遊戯王なカルデア 〜シャトー外伝〜   作:スラッシュ

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この作品の前に、
現在連載中の“ヤンデレ・シャトーを攻略せよ”を読む事をおすすめします。


ヤンデレの無い……?
ネコミミカルデア 前編


 目が覚めれば、そこには近代的な建物、研究所の様な人工的な廊下に立っていた。

 

「アヴェンジャーめ……今回は現れないのか……!

 おかげで、これがどんなシチュエーションかまるで分からない……」

 

 俺、岸宮切大(キシミヤキダ)はもう既にこの展開に慣れてしまった。

 

 恐らくここはFate/Grand Orderに登場する主人公の所属している機関、カルデア。

 現実では唯の高校生の俺だが、夢の中ではゲームの主人公となってヤンデレ化したサーヴァントから逃げ回っているのだが…… 

 

『む。なんだ今日は早いな』

 

「アヴェンジャー!」

 

 姿はないが聞こえてきた。こいつは間違いなく、俺を悪夢に引きずり込んでいる張本人、アヴェンジャーの巌窟王だ。

 

『俺が大元ではない。俺はあくまで司会、主催者では無い』

 

 が、その主催者については一切教えてはくれない。

 

『それよりも、喜べ。今回は比較的平和だ』

 

「そりゃあ、あんだけクジ引かされれて、平和な物が1つでも無いと困るっつーの!」

 

 そう、このエクストラステージとか言う悪夢が始まった日。俺は悪夢の内容を決める為のクジを引かされた。しかし、1つだけだと思い引いたクジには他のクジが接着されていた。その数なんと30枚。

 おかげで30日間悪夢を見る羽目になった訳だ。

 

『今回はカルデアのマイルームから始まる。お前が早く寝たせいで少しばかり場所がズレたからマイルームのベットに移すぞ』

 

「……どうぞお好きに」

 

 さて、いつもはヤンデレに囲まれて恐怖ばかりだったが今日は平和と言っているのでそれを信じよう。

 

『では楽しめ。【ネコミミ】をな……』

 

 

 

「……」

 

 再び夢の中で目が覚める。確かに自分が夢の中にいると感覚で分かる。

 マイルーム……ゲームの背景画像でしか知らないが、確かこんな感じで、ベッド位しかない殺風景な光景だった筈だ。

 

「にゃー、ご主人様……」

 

 ……声がする。そう言えば先から体が重い気がする。

 起き上がれない。

 

「主どの……」

 

 何とか顔を動かす。すると、目の前に2本の白い三角形があった。

 

「…………ネコミミ?」

 

「マスター……起きて……」

 

 そして漸く状況を理解した。

 

「き、清姫……? 牛若丸、リリィまでまで……!?」

 

 バーサーカークラスの清姫、ライダークラスの牛若丸、セイバークラスのリリィ。

 

 何と、年齢や見た目で言えば幼女な英霊達が俺の上左右で寝ているという、何処か犯罪臭のする状況だった。

 しかも、全員頭にネコミミが……生えている。アクセサリー類ではなさそうだ。

 清姫と牛若丸が白い耳なせいか、リリィの明るい茶色の耳が目立つ。

 

「どうなっているんだ……?」

 

「マスター……もう朝ですよ……」

「主どのー、一緒に寝ましょー……」

「ご主人様、目覚めのキスにゃー……」

 

 リリィ! 寝てる寝てる!

 オイこら清姫、お前絶対起きてるだろ!

 

 

「……と言う訳で、シェイクスピア、カエサル、ホーエンハイムの順番の後に残りのキャスター達、その後残りのサーヴァントをボコってから、この珍事態が終わらなければ新サーヴァントを見つけてボコろうと思う」

 

 俺はFGOの常套手段、取り敢えず退治作戦を唯一無事だったダ・ウィンチちゃんに言ってみた。

 

「いや、言いたい事は分かってたけど落ち着いてよマスター……」

 

「これが落ち着いていられるか!」

 

 俺は叫んだ。

 

「マスター、撫でてください!」

「主どのー、ご飯くださーい!」

「ご主人様、抱いて下さい、にゃー」

 

 おい清姫、お前絶対無事だろ! いや、思考は無事じゃないけどそれは元々だし!

