IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第四十九革 第2次IS学園攻防戦 ―手練れ―

 

 

 

 グレイズ隊に襲いかかるビーム、生身の人間であれば擦らずとも焼き尽くす閃光が無数に迫る中彼らの歩みは止まらなかった。

 

「接触までもう間もなくです!」

 

「速度を緩めるな、このまま突撃するぞ」

 

「はっ!」

 

 シールドを前にしつつ前進するグレイズだったがその中の1機がビームの直撃を喰らった。

 

「やった!」

 

「なんだ!?」

 

 直撃コースのビームは機体に当たるも拡散し消滅する。

 

「Iフィールド…いや、対ビームコーティングかグレイズにあんな機能が!?」

 

 それを見たクロイは思わず驚きを声に出してしまう。それは上空で待機していた光一も同様だった。彼ら二人はナノラミネートアーマーがビームを弾くと言う事を知り得ていなかったのだ。

 

「指揮官、ドイツ軍フォルガー大隊クロイ准尉。意見具申、敵は対ビームコーティングを施している模様、実弾主体のIS隊の増援が必要と思われます」

 

「その様だな、IS隊を海岸線にあげると同時にMS隊でその穴を埋めさせろ」

 

 指揮官の素早い対応にクロイは感謝するが気付いたのが遅かった。敵はもう目の前に迫っている。

 

「くそっ!」

 

 ジェガンのシールドランチャーが火を噴きグレイズに飛来するが楯に阻まれハルバードが振るわれる。

 咄嗟にシールドで防ぐジェガンだが突き立てようとしたビームサーベルも拡散されてしまう、反撃のしようが無い。

 

「このぉ!」

 

 力押しで押し切ろうとしたグレイズは横合いから現れたシャルロットのショットガンを喰らい吹き飛んだ。

 彼女の得意技であるラピッド・スイッチによる武器交換でアサルトライフルを構え追撃する。

 

「もらった!」

 

 だがその追撃はカバーに回ったグレイズの楯に阻まれ彼女の後ろから地上型グレイズが剣を振るう。

 

「っ!」

 

 なんとかシールドで受け止めたシャルロットだが右手を掴まれ反撃が出来なくなっていた。

 

「シャル!?」

 

 援護に駆けつけたラウラはプラズマ手刀を展開し突っ込むがグレイズのハルバードに阻まれる。ラウラは左手のAICを起動、動きを止めリボルバーカノンで吹き飛ばそうとする。

 

「邪魔だ!……っ!」

 

 リボルバーカノンを撃ち放つ直前。地上型グレイズ2機がラウラの両サイドからライフルで迎撃、AICを解除され止められていたグレイズが彼女をハルバードで切り裂いた。

 

「ぐっ!」

 

「ラウラ!」

 

 海岸線のMS隊の危機に駆けつけたのは代表候補生の遊撃部隊。駆けつけた一夏の雪片弐型は易々と弾かれる。

 

「ラウラ、大丈夫?」

 

「あぁ…」

 

「この方々、軍人ですわね」

 

 援護に駆けつけた鈴とセシリアが駆けつけ会話を交わす。代表候補生は軍隊で訓練をする故に気付いしてまうのだ。テロリストの戦い方ではない軍人の戦い方だと。

 

「しかもかなりの手練れだ」

 

 個ではなく群の戦い、1機にダメージを与えてもすぐさま他の機体が対応してくる、しかも隙が無く一瞬のうちに袋叩きにされてしまう。

 

「これが先遣隊とは革命軍はどうやら本気らしい」

 

「敵味方入り乱れてて射角が…」

 

 ユイカも蜻蛉切り、簪も薙刀で対応するが敵の攻撃に防戦一方だ。

 

「よし、戦闘隊長が来るまで上陸地点を確保しろ」

 

「了解」

 

「マレナ、上だ!」

 

「っ!」

 

 防衛線に大きな穴が空き撤退を余儀なくされる防衛隊、このままでは次の攻撃隊は無傷で上陸されてしまう。勢いに乗る革命軍の機先を制したのは千冬だった。

 

「くっ…」

 

 太陽を背にした鋭い一撃はグレイズのシールドを両断しただけだった。だが続いての第二撃はどう足掻いても避けられない。

 

「こんな所で…」

 

「マレナ!」

 

 暮桜を纏った千冬が放った神速の一撃に死を覚悟したグレイズ。体が両断される直前、千冬の一撃が逸らされ頭部の装甲が吹き飛ばされる。

 

「生きてる?」

 

「おいおい、まだお前が出てくる場面じゃないだろ。織斑千冬」

 

 千冬の攻撃を逸らしたのはアルケーを纏ったリョウだった。

 

「千冬姉の攻撃が逸らされるなんて」

 

「お前がエースか…」

 

「違うな…俺はただの駒だ」

 

