「各機!状況を教えろ!!」
「駄目だ、フォルガー大佐と連絡が取れん!」
突然の状況変化に対応しようと奮戦する指揮所だが現場が混乱していて正確な状況すら難しくなっていた。
「なんだ?なにが起きてるんだ!」
「分かりません、一体何が……グワッ!!」
「なんだ!敵襲!後方より敵機動部隊が接近!」
後方に配置された戦車隊が突然の強襲を喰らった。ジン、シグー、ティエレンなどの部隊は鉱山都市を包囲する様に展開し攻撃を仕掛けていた。
「各機敵部隊に適宜迎撃せよ!戦車隊の立て直しまで稼げ!!」
「くそっ!」
「光一さん!!」
後方からの攻撃に誰よりも早く対応したのは小原光一だった。エアマスターを飛翔させ両手のバスターライフルで迎撃する。それを追うように彼の部下となったアリエス・ノースフィールドがラファールで攻撃を開始する。
「各機、先行のエアマスターを中心に陣形を編成、迎撃せよぉ」
その通信を皮切りに他の後方部隊も急いで戦線に到着し迎撃を開始。先程の命令は橘少将が発したもの図らずも後方の部隊は彼が指揮を執る形となった。
ーーーー
ほぼ乱戦状態に陥りつつある本陣の状況などいざ知らず鉱山攻略隊は坑道の中で苦しい戦いを強いられていた。
「やっぱり駄目か!」
クロイはビームライフルを構え、撃ち放つがそのビームはビルゴの展開したプラネイト・ディフェンサーで打ち消されてしまう。
「クロイ!怯むな!」
フォルガーは愛機である《フレーダーマオス》を駆り狭い坑道を飛び回ると巨大な斧をビルゴに振り下ろした。
激しい火花を飛び散らせるとプラネイト・ディフェンサーを突破、上半身を縦に切り裂いた。
「各機!接近戦を仕掛けろ!とにかく外に出るぞ!」
こんな坑道の中ではIS…いや、クロイのウーンド・ウォードの機動力が生かせない。フォルガーの敵撃墜にフォルガー大隊のメンバーは歓喜の声を上げる。
「隊長!前です!!」
「なに?…っ!!」
クロイの言葉に前を見たフォルガーは迫り来るビルゴのビームに脚部を撃ち抜かれ擱座してしまう。それを見ていた者全ての表情が驚愕に変わる。
ISのシールドエネルギーどころか絶対防御まで正面から撃ち抜かれた。これは一撃でも生身に食らえば終わりだ。
「く、くそっ……」
坑道内に群がるビルゴがフォルガーに標準を定めビームを発射するのは一瞬だった。フォルガーのフレーダーマオスは多数のビームに撃ち抜かれ爆発するのだった。
「隊長!」
クロイ!の悲痛な叫びが坑道内に響き渡るのだった。
ーーーー
「全機、何としても突破しろ!逃げるところなどのなにもない!!」
楠木中佐は崩月の装備刀の《舞桜》と小刀の《枯山水》を振るいビルゴのビーム砲を潰す。接近戦に秀でている日本の自衛隊はビルゴに対し相性が良いとは言え甚大な被害を出しながら出口へと突進する。
「あぁぁぁ!熱い、助けて!!熱い熱い!」
「香里!!」
「バカ止まるな!ここで死んだら無駄死にだぞ!」
「すまない!」
ビルゴのビームに腹を焼かれ苦しみ悶える仲間を置いて出口へと向かう教導隊は心を無にしてマシーンのように突き進む。
「クソッ!坑道入り口を攻撃!撃てぇ!!」
12機のうち3機を見捨て坑道を脱出した教導隊は苦しみながらも坑道入り口を崩落させ脱出する。一安心、頭の隅で思っていたこの言葉は本隊が攻撃を受けている光景を見て吹き飛んだ。
「全機、本隊の援護に向かうぞ!」
「「「ハッ!!」」」
「泣くな早瀬!」
「だって…香里が中に……」
感情を処理しきれない者も見られるが混乱の極みにあるこの状況ではどうしようもない。安全なところなど何処にも内のなら戦うしかないのだ。
ーーーー
襲いかかるティエレンをプラズマ手刀でめった斬りにしたラウラはフォルガー大隊の侵入した坑道を見やるが断続的な発砲音が響いてくるだけで何も起きない。
「隊長!ここは退きましょう危険です!」
「バカ者!ここで退いてしまえばフォルガー大隊が孤立するぞ!」
フォルガー大隊の後方を支えていたシュバルツ・ハーゼ隊はIS3機を保有する特殊部隊だがMSの多さに押されつつあった。
「やっt……」
襲いかかるシグーに閃光弾を炸裂させた歩兵隊員はラウラのリボルバーカノンに直撃し墜落したドラッツェの下敷きになった。
「くっそぉ…調子にのりやがって」
墜落したドラッツェがマシンガンをラウラに向けるが後ろから迫ったクラリッサに腹を貫かれ爆発する。
「クラリッサ!爆発させるな破片で殺られる!」
「しかし!っ!」
IS隊はIS隊で歩兵隊員の気にしてられる状況ではなく。巻き添えを喰らい殺られる隊員が続出する。
「足がぁ!足がぁ!」
「お姉さま!少佐!助けてください!助けて…きゃゃゃ!!」
「熱い…熱い……」
発射直後の空薬莢が身を焼き、吹き飛ばされた武器が足を砕く。
「こちらシュバルツ・ハーゼ隊!支援砲撃を要請する!戦車隊はまだ立て直せないのか!」
「そこには味方の部隊が多すぎる、誤爆の可能性が高い以上支援砲撃の要請は受けられない」
「そんなこと言っている場合か!」
「リミィ!後ろだ!!」
シュバルツ・ハーゼ隊のISパイロット、リミィの後ろに現れたのは薄紫色の機体、顔のバイザーがサングラスを沸騰させるデザインだ。
「フッ…」
薄紫色の機体、百万式は粒子変容ビームサーベルを振るいリミィの左腕を生身ごと切り裂いた。
「きゃぁぁぁ!」
絶対防御を正面から切り裂いた百万式はすぐにその場を退避し逃げる。
「クソッ!まて!!」
「痛い痛い痛い!このやろぉ!!」
切り裂かれた左腕に迫る大量の敵、リミィの冷静な判断力を完全に奪うには十分すぎた。痛みと敵を排除しようと右腕に保持しているマシンガンを乱射するリミィ。
「止めろ!同士討ちになるぞ止めろ!」
「うわぁぁぁぁ!死ねえ!死ねえ!」
味方の攻撃でダメージを受けたラウラが叫ぶが混乱している彼女には届いておらず乱射し続ける。
「止めろ、シュバルツ03!射撃を止めろ!」
「あああぁ!」
「クソッ!どうすれば!!」
「あああぁぁぁぁa……」
混乱するリミィを見かねたのか巨大なランスが彼女を貫いた。このランスにラウラは見覚えが有りその名を呟く。
「ロンゴミニアドだと…」
「無事かシュバルツ・ハーゼ隊!」
「貴様仲間を撃っておいて…」
「止めろクラリッサ!仕方がない!…救援感謝する」
駆けつけたイルフリーデに噛みつかんばかりのクラリッサを諌めるとラウラは素直に礼を述べた。合流したのはイギリスのIS隊、イルフリーデ、セシリアを含む5機だ。
「ラウラさん、狙撃しますわ!援護を!」
「分かった!」
ラウラはシュバルツェア・レーゲンの左手をかざしAICを発動、3機のジンの動きを止めるとセシリアが3機のスラスターを撃ち抜いた。
その場に擱座するジンを横目にセシリアはブルーティアーズを展開、こちらに向かってくるティエレン2機にオールレンジ攻撃を加える。
「性能は良いようだが練度はいまいちだな」
「やはり、最近失踪したテロリストでしょうね」
「各機、倒せない相手ではないぞ!」
イルフリーデの指揮に盛り上がるIS隊。その時、後ろの坑道が爆発しそこからウーンド・ウォードEXが出てきた。それに続くように6機のISも続く。
「来た!」
「大佐が居ないぞ!」
「なんだと!」
フォルガー大隊が出て来たことで沸き立つ兵たちだがフォルガーの不在に気づくと一気に青ざめる。
ー推奨BGM《鎮魂の鐘》ガンダムビルドファイターズトライー
ギリギリのところで脱出した残存のフォルガー大隊を狙う影、ハイメガキャノンを構える百万式の姿があった。
「あれが対の転生者、ここで終わりだ!」
圧縮されたビームが解放され強力なビームの本流がクロイたちに襲いかかる。
「くっ、Iフィールド!」
クロイは装備していたシールドを前面に展開、内蔵されているIフィールドでビームを受け流す。
「く、くうぅ…」
Iフィールドで受け流し視界を塞いでいたビームが途切れると目の前に現れたのは百万式。
「メガシキだと!」
クロイはサーベルを抜刀と同時に頭部バルカンポットで牽制を始める。だが百万式はバルカンの攻撃を無視してサーベルを振るう。お互いのサーベルが干渉し合い生じた光が二人を照らす。
「ヤバい!」
サーベル出力の差で突破されそうになったクロイは百万式を蹴り飛ばし間合いを取る。すかさずライフルを数発撃ち込むが百万式もロングライフルを取り出し飛来するビームを全て撃ち落とした。
「化け物か!コイツまさか…」
「流石は対の転生者、操縦技術も良いようだ…だが」
右手にライフルを左手にサーベルを、お互いが高い機動性を発揮し斬り合い撃ち合う。だな機動力ならウーンド・ウォードの方が分がある…なのにドッグファイトで翻弄されているのはクロイの方だった。
「動きが読まれる!」
「そんな単純な動きではな!」
最高の頭脳を手にしたハルトにとって相手などチェスの駒と変わらない。人間と言っても一連の動作で行動するのは間違いない。そこさえ分かってしまえば後はどうとでもなる。
「怯えろ!」
ハルトはクロイを地面に叩きつけライフルを撃ち込む。クロイもシールドのIフィールドで防いでいるがだいぶ苦しそうだ。
「竦め!」
ウーンド・ウォードの胸部装甲を右足で踏み締めビームサーベルを構える。
「MSの性能を生かせぬまま死んでゆけ!」
「クソッ!」
「やらせん!」
突き立てるように降ろされるサーベル、それを体当たりで阻止したのはラウラだった。
「ええい!」
「お行きなさい!ビット!!」
邪魔するラウラを殺ろうとすればセシリアのブルーティアーズが襲ってくる。しかし4機のブルーティアーズは百万式のバルカンですぐに墜とされてしまう。
「そんな!わたくしのブルーティアーズが」
「失せろ!ネメシスの娘!!」
「それは父の…きゃぁ!」
ロングライフルの高出力ビームを浴びせられ吹き飛ばされるセシリア。
「セシリア!!このぉ」
それを見て激昂したラウラがプラズマ手刀を振りかざし振るうがその前に首を絞められ息が出来なくなった。
「う、ぐうぅぅ…」
《搭乗者の生命に重大なダメージ》と表示された警告を横目にラウラは絞められた首をなんとかしようと藻掻く。
「隊長!」
「窒息じゃない!首の骨をへし折る気だぞ!」
メリメリとラウラの首から音が鳴る中、クラリッサとイルフリーデがラウラを助けようと藻掻くが大量にいるMSたちがそれを許さない。
「少佐から手を離せ!!」
「くっ!」
地面にめり込んでいるクロイはライフルを撃つが避けられる。ハルトは蹴り飛ばそうと右足を上げた瞬間シールドで殴られ体勢を崩す。
「うっ…」
「彼女を頼む!」
ハルトの手から開放されたラウラはそのまま意識を失いISも強制解除される。それを受け取ったクロイはすぐに横にいたイギリスのIS隊員に渡し追撃に出る。
「邪魔ばかり入る」
「待て!」
ーー
連合軍本隊後方。
「てやぁ!」
鈴の蒼天華月を振うがジンの重量刀によって防がれる。突撃砲を構えゼロ距離射撃を噛まされる前に衝撃砲で地面に叩き伏せる。
「フィーリア!」
「おうけぇい!」
フィーリアの新機体《ゼフィランサス》はブルパップマシンガンとビームライフルで次々と敵を無力化していく。その後ろを護るようにシャルロットはショットガンを撃ち放つ。
「このぉ!」
「一夏!下がれ!!」
一夏はシグーと何度も斬り合うが他の敵もあって倒せない。すると箒は後方から雨月を振るいレーザーを発生させるとそのレーザーは他の機体を牽制しシグーのスラスターを破壊する。
「流石だな、箒!」
「当然だ、私だぞ」
戦場においても二人は問題なく活動できている。だが二人は気づいていないここは戦場なのだと。
そんな二人を横目にユイカは蜻蛉切りをドラッツェに突き刺す。ドラッツェの傷口からは血が噴き出し機能を停止させる。
「まだだ、これじぁ…っ!」
敵を一瞥している途中、その背後からゲイツRがシールドからビームサーベルを出力させ襲いかかった。つばぜり合いの刹那、ゲイツRは腰のレールガンを撃ち放ち離脱する。
「こいつら、今までと違う!」
「さぁ、ここからが本番だ!行くぞ野郎共、革命軍の為に!!」
「「「「革命軍の為に!!」」」」
テロリストの首領、モルドウィッチは自身に与えられた機体、ケンプファーのモノアイが激しく光るのだった。