黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)と共に異世界へ   作:ヴィヴィオ

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第16話

 

 

 住民登録と戸籍の発行。これらは管理する為に便利なものだ。よって、導入した訳なのだが、大変だった。まあ、登録が終わったら、彼らを割り当てた建物に案内して食料を配って、住民に共同の炊事場を使って炊き出しをしてもらう。もっとも、各家にはちゃんと炊事場が用意されている。だが、先ずはここで食事を取って貰う。食事をさせながらこの港町のルールを説明していく。

 

「良くぞ呼び掛けに答え、我が領地に来てくれた。先ずはその事を卿等に感謝しよう。我はこの領地の領主であるコルネリウス・フォン・リーゼンフェルトだ」

 

 演説などまともに出来る訳はないので、我が内部に居る獣殿の因子を活性化させて獣殿のように振る舞わせて貰う。

 

「さて、我は卿等を愛玩動物のように飼いならすつもりは無い。よって、卿等にも住民登録の際に聞いた職業とギフトを精査して働いて貰う。しかし、最初から援助なしでは立ち行かぬであろう。故に一年間を準備期間とし、その間の食事は炊き出しを行う。住居も貸し出そう。こちらは家賃を支払って貰えればそのまま住んでいただいて構わぬ」

 

 準備期間の間に職業訓練を行って貰い、素人から玄人まで成長していただく。炊き出しに行われる食料は狩りと農業で賄えば良い。狩りは森と海で行い、農業はキャロル特製の植物瞬間成長薬を使わせて貰うので供給量は問題無い。

 

「さて、ここに住むにあたって重要な事を説明する。まず一つは犯罪行為は許されぬと心得よ。その為に警邏隊を組織する。警邏隊の隊長はアリエッタだ」

「……よろしく……」

 

 ぬいぐるみを抱いたアリエッタが挨拶をする。子供に皆が不思議がるが、それ以上に背後に控えているハーピィ達に驚いている。妖獣のアリエッタの名に相応しく、ハーピィ達を支配下に置いているので警邏に関しては彼女以上の適任が居ない。

 

「彼女は子供のように見えるが既に成人している。それと見ての通り、優秀なモンスターテイマーである。つまり、空からハーピィ達が卿等を守ってくれる。そして、手紙や簡単な荷物の宅配も行ってくれる」

「……ハーピィ便……報酬は適当な食料……」

「無論、彼らを操ったり事務をしたりする者も募集する」

 

 アリエッタだけでは明らかに人手が足りないからな。実働部隊はモンスターで構わないが、指揮官が必要だ。

 

「さて、軍部は彼女、ジャンヌに担当して貰う」

「ジャンヌです。マスターの命により鍛えてさしあげます。覚悟のある方だけ来てください。意気地の無い方は……しっかりと手取足取ちょ……教育してさしあげます」

 

 軍部に関してはジャンヌに任せる。ハートマン軍曹を超える訓練を施し、とても素晴らしく強靭な軍隊を作ってくれるであろう。この軍部にはキャロルの作った装備も配布予定な上に竜騎士を量産する予定なので皇国一の部隊になるだろう。何せ、竜の魔女が率いる竜騎士隊なのだから。

 

「開発部門はキャロルに担当して貰う。彼女がこの街を作った張本人だ」

「キャロル・マールス・ディーンハイムだ。錬金術によるアイテムの開発などを担当する。開発関係の全部署はオレの支配下に置かれる。やる事は多岐にわたるから、基本的にオレの部下になる者が多いだろう。だから一つだけ言っておく。オレの邪魔をするな、逆らうな。オレはお前達に期待していない。先ずは成果を示せ。それだけだ」

 

 キャロルは相手を信じていない。ほとんど全てを自分一人でやってしまうだろう。実際にやれてしまうのだ。自分自身のクローンを用意し、数百年の時を費やして世界を分解した彼女だからこそ、説得力は絶大だ。

 

「我とペスト、アーデルハイト・リーゼンフェルトで政務を行う。そこで平民であろうが、奴隷であろうが、能力のある者は採用する。逆に能力が無い者は年齢に関係無く採用しない。良い暮らしをしたければ力を示せ」

「給金もちゃんと支払うから安心してちょうだい。それと子供に関してはこちらで預かり、教育を施すわ。昼食はこちらで出すし、子供の養育費や食費もこちらで提供するから心配しないで」