 振るわれるGNバスターソード、光学カメラ越しにもその軌跡を視認することは出来ない。千冬の雪片がバスターソードを受け止めるが質量の差で吹き飛ばされる。

 

「くっ」

 

「織斑先生!」

 

 セシリアがサイレント・ゼフィルスのビットを射出、四方を囲み攻撃を開始する。

 

「セシリア、上を見て!」

 

「リョウの邪魔をするな!」

 

 セシリアを頭から切り裂かんとマドカのMK-Ⅴはビームサーベルを振るうがフィーリアのフルバーニアンが割って入りビームジッテで受け止める。

 

「セシリアはやらせない!」

 

「邪魔だ!」

 

「くううぅ!」

 

 サーベルとジッテのつばぜり合い、マドカは肩のミサイルポッドを撃ち放ちフィーリアを吹き飛ばした。

 

「フィーリア!セシリア!…この、いい加減にしなさいよ!」

 

 持ち前のパワーで青龍刀を振り回しグレイズを吹き飛ばした鈴はMK―Ⅴに斬り掛かる。

 

「なによ…このぉ!」

 

 突然の接近警報、警告音に反応し後方に振り返る彼女が見たのは残像を出しながら猛追してくるデスティニーの姿だった。

 青龍刀を振るうが見事に交わされ背中にアロンダイトの強烈な一撃がお見舞いされる。

 

「かは…」

 

「鈴!」

 

 瞬時加速から雪片弐型による一撃がデスティニーのアロンダイトと激突する。零落白夜によってビーム刃が掻き消されるが雪片弐型自体はアロンダイトの実体部分で受け止める。

 

「海岸線にほとんどの部隊を配置してもこうも簡単に押し切られるのか」

 

 クロイのウーンド・ウォードEXはリョウの親衛隊であるガデッサ、ガラッゾ、ジンクス系統の機体に囲まれ自身の身を守るので精一杯だった。

 

「各機、マークした敵機にはビーム兵器が通じない。他の機体を狙え」

 

「「「了解!」」」

 

 親衛隊のジンクスⅢ、アドヴァンスドジンクスの機先を制したのは光一のエアマスターを中心としたリゼル隊。サーベルで切り結び何合も打ち合う。

 

「押し返せ!学園の中には入れるな!」

 

 海岸線ではIS、MSが入り乱れ乱戦状態と化した千冬がリョウに抑えられ反撃の糸口を見いだせぬまま時間が過ぎていく。

 

 レギンレイズ及びグレイズリッター隊の第三攻撃隊が到着、事態は一気に劣勢となった。

 

「敵の第3陣が接近中!」

 

「まだ来るのか!?」

 

 リボルバーカノンでグレイズを海に沈めたラウラは息を荒げながら苦言を漏らす。

 

「おらぁ!」

 

「ちぃ!」

 

 リョウと千冬の戦いは他の者を寄せ付けない違う次元で行われていた。得物がぶつかり合う音のみが聞こえ常人なら視認できない戦闘だった。

 

「よし、上陸完了」

 

「…」

 

「上手くいきましたね」

 

 海岸防衛戦が勃発している場所の反対側、そこではミラージュ・コロイドを展開した天ミナ、ネブラブリッツ、ハイパージャマーを展開したデスサイズヘル。

 

「地下通路への道を探します」

 

「分かった」

 

 光学迷彩マントを纏ったスワン、ニックス、パティシアの3人は先行しようとする。

 

「っ!足が…」

 

「なんだ?」

 

「……」

 

 3人が異変を感じたと同時にケイとカリナ、ニコラもその異変に気付いた。

 

「足が沈んでいくんだけど!?」

 

沈む床(セックヴァベック)これは私のワンオフアビリティよ」

 

「更識楯無か…」

 

 スワンは二丁拳銃を取り出し迎撃の姿勢を取るが沈んだ足が動かずに動けない。

 

「会わせなさい…」

 

「なに?」

 

 僅かに絞り出されたかのような言葉にケイは疑問の声を上げる。

 

「ユイトに会わせなさい!貴方たちの大将に!」

 

「っ!」

 

 怒気を孕んだ叫びにケイは戦慄する。彼女の気迫に押された訳ではない、彼女の発した言葉に問題があったのだ。

 

「まだユイトの名を知られるわけにはいかない…」

 

「……」

 

 ケイの言葉と共に動いたのはカリナ、彼女は易々とセックヴァベックを突破すると彼女に斬り掛かる。

 ハイパージャマーと彼女の鋭い一撃は楯無の首を狙うがその一撃は彼女の蒼流旋によって防がれる。

 

「聞こえなかった?今の私は気が短いのよ!」

 

「な…」

 

 ミステリアス・レイディの各所が赤く光りはじめる機体のリミッターが全て外され、カリナは大きく後退した。

 

「さぁ、彼はどこ!?」

 

 


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