「更迭される!?この私がですか?」
「アリス様の作戦に泥を塗ったのよ!連合軍の攻撃により疲弊した革命軍を強襲、殲滅の予定が未完成な機体の暴走で全て台無しよ!」
デュノア社の社長室でふんぞり返っていたミレイアは主義団体から来た連絡に顔面蒼白だ。
「しかし、未完成でも納入するようにと指示されたのは貴方ではありませんか!」
「あの機体の原因不明の暴走のせいで敵は一発の弾を消費すること無く我々は10機以上のISとコアを一つ失ったのよ」
機体のことには触れられても失った人員などどうでもいい。女性主義団体の為に汚れ仕事を引き受けていた者達の末路などこんなものだ。家族にはIS実験中による事故としか通達されない辺り、頑としてこの事実は隠し通す腹づもりらしい。
「デュノア社は我々が引き継ぎます、貴方はしばらく大人しくしているのね」
「くっ…」
「日本では貴方のことを三日天下と言うらしいわね。お疲れ様」
「まっ!」
ツー、ツー
一方的に電話を切られ他のを確認したミレイアは電話を投げ捨てるとその場に泣き崩れるのだった。
ーーーー
「さて、これからどうするか」
「社長、エドワルド・クランク氏に連絡を取られては?」
「私はもう社長じゃないよ。クランク氏か…応じてくれるだろうか」
フランス、パリ市内。そのカフェでデュノア社から追い出されたエルワンとそれを慕って共に出た社員たちが今後の方針を話し合っていた。
その数、実に40人近く。これだけでも彼の人望の高さが伺える。
デュノア社の優秀な技術スタッフが根こそぎ離反したため、ブルーデスティニーの件が無くとも倒産していたのは確実だろう。
「連絡を取ってみようか…」
登録してあった番号にかけるエルワンの姿をスタッフは固唾を呑んで身も守る。
「これは、これはデュノアさんどうされたので?」
「クランクさん、実はーーーー」
エルワンは懇願するように電話に出たエドワルドに対し身に起きた出来事を話すのだった。
ーー
ー
「なるほど…。分かりました私のスポンサーに話を通しておきましょう」
「本当ですか!」
「あくまで私はスポンサーと話し合いの場所を作るだけです。そこからは貴方次第だ」
「分かりました!」
歓喜の声に満ちたエルワンの声にスタッフも思わず笑顔になる。これで家族たちを路頭に迷わすことはないだろうと歓喜の声を上げた。
「それで?スポンサーとは?」
「最近有名になってきた団体ですよ。なに、あなた方なら大丈夫です」
「はい!」
「場所と日時は連絡しますが取り敢えずオーストラリアまでいらっしゃってください。チケットはお送りします」
「何から何まですいません」
「なに、困った時はお互い様ですよ…では」
歓喜するエルワンとそのスタッフたち。だが彼らはまだ知らないその《スポンサー》の正体に…。
ーーーー
「いや、しかし大量ですね」
「そうだな、これでMS開発も進展するだろう」
イギリス軍、空母には大破したISと無事だったISが並び悲惨な状態だ。だがそれと向き合うように配置されたMSたちは希望の象徴とも思えた。
F91、ヘビーガン、Gキャノンはラサ基地の格納庫からイギリスが頂いたものだ。現在開発途中のMSもこのMSが搭載している主機をコピーして完成まで漕ぎ着けるだろう。
「長年の計画がついに成就されます…」
「うむ、これも全ておまえのお陰だな…」
イルフリーデが喜ぶのも無理は無い。MS開発のために今の立場になったと言っても過言では無いからだ。彼女の喜びようにゴルドウィンも見守っていた。
「あの…これはモビルスーツと言います…ひっ!」
同じくイルフリーデの様子を見ていたセシリアはゴルドウィンに見られ物陰に隠れる。そこまで露骨に避けられると流石のゴルドウィンも内心ショックだったりする。
「そうだ、男も女も使えるこの兵器はこの世界を変えるだろう」
「私が発案したのだがな」
「イルフリーデ様が?」
「あぁ」
驚いた。憧れのイルフリーデがそこまでの事を考えていたとは。彼女は純粋にイルフリーデを尊敬する。
「くじ運さえ良ければもう一機来たのにな…」
個人的にはジェガンも欲しかったイルフリーデではため息をつくがこればかりはどうしようも無かった。
ーーーー
2時間前、大量のMSを回収した連合軍はMSの取り分をどうするかで揉めていた。IS一機でしか参加していない中国やフランスなどが自分たちにも取り分を主張してきたからだ。
