先日試したいことがあって、投稿削除を繰り返して、混乱(した人がいるかは定かではないが)させてしまったお詫びです。土曜には4話目投稿します!
「ジン坊ちゃーん! 新しい方々をお連れしましたよ!」
――場所は箱庭二一〇五三八〇外門。
ペリペッド通り、噴水広場前。
そこで待っているコミュニティのリーダー、ジン=ラッセルへと声をかける黒ウサギ。
彼女の後ろには女性が一人、付いてきている。
「そちらの女性の方が?」
「ええ、こちらの御三人様方が....」
くるりと振り返る黒ウサギ。
カチンと固まる黒ウサギ。
「....あれ? 確かあと二人ほどいましたよね? 雰囲気から全力で〝俺、問題児!!〟って言いたげな殿方と...」
「あぁ、十六夜君のこと? 彼なら〝ちょっと世界の果てまで行って来るぜ☆〟とか言って駆け出して行ったわよ」
「あ、あと見るからに〝何事にも無関心〟って雰囲気の方が...」
「春日部さんなら、十六夜くんに付いていくって行っちゃったわ」
な、な、な、と戦慄く黒ウサギ。
「何で教えてくれなかったのですか!!」
「だって聞かれなかったのだもの」
「聞かれなければ答えないのですか!?」
「....それは....ごめんなさい...」
「え、あ...はい。わかってくださればそれで...」
素直に謝った飛鳥に黒ウサギは少し意外性を感じながらも、自分も声を荒げてしまったことでウサ耳をへニョらせてシュンとなる。
「実は特に何も聞いてないの。だから教えられなかったのよ」
「行き先を伝えられたんじゃなかったのですか!?」
しかし、次の飛鳥の言葉が予想の遥斜め上を行っていたためにまた声を荒げてしまう。
「あんなの、口から出任せに決まってるじゃない」
「決まってってどういう事ですか!」
「〝☆〟なんて十六夜くんのキャラじゃないじゃない」
「知 り ま せ ん !!」
どこからか取り出したハリセンでひと叩き。
初対面にも関わらずつい思いっきり突っ込んでしまった黒ウサギ。
やっちゃった! という表情の黒ウサギと気にした素振りを見せない飛鳥とは対照的にジンの顔は真っ青になっていた。
「た、大変です! 箱庭の外では何があるかは誰にもわからないですし、〝世界の果て〟には強力なギフトを持った幻獣が野放しになっています。もし彼らに出くわしでもしたら人間ではひとたまりもありません!」
「あら、それじゃあ2人はもうゲームオーバーなのかしら? ゲーム参加前なのに? なかなかに斬新なアイディアね」
「じょ、冗談を言っている場合ではありません! 早く彼らを捕まえなくては...」
焦りなのか、怒りなのか、体を震わせた黒ウサギはその艶のある黒髪を淡い緋色に染め上げる。
「ジン坊ちゃんは、飛鳥さんの御案内をお願いしてもいいですか? 黒ウサギは問題児様方を捕まえて参りますので」
「う、うん。黒ウサギも気をつけて...」
「1刻程で戻ります。それでは、ゆっくりと箱庭ライフを御堪能ください!」
近くの建物を足場に外門に水平に張り付くと、
「ふふ...〝箱庭の貴族〟と謳われたこの黒ウサギを馬鹿にしたことを、骨の髄まで後悔させてあげるのデスヨッ!!」
と、言い残して弾丸のごとく飛んでいく。その瞳は純粋な怒りで染まっていた。
「さて...。ジン君? エスコートをお願いしても宜しくて?」
「あ、はい。コミュニティのリーダーをしています、ジン=ラッセルです。齢11になったばかりの若輩ですが、よろしくお願いします」
「そういえば自己紹介がまだだったわね。私の名前は久遠飛鳥。よろしくね、ジン君」
お互いに軽い自己紹介を済ませたところで箱庭の中へと入る。
「ところで、どこでお話を聞かせてくれるのかしら?」
「...すみません。段取りは全て黒ウサギに任せていたもので...。もしよろしければどこかお好きなお店を選んでいただければ」
箱庭の中に入った途端に不可視となる不思議な天幕を見つめながら思案する。
しかし、やはり頭に浮かんだのは以前からギフトゲーム前の作戦会議に使わせてもらっていた〝六本傷〟の旗を掲げる喫茶店だった。飛鳥達の推測が正しければまだ割引価格になってはいないだろうが、その喫茶店へと一直線に歩を進めた。
☆★☆★☆
黒ウサギがジンの元へ辿り着く前、十六夜と耀は首尾よく黒ウサギに気付かれないようにエスケープに成功していた。
「ねえ、十六夜はどう思う?」
「....多分、春日部の想像通りのことを思ってる」
鷲獅子と光翼馬のギフトを軸に、幾つかの補助ギフトを組み合わせて地面から3m程度の高さを飛翔する耀に十六夜はペースを合わせながら走っている。
「だから〝世界の果て〟を目指してる?」
「ああ」
「......十六夜は優しいね」