 

 所謂学校を作って徹底的に英才教育を施し、人材を育成する。ペストの望みの為や戦乱の兆しが見え始めている昨今、何れ打って出る必要があるだろう。ましてや、この国の腐敗はかなり進んでいるのだから。

 

「では、今回はこれぐらいとしておこう。今日はこのまま食事をして身体を休めよ。明日は街の探索をして地理を把握するといい。明後日より、本格的に働いて貰う」

「では、解散」

 

 さて、俺はペストを連れて自宅にしているタルタロスへと戻る。城はまだ完成していないからな。

 

 

 

 自宅に戻った俺はとりあえず、ペストの横に居る彼女について質問しよう。彼女は斬魔大聖デモンベインに出て来るキャラクターだ。主人公のライバルにしてラスボスであるマスターテリオンのパートナーにして、 人類誕生以前に古の種族によって書かれたという最古の魔導書の写本、ナコト写本の精霊。性格は物静かで冷酷。マスターテリオンに心酔している一方、彼の興味は主に主人公に向けられているため、常に主人公に嫉妬している。小さくなるマスコット化が出来たり、その名の元ネタであるアレイスター・クロウリーの愛犬にちなんでその忠誠心から忠犬などと呼ばれる。そのせいか、犬耳や尻尾が生える時がある。本人の力もそうだが、何より恐ろしいのは魔導書ナコト写本より召喚される深紅の鬼械神リベル・レギス。その外見は、翼や髑髏を模した頭部と、カッターナイフのように鋭い指先が特徴的である。その装甲は星の爆発に掠り傷を負わない程である。神の影を召喚するとはよくいったものである。あえて言うなら、明らかな過剰戦力である。

 

「で、なんでエセルドレーダが居る」

「この子、エセルドレーダという名なの?」

「そうだ。ナコト写本なんて引いた覚えは……」

「深淵の魔導書とかいうのよ」

「あれか! 確かに深淵だな。とんでもないぐらいの。大丈夫だったのか?」

「まあ、調教してあげたから大丈夫よ」

「そうか。それでどうする?」

「あげるわ」

「マスターっ!? 捨てないでくださいっ、マスター!」

 

 エセルドレーダがショックを受けて縋り付く。

 

「嫌よ。アタシは要らないの。そもそも、貴女は旦那様にあげる予定だったのだし付きまとわれるのも鬱陶しいわ」

「ま、マスター……」

「仮契約は破棄。貴女は要らないのよ」

「そんな……」

 

 ペストは縋り付くエセルドレーダの手を弾いてさっさと出ていってしまう。残された彼女は泣いている。

 

「……わ、わたしは……どうすれば……」

「何も心配するな」

「あっ……」

 

 エセルドレーダを背後から抱きしめる。そのまま耳元で囁いていく。わざわざペストがお膳立てしてくれたのだ。貰う物は貰ってしまおう。

 

「俺がお前のマスターになってやる。安心しろ、俺は絶対にお前を捨てないし、見捨てない。愛してやる」

「……ぁっ、ぁぁ……」

 

 今のエセルドレーダなら、簡単に落ちて俺に依存する。ペストがマスターのままでは俺に嫉妬して不味い事になるかも知れない。このわんこは力だけならとてつもなく危険な存在だからな。

 

「マスター、マスターっ!」

 

 そのままベッドに連れ込んでやる事をやってしまって本契約を結んでおく。本来なら相応しくなくて弾かれたり、乗っ取られたり、精神が崩壊したりするだろうが、そこは対魔力とライハルト力。それに召喚によって出ているのだから、隷属の効果でなんとか契約にこぎつける。

 

 

 

 

 エセルドレーダの身体を堪能させて貰うと同時にたっぷりと可愛がってやって気絶まで追い込んだら、扉が再度開いて顔を真っ赤にして股を擦り合わせながらペストが入って来た。

 

「……んっ、んんっ……終わった……の?」

「ああ」

「なら、アタシも……お願い……盛られたみたいなの……」

「ほう。やり返したか?」

「もちろんよ……黒死病をばら撒いてやったわ……」

 

 寄って来たペストを抱きしめてベッドに移す。それだけで彼女は震えてしまう。

 

