「……にゃふぅ」
自分の発した妙な呻き声で、僕は目を覚ました。
寝起きの鈍い頭でぼんやりと周りを見回す。どうやら今僕がいるのは、壁一面にびっしりと分厚いハードカバーの本が詰まった三階立ての大きな図書室っぽいところで、椅子に座って長い木製の机に突っ伏していたみたいだ。
出入り口は木製で両開きのかなり大きいドアだった。
「……ん~、こんなところにいた記憶はないんだけどなー」
徐々に覚醒し始めた頭で考える。
一番最後に残っている記憶は、時の庭園の深部にて戦っていたプレシア・テスタロッサの放った大魔法がアインの防御を打ち破り、ざっくりと僕の胸を魔力の剣が貫く瞬間――――
「――って、あれ? そうなると僕ってば、もしかしなくても死んでる?」
慌てて自分の身体を入念に調べてみるが、お馴染みの黒い制服の布地が穴一つなく続いているだけ。胸のあたりにも傷ひとつなかった。
だけど、僕の中には喉を逆流してきた血液の鉄っぽい味も、魔力の刃によって肉を切り開かれていく生々しい感触が残っている。腹からとめどなく流れ落ちる鮮血の温かさだって、意識がだんだんと深い闇の淵に堕ちていく恐怖だって覚えてる。
「ッ――――!!」
そのことを思い出した途端に、僕の思考は一瞬にして混乱を極め軽く吐き気をもよおした。理性の耐久限界値は軽々とオーバー、それこそ当社比三百パーセントくらいを軽く突き抜けた。
こみ上げてくる吐き気を我慢できた自分を、誉めてやってもいいと思う。
けれど、混乱は続く。
目眩がする。頭がガンガンする。
「あ、慌てるなっ、こういうときは素数を数えるんだっ! 1、2、3……って、小学三年生が素数を暗記なんかしてるかっての」
それに確か1は素数じゃなかったはずだし。
と、馬鹿なことをやってそれなりに冷静になれたので、とりあえず椅子から立ち上がった。
そういえば、なんか夢で誰かと話していたような気もするけど……覚えてないや。むー、妙に損した気分だ。
というか、いつもならツッコミの一つや二つ入れてくるであろう、小うるさい無機質ことアイン・ソフ・オウルが定位置の左手首に見当たらない。どうりで腕がやけに軽いと思った。
「どこ行ったんだろ、アイツ。んー、まあ、いいか。……さて、いったいこれからどうしたものかな」
ちょうどいいので、軽く現状に至るまでの流れをおさらいしてみよう。
僕はバニングス邸で使い魔アルフから時の庭園の場所を聞き出し、単独でプレシア・テスタロッサに挑むもシリンダーの中身――代替物と言うからには、きっとあの女の子は“
うん、謎だ。謎すぎる。
ここ最近いろいろな理不尽に遭遇してきたけど、今回のは格別に理不尽だ。いろいろな意味でイライラする。
プレシアの力を見誤った僕の完全な自業自得ではあるけれど、こうもはっきりしない状況だと違う意味で気持ちが悪い。いや、だからといってあのまま死んでるってのもイヤだけどさ。
ともかく、ここがいわゆる冥土というやつなのか、あるいは走馬燈みたいなものなのかはわからないが動けるのならば何か行動すべきだ。
全てを諦めて投げ出すには、まだ早いようだから。死んでいるかもしれないってのに大して動揺していない自分に、若干びっくりだけどさ。
「……うん?」
ふと目の前の机に目をやってみると、一冊の古びた本が無造作に置いてあった。
それが妙に気になって手に取る。
表紙にはやけに足の長いシルクハットをかぶった燕尾服の紳士と、机について手紙らしきものを書いている三つ編みの少女が描かれていた。
題名は……、
「“あしながおじさん”、ね」
その忌々しい題名を口にして、僕はぺっと本をことさらぞんざいに机の上へ投げ捨てた。眉間にしわ寄せ、口はへの字に、だ。
僕はこの話が好きじゃない。むしろ大っ嫌いだ。
八神さんのこともあるけど、それ以前にこの物語を読んでいると虫酸が走るというか、原初の怒りが甦るというか……まあ、ともかく嫌いなものは嫌いなのだ。
……って、ここにある本全部同じタイトルじゃん! うわ、キモチワルっ!? リブレイドで塵も残さず消滅させてやろうかコノヤロウ。