 

「凄いモテモテだね」

 

 ダ・ウィンチちゃんは呑気に言うが此処に来るまで終始この状態だった上に、左右背後から抱きつかれて動きにくくてしょうがなかった。

 

「ただ構って欲しいだけだろコレ! なんで俺が無事なんだよ! いっそ俺もネコミミ付けて欲しかったわ!」

 

「でも、この事態って私のせい、と言うかアヴェンジャーさんのせいだしね。

 あ、男の方のだよ?」

 

「なるほど、じゃあダ・ウィンチちゃんは味方で俺のターゲットはアヴェンジャーか?」

 

「そうじゃなくて……この事態は時間で収まるよ。私の作ってた薬品にアヴェンジャーさんが妙な物を入れてバラ撒いたのが原因だしね」

 

「ならなんでダ・ウィンチちゃんは無事なんだ?」

 

「『一人くらい無事じゃないとあいつが暴走する』とか言って私だけバラ撒かれる前に抗剤を飲まされたからね」

 

「野郎……!」

 

「とにかく、子猫ちゃん達の世話をしないと。幸い、男性陣は野生に帰ってカルデアを出てどっか行っちゃったから私はドクターの面倒を見て、君は女性陣の世話だけで済みそうだよ」

 

(ラーマや黒ひげ辺りは暴走しそうなんだが……ん!?)

 

「いや、その分担はおかしい」

 

「役得だから文句言わないの!」

 

 こうして、俺の奇妙な悪夢が始まった。

 

 

「まずは料理か……」

 

 食堂にやって来た。

 

「ご飯! ご飯!」

「ふにゃぁ〜……」

「ミルクを下さい、にゃー」

 

 リリィの頭を撫でつつ頭を悩ませる。

 

(猫の好きそうな物でなおかつ、人間の食べ物……魚か味噌汁ご飯か?)

 

 考えつつも粉ミルクを取り出し、お湯で溶かしてマグカップに入れて清姫へ渡す。

 

「まあ、ご飯系の方が量が作れるよな」

 

 食堂を見渡す。

 

「ほら、撫でなさい」

「っふん! ……うぅ……」

「…グー……グー」

 

 偉そうにふんぞり返っているエウリュアレ。

 鼻を鳴らしてそっぽを向きつつもこちらを見る両儀式。

 寝てるアルテミス。

 

 食堂には自由気ままな行動をする女性陣(ネコたち)が集まっていた。

 

「…………あ、牛若丸、駄目だよ」

 

 味噌汁に入れる為のシャケを切り始めた俺の横から手が伸びるが、それを素早く叩く。

 

「うー……おしゃかな……」

 

(猫っていうか幼児退行してないか?)

 

 その後もキッチンで激しい攻防を繰り広げつつも、どうにかご飯と味噌汁を完成させた。

 

「はい、牛若丸。これはリリィ、これは清姫、これは……」

 

 猫耳だけとはいえ何処まで猫化しているか分からないので玉ねぎは無し。大根と鮭とゴマを入れた味噌汁をご飯にかけた物を用意する。一応、先に完成させたご飯は皿と一緒に冷蔵庫に入れて冷やしていたが大丈夫だろうか?

 

「スプーン使うかな……?」

 

 と言う心配は無用だった様で、お茶碗に入ったご飯を皆スプーンで掬って食べている。

 

 それにホッとしつつ、みんなと同じ物を食べる。

 

「ん、旨いな」

「……」

 

 そんな自画自賛をしていると黒いネコミミの生えた両儀式がこちらをジッと見ていた。

 

「どうしたの?」

「……なで……ぉ」

 

 顔が赤くなっている。それを隠すかのように俺の腕に顔を擦り付けてくる。

 

「……オレを、撫で、ろぉ……」

 

(……がはぁ!)

 

 涙目な上に照れて赤くなっている美女、だけでは飽き足らず、撫でて欲しいと言う意思を示す為に両手で俺の腕を頭に置いただとっ!!

 

(なんて破壊力……! 俺が鉄の意思(ヘタレ)を持っていなければ襲っていたっ!!)

 

「おお、お、おおう! 今、撫でて、やる…………!」

 

 腕を軽く動かす。式の両手が俺を腕を開放して、俺はサラサラする式の髪をひたすら撫でる。

 

「〜〜!」

 

(うわぁー、めっちゃ嬉しそう!)

