がまさかラッキースケベなんて…笑い話過ぎるよ」

 

フィーリアと一夏達は自室の前でたまたま出会い、食事を共にした。

昨日の騒ぎが気になっていたフィーリアは聞いてみるとビックリ、この二人が元凶だとは…。

 

「あの人と一緒だねぇ、そこまで酷くないけど」

 

「あの人?」

 

「織斑くん、隣良いかな?」

 

フィーリアが発した言葉が気になった箒は聞き返すが新たに来た女子達の声で遮られた。

 

「おう、良いぞ」

 

それを快く承諾した彼に対して女子達は安堵の表情を浮かべ座る。

その後は三人の女子、谷本、鷹月、のほほんさんと話した。谷本と鷹月は代表候補生にも興味があるらしくフィーリアも彼女二人の質問に快く答えてくれる。

 

「そう言えばさ、フィーリア」

 

「なんだい?織斑くん?」

 

「一夏で良いよ、ISの事について教えて欲しいんだけど」

 

「なにを言っている一夏!それなら私が教えてやる」

 

一夏の突然の頼みに一番先に反応したのは箒だ。好きな人が他の女に"二人っきり"の特訓を頼んでいるのだ(二人っきりとは言ってない)食いついてしまうのは仕方のない事だろう。

 

「篠ノ之さん、私達もそれは言いたいけどやっぱり代表候補生の方が良いんじゃない?」

 

鷹月の言葉に箒は苦虫を噛み潰した様な顔をする。道理は通っているがやはり心はそうはいかない。

 

「無理♪」

 

「ええぇ!」

 

何となくOKが出そうな雰囲気だったので断られた一夏は少し悲しそうだ。

 

「魅力的な相談だけどね、一応一週間後に矛を交えるわけだからね…ソノアトナラいくらでも付き合うよ…一週間の間に一夏の癖を全部見切ってしまいかねないし」

 

「なるほど…」

 

お互い正々堂々、彼女の考えに一夏は激しく同意する。しかし気軽に話せる人物の中で有力だった彼女の訓練を逃したことはほんの少し残念だ。

 

「一週間の間に彼女達に教えて貰いな」

 

そう言った彼女は食べ終えたトレイを持ち返しに行くのだった。

 

ーーーー

 

その放課後、一夏に専用機が与えられるという正式な通告があった以外は比較的平和な日だった。

セシリアもなぜか機嫌が良かったのもその原因の一つなのだろう。

 

自室に帰ってきたフィーリアは一人っきりの部屋を見渡す。すると鞄の奥から昨日使わなかったパソコンを取り出す。そのパソコンは妙に未来的なデザインをしており起動させると画面中に数字が埋め尽くされていた。

 

「~♪」

 

普通なら故障とも取れる画面に対して彼女は何の反応も見せず鼻唄しながら操作を続ける。

 

そこに出てきたのはとある機体の取説のようなもの、-試作0号機《ブロッサム》-そう名付けられた機体の細かな調整を彼女は行っていた。

 

「彼はともかく、セシリアのでちゃんとデータが取れれば良いけど…」

 

獣の様に眼をギラつかせる彼女は本当に楽しそうだった。

 

ーーーー

 

-一週間後-

 

ついにやって来たこの日、セシリア、フィーリア、一夏共にどれだけこの日を待ち焦がれただろう。

 

織斑一夏対セシリア・オルコット

 

織斑一夏対フィーリア・スタンシー

 

フィーリア・スタンシー対セシリア・オルコット

 

組み合わせはこんな感じ、初心者である一夏が最初に試合を終えるのは代表候補生同士の戦いを見せておきたいという千冬の配慮があってこそだ。

 

「まぁ、頑張ってねぇ」

 

「当然ですわ!」

 

試合の原則としてフィーリアは一夏とセシリアの試合は見れない。

 

同じピットであるセシリアと軽く談笑を交わしフィーリアはセシリアを見送るのだった。

それから三十分経っただろうか、暇すぎて一人チェスでもやってたフィーリアの耳に放送が鳴り響く。

 

「試合終了-勝者、セシリア・オルコット……」

 

「「「「ええぇぇぇぇ!!」」」」

 

その後に響く観客のブーイング?を聞いたフィーリアは戦慄した。

 

(もしかして、勝負に勝ったら三年間、空気を読めないボッチと化してしまうの!?)

