「セシリア、ラウラ!久しぶりだなぁ」
「一夏さん!お久しぶりです!」
IS学園に帰還したラウラとセシリアは一夏たちとの再会を果たし笑顔を見せる。
「なんか随分会ってなかったみたいだよぉ」
「フィーリアさんもお変わりなく」
2人の帰還にピョンピョン跳ねて喜ぶフィーリアの姿にラウラも口を抑えて笑った。
「その人は誰よ?」
再会の喜びの余韻に浸っているとき、鈴が指摘したのはラウラと共に来ていたクロイだった。
「あぁ、どうも。クロイ・フォン・ドュートリッヒです。ラサ基地では助けて頂いてありがとうございます」
「あぁ、あの2つ目の」
警戒する鈴に対しクロイは笑顔を見せて自己紹介する、その言葉に反応したのはシャルロットだった。
「私の部下として来て貰った、ドュートリッヒ准尉だ。IS学園の防衛のために本国から派遣して貰った」
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、織斑一夏くん。その子は?」
行儀良く挨拶を交わし握手をする2人。そんな中、クロイはフィーリアの姿を認め疑問を口にする。
「オーストラリアの代表候補生のフィーリア・スタンシーだ。軍人なら知っておけ」
「すいません」
何を言っているのかとため息交じりに注意するラウラ、クロイも笑顔で謝るもののその目は警戒の色が混じっていた。
(原作には居なかった人物だ…)
クロイも転生者で生前はISの本を読んでいた口だ。だがフィーリア等という人物名は聞いたことがない。
こんな世界になってしまったから登場することになった人物か、それとも…。
「では自分はMS隊の編成を」
「あぁ、頼む…」
彼女を疑ってラウラたちの不評を買うのは避けたいところ、疑問を口にしまいその場を後にするクロイだった。
「どうしたのだ、あの人は?」
「フィーリアを疑っているのだろう。オーストラリア政府は革命軍と繋がっているのではないかともっぱらの噂だからな」
「そんな、フィーリアがそんな訳ないだろ!」
「分かっている。私も命を助けられている、それに疑われているのはオーストラリア政府だ。気にするな」
フィーリアが疑われることを知った一夏は気分を害するもラウラは素早く納めさせる。
彼の過剰な反応に疑問を持ちつつもその横でニヤニヤしているシャルロットを見て彼女は疑問を増やすだけだった。
「気にしない、気にしない。誰を信用するか不安な時だし仕方ないよ。まぁ、本当に私が革命軍の一員だったりして」
「だとしたら傑作だ。こんな間抜けなスパイが居たらどれだけ楽か」
「シャル!箒が虐めるよぉ!」
「よしよし…フィーリアは良い子だよ」
「なんか、やっと帰って来たって感じですわ」
「どう言う事!?」
世界がどれだけ混乱して戦火に巻き込まれようとしてもフィーリアたちを見ていると安心する。セシリアはこれ程の友人たちを得て良かったと笑うのだった。
ーーー
革命軍本部、その沿岸部にはガルダが停泊しており補給と積み込みが行われていた。
ガルダの姿を一望出来る少し小高い丘に木で出来た山荘があった、そこでユイトは送られてきた資料に目を通していた。
「ユイト」
「あぁ、ありがとうクリア」
「小川で冷やしてきた、キンキンに冷たいぞ」
熟れて食べ頃のトマトを生で囓りながらユイトは彼女を横に座るように促す。
「美味しいな」
「私も作ったんだ。当たり前だ」
革命軍の本部はジャブローのように島の地下に広がる大入道を元に建設された基地だ、そのため地上施設は一部を除きあまり手を加えていない。
豊かな土と水があるこの島では畑の野菜が良く育つ、回収した強化人間の精神安定の為に行われている畑仕事だが今では革命軍の貴重なコミュニティの場としても機能している。
「何を見てるんだ?」
「アイツからIS学園の地下通路の警備情報に関する資料が送られてきてな…ん?」
大口を開けてトマトを囓るユイトの顔をクリアはジト目で睨みつける。
「なんだ?」
「浮気か?」
「いや、浮気もなにも…。ハルキが言ってきた唯一の頼みだ。気にするのは当然だろう」
「ふーん。最近、アイツの話しかしないじゃないか」
「それは気になるだろう。アイツだってこの世界の被害者だ」
「それはそうだが…」
クリアにとっては難しい所だがこればっかりはユイト次第で仕方がない。彼女は大きなため息をつきながら海に浮かぶガルダに目を向けるのだった。
ーー
「やぁ、ちーちゃん」
「束…」
IS学園の地下施設、その最奥の部屋で束は目を覚まし千冬と言葉を交わしていた。
「まさかお前がこうなるとはな」
「私もクズどもに毒牙を突き立てられるなんて思わなかったよ」
束の全身には悪性GN粒子による細胞障害が侵食し体はもう満足に動けない。それどころか言葉を重ねるのも億劫になってくる。
「あぁ、殺しても死なないお前がこんな不様な姿を見せられるのは勘弁して欲しい」
「ひどいなぁ…。私はれっきとした人間だよ」
「冗談もやすみやすみに言え」
「……」
意識を取り戻し心のどこかで一安心する千冬、すっかり気の抜けていた彼女は気づかない。自身の後ろ、壁を挟んで会話を聞いている人物の存在を。
「ちーちゃん、これあげる」
「これは…」
束が震える手で彼女に渡したのは篠ノ之神社のお守り。
「もう私にはなにもできないか」
「バカを言うな。革命軍の正体を突き詰めて必ずお前を治してやる」
「わー、ちーちゃんが珍しく優しい」
「鉄拳で沈めてやろうか?」
「さすがに死んじゃうかも」
千冬の言葉に束は苦笑いしながら笑う。それを見た千冬も静かに笑みを浮かべ笑いあうのだった。
ーー
「フィーリア?」
「どうしたんだ?」
「……」
IS学園の廊下で話していた箒と一夏、2人は彼女に向けて声もかけるもフィーリアは物凄い形相で歩き去って行った。
「どうしたんだ?」
「……」
疑問符を頭に浮かべる一夏に対し箒は両手で自身を抱いて震えていた。
(さっきのは本当にフィーリアか?)
ラサ基地で味わったより強力な殺気、いつも天真爛漫な彼女からは想像できない姿だった。
「フィーリア、お前はいったい…何者だ?」