「.......」
十六夜がさっきまでの黒ウサギの態度から推測したこの世界の真実。
同じことを耀も、そして飛鳥も考えていた。
しかし自分で考えるのと、かつて魔王とのギフトゲームにおいて知略を巡らせた十六夜の口から聞くのとでは真実味に違いがある。
「......十中八九ここは
それが、十六夜たちが推察した真実だった。
最初は黒ウサギたちのドッキリか何かだと思ったのだが、そもそも黒ウサギの性格では他人を騙すなんて出来るはずがない。それに、言葉の言い回しこそ違っていたものの、全体の流れは十六夜たちが箱庭に訪れた時と同じだった。
いくら〝箱庭の貴族〟とは言え、そんな細かいところまで覚えているはずはないというのが十六夜の見解だ。後はほんの少し試せばいい。馬鹿げた発想を打ち消すために、過去でのセリフを流用してみればいい。だが結果、それには過去の通りの言葉しか帰ってこなかった。
故に、ここは過去の箱庭ではないのかという推察に行き当たる。今もまだ半信半疑ではあるものの、この世界のあり方を考えればありえないことではない。そしてそれが真実ならば今のコミュニティは〝ノーネーム〟。取り敢えず、生活用水の獲得からまた、コミュ二ティの復興をしなければならない。
「それにしても、いきなり過ぎてびっくりしたよ? 私が十六夜の本を読んでなかったら十六夜がしたかったことに気付くことも出来なかっただろうし」
「なんだ、アレを読んだのか? 春日部の時代まで残ってるとは思わなかったんだがな...」
「ネットって便利だよね。おかげで十六夜の真意に気付くことができた。飛鳥は何言ってるのか分からなくて固まっちゃってたし」
「春日部が気付かなかったら、俺が1人で3人分のセリフを代役するところだったって事か。そんなに寒いことはないわな。...っと」
森が開くと、大河に出た。
「さあ、出てこいよ蛇神様! 俺と〝力〟で勝負と行こうじゃねーか!」
トリトニスの大滝へと続く大河。その川辺で十六夜は声高に叫ぶ。
このあと自分たちがノーネームの復興に手を貸すか、ちゃんとした時間の自分たちを呼び出すように進言するかは決めかねてはいるものの、水樹の苗を手土産にコミュニティへと帰ろうかと蛇神とのゲームを始めた。
☆★☆★☆
「もう、どこまで来ているのですか!?」
耀の背後から声がかかる。しかし耀は、箱庭や人間界の動物たちと仲良くなったおかげで強化された聴力により、黒ウサギとユニコーンの会話が聞こえていた為に、特に驚きはなかった。
「〝世界の果て〟だよ、黒ウサギ。それにしても随分と早いね。こんな短時間で追いつかれるとは思わなかった」
「あ、当たり前です! 黒ウサギは〝箱庭の貴族〟と謳われた貴種で....」
そこで黒ウサギは、アレ? と首をかしげる。
(黒ウサギが半刻以上もの時間追いつけなかった...?)
箱庭の創始者の眷属である〝箱庭の貴族〟である黒ウサギは、生半可な力でどうこうなる種族ではない。
総合的な力でおいても箱庭内の上位に位置する種族だ。その黒ウサギに気付かれないように姿を消したことも、半刻以上もの間追いつかれなかったことも、普通の人間の能力的にはありえないことだった。
「ま、まあ、そんなことはどうでもいいのです。それよりも十六夜さんはどちらに行かれたのですか?」
「十六夜ならあそこにいる」
そう言って指を指した方には、ずぶ濡れの十六夜がヤハハと笑って立っている。
その周りには竜巻が
「い、十六夜さん!? 危な――」
黒ウサギが声をかけるよりも早く、十六夜は拳圧で竜巻を吹き飛ばし、手に握っていた小石を蛇神に向かって放っていた。
それは親指で弾かれただけにも関わらず、第3宇宙速度という馬鹿げた速度を叩き出し、蛇神を川底へと叩き落とした。
「ッハハハ、だらしねえだらしねえ! 気合入ってんのは格好だけかよ!!」
たかだか人間にねじ伏せられる蛇神という図に黒ウサギは一瞬目を疑った。
十六夜は愉快そうな声音で蛇神を嘲笑う。
「一体何をしているのでございますか!? 十六夜さん!」
「ん? おお、黒ウサギ。もう追いついてたのか」
十六夜も耀も、黒ウサギの髪の色が変わっていることに対するリアクションはない。前に何度も見ているからだ。
「そ、そんなことはどうでもいいのでございます! 一体なにをしているのかと聞いているのです!」
「何って、お前。そりゃあアレだよ。――――喧嘩だ」
『まだだ、まだ試練は終わってないぞ、小僧ォ!!』
黒ウサギが聞きなおすまもなく蛇神が再び姿を現す。その声は怒り心頭といった具合に震えている。
そして、すぐに竜巻を生成し、十六夜に向かって放つ。
「黒ウサギ、春日部! 退いてろ!!」
