IS ー血塗れた救世主達ー   作:砂岩改(やや復活)

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第八十革 決意

 

 

「フィーリア!」

 

「邪魔しないでよ箒!」

 

 戦場の真っ只中、フィーリアは箒を蹴り飛ばすも、集結してきたIS学園メンバーを見て複雑な顔をする。

 

「フィーリア!!」

 

「一夏、覚悟もないまま戦場に来たって何も変わらないって言わなかったっけ」

 

「そうさ、俺は覚悟も何もない。ただ言いたいことを言って満足してたバカさ。でもそれが分かっても俺には分からない、お前の覚悟も、革命軍の人たちがどんな思いでこの戦いに望んでいるのも」

 

 ユニコーンのシールドとバエルの剣がぶつかり合い火花を散らす。

 

「そうだよ、分かるはずがない。私達が求めているのは同情でも懺悔でもない」

 

「でも戦いが生きる場なんて悲しすぎるよ!」

 

「違う、私はユイトさんの為に生き、存在することが幸せなの!」

 

 シャルの問いにフィーリアは応えながらもフルアーマーユニコーンを蹴り飛ばし、接近してきたフェネクスを殴る。

 その時、彼女は突然見えないものに殴り飛ばされ体勢を崩す。これは見えない弾丸、鈴の衝撃砲だ。こういった乱戦状態では衝撃砲は実に厄介な代物である。

 

「久しぶりの登場よ!」

 

 MSの技術を組み込みさらにパワーアップした甲龍は、バエルに接近すると本気で殴った。

 

「アンタ!ちょっと存在を忘れてたでしょう!!」

 

 ごめんなさい。

 

「なにを言ってるんだ鈴」

 

「まったく、フィーリア、アンタもアンタよ、裏切るなら裏切るって言いなさいよ!さっきのはその分だからね!」

 

 ラウラに怒鳴られ話しを戻す鈴。彼女はフィーリアを指差すと怒鳴りわめく。こういった様子は彼女らしいといえばらしい。良い意味でさばさばしている。

 

「アンタがどんな過去を持ってるかは分からないし、どんな思いで今日まで過ごして来たかなんて知らないわ。でも一つだけ聞かせて…IS学園で過ごした日々は全部嘘だったの?」

 

 鈴が問いただした事、それはこの場にいるみんなが聞きたくて、だが怖くて聞けなかった事だ。この場にいる全員が彼女を友達だと思っている、だがそれを向こうから否定されたら…と考えると。

 

「嘘な訳ないじゃん!」

 

 嘘のはずがない。本当に最初は社会勉強の為に行って来いとユイトに言われただけだ。結果的にはあんな事になったが、そんなつもりなんて全くなかった。

 

「一夏たちには本気で強くなって欲しかった。確かに戦闘では力を押さえてたけど、悩む貴方たちを見て嘲笑ったりしてない、本気で心配してたよ。話せないのが辛いときもあった」

 

「じゃあ、なぜ言ってくれなかったのですの!?」

 

「遅かったんだよ。私にはもうユイトさんが居たから!」

 

 昔助けてくれたというのもある。だがそれ以上に彼の背中に強く憧れ尽くしたいと思った。あの背中を見るだけで幸せだった。

 

「ユイトさんがいなかったら、私はIS学園になんか来られなかった。それより前に死んでたのよ!」

 

 フィーリアはバエルを持ち直し、戦闘態勢へと移行する。

 

「だから、私はここに居る。誰の意思でもない私の意志で!」

 

「アンタを引きずってでも連れて帰るわ」

 

 こう言ったときの鈴は本当に頼もしい。こう言ったまっすぐな言葉が人の心に深く突き刺さってくれるのだ。

 バエル1機に対しIS学園メンバー、数の差はあるが彼女の力は計り知れない。互いが得物を構えて突っ込むのだった。

 

ーー

 

「はぁぁぁ!!」

 

 ドラグーンの一斉発射、その分厚い弾幕により前面に展開していた部隊たちを薙ぎ払っていく。その爆炎から飛び出してきたのは千冬、彼女は銀花を構えながら突っ込んでくる。

 

「これほどの混乱を生んで何をする気だ!」

 

「これは運命だ。知りながらも突き進んだ道だろう」

 

 世界が変わっても、自分は自分だと定義づけ、関係ないと考えを止めた。実際に自身やその家族に影響がなければそれで良しと考えていたからだ。

 

「正義と信じ、分からぬと逃げ、知らず、聞かず!」

 

 そんな考えの奴らが多く居てしまったから、こんなにも世界は歪んでしまったのだ。

 

「目を背け、喚き、耳を塞ぎ。忘却していった、忘れ去られた者達の末路がこれだ。この結果なのだ!リョウたちが立たなくても誰かが立っただろう」

 

