IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第二十七革 世界会議 前編

 

 

革命軍のIS学園襲撃からちょうど一週間が経過しIS学園は通常通りの運営を開始した。破壊された広場は以前と同様とは行かないまでも修復され一応は前と余り変わらない風景に整っていた。

 

「HalloEveryone!!どうも皆さん!オーストラリア帰りで最高に眠いフィーリアDEATH……ぎゃゃゃゃあ!」

 

朝一から学校の階段を転げ落ちるフィーリア、その先にはシャルルではなくシャルロットとラウラの姿があり2人は難なく受け止める。

 

「大丈夫か?」

 

「本当に眠そうだね…」

 

「ZZZZZ」

 

「って寝てるし!」

 

シャルロットの鋭い突っ込みに後から来たセシリアが微笑みながら話しかける。

 

「試作0号機が大破したせいで始末書とその後継機の訓練で寝る間がなかったらしいですわ」

 

「じゃあ、機体も変わってるわけね…まぁそれでも私の勝利には変わりないけどね!」

 

「1回しか勝ってないじゃありませんの…」

 

「うっ…うるさいわね」

 

続々と集まってくるメンバーたち、そして最後に来たのは箒と一夏の2人だった。

 

「よう!ひさしぶり」

 

「久しいな…」

 

「あら一夏さん!お久しぶりですわ!!」

 

このメンバーで集まったのも3、4日ぶりだ。久しぶりの一夏にセシリアと鈴は喜ぶ。はしゃぐ2人の後ろから他のメンバーが軽く挨拶を返すと仲良く教室に向かうのだった。

 

ーーーー

 

アメリカの首都、ワシントンDCは異様な雰囲気に包まれていた。革命軍の登場により開催された会議には緊急で集められた各国首脳や精鋭部隊の隊長たちが一堂に会していた。

 

日本IS管理局局長《東条ユキ中将》、自衛隊富士教導隊隊長《楠木中佐》、自衛隊特殊技術開発協同隊隊長《橘少将》とその補佐のアリエス、光一。

 

ドイツIS管理局局長《フランツ少将》ドイツ軍フォルガー大隊《フォルガー大佐》その補佐のクロイ。

 

アメリカIS管理局局長《フラン准将》、アメリカ代表《イーリス・コーリング》

 

イギリスIS管理局局長《ゴルドウィン准将》、イギリス代表《イルフリーデ・シュルツ》

 

等々、ISファンなら鼻血レベルの著名人ばかりである。そんな著名人の中に堂々と腕を組み座っているのはIS学園代表として来た《織斑千冬》とソワソワしている《山田真耶》の姿もあった。

 

「それでは、会議を始めましょう…」

 

この会議を取り仕切るのは国連IS管理委員会委員長《マリアネス・ザックレイ》、彼女は女性主義団体のメンバーでもある。

 

「今回集まって頂いたのは他でもありません…革命軍のことです…」

 

革命軍、その単語を聞いた者のほとんどは苦虫を噛み潰したような顔をした。その者達の国は全て"ある研究"に関する施設を攻撃された被害国だった。

 

マリアネスの話が続き全員が耳を傾ける中、ロシア代表として出席していた更識楯無は思考の海に浸っていた。

思い出すのは情報提供してくれたレオ・ブラウナーの死についてだった。

 

(やはり奴らはこちらの動きを完全に掴んでる…)

 

見つめるのは資料、今回の会議用のではなくアン・フリーベラが手渡してきたものだった。

 

(この会議も筒抜けであることは考えた方が…)

 

「大丈夫?顔色が悪いけど…」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そう、無理しないでね」

 

ロシアIS管理局局長《シャネラ・クライツラー大佐》は先程から俯いていた楯無を心配するがすぐに前に向き直る。

 

この会議に使用された会場の天井にはそれを監視するようにHGガンプラサイズのセラフィムが様子を伺っていた。

 

ーー

 