鈴やシャルロットは正直どうでも良かったので黙り。通信で叫ぶ自身の国の外交官の声を空を見ながら聞いていた。
「お黙りなさい」
シャネラの有無を言わさない言葉に反論していた者達は軒並み黙るのだった。
本格的に参加した国には最低3機、ISのみの参加は1機のみ+選択権は無しっとされた。
参加国の中で平等にくじ引きで機体選択優先権を選んだ結果。各国は3、4機ほどの機体を確保した。
イギリスは前の記述通り。
日本は一番当たりが良く、ガンダムXディバイダーに互換性のあるジェスタ、ジェガン、リゼルを獲得した。
ドイツはTRシリーズ開発のためにジムⅢ、ジムカスタム、ジムククゥエル。
ロシアはMS研究のためオーソドックスなジムとその強化発展型のジーライン。そしてリーオーとサーペント。
他の国もしっかり頂いて幕切れとなった。
ーーーー
同じ海路を渡りイギリスの後ろを航行していたのはドイツの艦隊。
その旗艦である空母の医務室では負傷したラウラが眠っていた。IS学園には本国への戦闘報告のため一度ドイツに帰還させるとなっているためラウラが眠っていることは知らされていない。
「ん…」
眠りながらも若干、苦しそうにもがくのを副官のクラリッサは心配そうに見つめる。苦しむラウラは夢を見ていた。
ーー
「……」
「お前は、誰だ…」
緑豊かな広葉樹林、目の前には川が流れせせらぎの音はとても穏やかだった。川の横にはポツンと切り株がありそこには栗色の髪を持つ女性が座っていた。
「……」
ラウラの声が届いたのか座っていた女性はこちらに振り向く。その女性は青い瞳でラウラを見据えるとゆっくりと立ち上がる。
(お前は私に似ている…)
「頭に声が…」
耳からでは無く頭に響く声にラウラは驚く。
(戦うために作られ、戦い。そして光を見つけたお前は…)
「なにを…」
ラウラは意味が分からなかった。それはそうだろういきなり現れて好き勝手言われていたら誰でも混乱する。それが摩訶不思議空間となればなおさらだ。
(お前が望めば私が楯となり矛となろう…)
「お前はISなのか…」
まさかの可能性、ISのコアは人間らしい感情を得ている。と言う説を耳にしたことがある。
(いや、それに似て非なる物だ…待って居るぞ…)
「待て!」
立ち去ろうとする女性を留めようと一歩踏み出したラウラが見た光景は医務室の天井だった。
「なに…が…」
「おや、目覚めたかい?」
「隊長!よくぞご無事で!」
急な出来事に呆然とするラウラには喜ぶクラリッサの声もなにも聞こえていなかった。ただあの光景を思い出す。
「あいつは誰だ…」
ーーーー
「まったく、ビーム撃ってそのまま逃げるなんて…」
「ははっ、まだお披露目は早いよ」
ヘンリーのGフォートレスはツインアイの拡大モードで革命軍の空母レウルーラを捉えていた。
「ここも傍観なのか?」
「当然、今はその時期じゃ無いよ…」
各国の保有する情報は革命軍に筒抜けだ。自分たち対の転生者の素性が露見すれば寝る暇も無くなるだろう。本格的に敵対するのはまだ先、今は闇に徹するのが堅実だ。
「乗り込むか…」
「え…」
広がる熱帯雨林の中、ティルミナの声が虚しく響くのだった。
ーー
「やぁ、やぁ…」
「お疲れ様です!」
革命軍旗艦レウルーラが寄港している隠し港にの入り口にはゼク・アインが見張りに立っていた。そこからは堂々と入ろうとするヘンリーとティルミナ、この二人にゼク・アインはなんの疑いも無く通した。
「本当に通った…」
「やってみるもんだね♪」
物資見込みのために慌ただしい港は警戒の目は無く。人が世話しなく行き来している。そんな中、ヘンリーはその一人を捕まえる。
「あの船ってどうやって乗れば良いの?」
「ちょっとヘンリー…」
「合流したテログループの方々ですね。今は物資搬入が忙しいので艦首付近の出入り口からどうぞ」
「ありがとね♪」
軽やかに進む二人は難なく艦内に入ってしまった。この事実にティルミナは呆然とする。
「世界各国の組織が革命軍を追ってるって言うのに…」
「今は忙しいからだよ。さぁて、自分の部屋でも探そっかなぁ」
いつも以上にテンションの高いヘンリーにティルミナは大きなため息をつくだけだった。
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