IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

94 / 113
第七十七革 一角の崩壊

 

 

「やば…」

 

「ヘンリー!」

 

 最前線に居たヘンリーとティルミナはダインスレイヴが放たれたのを肉眼で確認していた。

 ダインスレイヴが放たれた瞬間、ティルミナは最大出力のGNフィールドを前面に展開、杭を一つ食い止める。

 

「ティル!」

 

「トランザム!」

 

 高速で移動する物体の恐ろしさティルミナはトランザムすら使用してなんとか止める。だが止めきれなかった、杭はセラヴィーの左肩のキャノンに突き刺さる。

 

「な、バカな!?」

 

 それを間近で見ていたグレイズは驚きを隠せない。敵は目と鼻の先だ、こうなってはダインスレイヴ隊に為す術はない。

 

「このぉ!」

 

 セラヴィーの5本の腕がグレイズを掴み、パワー任せに引き千切る。かなりスプラッターな光景が発生したが、ビーム兵器の効かないグレイズに対する唯一の対抗手段だ。仕方がない。

 

 凄まじい根性だが他の奴らも負けていない。その横では下半身を失ったウィンダムが、火花を散らしながらグレイズに体当たりをして巻き添えにする。

 

「よっしゃあ!」

 

「くそっ!」

 

「参謀長、レウルーラが」

 

 フォルガーと交戦しているハルトは部下の報告を聞き表情を歪ませる。

 

「Sフィールドが最初に抜かれるのか…」

 

 一点突破とはいえ、抜かれたのは変わりない。その上、空母であるレウルーラが敵の接近を許してしまい、交戦状態に陥った。

 

「Sフィールドの最終防衛ラインに敵MSを確認」

 

「ハルトが抜かれたか、手強いな。対空砲開け、迎撃開始!」

 

 本部に設置された対空砲が一斉に火を噴き射程内に居たMSを蜂の巣にする。

 

「ぐわぁぁ!」

 

「一旦退け、部隊を集結させろ。散らばりすぎている!」

 

 ダインスレイヴを破壊するためだけに突撃した結果、部隊は縦に長く伸びすぎている。このままでは挟まれて全滅してしまう。それにこの対空砲の前では迂闊に手を出せない。

 ラウラは信号弾を上空に打ち上げると前衛の部隊を下がらせる。

 

「牽制するよ!」

 

 追撃に出ようとする革命軍の鼻先にヘンリーのフォートレスがビームを撃ち込む。最終防衛ラインはビームの効かないグレイズ系統が多いものの、中に乗っているのは人間、わざわざビームの中に突っ込むのは中々出来ない。

 

「全機、バンシィを目標に集結せよ。大佐は?」

 

ーー

 

「機関、出力低下!」

 

「艦艇部の損傷激しいです。ダメコン班は何をやっている!」

 

 ドイツ軍の旗艦《フレーダーマオス》は先程の攻撃により被弾、航行に支障が発生していた。

 

「損傷機の回収を優先させろ!」

 

「局長、大佐と交戦中の敵機が接近しています」

 

「機関出力を上げろ。対空砲火開け、迎撃する!」

 

 オペレーターの話を聞いたフランツは即決、上空で交戦する恩人を見つめるのだった。

 

ーー

 

「このぉ!」

 

「せえぁ!」

 

 ハルトは高出力サーベルでシールドの1枚を両断するとライフルを構える。だがフォルガーはブースターを吹かし1回転する。

 高速の回し蹴りで射線を逸らそうとするが避けられる。

 

「貰った!」

 

「まだだ!」

 

 フルアーマーガンダムの背後に設置された追加ブースターがライフルを弾く。これにはハルトも驚かずにはいられない、だがフォルガーの攻撃は終わらない。

 今度は彼女の回し蹴りが百万式の頭部に直撃、装甲を持って行かれて素顔が露わになる。

 

「子供か…」

 

「子供だ!」

 

 すかさずサーベルの逆袈裟切り、今度はフルアーマーガンダムの頭部の装甲が持って行かれる。

 

「この世界は1度、スッキリして変わらなければないのだ!」

 

「子供が世界を達観したような口を!」

 

「子供が達観せざる得ない世界なのだよ!この世界は!!」

 

 互いのサーベルがぶつかり合い拮抗する。

 

「まったく、大人が汚したケツを子供が拭いてるとはな。つくづく敵わんなぁ、革命軍!」

 

「誰かが血を被らなければならない。それが我々だけだった、それだけだ」

 

