劉備玄徳を支える者   作:友は屍

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友の誓い

 賊が来て村の男たちと共に戦い勝利した日から数日が立つ。この数日間は死体処理や祈り、宴をした。友や、家族との永遠の別れを受け入れず悲しむ者、酒や食べ物で忘れようとする者、死を受け入れ、前向きに生きようとする者など、この戦で得たことのない経験を得る。

 

「みんな、一緒に賊と戦ってくれてありがとう。みんなのおかげでこの村は救われました。でも、その引き換えに犠牲者も出ました……。本当にこれでよかったのかは分からない……でも!「かんぱーい!!」って、ちょっと!?友くん!?」

 

 わしの酒を持って腕一杯に伸ばして、元気よく言う。それを見た村人たちは、少しびっくりしたが、すぐに乾杯と言って宴が始まる。

 

「友殿、いまのはちょっと空気を読むべきでは……」

 

「あほ、こんなしんみりした空気で宴を始めんのはいやや。死を受け入れ、笑いまくった方が先に行ったやつらに対する礼儀やろが」

 

「そうなのだ!暗い雰囲気で飯を食べるのはご飯に失礼なのだ」

 

「いや、それは少しちゃうと思うで」

 

 呆れ気味に話しかける愛紗を一蹴し、ばくばくと食べる鈴々に、疲れたあとに勢いよく飲む中年のような友を見て、村人たちも笑ったり、酒を飲んだり、飯を食ったりして夜を過ごす。

 

 あの賊との戦いからしばらくして、皆はいつも通りの暮らしをしている。

 

「あれから、それほど日が経ってないのに皆いつも通りに過ごしている。皆、犠牲になった者たちを受け入れ前に進もうとしている」

 

「そうせざるを得ないからや。こんな世の中、いつまでも悲しんでもしゃあない」

 

 食うか食われるかの弱肉強食の時代に弱い人間は死ぬ。生きる意思を無くした人間も死ぬ。しかし、強くなろうと今を生きる人間や、野心をもって生きる人間は生きる。つまり、生を諦めなければ、死に近づくことはない。

 

「桃香は初めて戦いに、皆の先頭に立って、剣を奮った。村人らはそれに呼応し、激を高め、賊と戦った。村を守って死んだ奴らは本望やったかもしれん。が、それは自分へのええ言葉にすり替えてるだけや。ほんまは、死ぬ必要のない命を奪った卑劣な人間なんや、わしらは」

 

「それは、……そうですが」

 

「本望とか、悔いのない戦いやったとかそんなもんあらへん。あるのは憎しみ、哀しみ、怒り、色んな負の感情が込上げてくる。ほな、それらを無くすためにはどうしたらええか。わしはあの夜みたいに飲んで、食べて、笑って、泣いて、歌って楽しむんや。そうすることで少しは気持ちを和らぐことができると考えてる。そうせんと生きてけへんよ、こんなくそみたいな世の中は」

 

「友殿……、あなたも本当はつらいのですね」

 

「……当たり前や。人殺して、良い気持ちになるなんざ、一生なりたくないわ。人を捨ててるようなもんや」

 

「桃香殿にそのような経験をさせてしまうのでしょうか……」

 

「させへん」

 

 絶対に人を殺すようなことはさせない。桃香には汚れてない手で、弱き人々を差しのべ救うべきだ。

 

「絶対にさせへん。桃香に人を殺させへん」

 

 友の放つ覇気に愛紗は一瞬たじろいたが、友の思いと愛紗の思いは同じだと気づく。そして愛紗は青竜刀を強く握り、不安顔を消し、決心した顔になる。

 

「わたしもです」

 

 その夜、桃の木は、風に揺らぎ、散り散りと散ってゆく花を美しく魅せる。その木に背中を預けている。

 

「友くん」

 

 友のそばに寄り、暖かい夜の空を肌で感じ、少しだけ、空を眺める。

 

「なんや」

 

「私、決めたよ。この村を、出る」

 

「……」

 

 桃香の発言に慌てる様子も驚く様子も見せない。廖化はただ、目をつぶって夜空に顔を向ける。

 

「驚かないんだね」

 

「桃香は、いつか必ずこの村から出るといつも思ってたからや。桃香、言うてたやろ、皆が笑って暮らせる国を創るって。そのためにはこの村から出なあかんからな」

 

 夜空から桃香に向け、真剣な表情に変わる。そして、廖化は問う。

 

「本気なんやな?」

 

 小さい頃からずっと一緒にいた無二の友が乱世に戦い、勝利すると決意した。自分の夢を叶えるために。途中その夢が揺らいだとき、積み重ねてきたものが崩壊してしまう。だから廖化は桃香にどんなことがあってもその夢を諦めないかを問う。そして廖化の問いに桃香はこう答える。

 

「うん、本気だよ。これから先どんなことがあっても受け入れるつもり。私の夢は諦めないし、邪魔もさせない。それが、私の本気」

 

 そのとき、暖かな風が吹く。まるで、天が桃香を祝うように。廖化の目には桃香が希望の光に見えた。そうか、これが、桃香の力か。暖かく包み込む母のようだ。廖化はフッとほくそ笑む。

 

「そか」

 

「うん……。それで、お願いがあります」

 

 桃香は廖化に頭を下げる。

 

「私と……一緒に、来てくれませんか!?」

 

「うん、ええよ」

 

「返答早っ!」

 

 桃香は廖化に一緒にいてほしかった。これからの時代友というのはかけがえのない存在である。隣にいるだけで強くなれる気がする。桃香はそう思って願った。断ってこの村で別れるかもしれない。それは仕方のないことだ。廖化自身が決めたことなのだから。故にこれを聞くのが怖かったのだ。しかし、廖化ほそんな桃香の思いを知らずに軽く承諾した。さすがにそれはないでしょ。さっきまでの私ってなんだっの。とアホらしくなってしまった。

 

「言うたやろ、俺はどこまでも桃香に着いてったる。桃香の頭は魚並みの記憶力か?」

 

「れっきとした人間だよ!?魚並みの記憶力ってなに!?」

 

「話した内容をすぐ忘れる」

 

「そこまでひどくないよ!!」

 

 いつもの廖化と桃香のやり取りに戻ったとき二人は笑った。

 

「ま、そゆことや。せやから桃香がいらん言うてもしつこく付きまとうから覚悟しいや」

 

「そんなこと言わないよ、絶対に。でも……」

 

 可愛らしいポーズを取った後、無邪気な笑顔に変わる。

 

「ありがと!友くん」

 

 やっぱり桃香の笑顔は負の感情を洗い流してくれる。廖化は笑い返す。

 

「おう」

 

 今度は、暖かな風が二人を包み込む。 

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