IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第三十三革 散々たる勝利

 

 

ーフォルガーがガンダムを手に入れるまでー

 

足を撃ち抜かれフォルガーの愛機であるフレーダーマオスの計器が急激に低下していくのをフォルガーは視認していた。

 

「ハイドロ消失!駆動パルス低下…くそっ!当たり所が悪いとこんなものか!」

 

一気に重くなった機体などただの枷でしかない。目の前に敵機が武器を掲げている以上離脱せねばならない。

素早く周りを見渡すとダスト・シュートのような穴を見つける。

 

「マオス、すまない…」

 

コアを取り出す暇はない。ISを強制解除させシールドエネルギーを切ると身を小さくしダスト・シュートに飛び込むフォルガー。背後から爆発が巻き起こるのを感じたフォルガーは暗闇を滑るのだった。

 

ーーーー

 

「う…くそ……」

 

どうやらかなりの高さを滑り落ちたらしくフォルガーは全身から来る痛みに顔を歪ませ立ち上がる。着地地点が柔らかい所なら良かったのだが生憎、あのダスト・シュートは部品運搬ようのようで硬いボルトの集団に頭を突っ込む羽目になった。

 

「……駄目だ、繋がらん」

 

持っていた無線も爆発の影響で不調らしくノイズしか出さない。無用になった無線を捨て辺りを見渡すが真っ暗で何も見えない。

 

「うお!ビックリした!」

 

持っていた超小型の懐中電灯で前を照らした瞬間、目の前には紺色の装甲に包まれた機体の足があった。見上げてみるとISより少し大きいサイズであるのが分かるそれにこの顔は。

 

「ツインアイか、敵の隊長機が乗ってたのと同タイプか…」

 

一応!クロイの機体もガンダム顔なのだが顔が見にくいうえに独特な形状をしているせいでフォルガーには分からなかった。

 

「コイツ、動くのか?」

 

胸部及び腹部装甲が大きく開き乗り込めるようになっている。中の計器は正常のようで息をしているように薄く光っている。

 

「ハッ!まだ働けってか?良いだろうやってやる」

 

フォルガーはフルアーマーガンダムに乗り込み機体を勢いよく発進させるのだった。

 

ーーーー

 

「大佐!」

 

「大佐!ご無事で!!」

 

「クラネル、クラリッサ…心配をかけたな」

 

フォルガーの元にドイツ軍が再集結を果たし現行戦力は日本あわせて8機ほど、目の前にいるサイコガンダムにら明らかな戦力不足と言えた。

 

「大佐、こいつはISでは…」

 

「イギリス海軍に砲撃要請だ。F4からF5までを面制圧」

 

「艦砲射撃で仕留めると言うのか!」

 

「いや、行けるかもしれん…思いのほか、奴の動きは鈍い」

 

フォルガーの提案に賛同したのはイギリス代表のイルフリーデ、彼女はサイコガンダムをよく知っている。仕留めるチャンスがあるとすれば砲撃後によるコックピットの破壊だろう。

 

「艦砲射撃で奴の動きを封じ我々が叩く、狙いは頭部だ。恐らくあそこに重要機器があるはずだ、砲撃は四十秒後、それまで我々は奴の注意を集める」

 

「決まりだな」

 

「仕方ない、やるしかないか…」

 

イルフリーデの案に乗るフォルガーと楠木。3人はサイコガンダムを倒すために行動を開始するのだった。

 

ーー

 

湖のイギリス海軍派遣艦隊はイルフリーデからの要請を受け砲撃準備に入る。

 

「各艦砲撃用意、目標作戦区域F4よりF5…発射まで三十二秒」

 

「おやおや、もう始まってるね」

 

「当たり前だろう、何日経ってると思ってるんだ!」

 

「旅はその課程を楽しむものだよ」

 

「私は旅をしに来たのでは無い!もう二度タランチュラなど食べるかぁ!!」

 

艦隊のレーダー圏ギリギリのラインを高速で走行する二つの影。この二人は文句をタレながらも確実にラサ基地へと向かっていくのだった。

 

ーーーー

 

「艦隊は砲撃要請を受領した!それまでひきつけるぞ!」

 

「任せろぉ!」

 

サイコガンダムの頭部ビーム砲が飛来するがフォルガーは4枚のシールドで防ぎきる。それと同時に二連装ビームライフルを撃ち放つ。

穿たれた肩は赤く発光するが溶けない。排熱処理も万全なようだ。

 

「やっぱり駄目か!」

 

「牽制する!各機、頭部に狙いを集中!!」

 

持ちうる火力を頭部に集中、巻き起こる爆煙にサイコガンダムはカメラの視界を塞がれた。だがそれで止まるほどサイコガンダムは柔ではない、腹部、頭部、指のビームを一斉射。

 

「きゃぁ!」

 

「乱数回避!」

 

拡散ビームにやられ墜落する精鋭たち。その時、艦隊から艦砲射撃が行われた。

 

「艦隊の砲撃を確認!着弾まで七秒!!」

 