「はっ、だが容赦はしねぇ!」

 

「望むところ!」

 

 ハルトがこの世界に来る前から軍人だった彼女の経験はハルトを圧倒するに到っているが、ハルトの方が徐々に押していく。

 

「大佐!」

 

「来るんじゃねぇ!」

 

「ちっ!」

 

 だいぶ後方に下がってきたフォルガーを援護しようとフライルーとクウェルが駆けつけるが、戦闘の合間を狙って放たれたハルトの攻撃により撃墜されてしまう。

 

「ミルト、クレナ!」

 

「貰った!」

 

 彼女の注意が逸れた一瞬、ハルトはドロップキックをお見舞いして吹き飛ばす。そして素早く背後のメガバズーカランチャーを展開させる。

 

「くそっ!」

 

「くたばれ!」

 

 体勢を完全に崩された。これではメガバズーカランチャーの直撃を受けてやられてしまう。

 

「撃て、全火力を集中させろ!」

 

 僚艦のほとんどは黒煙を噴いているか沈黙している。迎撃できるのはこの《フレーダーマオス》だけだ。対空機銃が唸りを上げて百万式を狙い撃ちにする。

 

「空母だと…っ!」

 

 対空機銃がメガバズーカランチャーに直撃、小さな爆発を何度も発生させる。

 

「キサマァ!」

 

 ハルトは照準を空母に向け発射する。出力は落ちたもののその威力は絶大だ。放たれたビームは甲板後方に大穴を開けた。

 

「直撃を受けました!」

 

「機関は!?」

 

「無事です、しかし浸水が!」

 

「総員退艦、急げ!」

 

「逃がすか!」

 

 怒り心頭のハルトは大破したランチャーを空母に蹴り飛ばす。飛ばされたランチャーはブリッジに直撃して突き刺さる。

 

「うわぁぁぁ!」

 

 ブリッジの破片が飛び散るがなんとか生き残った乗員だったがそれで終わるはずがなかった。ハルトはランチャーにビームを撃ち込んだのだ。

 エネルギーユニットが破壊されたランチャーは巨大な爆弾以外の何物でもなかった。

 

「大佐、フォルガー大佐ぁぁぁぁ!!」

 

 尊敬する師の名を叫びながらフランツは爆発に巻き込まれ絶命する。

 

「フランツ…くあぁぁぁぁ!」

 

「なっ!」

 

 フランツの死にフォルガーは雄叫びを上げながらハルトに突っ込んでいく。

 

「ヤケになったか!?」

 

「てめぇだけは!」

 

「っ!」

 

 フォルガーは全速力でハルトにタックルをかますと残った三枚のシールドでたこ殴りにする。

 

「このぉ!」

 

 シールドの一枚を掴みライフルを撃つ彼に対し彼女は腕の二連装ビームライフルでそのライフルを破壊する。

 

「こっちも決死なんだよ!」

 

 ハルトは叫び、両手にサーベルを持つとフルアーマーガンダムの二連装ビームライフル、肩に装備されたミサイルランチャーとビームキャノンを破壊する。

 

「がぁ!」

 

 フォルガーは苦痛の声を上げながら全身に備えられたミサイルをありったけ発射する。

 

(避け切ない!)

 

 バルカンで応射するも全てを破壊できずミサイルが直撃、吹き飛ばされる。

 

「参謀長!」

 

 そこに駆けつけたのはグレイズ・リッター2機とレギンレイズジュリア。リッターの1機が剣を振るうが避けられ、フルアーマーガンダムのシールドにサンドされ動きを封じられる。

 

「故国を護り、民を護り!」

 

 フォルガーはリッターの頭部を力づくで破壊する、中身も潰れて手が血まみれになるが気にしない。リッターの剣を奪い取った彼女は背後から襲いかかったもう一機のリッターの胸に剣を突き刺す。

 

「人殺しと罵られようとも軍人であり続けたのは…」

 

 突き刺さった剣を抜くためにリッターを蹴り飛ばし、2本目の剣も手に入れる。

 

「キサマァ!」

 

 ジュリアの蛇腹剣が追加装甲を削り内蔵してあったミサイルに誘爆する。

 

「全ては愛する部下を、家族を死なせぬため。たかが自己満足、されど自己満足。たった1度の人生、一変の後悔なく遂げてみせる」

 

 機体が爆散する中、追加装甲を外したガンダムがジュリアの目の前まで接近。剣を装甲の薄い首と腹に突き立てた。

 