「ん?」
不意に人の気配を感じて、扉の方に視線を向ける。
少しだけ開いた扉から、僕と同い年かちょっと下くらいの女の子がちょこんと顔を出していた。
彼女の髪は薄紫色のショートボブ。両耳を隠すように前髪が一房伸びていて、カチューシャの代わりにした水色のリボンを両サイドでチョウチョ結びしている。
ぱっちりとした瞳は宝石みたいに澄んだ碧色で、僕のようにひねていない純真無垢な光で輝いている。そして、子どもらしいふっくらとしたほっぺはほんのり朱に染まっていた。
成長すればさぞや愛らしいお嬢さんになることだろう。……って、僕とほぼ同い年っぽいけどさ。
服装全体は扉に隠れて見えないが、白と薄いピンクの上品な――悪く言えばやや時代錯誤なしつらえで、肩が丸いデザインの半袖の袖口からはレースが覗き、胸元には大きな赤いリボンが見えた。
おそらくワンピースであろうそれはお嬢様風と言うべきか、僕のまわりの女の子では月村さんあたりに着せたら似合いそうな感じの服だ。……え、バニングスさん? ははは、そりゃないわ。
閑話休題。
僕はこの、初対面はじめましてな少女になぜか情愛とは違う、けれどもとても強い愛しさというか、親しさのようなものを感じていた。
僕の女の子の好みとは、だいぶズレてるはずなんだけどなぁ……。
「……君は?」
「ふふふっ」
少女は問いかけには答えず、にっこりと太陽のような笑顔だけを見せる。
それからくるりと踵を返すと、てててっと走り去った。
「あっ、ちょっと!」
少女が去った後、僕は少しの間呆然として、それから盛大にため息を吐いてわしゃわしゃと髪をかき混ぜる。
「……ついてこいとか、そういうことなんだろ? なんともまあ、お約束な展開だね。反吐が出る」
誰ともなく、独り言ちる。悪態を吐く。
しかし、どうせここにいつまでも居たって意味などないのだ。ならば彼女の誘いに乗ってやるのも悪くないだろう。不本意甚だしいけれども。
僕はそんなことを考えながら、目の前の大きなドアを押し開けた。
「――なんじゃこりゃ」
図書室を抜けた先で僕が発した第一声がこれ。ぽかーんと間抜け面をさらしているんだろうさ。
でもさ、こんなマヌケなセリフを漏らしたって罰は当たらないと思うんだ。
――――目の前には、超巨大なシュークリームに、屋久杉なみの太さのストロベリーショートケーキ。トランポリンのようにはわはわ……じゃなかった、ふわふわなマシュマロ。青空にはわたがしの雲が浮かび……あー、もういいや。
ともかく、古今東西津々浦々、様々な種類のお菓子が規格外の大きさでそびえ立つ、正しくファンタジーな風景が広がっていたのだった。
「いやー……、甘いものは確かに大好きだけどさ。……もぐもぐ、あらやだこれおいしい。って、なにやってるんだ僕は」
手に取ったどデカい板チョコの一部をもいでバリバリと咀嚼しつつ、ひとりでボケてひとりでツッコミ……虚しい。
アインが居ないせいか、さっきから調子が狂いっぱなしだ。ったく、あの無機物は肝心なときに……。
だが、こんな甘いもの好きにたまらない光景を見せられれば、テンションが上がってしまうのも無理からない話である。
とりあえず、手当たり次第に食べてみようか。お菓子の家を探してみるのも悪くないかも。
でもなぁ、日本が世界に誇るべき甘味の王者“たい焼き”が影も形もないとかどういう了見だろう。たい焼き好き、否、たい焼き党員たる僕に喧嘩を売ってるのだろうか? 売られた喧嘩は七倍返しで買うよ?
などと埒もないことを考えながらお菓子の国をふらふらと散策していた僕の耳に、あの娘の声が届いた。
「おかしもいっぱい用意したの。みんなでなかよく食べましょう」
彼女はチョコケーキで出来たテーブルの前に座って、無邪気な笑顔を振りまいている。まるで
おもちゃみたいな小さなテーブルの上には、同じくおもちゃみたいなティーセット。みんな、とか言ってる割にカップが一セットしかないのは気のせいか?
「……うん、まぁでも、女の子からのお誘いを断るわけにはいかないよね」
怪しさ大爆発だけどなっ!
