ドラゴンボール外伝 すごいよ!! ナッパさん   作:超時空

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「申し訳ございませんフシュー。当店ではフシュー。栽培マンを連れてのご入店はフシュー。お断りしておりまシュー」

 

 ハンバーガーショップの店員さん(なんか黄土色のタコみたいな人だった)にフシューフシュー呼吸音混じりに言われたボクらは冷房の効いた店内を諦め、テイクアウトする事にした。

 河川敷の堤防に腰を下ろし、袋からハンバーガーを取り出す。

 隣には、持ち帰りの大袋を二つも広げるナッパさん。……あの、ナッパさん。それ一人で食べるんですか? 大家族スペシャルの夕食時みたいな量ですけど。

 ボクの心配をよそに、ナッパさんはハンバーガーをモリモリガツガツ食べ始めた。

 

「なんだよラディッツ。お前それだけか? だから体がヒョロっちいんだよ」

 

「ナッパさんが食べ過ぎなんだよ。なにその食べ方? ハンバーガーにフィッシュバーガーとチキンバーガーを悪魔合体させるなんて。陸海空揃ってるじゃん。ゲッターバーガー?」

 

 ナッパさんはゲッターバーガーを一口で半分をガブリ。むしゃむしゃ。

 そして、一言。

 

「ハンバーガーってさ。なんかペラペラしてて、これっくらい重ねなきゃ食った気しねえんだよなあ」

 

 そりゃあ、食べ応えがあるでしょうよ。ボクはノーマル一つで充分だけど。

 青空の下、外で食べる昼食はとても気持ちが良かった。

 風に草の匂いがする。

 日の光の眩しさも。

 アスファルトから跳ね返ってくる暑さも。

 どこか砂っぽい風も。

 指先に触れる土の感触も。頬を伝う汗も。

 誰かと食べるファストフードの美味しさも。

 部屋にいたら、きっと感じる事は出来なかった。一人ぼっちじゃ分からなかった。

 ナッパさんと出会ったから、感じる事が出来たんだ。

 

「ケケーケー!」

 

 堤防の下では、ゴミ太郎がバッタを追いかけて一緒に飛び跳ねていた。……すごいな。ゴミ太郎も緑色だから保護色みたいになって、ここからじゃ、どこにいるのかパッと見分かんないや。

 

「なあ、ラディッツよう。お前、夢とかあるのかよ?」

 

 シェイクを一息で吸いきったナッパさんが言った。口から離れたストローがチュポンと音をたて、紙コップがベコンベコンになっている。

 ボクは、言葉が見つからなかった。

 

「…………」

 

「やりたい事とかねえのかよ」

 

 答えなかったボクに、ナッパさんは言い方を変える。

 ボクはジュースを啜った。もう中身はないと知っていたけど、それでも啜った。

 ズズ、と音がして、溶けた氷の味がした。

 

「夢とか、やりたい事って、正直分かんないよ」

 

「まあ、無理して見つけるもんじゃないわな。そう言うのは」

 

「でも――」

 

 続く言葉を探す。心の奥底にそれはあった。ずっと前から。

 今まで探そうとしなかっただけ。

 今まで見ようともしなかっただけ。

 きっと無理だと勝手に決め付けて、目を背け、一歩を踏み出す事さえしなかった。

 

「――ボクには生き別れになった弟がいるんだ。カカロットって名前なんだけど」

 

 お父さんが、フリーザさまを暗殺しようとする直前に、小型宇宙船に乗せてどこかへ飛ばした弟。

 お父さんが手討ちになった後、惑星ベジータ跡の捜索が行われて、セキュリティカメラの記録映像に赤ん坊のカカロットを連れ出すお父さんの姿が映っていた。

 反逆者の息子としてボクは、兵隊に呼び出された。お前の父親について何か知らないか。何か言っていなかったか。弟をどこに逃がしたか。

 どの質問にも答えられなかった。お父さんはボクに何も言ってくれなかったから。

 子供だった事もあって、ボクはすぐに釈放された。

 ただ、弟が生きている事を知ってボクは嬉しかった。

 無事にどこかの星に降り、生きていたら、もう十歳になってるはずだ。

 ボクの事なんて知らないだろう。知らずに育っただろう。

 捜す事も会う事も出来ないと思っていた。

 それでも。

 

「ボクはカカロットに会いたい……。会いたいよ……」

 

 ナッパさんは何も言わないでいてくれた。

 この宇宙のどこかに、家族が生きている。血を分けた兄弟がいる。離れ離れになっていても生きている。

 それが、どれだけ幸福な事か。故郷も家族も、全てをいっぺんに失った人々にしか分からないだろう。

 自分でも気づかぬ内に、弟の存在がボクの生きる意味になっていた。

 今頃、カカロットはどうしているのだろう。誰か優しい人に育てられたのだろうか。

 元気にやっているだろうか。友達は出来たのだろうか。

 『お兄ちゃん』とボクを呼んでくれなくてもいいよ。

 一目でいい。一目でいいから、カカロット。キミの姿を見たいよ。

 

「じゃあ、頑張んなきゃな。お兄ちゃんなんだから」

 

「……うん」

 

 涙が溢れ、うつむいたボクの頭を、ナッパさんの大きな手がゴシゴシと撫でた。

 その優しい乱暴さが、頼もしくて。

 ボクは泣きながらでも笑えるんだ。

 

「雨、降りそうだな」

 

 遠い場所に、空の青さに似合わない黒雲が広がっていた。

 ゴロゴロと、遠雷の音も聞こえる。

 ナッパさんは急いでハンバーガーの袋を片付け始め、

 

「行こうラディッツ。種まきは明日にした方が良さそうだ」

 

 ボクは頷くと、完全に青草と同化してどこにいるのか分からないゴミ太郎を大声で呼んだ。

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