 

そんな恐怖を抱きながら彼女はセシリアが帰ってきたのを見つけ駆け寄る。するとなんだか知らないが出撃前とは打って変わり光芒とした表情と化していた。

 

「おーい、おーい……」

 

「……」

 

そんなに勝ったのが嬉しかったのか自身の声が届かないのを確認したフィーリアは取り敢えずチェス盤を片づけて待機する。

セシリアは光芒状態のままISの補給にに向かったらしく一人だ。

 

「第2試合を始めます、選手は入場してください」

 

「さて、行きますか…」

 

そう言うと彼女は自身の機体を展開させるのだった。

 

ーー

 

セシリアとの試合終了後、千冬と箒の罵倒を受けた後、千冬に雪片の特殊能力についての簡単な説明を受けた一夏は第2試合の相手であるフィーリアと戦うために白式を展開し発進しようとしていた。(もちろん補給済み)

 

「一夏、気をつけろ…フィーリアは絶対に油断などしていない」

 

「ありがとう箒、じゃあ行ってくるぜ…」

 

箒の言葉に感謝しつつ一夏の白式は射出されていく。一瞬のGに耐え機体を浮かび上がらせると彼女はいた。

 

「楽しみだったよ、一夏…この時がね…」

 

彼女の赤髪と朱色の瞳とは正反対な青と白を基調とした装甲を足から腰、両腕から肩、胸部部分を彼女は纏っていた。

露出部分が腹と頭だけと言う…ISのにしては若干露出が少ない気がする。

 

(やっぱりセシリアとはだいぶ違うな…)

 

機体背面に設置したドラム式フレームから武器マウントアームを介して左肩には円盤の状のレーダードーム、右肩には4メーター弱の巨大なライフルが固定されている。セシリアのスターライトMK-IIIが2メーター程、ISの機体自体が3メーター強に対しても大きすぎる兵器である。

 

白式が表示するデータにフィーリアの機体のデータが映る。機体名‥試作0号機《ブロッサム》、中距離高機動タイプ。

 

(なるほど…)

 

一夏は納得する腰部と脚部に付けられたブースターを見る限り高機動タイプであることには間違いない。

 

「全力で行くぜ、余裕なんてないからな」

 

「それでいいんだよ、こっちも油断なんてしていないから」

 

鳴り響くブザー音、試合が始まった。

 

先手を打ったのは白式の織斑一夏。携行武器が雪片弐型一本である以上、自身の間合いにはいってはいなければならない。

 

(千冬姉の話だと長期戦は不利…短期決戦だ!)

 

「真っ直ぐすぎるよ!」

 

突っ込んでくる一夏の一撃を難なく躱したフィーリアは脚部スラスターの加速を加えた蹴りで吹き飛ばす。

吹き飛ばされ地面に激突した一夏は嫌な予感を感じ全力でその場から離れる。

 

「うお!」

 

すると先程いた場所が自身の白式より大きいであろう巨大な光線に包まれた。

ブロッサムの大型ビームライフルの攻撃であった。

 

ーー

 

「ビーム兵器…」

 

それをピットのリアルタイムモニターで見ていた千冬は眼をピクリと動かし反応する。

 

「世代としては2.5世代となっていますが…あのライフルの攻撃力は第三世代以上の物ですね…」

 

「あぁ、あれがオーストラリアの虎の子と言うことだな…大物顔でこの学園に無理やり編入させた理由がこれと言う訳だ…」

 

画面を見ながら千冬と真耶は話す。ライフルと胸部装甲から大量の放熱煙が吹き出る辺りまだまだ試作段階と言うのがよく分かる。

 

「しかし先程の攻撃…織斑くんはよく避けれましたね」

 