 

 真っ赤なまま目を細める式の笑顔に俺のテンションも上がり始める。

 

「ホレホレ」

「ふにゃー……」

 

「アゴもだ―」

「にゃー……」

 

「ヨシヨシ、ヨーシヨシ」

 

「な……撫で過ぎだ!」

「あっ……」

 

 1分が過ぎた位で式が俺の手を叩く。

 思わず名残惜しい声が出てしまった。

 

「っう……! ふ、ふん!」

 

 またツンモードに戻ってしまった式。顔は赤いままだが。

 

「マスター!」

 

 しかし、それと入れ替わる様に食堂の自動ドアが開いて俺にピンク色の髪の人物が飛びかかってきた。

 

「なんで僕はヤンデレ・シャトーに入れないんだよー!」

 

 メタ発言をしながら俺の首に腕を巻き付かせ、抱きしめたのは黒色のネコミミの生えたアストルフォ。

 

(それはお前の性別が男性公認だからだよ)

 

 ツッコミを入れつつも俺はアストルフォの頭を撫でる。

 

「ふあぁ……」

 

「マスター! 遅いわよ! 私の世話はどうしたのかしら!?」

 

 そんな俺とアストルフォの前に、今度はエウリュアレが現れた。

 

「ああ、ごめんね」

 

 手を伸ばすが、叩かれた。

 

「気安く触らないで! 大体、私の頭にこんな愛くるしい三毛猫ミミが生えているのよ!? 無視するなんてありえないじゃない!」

 

 エウリュアレは元・神様だけあって意外と自己が残っている様だ。プライドが高くなってツンデレてる上に高圧的だけど。

 

「僕幸せだよマスター……」

 

 その間にも撫でていたアストルフォはすっかり力を抜き、俺の体に寄りかかっている。

 

(撫でられるのが好きな猫と嫌いな猫で極端に対応が違うだよな)

 

 実家にいた2匹の猫を思い出す。一方は撫でられればその場に留まり、もう一方は逃げ、機嫌が悪ければ引っ掻いてきた。

 

「聞いてるのかしら? こうなれば魅了で……!?」

 

「まあ、お約束だよな」

 

 アストルフォを撫でている腕とは別の手をエウリュアレに向ける。俺はその手で猫じゃらしを握っている。

 

「な、な、な……!?」

 

「ほーれ、猫じゃらしだぞ?」

 

「にゃー」

「んにゃー!」

「っにゃー」

 

 しかし、この食堂には無数の猫達がいる。

 その全員が猫じゃらしに反応しだした。

 エウリュアレはプライドのせいか我慢しようと必死に体を抑えているが、腕はぷるぷる震えている。

 

「これもどうだ?」

 

 ダ・ウィンチちゃん特製、動くネズミ人形を取り出す。その数8個。

 

「行け!」

 

「にゃー」

「待ってぇ!」

「っふん……とっ、取ってきてやる!」

 

 食堂のドアから外へと投げ込み、それを女性陣は追いかけ始める。

 

「駄目! 悔しいけど、反応しちゃう!」

 

 エウリュアレはついに猫じゃらしに近づき殴り始める。

 

 俺も軽く揺らす。

 

「にゃ! っにゃ!」

「ほーれ、じゃあ此処に置いとくからなー」

 

 セロハンテープで机に猫じゃらしの棒部分を接着して、俺はその場を離れる。

 

「僕も僕もー!」

 

 途端にアストルフォまで猫じゃらしで遊び始める。

 

「……さて、何処に退散するかな」

 

 取り敢えずマイルームへ行こうとした所で違和感に気付いた。

 

「そう言えばマシュを見てないな」

 

 特に逃げ回る必要も無さそうなので俺はまだ会ってないマシュに会いに行く事にした。

 

「マスター! 見つけった!」

 

 が、廊下を歩く俺の背中に、再び誰かが抱き着いてくる。

 

(……か、感触が……圧倒的肉圧!)

 

「どうかしらマスター、可愛いかしら?」

 

 抱きついてきたのはネコミミをぴょこぴょこ揺らすマタ・ハリだった。

 

「あ、ああ……可愛いよ」

 

 ネコミミを見せつけるマタ・ハリにそう答えた。

 

「じゃあ、こっちは?」

「っ!?」

 

 マタ・ハリは笑いながらくるりと回る。

 

(し、尻……じゃなくて! 尻尾!?)

 薄い布で隠されていない尻……ではなく耳の色と同じ明るい茶色の尻尾を見せてきた。

 

「付け尻尾だけど、可愛いかしら?」

 

 途端に距離を詰めるマタ・ハリ。なんか、普段と大して変わらない気がするが……

 

「ああ、可愛いよ」

 

「じゃあじゃあ、撫でて撫でて!」

 

 そう言ってマタ・ハリは廊下に仰向けで転がり、手と足を曲げてお腹を見せる。

 

(あんたは犬か!?)