「やはり、集まったは良いがなにも分からないって感じか…」

 

マリアネスの無駄に長い話を見るに彼女自身は何も掴んでない様子だった。

 

それを見ていたのは対の転生者の1人であるティルミナ・ハンデルン。彼女は会場近くのカフェでパソコンを操作しながら呟いた。

 

「なぁに覗いてるのかなぁ?」

 

「ッ!」

 

「おっとそれは早いよ…」

 

突然話し掛けられ驚いたティルミナは懐のナイフを取り出そうとしたがすぐに手首を掴まれてしまう。相手の年は若めで口調からして割と軽い性格。そこまで分析したはいいが完全に主導権を持って行かれた。

 

「大丈夫、僕は敵じゃない…」

 

「それをどうやって信じろと…」

 

「フフン♪」

 

後ろの男が出したのはAGEデバイス、見た感じ本物のようだ。この世界にガンダムは存在しない。なら導き出されるのは2つ、革命軍か…同類か。

どちらにせよ戦力が必要な両者はこちらに被害は与えないだろう。

 

「キミもこの世界に飛ばされたんだろ?ソレスタルビーイングのマーク首に下げてたら分かるよねぇ」

 

「お前は…」

 

「ヘンリー、ヘンリー・マルトニティ…大変だったよこの会議の噂聞きつけてなけなしの金でここまで飛んできたんだからぁ」

 

ヘンリーはティルミナの隣の席に座ると疲れたように深く座る。お互いの年齢を考えてみると端から見れば恋人同士に見えるだろう。

 

「で、どうなの?」

 

「まだ始まったばかりだ…」

 

革命軍に対しこれからの方針を決めるこの会議にどのような形であれ鍵を握るであろう転生者が全員揃ったのだった。

 

ーーーー

 

「特殊技術開発協同体の発言を許可します…」

 

「はい…」

 

マリアネスの淡々とした言葉にアリエスは立ち上がり資料を持つ。本来なら責任者である橘少将が話すべきなのだが女尊男卑思想の強いこの会議では補佐であるアリエスの方がいいのだ。

 

「日本IS企業や自衛隊の解析によるとISと敵機体の総合的な性能はあまり変わらないと結果が出ました」

 

アリエスの言葉に各国の代表は安堵の声を漏らす者と納得できないっと表情に出す者と様々だ。

 

「バカなこといってんなぁ」

 

「まぁまぁ、大佐」

 

フォルガーなんて特にあり得ないと言った様子で隣にいたクロイは宥めるように小声で話す。だがアリエスの話はまだ終わっていない。

 

「ですが、我々が回収したのは水陸両用タイプのみでその機体がISとおなじフィールドで戦闘を行った場合です」

 

水陸両用タイプの機体、両用とは聞こえはいいが実際その能力を発揮するのは水中である。そんな機体たちが同じ土俵に立って同等の性能。

 

「てっことは…」

 

アメリカ代表、イーリスはアリエスの言わんとすることが分かりさらに顔を険しくした。

 

「機体を回収せねばなりませんが本来、空戦用や陸上用の機体はISを超える性能を誇っているのと思われます」

 

「機体を回収する必要は無い!」

 

アリエスの言葉を遮るように大声を出し全員を注目させたのはドイツ軍のフォルガー大佐だった。

 

「こっちにはそれと同等、いや…それ以上の機体を保有している!…クロイ!!」

 

「え?はいぃ!!」

 

近くで爆発したフォルガーの怒号に近い声に短期間であるがみっちり鍛えられているクロイとって行動させるのに十分だった。クロイの体は光り始め全身に装甲を纏わせる。

 

ーー

 

「ウーンド・ウォード!?」

 

「なにそれ?」

 

カメラ越しに見ていたヘンリーが驚くと隣にいたティルミナは分からずに思わず疑問の声を上げる。

 