「ただの偶然だ…次はこうも行かないだろうな……」

 

相変わらずの酷評に真耶は苦笑いをするがすぐに目線を画面に戻す。相手が油断していない以上、一夏が勝つのは不可能だ…ならどこまで善戦するか…それが大きな焦点となってくるだろう。

 

ーーーー

 

「外した!?野生動物なの?」

 

排熱を行いながらライフルを収納、拡張領域(バススロット)からブルパップマシンガンを2丁取り出し弾幕を張る。

 

「でも接近用装備しかなさそうだね!いつまで耐えきれるかな?」

 

マシンガンの弾丸は一夏の進行進路を塞ぎ身動きを取れなくする。

 

「くそっ!」

 

「それそれそれ!」

 

行動が完全に読まれている一夏は開始早々から詰みかけていた。彼の行動が分かりやすいと言うのもあるがその主な原因はブロッサムの装備、レーダードームにあった。

 

一見ただのレーダードームに見えるがこれはイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器だ。操縦者に敵がどう行動するのか予測し見せる。

一見チート能力だがこの能力は本人の分析と機械の分析を総括して見せる未来だ。予測を正確にするためには操縦者の高い分析能力と集中力を必要とする。

 

「またノイズが…」

 

それにこのシステムは問題が山積みでこの段階で失敗作の烙印を押されかけている。だからこの機体《ブロッサム》は2.5世代と呼ばれているのだ。

 

「設計図通りにも作れない無能共め…」

 

苛立たしく呟くフィーリア、そんな間にも目の前のノイズが大きくなっていく。

 

駄目か…無理だと感じたフィーリアはシステムを切る。すると画面切り替えによるブラックアウトがほんの一瞬だけ起こる。

 

これと同時に逃げ回っていた一夏は決意した…元々短時間でしか戦えない機体…シールドエネルギーもマシンガンの影響で少しずつ削られる……なら。

 

(突っ込むしかねぇ!)

 

意を決しての突撃、心なしか迎撃が来ない事を感じた一夏は雪片弐型を構えて更に加速するのだった。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

ブラックアウトと終え、視線が回復したフィーリアの顔は驚愕の表情に変わった。眼に映ったのは雪片弐型を構えて突っ込んでくる一夏の姿。

 

「しまった!!」

 

マシンガンは弾切れ寸前の上にこの距離、迎撃は出来ない。ほんの一瞬の油断が接近を許してしまった。

フィーリアはマシンガンを投げ捨てブロッサムの肩部に装備されたビームサーベルを目にも止まらぬ速度で抜刀、激しい鍔迫り合いが起きる…筈だった。

 

「え?」

 

「よっしゃ!」

 

雪片弐型に触れたビームサーベルのビームがかき消えた。守りを失ったフィーリアはシールドバリアを砕かれ絶対防御が発動…シールドエネルギーの三分の一を持って行かれた。

 

「なんて攻撃力!」

 

「もう一度ォォォ!」

 

「舐めるなぁ!!」

 

勢いに乗った一夏は雪片弐型をもう一度フィーリアに向けて振るう。獲った!確かな確信を持って振るった一撃は…躱された。

 

個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)!と観客席から驚きの声が上がる。二年の証である黄色のリボンをつけた女子生徒だ。

 

「惜しかったね…でもこれでチェックメイトだ」

 

突然視界から消えた彼女の姿は後ろにあった。雪片弐型を完全に振り切った状態、避けられない。

 

ブロッサムの大型ビームライフルが火を噴いた。

 

「試合終了-勝者、フィーリア・スタンシー」

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

紙一重の攻防に観客は湧き巨大なアリーナに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 




どうも砂岩でございます。
御察しのとおりフィーリアの機体はガンダム試作0号機《ブロッサム》です。分からない方はググったら出てきます。
オーストラリアなので最初はゼフィランサスかサイサリスにしようと思ったのですがその中でデザインが好きなブロッサムにしました。
今回のようにschoolsideとblacksideが前後したり、どちらか片方を二回やるっと言うこともありますのでご了承ください。

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