だって僕、母さんとか姉さんに「女性には優しく、つねに紳士を心がけるべし」って厳しくしつけられているもの。紳士、ってよくわからないけどさ。
まあ、それはともかくシュークリームの上をサクサクと歩いて、彼女に近づき――――
「――うわっ!?」
突然、足下が崩れ落ちる。
落下つつある視界の片隅に見た少女の無邪気な笑みが、僕には腹黒いそれに見えた気がした。
(こんな古典的なトラップに引っかかるなんてっ!!)
不覚である。大変不覚である。
内心、時折きわめて“のうたりん”になる自分に呆れるやら悲しくなるやら――なんていうかある意味呪いじみているよな、これ。
とりあえず、落ちた先がでっかいロールケーキの上だったのでひとまず安心だ。
そこから先に続く道が見えたので下に降りて進むことにした。
「あ、きのこの山発見。……むしゃむしゃ、おお、このドーナツもなかなかの味だな。もぐもぐ」
と、こんなふうにこのよくわからない世界を結構満喫していた僕の行く手に、二つの道が現れた。
一つ。右の道は今までと同じく、様々なお菓子に囲まれた地を行く平坦な道のり。
一つ。左の道はチョコクッキーで出来た壁と階段が天へと伸びる長い道のり。
「……んむ。ど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な――、と」
神様の言うとおり、じゃないけどね。
ひとまず悩んでみる。
上か下か、天か地か。道は二つに一つ。
常識的に考えれば下の道だろう。道のりはどこか容易そうだし、何より今まで通りたくさんの甘味を楽しみながら進めるってのがいい。とてもいい。すごくいい。ベリーグッドだ。
対して、上の道は階段の傾斜が厳しい感じだし、足場もなんか不安定そうで落下したらただでは済まないだろう。さらに食べられそうなものが壁のチョコクッキーしかない、ってのがよろしくない。バッドである。
「まあ……上だな」
しかし僕は、さほど悩まずに上の道に行くことを決めた。さっきの思考はただのポーズだ。
理由? そんなものはない。あえて言うならただの勘である。
僕の直感は最強なのだ。……的中率に問題アリだけどねっ!
かなりの長さだった階段を上り終えると、途切れて断崖になった道の真ん中にぽつねんと扉が寂しげに立っていた。
紫色の、割とどこにでもあるような二メートルくらいの扉。あからさまに怪しすぎていっそ清々しい。
「さあて、鬼が出るか蛇が出るか……」
深呼吸を一つ。
いつものように格好つけた言葉を吐いてさざ波立った心と折り合いをつけた僕は、覚悟を決めると扉のノブに手をかけた。
* * *
扉を抜けた先。
そこはなにもない、ただ真っ白で空虚なだけの空間だった。
その中心には、待ち構えていたように藤色の髪の少女が佇んでいる。僕にはその表情が何かを哀れんでいるようで。
彼女は僕に気がつくと、哀しみを消し去りにっこりと笑う。
「おお ゆうやよ しんでしまうとはなさけない」
「…………」
開口一番、笑顔でそんなことをのたまいやがるお嬢さんに、僕は無言でづかづかと近づくと渾身のでこぴんをお見舞いしてやった。
「ぷにっ!? な、なにするのっ?」
「誰がうまいこと言えと。馬鹿言ってないで説明しろ、アイン」
碧の瞳に涙を溜め、上目遣いで抗議する少女――否、アインにビシッと言い放つ。
「ええっ! ど、どうしてそれを!?」
「声」
「――あ」
そんなことも気が付かなかったのかこの無機質は。いや、今は身体があるからなまものか――別にコイツに身体があったって今更驚きはしない。そもそも最初からよくわからない奴なのだから。
舌っ足らずでロリぃ喋り方してたって、驚いてやらないんだからなっ!