「ならその自己満足で生き抜いて見せろ!」

 

「くっ!」

 

 ハルトの横薙ぎの一撃、それをサーベルで受けたフォルガーはバックパックからサーベルを抜き放ち斬り掛かる。

 

「この世はそんなに出来た人間などほとんどいない!」

 

「人間なんて不思議なもんさ、やろうと思えばなんでも出来てしまう。お前らのようにな!……っ!」

 

 彼女が斬り掛かる寄り先にハルトのサーベルが彼女の左腕を切り飛ばす。

 

「所詮、人は自分のことしか考えられない。なら誰かが舵を切らねばこの世は終わりだ!人の憎悪と憎しみは人の希望の光に比べて深すぎる!」

 

「人が幸せを目指す限り、光に限りはねぇ!」

 

「そんなきれい事がまかり通ってしまったから、我々が立たねばならなかったのだ!」

 

「がはぁ!」

 

 百万式のサーベルがフォルガーの腹に突き刺さると彼女は思わず苦痛に満ちた声を上げる。

 

「誰かが血に染まらねば、血を流さねばならなかったのだ。それほどの世界なのだよ、この世界は!」

 

「分かるぜ、そうしなきゃならん世界だって事は…。それを悟って、行動したのが大人じゃねぇってのが悲しいがなぁ!」

 

 腹が焼かれた彼女は血反吐を吐きながら残っていた右手のサーベルを振り下ろす。サーベルは肩に突き刺さりその尖端が脇腹から顔を出す。

 

「人が人であるために…」

 

 ハルトは息も絶え絶えにもう一本のサーベルを彼女の胸に突き刺す。

 

「悪いな、付き合って貰うぜ…」

 

 2人とも致命傷の傷を負い、気を失う。そしてすぐに両機は爆炎に包まれ巨大な爆発を生んだのだった。

 

(最初は俺か、後は任せたぞ。ユイト…)

 

「ハルト!!」

 

「百万式、信号途絶!撃墜された模様です」

 

「敵機は?」

 

「同時に…相打ちだったようです」

 

「ハルト…」

 

 オペレーターの報告に思わずユイトは涙を流す。かけがえのない同士であり親友、五人で苦楽を共にしてきたというのに。

 

「お前の意思は決して無駄にしない…」

 

「Sフィールドはもう持ちません!」

 

 Sフィールドの艦隊はダインスレイヴにより九割が轟沈、及び航行不能に陥っている。IS、MS隊も半分も満たない数なのに。背水の陣、まさにその状況で革命軍の防衛線を突破しようと躍起になっているのだ。

 

ーー

 

「ボーデヴィッヒ少佐、フォルガー大佐が!」

 

「大佐…」

 

 フォルガーは千冬と共に出来損ないとなってしまった自分を助けてくれた1人だった。千冬と同じぐらいに尊敬し、憧れた大佐の死を聞きつけてラウラは涙を流す。

 

「これより指揮は私が執る!大佐の墓前に勝利の花束を届けろぉ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

ーー

 

「んだと…ハルトが死んだ!?」

 

 シャルのフェネクスと鍔迫り合いをしていたリョウはその報告に絶句し言葉を失う。

 

「参謀長が…」

 

「こっちもこっちで整理してぇ…。一旦退くぞ!」

 

「分かった!」

 

 流石に動揺しているリョウを見たマドカは目の前に居る千冬を一瞥すると退避行動に出る。

 

「逃がすか!」

 

「逃がさせて貰う!」

 

 マドカは全火力を使って弾幕を張る。あまりにも苛烈な弾幕に千冬も銀花と白雷を展開して防ぐ。

 

「僕の後ろに!」

 

「箒!」

 

 シャルと一夏はフェネクスとユニコーンが持つIフィールドを展開、セシリアとイルフリーデ、箒を守るように立つ。

 

「逃げられたか…」

 

「私たちも退きましょう。エネルギーの補給をしなければ」

 

「そうだな」

 

 幸いな事にセシリアたちのフィールドの艦隊は無事だ。補給もすぐに済むだろう。

 

「Sフィールドの艦隊損害は九割を超えています」

 

「機動部隊も総数約6割が沈黙しています」

 

「艦隊、及び機動部隊に撤退命令。一時退かせろ!」

 

 戦闘開始から約7時間が経過した時点で最初に出撃した部隊はエネルギーが心もとない。仕方ないが一度退かせるしかなかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。