「ならいいか」

「……はやく……」

「なら、おねだりしてみろ」

「変態っ、鬼畜っ、ロリコンっ!」

「否定はせん」

「……だ、旦那様ので……気持ち良く……して……」

「愛の言葉が足りんな」

「このっ」

「俺は愛してるぞ」

「……あ、アタシは……あっ、あい……やっぱり無理っ! 恥ずかしすぎるわっ」

「全く、可愛いな」

「ふん!」

 

 そっぽを向くペストの可愛さに負けて、その後たっぷりと可愛がってやると同時に丁度いいので身体を開発していった。

 

 

 

 

 

 翌日、起床してから口付けを交わし、汗を流す為に風呂でペストとエセルドレーダに身体を使って洗って貰う。エセルドレーダはペストを睨んでいたが、ペストは気にしていなかった。

 食事を取る為にペストが台所に行くと、エセルドレーダが俺の膝の上に乗って身体を擦りつけて甘えて来る。アリエッタも来て同じように甘えて来る。

 

「がるるる」

「くぅーん」

 

 こんな感じになってしまったが、二人を均等に撫でる事で解決させた。

 

「喧嘩も嫉妬も駄目だ。ちゃんと可愛がってやるから、わかったな?」

「イエス、マスター」

「む」

 

 そんな話をしていると、キャロルがやって来る。何時もの席はエセルドレーダに取られている。何を思ったのか、真ん中に入って、ぽすっと座ってしまった。

 

「凄い光景ね」

「そうね」

 

 台所からジャンヌとペストが朝食を持って来てくれる。

 

「これは、面白そうね」

「ジャンヌ?」

「ふふ、マスター、あーん」

「「あっ!?」」

「なにやってるのよ?」

「座ってる三人にい・や・が・ら・せ」

「それは……いえ、好き嫌いを無くさせるのにも丁度いいわね。旦那様」

「わかった」

「「っ!?」」

 

 逃げ出そうとする二人を抱きしめる事で逃亡を防ぐ。エセルドレーダはわかっていないが、気にせずそのまま食べさせて貰う。キャロルとアリエッタも我慢して嫌いな物を食べていく。

 

「偉いぞ。頑張ったご褒美にデザートをやろう」

「やった」

「仕方ない……貰ってやる」

「仕方ないのならあげないわよ」

「いる!」

「よしよし」

「むぅ」

 

 キャロルの頭をペストと一緒に撫でるとむくれてしまった。なのでさっさとアイスクリームを出して与えると直に機嫌が直った。

 

「さて、ジャンヌ」

「ええ、行きましょうか」

「マスター?」

「修行だ。付いてくるか?」

「イエス、マスター」

 

 

 

 

 

 外に出て甲板でジャンヌと対峙する。互いの手には刃が潰された槍を持っている。エセルドレーダは端の方で座らせている。

 

「行くぞ」

「ええ、何時でもどうぞ」

 

 踏み込んで槍を横に薙ぐ。振るわれた槍をジャンヌは槍を同じように振るって打ち払って来る。そして、互いに弾かれるが、ジャンヌは回転して柄の部分で殴りかかって来る。それを強引に戻した槍で受け止める。それから互いに槍を振るって弾き合う。どちらも高速で一秒間に一回から二回は振るっている。

 

「これくらいは防ぎますか」

「大分、身体に馴染んできているのでな」

「では、どんどん速度を上げていきますよ」

「ああ」

 

 ジャンヌは片手で軽々と槍を振るって来る。それを弾くと、いつの間にか反対の手で握った槍で振り下ろしてくる。両手を器用に切り替えて放たれる乱舞に、こちらは両手で持って柄の部分で受ける。しかし、防戦一方になってしまう。

 

「体術をもっと意識なさい」

「っ!?」

「さもなければ、こうなります」

 

 槍を持っている手を強打され、槍を落としてしまう。次の瞬間には首元に槍の矛先が添えられている。

 

「マスターっ!?」

「大丈夫だ」

「ちゃんと手加減していますから」

「ああ。もう一度頼む」

「ええ。でも吸収した魂全ての経験を共有するのでしょう。必要かしら?」

「経験を得ても十全に使いこなせるとは言えんからな。それに全ての経験を利用して技術を極めるのも面白い。しかし、山賊程度では魂の質も経験もいまいちだ。いや、犯す経験はそれなりにあって多少は使えるのだがな」