「まあ、最初のセリフで理解はしたけどさ。……やっぱり死んでる、のか」
アインは言いづらそうに顔を曇らせ、短く「うん」とだけ答えた。
「予想はしていたけど、こうして改めて告げられると結構ヘコむね」
「ごめんなさい、わたしがちゃんと守れなかったから……」
しゅんとして、いまにも泣きべそをかきそうな表情をするアイン。僕は、たぶんすごく困った顔をして彼女の頭をわしゃわしゃと撫でる。
頭をなでられて、アインがくすぐったそうに目を瞑った。
「プレシアに負けたのは僕の責任だよ。――それに、まだ終わりじゃないんだろ? この〈ぽんこつくん七号〉が守ってくれたみたいだしな」
懐から取り出したあみぐるみを見やり、「それはないよ」と冷静にツッコミするアインは一転、碧色の瞳に深い迷いを滲ませた。
訝しげに思う僕に彼女は諭すように告げる。
「……また、たたかうの? だれかを傷つけて、だれかに傷つけられて」
「……ああ」
「きっとつらいことばっかりがあるよ」
「かもしれないな」
「あなたはたぶん、いつまでたってもひとりぼっち。わたしとおなじよ」
「否定は、しないよ」
「だったら、わたしとここにいましょう?」
幼い顔に似合わない、酷く蠱惑的で艶やかな笑みを魅せるアイン。背筋がぞくりと粟立つ。
「このユメのセカイで、ずっと、いっしょに――――」
すべてを投げ捨てここに逃げ込む。それは魅力的な提案に思えた。
だけど――
僕は首を横に振る。少し驚いた様子のアインの碧い瞳を真正面から見つめ、嘘偽りのない気持ちを打ち明ける。
「夢は所詮夢だ。どんなに楽しくて居心地がよくても、いつかは目覚めなきゃならない」
それは、いつか誰かが誰かに言った言葉。
僕には、守らなきゃいけない約束がある。大切な家族がいる。気の置けない友だちがいる。
そして――、もっと仲良くなりたい
一度決めたことを諦めて、全部投げ出すのだけはしたくない。そんなこと、死んでも御免だ。
「だから、僕は足掻くよ。みっともなくたって、諦めたくないから」
アインの表情に諦めとも喜びともとれる複雑な色が映り――――瞬間、世界にノイズが走った。
そして僕はビルが乱立するごく一般的な街中に立っていた。
しかし、この場所に多くの者は激しい違和感と恐怖を抱くだろう。
――――その元凶は、天空に浮かぶ紅の月。
ここは異界。
魑魅魍魎が住まう魔界の入り口。地獄の
――だけど、“私”にとっては深い望郷の念を抱く“失われた還る場所”――
僕たちの周りを、七枚の“羽根”が取り囲んでいる。納められた宝玉は力なく光を失っていた。
相対する少女が両手を天に捧げる。すると、虚空から彼女の両手の中に一抱えほどの宝玉が姿を現する。
僕の瞳と同じ、鮮やかな光を湛えたあの宝玉が秘める魔力は、絶大にして純粋無垢だ。
「これはね、アイン・ソフ・オウルにおさめる“七徳の宝玉”のひとつ、“正義”――って、そんな顔しないで」
“正義”という単語に露骨に嫌な顔をしたであろう僕に、アインが苦笑した。
「この“宝玉”にやどったチカラは、善とか悪とかそういうんじゃなくて、“正しい想い”をつらぬくためのチカラなんだよ。――それが“正義”」
「“正しい想い”……」
オウム返しでアインの言葉を口にする。それが、ストンと腑に落ちて。
「でも、いいのか? “それ”を僕に渡したら独りぼっちになるぞ」
懸念を口にする。行くべき道は定まったけど、憂いは断っておきたい。
「だいじょうぶ。だってわたしはいつでも、いつだってゆうやといっしょにいるんだもん」
「そうか、それを聞いて安心した」
儚く微笑むアインにふてぶてしく笑ってみせる。
僕は臆病者だから、飄々としたふうに装って本心を飾りたてて、隠していないと前に進めない。
だから、こうして言葉に出して、自分自身に宣言するんだ。
「例え負けても、挫けず、甘えず、瞳を逸らさず。前だけを向いて……僕の中の“正しい想い”を貫きたい。だから――」
アインの手から宝玉がふわりと離れる。
天に座す紅い月が妖しく光る下、僕は導かれるように藍色の宝玉に左手を伸ばした。
「――――“私”の光!! 僕に、僕の正義を貫く力を!!!」