それを聞くやいなや、耀は黒ウサギを抱えて十六夜から距離を取るように跳躍した。
竜巻の移動速度は限りなく遅いが、その分水を吸い上げその威力を増していた。
「い、一体なにをしたらあんなに怒らせることができるのですか!?」
「十六夜は〝力〟で
なんてことを、と黒ウサギは思う。
ここまで怒らせてしまってからでは双方引っ込みを付けることも出来ない。
そして黒ウサギは〝審判権限〟のせいで、ギフトゲームへの参加が規制されているために十六夜と蛇神とのゲームに割り込んで止めることもできなかった。さらに、蛇神は種の存在を最高レベルまで引き上げる〝神格〟のギフトを持っている。鬼神、神童、蛇神、そう呼ばれる存在は〝神格〟のギフトを所持しており、それを打倒するには同じ〝神格〟を持っていなければならないのが箱庭の常識だ。
『その傲慢な態度だけは見上げたものだ。それに免じてこの一撃を耐えられればお前の勝ちとしてやろう』
「ハッ! 寝言は寝て言え蛇神様!! ゲームは勝者を決めて終わるんじゃない。
『フン――その戯言が貴様の最期だ!!』
それを合図として竜巻はさらに威力を増し、うねり、蛇のように十六夜に襲いかかる。
そしてそれが十六夜を飲み込んだ直後、
「―――ハッ! しゃらくせえ!!」
『なッ―――』
「嘘――」
その光景に驚きを隠せない蛇神と黒ウサギ。
神格のギフトを持つ者による全力の一撃を、ただの腕のひと振りで粉砕するという光景がどれだけありえないことなのか、本人だけは分からないようで、呆然としている大蛇の腹部にケリを叩き込み、その巨体を再度川底へと沈めた。
その余波で舞い上がった水しぶきに濡れながら十六夜は、「クリーニング代ぐらいは出るんだよな?」と笑っている。
「はい、十六夜。タオル」
「ん、おお。サンキュな、春日部」
濡れた服は絞って水気を抜き、髪や肌をタオルで拭いていく。
髪を拭く間も黒ウサギに頻りに話しかけるも、何か考え事をしているのか反応がない。
「オイ、黒ウサギ。ボーッとしてると胸とか足とか揉むぞ?」
「え、あ、きゃあ!」
一通り吹き終わったので、黒ウサギの背後に忍び寄って手を黒ウサギの体に触れるか触れないかの微妙な距離にまで接近させる。すると、さっきまでの呆け面が嘘のようにウサ耳まで真っ赤に染まる。
「な、ば、おば、貴方はお馬鹿です!? 200年守り続けた黒ウサギの貞操に傷を付けるおつもりですか!?」
「200年守った貞操? うわ、超傷つけたい」
「お馬鹿!? いいえ、お馬鹿!!」
スパーンッ!!と、ハリセンで十六夜の頭をひと叩き。
ヤハハと笑う十六夜、顔が真っ赤の黒ウサギを耀はジト目で見つめていた。
「........えい」
「フギャア!!」
そして、悟られないように再度黒ウサギの真後ろまで回り込むと、そのウサ耳を両方纏めて引っ張った。
「ちょ、ちょっと耀さん!? さっきのではまだ足りなかったのですか!?」
「......別にそんなことじゃない」
「じゃ、じゃあ何でですか!?」
「.....黒ウサギには関係ない」
「ちょ、やめ....―――――ッッ!!」
その後、両耳纏めてこねくり回された黒ウサギは声にならない声を、乙女にあるまじき声を、もう一度周りに響かせるハメになった。
小一時間も要して立ち直った黒ウサギは蛇神から水樹の苗を貰って大喜びし、十六夜が〝コミュニティの仲間としての最低限の礼儀は通せ〟と、知っている事情ではあるがコミュ二ティの現状を黒ウサギから聞き出した。
十六夜くん頭いいので、帰るときに次に呼び出されるのが過去になるかもなーとか、なんとなく考えていたんです。んで、空中に放り出される→誰も迎えに来ない→黒ウサギがこそこそ隠れる→なんか昔と一緒だなー
って感じで過去の世界って推測が生まれた感じなんです(たぶん)。
そして、この時点までは耀をヒロインにしようかなって思ってました。ラストの奴がその名残。しかし次話で無理が発覚。そして断念です。無念...
あぁ、書くネタが切れてきたな...
何を書こうか..
あ、この間ノーゲーム・ノーライフって小説読みました!
いつ天の絵師さんが文章、イラスト、宣伝用漫画(あとがきに2ページだけだけど)書いてて素直にすげーと思いました。しかも中もきちっとしててめっちゃ面白い。アレは後で買わねば...
この間指摘を受けた、【!】とか【?】とかの後ろの空白一つは6話目から意識して付けます。5話目までは完成済みで直すのがめんd((やめろッ!何をする!←
あとがき、書き足りない気がするけどここで失礼。
次からはまえがきも書くことなくなるんだろうなー....
あ、活動報告にコレの誕生秘話(笑)を書いてみたので、そちらもよろしければよろしくお願いします。