 

 どうやら猫化して好意が現れやすくなっている様だが、普段から好意を出している者は動物的に懐いている様だ。

 

「早く早く!」

 

(こいつ……誘ってやがる!)

 

 しかし、童貞であるこの俺にこの状況は余りに刺激的すぎてよろしくない。

 なにせストリッパー衣装の女性が床に転がりながらもこれ見よがしに肢体を見せてくるのだ。しかも、大事な所をさらけ出す様に。

 

「マスター……」

 

(そんな切なそうな声を出すな……!)

 

 俺は、このままでは駄目だと思い、逃げ出した。

 

 

「っく……! 何とか逃げ切ったぞ……!」

 

 未だあの光景を思い出すだけで心臓の鼓動が早くなる。

 

(アレは、卑怯だろ……! もう少しで理性が溶ける所だった……!)

 

「ふー……良し! 落ち着いた!」

 

『先輩……?』

 

「おっわ!? ま、マシュ!? って、あ……」

 

 突然壁から声がしたと思ったがどうやらマシュの部屋の前だった様だ。壁では無くドアがあった。

 

「マシュはずっとそこにいたのか?」

 

『え、えぇ……一応、缶詰があったので……』

 

「でもなんで? もしネコミミを気にしているなら皆にも付いているけど……」

 

『い、いえ! そっちではなくて! ネコミミ……だけでは無いんです……』

 

「?」

 

『で、でも……先輩になら……あ、今開けますね!』

 

 そう言ってマシュは部屋のドアを開く。

 

「お邪魔しま――」

 

 部屋へと足を踏み入れた俺の体はそれを見た瞬間、足を止めた。

 

「……にゃー、でいいんでしょうか……?」

 

 マシュの頭には黒いネコミミ、後ろから白い尻尾が動いているのも分かる。

 

「や、やっぱり、変ですか……?」

 

 だが、他の女性陣と一線を画すのはその服装だった。

 

「と、トラだと……!?」

 

 普段装着している鎧と同じ形だが、トラ模様の毛皮で出来た様な服を着ていた。

 しかも、首には鈴付き首輪のおまけ付。

 

「黒、白、トラ模様と、まるで統一感が無い上に、どれも取れませんし脱げないんですよ……」

 

 よほど恥ずかしいのか、ずっとモジモジしながら俯いているマシュ。

 

「いや、よく似合ってるよ」

「本当、ですか?」

 

「ああ、本当に可愛い」

「……その、本当に可愛いのであれば……頭を撫でて貰えますか?」

 

「ああ」

 

 俺は笑顔を浮かべつつマシュの頭を撫でる。

 

「……先輩……気持ちいいです」

 

 目を細めるマシュの尻尾が動いている。猫は喜んでいる時とイライラしている時、どちらでも尻尾を動かすらしいが、この様子ならイライラはしていないだろう。

 

(それにしても、何でマシュだけ服装まで変わってるんだ? 尻尾も付け尻尾じゃないし……)

 

「……先輩……その、カルデア内を歩きたいんですけど、一緒に行って貰ってよろしいでしょうか?」

 

「ああ、良いよ」

 

 そう言うと俺はマシュの頭から手を放すが、マシュは俺の腕に頭を擦りつけてきた。

 

「にゃー……あれ? す、すいません!? 私、何で……」

 

「行動が猫化しているからね。皆もそんな感じだから気にしないで」

 

「そう、ですか……」

 

 赤くなりながらも頭はしっかり腕に預けるマシュ。

 

 開いたドアを、2人でくぐった。

 

「ますたぁ……にゃー」

 

 同時に待ち構えていた清姫に抱き着かれた。

 

「っと、きよ……ひめ……さん?」

 

 不意打ち。完全に不意打ちだった。

 

 ネコミミに白い尻尾。そして、まるで毛皮で出来た様な下着の様な格好。

 

「ますたぁ……体が熱い……にゃー」

 

「主どのー! 捕まえました!」

 

 そこに現れる牛若丸。指の間にネズミ人形が5体程挟まっている。

 だが、それよりも驚いたのは牛若丸も白と黒の尻尾を付けていて、服も黒い下着の様な格好なことだ。

 

「猫化、未だ進行中の様ですね」

 

「嘘だろ!?」

 

 




後編に、続く。
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