“正義の宝玉”からインディゴブルーの激しい光が発せられる。同時に、僕の周りを囲んだ七枚の“羽根”が光を取り戻し、渦巻く蒼白い烈風が身体を包み込んだ。
視界の全てが、ホワイトアウトして――――
「ゆうやはもう負けないよ。だってゆうやは――――
♯11 「光と闇を統べるもの」
――――なんだから」
最後に、そんなアインの言葉が耳に届いた。
* * *
金色の塔の中。
命を持たない
ひとつは桜花。その心に、不屈の意志と無限の可能性を秘めたきらめく星光。
ひとつは黄金。轟く雷鳴で暗黒を切り裂く、静かなる優しさを湛えたかがやく月光。
ひとつは蒼銀。正と負、相反するふたつの力をその身に宿して己の道を貫き通すまばゆい陽光。
――三つの光が、今ここに交わる。
「いっくよーっ、レイジングハート!」
『All right, my master』
降り注ぐ火線を舞うように潜り抜け、純白の衣を纏う少女――なのはが六つの桜色に輝く魔弾〈ホーリーシューター〉を生成する。
「シュート!」
かけ声とともにレイジングハートを横に薙ぐと光が弾け、弾丸が一斉に飛翔する。その全てが、余すことなく鋼鉄の兵士を撃ち落とした。
「やったねっ、レイジングハート!」喜びを露わにして空中で停止したなのはの背後から、傀儡兵が両腕に備え付けられた機関銃を放つ。『master!!』
しかし、上空から蒼銀の翼をはためかせて急速落下してきた少年――攸夜が間一髪でその間に割って入り、弾丸の雨を大きく変化させたコートの裾で防いだ。
「攸夜くんっ!」
喜ぶなのはに小さな笑みを向け、攸夜は加速する。背負った白き“羽根”が光波を放つ。
その左手に、まばゆい
「フラッシュ――!」
銃弾を乱射する傀儡兵の懐に一瞬で飛び込んだ攸夜は、蒼白く光る鉤爪を突き立てる。
魔力を帯びた一撃は、分厚い装甲を易々と貫いた。
「エンドォォォッ!!!」
一際まばゆい光を放出して掌の中で無慈悲な蒼銀が輝く。
装甲が俄かに泡立ち、傀儡兵は膨れ上がる。
攸夜が離れた瞬間、圧縮された閃光の放つ超高熱が傀儡兵を内部から完膚なきまでに焼却した
〈フラッシュエンド〉。高密度の光で焼き尽くす〈天〉の攻撃魔法だ。
本来なら中距離攻撃のところを、彼の有り余る戦闘センスがゼロ距離での発動を可能にしていた。
「油断大敵だね、高町さん」
「うん、ごめんね。ありがとう」
爆風から抜け出して飄々とする攸夜に、なのはが言葉とは裏腹に特にすまなそうでもない。
むしろその表情は、“友だち”と共に空を飛べることへの喜びで輝いていた。
「まあ、ざっとこんなもん――」
攸夜が得意げに言う。そこに、傀儡兵が頭上から釣瓶撃ちで砲撃を放った。
さらに割り込む緑の影が、翠緑の障壁を作り出して砲撃を弾き飛ばす。入射角度まで計算された完璧な防御だった。
「ユウヤこそ、油断大敵だよ?」
「むっ」
緑壁を張って砲撃を弾いたユーノが肩越しに言う。その表情は悪友をからかう童子のようだった。
「あははっ、情けないねえ。自分が油断してちゃ世話ないよ」
砲撃を放った傀儡兵をその爪撃の餌食にしながら笑うアルフ。また、その眼下には緑のチェーンバインドにくびり砕かれた残骸が転がっていた。
「うるせー、わんこのくせに」
「ああっ!? また、犬って言った!!」
むきー! と騒ぐアルフを無視した攸夜は、右手に闇の黒槍を創り出す。そしてふわりと高度を上げた。
ちょうどそこに、金色の大鎌で傀儡兵の群れを雷速で斬って捨てた黒衣の少女――フェイトが後退してきて、とんっと背中合わせになる。
「…………」「…………」
彼らの間に言葉はない。あるのは背中から感じるお互いの体温だけ。
そして、眼前に迫る二体の傀儡兵。
「アーク――」
「ダーク――」
二人は何の合図もなく、見事なタイミングで互いの場所を入れ替えると、大鎌と黒槍が真円を描いて振りかぶられた。
「セイバー!!」
「ブレイド!!」
黄金と漆黒の孤月が傀儡兵を斬り裂き、二体揃って上半身と下半身が泣き別れとなって爆散する。
爆発の逆光に照らされたフェイトと攸夜は振り向き、見つめ合う。二人の間には、どこか穏やかな空気が流れていた。
「やるじゃないか」
「あなたも」
そう軽く微笑み合う様子になのはが不満そうな顔をして――
「っ! フェイトちