IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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書き方は試行錯誤中で安定しません。
今回も前回とは違います。




第四十革 血祭り兎

 

 

 

「くそっ!」

 

ラボ上層部ではゴーレムと革命軍一番隊による戦闘が行われていた。

一番隊に所属するグレイズはバトルアックスでゴーレムⅠの太い腕を受け止めマシンガンを撃ち放つが削れるシールドエネルギーは微々たるものだった。

 

「次々と湧いてくるぞ!」

 

「どんだけいるんだよ!」

 

グレイズリッターはその剣でゴーレムⅢのコアを貫くが次々と湧いてくるゴーレムたちに苦悶の声を漏らす。

 

「行きますわよ…」

 

「いつでもオッケー!」

 

「さっさとやろう!」

 

「親衛隊だ!」

 

ゴーレムのビームをフォビドゥンを駆るシーレがコントロールすると背後からレイダーとカラミティが現れる。

背後に伏せていた2機は各砲とハンマーと放ち次々とゴーレムを鉄屑へと変えていく。

 

「ゴーレムは我々親衛隊にお任せを…。一番隊は内部の制圧活動を…」

 

「了解です。各機内部へ侵入する!」

 

「「「ハッ!」」」

 

内部制圧の先陣を切るのはグレイズリッターの部隊、ナノラミネートアーマーの堅牢さとその機動力は狭い空間でも十分に発揮される。

 

「なんだ、人?」

 

目の前に現れた女性を見やり思わず進行を止めるグレイズ・リッターだがその瞬間、その女性は人間ではあり得ない跳躍を行うと刀のようなもので首元を狙う。

 

「こいつ!?」

 

「人間じゃない!戦闘アンドロイドだ!」

 

狙われた首元をなんとか避け、エイハブ・リアクターの部分に当て弾く。

すかさず剣を振るうが戦闘アンドロイドは華麗なフォームで避けきると静かに着地する。

 

「いっぱい来たぞ」

 

「おんなじ顔ばっかじゃねえか」

 

無表情の女性集団が剣や銃を持って波のように襲ってくるのは一種の気味の悪さを感じさせる。

 

「すばしっこくて当たらねぇ!」

 

革命軍のMSのサイズは基本4メータからメータ弱の巨体に対し戦闘アンドロイドは日本女性の平均身長並とかなり小さい。このような限定空間では小さい方が分がある。

 

「……」

 

「バカにしやがって…うわっ!」

 

グレイズがバトルアックスでアンドロイドを粉砕するとオイルが飛び出しまるで返り血のように機体にかかる。

倒したのもつかの間、脚部の関節部に攻撃を集中させられ擱座してしまう。

 

「大丈夫か…ひっ!」

 

「た、助けてぇ!」

 

擱座したグレイズが狙い目だと察したアンドロイドたちはエサに群がる蟻のように機体に殺到、手にしていた剣でメッタ刺しにされる。

 

「ダンジ!」

 

「下がれ!」

 

他のグレイズが助けようと駆けるがその後ろにいたドライセンの言葉に従い全員が下がる。

投げられたのは少し大きめの手榴弾のようなもの、それは空中でバラけると小さな爆弾を周囲に撒き散らし群がっていたアンドロイドたちを一掃した。

 

「小型のクラスター爆弾か…」

 

「生きてるか」

 

「二重の意味で死ぬかと思ったぜ」

 

「俺達は進軍するぞ!」

 

「「「はっ!」」」

 

シールド・バリアとナノラミネートアーマーのおかげで助かったグレイズはドライセンに運ばれるのだった。

 

ーーーー

 

「おらぁ!」

 

アルケーのバスターソードがゴーレムを粉砕すると隣に居たデスティニーが背中に懸架されたビーム砲を撃ち放ちハッチを破壊する。

破壊したのは長距離弾道ミサイルの発射口、マドカのインコムが内部に伸び中のミサイルを破壊する。

 

「爆発しない?」

 

「脱出用だな、こっちに部隊を向かわせる」

 

「クラウド、マドカ。行くぞ」

 

「「了解」」

 

巨大な発射口から3機のMSが一気に中枢部へと進行する。

 

「もうここまで!」

 

隔壁を粉砕したリョウの目の前に居たのはクロエだった。クロエはIS《黒鍵》を展開しブレードを展開する。

 

「クラウド!」

 

「ハァァァ!」

 

リョウの叫びによって前に出るクラウド、それに対しマドカたちは束を抹殺するために更に奥へと向かう。

 

「くぅ!」

 

クラウドの振るうアロンダイトと黒鍵のブレードが交差し火花が散る。

黒鍵が元々戦闘用ではない、デスティニーのパワーに吹き飛ばされると頭を鷲掴みにされる。

 