「"ティターンズの旗のもとに"に登場した機体だよ、ティターンズの開発した機体の中で最高峰の性能を保有していたといわれてる…物好きなヤツもいたもんだぁ」

 

ーー

 

突然、機体が現れたことにその場に居た者全てが戦闘態勢に入る。煌めくツインアイ、白を基調にした姿は間違いなく革命軍の機体だった。

 

「ど、どうしましょう」

 

「まさか機体を入手していたとは…」

 

ただでさえ緊張で吐きそうな真耶に追い打ちエチケット袋を持ち出している始末だ。肝心の千冬も会議場で立つウーンド・ウォードを見つめる。

 

「我々は鉱山都市を利用した敵の基地を発見した!ISを含む我々の保有戦力でこれを攻略し状況を我々に傾けさせなければならない!」

 

フォルガーの言葉に会議場は騒がしくなり収集が収拾がつかなくなってしまう。それはそうだろう今まで一切の情報を秘匿してきた敵の基地を見つけたのだ。

 

「大佐ぁ~」

 

「大佐!いつも貴方はこの場を引っかき回して!!」

 

会議を完全に潰してしまったフォルガーに涙目のフランツ少将、それと同時に怒号を上げたのはマリアネスだ。彼女の言葉を聞いて分かるとおりフォルガーはこういう形式的な会議を嫌う。

 

「こんな意味のない会議になにがある!会議をして安心するのは愚鈍な政治家だけだ!」

 

明らかに場を乱しているフォルガーに対しマリアネスの怒号に乗じて言うヤツが出てくるのだと思えば一人もいない。ウーンド・ウォードの登場によって立ち上がった者達も席に着く始末だ。

 

「こんな定例会議じゃ何も進まない!奴らがそれに東南アジアの偵察隊が敵の基地を捉えている!我々に必要なのは勝利だ!自国民の安心のためにも、政治家どもを黙らせるためにも勝利がいる」

 

「実に彼女らしい考えだ…」

 

「端から見ればバカなんですがね…」

 

もはやフォルガーの独壇場になった会議を見渡しゴルドウィンは実に愉快そうに細く微笑む。イルフリーデは軽く冗談を噛ましながらフォルガーを見つめる。この会議とて女性主義団体の息が強く掛かっている筈。

なのにそこにMSを見せびらかすような真似をした彼女には何かしらの意図があるはずなのだ。

 

「誘ってますね…MSの存在を知っている者はここに集まれと…」

 

「そうだな…」

 

おそらくフォルガーは確かめたかったのだろう。ウーンド・ウォードの持ち主と同じ経由を辿った人物がいるのかどうかを…そして誘い出している。

 

「大胆かつ緻密でもし失敗しても自身の評価を下げるだけ…敵わないな……」

 

イルフリーデは今だに演説を続けるフォルガーに賞賛の念を送るのだった。

 

ーーーー

 

「東南アジアかぁ」

 

「何か心当たりでも?」

 

「逆にないの?」

 

「まさか…」

 

会議室内で発せられた中央アジアと言う単語にそれを見ていたヘンリーが意味深げに微笑むとティルミナもそれに同乗する。

 

「08小隊の舞台、機動兵器アプラサスの開発基地であるラサ基地か……」

 

「じゃあ、行こうか」

 

「はぁ?」

 

用事は済んだとばかりに置いていた荷物を手に取り肩に掛ける。それを見てティルミナは疑問の声しか上げれなかった。

 

「どこに?」

 

「どこにって、はてそりゃラサ基地に決まってるでしょ?」

 

「はぁぁぁ!」

 

ヘンリーの言葉にティルミナは間抜けな声を上げるのだった。

 

 

 

 

 





フリーランス転生者二人は早速アジアへ。ヘンリーは元々旅人と言うだけ会って行動が早い。
近いうちに(3、4話ぐらい)ラサ基地攻防戦はやっていきます。
ちなみにオーストラリアにいたアンは更識邸で居候中。
ではでは…。


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