「ろくでもないわね。なら、高名な騎士を狩りに行きましょうか?」

「そこまでは必要あるまい。我が師は目の前に居るのだから」

「私はそこまで槍が強い訳ではないわよ。あくまでも戦場で使っていたあのいけすかない聖女のものですから」

「しかし、それだからこそ得る物はあるのだ。だが、実際に相手が居ないのも問題だ」

 

 練習ではなく、実際に戦って殺す感覚を覚えたい。

 

「マスター、僭越ながら私が力をお貸しします」

「エセルドレーダ?」

「来なさい。ジョゴス」

 

 エセルドレーダが召喚したのはスライムのような不定形の体をしており、その外見通り姿形を自由自在に変えることができる生命体。牙の覗く口や目玉が至るところに付いている。

 

「これならば相手になるでしょう」

「こんな不気味なものをよく扱えるわね」

「使えるものは何でも使う。それがマスターの為になるのなら」

「まあ、よい。行くぞ」

 

 流石に普通の武器では相手を出来ないので聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)を呼び出して戦う。ロンギヌススランゼの力はすさまじく、あっさりと倒せてしまった。

 

「これでは駄目だな」

「過剰よね。普通に行きましょうか。私もサポートするわ」

「ああ」

 

 ジャンヌにサポートして貰って、今度は殴り倒す。時間が掛かったが、それなりに戦えるようにはなった。そもそも聖痕を刻んであるジャンヌやペスト達の能力も多少は使えるのだから、戦う方法はいくらでもあるのだから。

 

 

 

「今日の訓練はこれぐらいにしましょう」

 

 二時間ほど戦い、汗もたっぷりとかいたのでジャンヌの言葉で切り上げる。

 

「ああ。ならばシャワーに行くか」

「ええ」

「エセルドレーダも来るか?」

「イエス、マスター」

 

 シャワーを浴びながらジャンヌの汗の匂いなどを堪能しながら、魔力供給を行っておく。エセルドレーダにも同じようにしておく。

 

「相変わらず絶倫ね」

「素敵です、マスター」

 

 つやつやしている二人にげっそりとしている俺。とりあえず、ガチャ産の精力増強ドリンクを飲んで元気を取り戻す。

 

「お昼からどうするの?」

「そうだな。森にアリエッタと散歩に行くつもりだ。狼が欲しいからな」

「マスターと散歩なんてずるい」

「エセルドレーダも連れていってやる」

「イエス、マスター!」

 

 尻尾をだしてパタパタと嬉しそうに振るうエセルドレーダ。完全なわんこだ。

 

「護衛としてジャンヌも頼む」

「ええ、了解よ。キャロル達は誘わないの?」

「キャロルは城の作製で、ペストはリーゼンフェルトの街に迎えに行っているからな」

「そう。食事はどうするの?」

「ペストがお弁当を用意してくれている」

「なら、問題ないわね」

「マスター早く行きましょう」

 

 エセルドレーダが首輪をつけてリードを差し出してくる。リードを受け取って首輪から外す。

 

「マスター?」

 

 悲しそうにするエセルドレーダ。だが、これは駄目だ。

 

「領主である俺がそんな事をすれば流石に問題だからな。」

「認識阻害をすれば大丈夫です。お願いします、マスター」

 

 涙目上目遣いには勝てない。

 

「まあ、それならいいか」

「アリエッタも喜びそうね」

 

 結局、二人に首輪とリードを付けてのお散歩となった。もっとも、四つん這いになろうとしたのは流石に止めたが。森の中では目的の狼を手に入れる為に奥へと進んでいった。いろんなモンスターが出て来たが、アリエッタが気に入って仲間に入れるか、こちらの誘いを拒否したり、アリエッタが気に入らないモンスターは処理して進んでいく。森の奥では大きな白い狼達が居たのでそいつらを捕獲してアリエッタの言う事を聞くようにさせてから帰宅した。

 

 

 

 一ヶ月後、リーゼンフェルトのベルノルトからバルテンの街で疫病が流行り、住民のほとんどが発症し、死に絶えたそうだ。領主までもが危篤だと知らせを受けた。更には不気味なモンスターが街を覆っていて、近づけないそうだ。

 

「怖い事だな」

「本当にそうね」

 

 俺の膝の上に座らせて一緒に読んでいたペストが無表情でそう言った。この病気がこちらまで来ない事を切に願おう。後はモンスターだな。

 

 

 

 

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