 マドカのサーベルが彼女を狙うが、明桜の全身に仕込まれた刃《八重桜》がそれを弾く。

 

「お前たちの行った事について、私にはなにも言う資格はない。だが私も家族を護るという覚悟はある、所詮は我が儘の延長線上でお前に比べたらたいしたこともないものだ、だがこれだけは譲れない!」

 

 オリジナルとコピーとしてではなく。1人のこの世に生まれ落ちた1人の人間として、戦場に立つ1人の兵として刃を交える2人。その戦いは苛烈を極めるのだった。

 

ーー

 

「艦長、前方に反応。これは…」

 

「な、なんだ!?」

 

「沈めぇ!!」

 

「光学迷彩だと!」

 

 艦隊の護衛艦、そのブリッジ前方に突如出現したのはアストレイゴールドフレーム天ミナ。ミラージュコロイドを解いたケイは、トリケロス改を向けビームを撃ち込む。

 

「うわぁぁぁ!」

 

 ブリッジは爆炎に包まれ、艦の周囲に出現したNダガーNの攻撃もあり轟沈する。

 

「死ね…」

 

 その横で浮かんでいた空母のブリッジの上に出現したのはカリナのデスサイズヘル、ビームサイズをブリッジに突き立て暴れまわる。

 

「どんどん出てくるよ」

 

「どんだけMSを持ってるのよ」

 

 空母から慌てて出撃するMSを甲板で相手取るのはブルデュエル、ヴェルデバスター、ストライクノワールの3機、ケイを中心とする隠密部隊は対艦攻撃に打って出たのだ。

 

「艦隊の注意を他に向けさせるな!」

 

 ケイの叫びと共に叫ぶ部隊、するとカゲトから通信が入る。

 

「脱出部隊の乗船が完了。順次離脱して行くっすよ」

 

 サーペントにビームをぶち込み撃墜したAGE1フルグランサ、カゲトは目標の進捗具合を伝える。

 

「全隊の安全区域への離脱まで2時間、30分後から各隊は緩やかに基地に撤退。最終フェーズに移行するっす!」

 

 増援含め、国連軍の機動部隊は現在4000を切るほどなのに対して、革命軍は300弱と戦力差は開きつつある。

 しかし、研究所の件も含めて約9000機が投入されて現在はこの数、対して革命軍はまだ300程しか撃墜されていない。

 純粋に革命軍の技術力の差もあるが、革命軍有人機部隊の高すぎる実力もそれに起因している。文字通り一騎当千の活躍を見せているのだ。

 

「くそっ、本当に敵基地にたどり着けるのかよ!」

 

 敵には化け物しか居ないこの状況で愚痴をこぼすリーオーは、背後から来たゲルググJにサーベルで両断される。

 

「世界に見せ付けろ!我々の意地を、忘却された亡霊の矜持を!」

 

「おぉ!!」

 

 ジェガンのランチャーでライフルを吹き飛ばされるが、ハイザックはそのまま全身、頭部にヒートホークをぶち込み撃破する。

 

「俺たちの…」

 

 そのハイザックは言葉を終える前にジェスタに切り裂かれる。

 

「くそっ、どこもかしこも。敵味方入り乱れて動きづらい」

 

「味方が多いせいで余計にな」

 

 こう言った混戦状態で一番恐いのは流れ弾だが、正直、どれが流れ弾でどれが敵弾か分からない。味方の流れ弾でやられている味方機も決して少なくないだろう。

 

ーー

 

 激しくサーベルが交差したと思えば足と拳が迫っている。ベアトリーチェとユイトは互いの攻撃を全て避けるもどちらとも吹き飛んだ。互いがまだ使っていなかった四肢を使って吹き飛ばしたのだ。

 

「手強い!」

 

「流石はあの人を殺しただけはあるわね!」

 

 ユイトはザンスパインの光の翼を避けると鈴の音が耳を掠める。

 

「ティンクル・ビットか!」

 

 特徴的な鈴の音を聞くや否や、スラスターを全開にしてその場を離脱する。ファンネル系は囲まれては厄介だからだ。だがベアトリーチェは本来の使い方をしてこなかった。

 

「ぐあぁ!」

 

 4つのビットが猛スピードで接近してくると頭部に体当たり、ファンネルミサイルとして使ってきたのだ。怯むユイトを見逃さない彼女はさらに彼の頭部を蹴り上げる。

 

(左眼が…)

 

 先程の衝撃で左眼から送られてくる視界にノイズがはしる。後一撃でも衝撃が加われば使い物にならなくなるだろう。

 

「もらった!」

 

「くっ!」

 

 突如視界が半分に限定されたユイトの僅かな隙。彼女はサーベルを構えて突っ込んでくる。運悪くか彼女が意図してか、視界が不調の左側からの鋭い一撃が彼に迫るのだった。

 

 


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