「全機急速反転!離脱しろぉ!!」

 

楠木の怒号に全機がその場を離れる。その瞬間、砲弾の雨が戦場を彩りサイコガンダムを包む。着弾の地点が近かった影響で本隊は余波に包まれ外にいた人などは紙のように飛ばされる。

燃え盛る爆炎の中、サイコガンダムはいまだに健在だった。

 

「なん…だと……」

 

艦砲射撃を持ってしても沈まないサイコガンダムを見てそれを見ていた全員が唖然とする。かなり損傷してはいるがまだ戦闘が出来る様子を見て戦意が喪失してしまう者も居る。

 

「どうやって勝てば良いんだ!」

 

「通りますよぉ~」

 

その瞬間、本隊を囲んでいたMS隊の更に後方から強力なビームがサイコガンダムの頭部を貫き破壊した。頭部を破壊されたサイコガンダムは糸の切れた人形のように崩れ去ってしまう。

 

「あの大火力、ハイメガか?」

 

「よそ見をしている場合か!!」

 

千冬と刃を交わしていたハルトもやられたサイコガンダムを見てビームが飛来した箇所を見やるが残念ながらそんな暇などなかった。

 

「織斑千冬、これ程とは…」

 

ひび割れた太刀を見やりハルトは千冬との力量の差を感じ取っていた。それでもまだ一太刀しか入れられていないハルトも充分強いのだが。

 

「貰った!」

 

「ちぃ!!」

 

千冬に気を取られていた所を復帰した一夏の零落白夜が襲う。ひび割れた太刀が砕け肩の装甲を持って行かれた。

 

「どうだ!」

 

「忌々しい」

 

サイコガンダムがやられた以上、作戦の継続は困難だ。兵力はまだ残っているがこれ以上の損失は面白くない。

 

「ビルゴの行動範囲を基地内に絞ったのは駄目だったか…流石にハンデをつけすぎたな」

 

「なんだと!?」

 

「いくら一騎当千の強者がいようと関係ない!戦場は一人で変えれるほど柔ではない」

 

ハルトは信号弾を上空に撃ち出し撤退の合図を出す。

 

「待て!逃がすと思うのか!!」

 

「待て!一夏!!」

 

「千冬姉、止めないでくれ!」

 

果敢に前に出る一夏を千冬は止める。全体的な戦況を見れば革命軍が退いてくれるのはとてもありがたいものなのだ。

 

「織斑一夏、貴様は守れたか?仲間とやらを?」

 

「っ!」

 

ハルトは嘲笑うように言葉を発すると一夏は苦悶の表情を浮かべた。

 

「仲間を守る?大層な目標だ、だがお前はガキと変わらない…夢見る子供とな」

 

「ふざけるな!その為に俺は強くなってるんだ!」

 

「ハッ!その努力の成就と仲間の死…どっちが早いだろうな…仲間に守られてるくせに守るか…面白くて笑い死にそうだ」

 

心の底からの言葉に一夏は言葉を発せず隣にいた千冬も黙ったままだ。ハルト自身もかなり溜飲が下がってきたようで大きくため息をつくとこの場を飛び立つ。

 

「お前のために何人死ぬか俺はしっかりと数えてやる、精々頑張るんだな、努力ってやつを」

 

ハルトの言葉は一夏の心に大きく刺さるのだった。

 

ーー

 

「撤退命令だと?」

 

モルドウィッチは上空に放たれた信号弾を見て呟く。彼のケンプファーはボロボロで大破寸前、対する楯無は無傷。実力差は歴然だった。

 

「あら、もう逃げるの?逃がさないけどね」

 

捕虜は何人か必要だそれにコイツはかなり上にいる人間、なんとしても楯無は捕まえたかった。ランスによる腹部を一突き、これで意識を貰う。彼女はほんの少しだけ油断していた。

 

「そう簡単に捕まるかよ!」

 

モルドウィッチが取り出したのはチェーンマイン、楯無はそれを見ると急速に回避するがショットガンで空中爆発を起こし爆圧で吹き飛ばされた。

 

「きゃ!」

 

予想を遥かに超える威力に楯無は驚くがそれ以上に姿を消したケンプファーを見て歯がみするのだった。

 

ーー

 

追いつめられ近くの岩に身を隠しながら応戦していたフィーリアはゼク・アインが退いていくのを見てため息をつく。

 

「はぁ…死ぬかと思った……やっぱり手加減してくれないねぇ」

 

流石に疲れたようでそのまま岩に背を預けて座り込むフィーリアだった。

 

「各隊、被害を報告しろ…追撃不要、全く反吐がでるぜ」

 

「なんとか…だな」

 

「MKーⅡなんて出てきたらどうしようかと思った…」

 

サイコガンダムを相手取った3人も流石に疲れたようで酷い顔をしている。

 

基地内から命令を受けたビルゴたちが次々と出てきており、囲んでいたMSたちも順次に撤退を開始し退いていく。それを追撃するほどの力など連合軍には残っておらずそれを黙って見守るしかなかった。

 

 


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