「死ねぇ!」

 

「っ!」

 

クロエの目先で閃光が膨れあがり、ゼロ距離ビームが彼女を容赦なく襲いかかる。

ほぼゼロ距離の光によって視力が急激に落ちたクロエは為す術もなく高速で迫るデスティニーを視認できず蹴り飛ばされる。

 

「カハッ!」

 

「……」

 

悶え苦しむクロエに対しクラウドは何も言葉を発さない。ISに対する憎悪と怒りが高まりすぎて逆に冷静になっているためだ。

 

「束さまぁ…」

 

光を失いながらも必死に手を伸ばしブレードを手探りで探す。その姿は実に痛ましく同情を禁じ得ない光景だった、誰もが情けをかける状況だろう。

 

「……」

 

「う、うぐぁぁ!」

 

だがクラウドには通じない、左手で首を掴み高く持ち上げる。クロエは苦しみ悶えるがそんなこと彼にとってはどうでもいいのだ。

目の前の敵は殺す、その行動は研究所時代からの掘り込みで覚えている。それに対しなんの感情も抱かない。

 

「た…ばね……さ……」

 

「……」

 

酸欠で頭が回らなくなり言葉すら発せなくなるクロエは口から泡を吹き出し白眼を向いている。

そんな彼女に対しクラウドはパルマ・フィオキーナを撃ち放つのだった。

 

ーー

 

対核隔壁が溶断され爆発が起こる。その中から出てきたのは2機のMS。

 

「よお、てめぇが篠ノ之束か」

 

「……」

 

用意していた備えを全て叩き潰され最重要区についにリョウのアルケーが足を踏み入れた。

 

「うるさいクズ共!」

 

流石の束も堪忍袋が折れたようでアルケーに対し攻撃を始める。

人間ではあり得ない速度で迫る束に対しリョウはバスターソードで迎え撃つ、普通ならこれで叩き潰されて終わりの筈だ。

 

「なに!?」

 

「リョウ!」

 

負けたのはアルケー、バスターソードが一瞬にして解体されたのだ。すかさず援護に入るマドカだがその前にビームライフルが解体され使い物にならなくなる。

 

「バカな!」

 

「潰れろ!虫けらがぁ!」

 

怒りに満ちた束の一撃に対しマドカは死を悟った。こんな化け物がアイツの他にいたのかと呆然とする。

だがその予感は的中しなかった、カンッと間抜けな音を出し束が止まったからだ。

 

「なんだ?」

 

「そんな!」

 

「今だ!」

 

あまりの事態にリョウと束が困惑するがマドカの行動は速かった。ビームサーベルを抜刀し束を真っ二つにせんと振るう。

 

「くそっ!」

 

束は何とか身をよじりマドカの一撃を避けるが左腕が天井高く飛んでいった。

形勢逆転を悟った束は脱出を決意、どこかしらから煙を出し逃走する。

 

「チャフスモークだと!」

 

サーモグラフィーで周りを探る二人だがカメラにノイズがはしり使い物にならなくなっていた。

 

「逃がしたか…」

 

「はぁ…」

 

煙の中でリョウは悔しそうに呟き、マドカは思わず腰を抜かす。それほどまで彼女は一瞬にして追いつめられていたのだ。

 

ーー

 

「う…」

 

「……」

 

その頃、デスティニーはラボの通路で立ち呆けていた。返り血を浴びツインアイからはその血が流れ落ちる、その光景はまるでデスティニーが泣いているようであった。

 

ーーーー

 

「そうか…逃がしたか」

 

「すまねえ、ユイト」

 

「気にするな、逃げ場所は限られている。しばらく泳がせておけ」

 

「分かった…」

 

束が逃走を図ってから数時間後、ユイトはリョウからの報告を聞き細く微笑む。

例え天災でも出来ることに限りがあるのは事実、ステルス式の移動要塞が手に入っただけでも十分おつりが来るだろう。

 

「計画に関するデータが無傷ならそれでいい」

 

順序に若干の誤差があるが全ては計画通りに事が進んでいるのは喜ばしいことだ。

 

「これでなんの憂いもなく…」

 

「ユイト、デュノア社長がオーストラリアに着いたそうだ」

 

「そうか…」

 

ユイトはクリアの声に対し静かに答えると仮面を着ける。その瞬間、ユイトの外見がゼクス・マーキスに変貌する。

 

「迎えに行ってやるか…」

 

「そうだな…」

 

変貌したユイトに答えるクリアもノインの姿で答える。

 

「さぁ、もっと酷い悪役になろうじゃないか」

 

歩き出したユイトの声は実に楽しげで歓喜に満ちあふれていた。

 

 

 

 






鉄血のオルフェンズ2期開始記念にグレイズ多めでした。


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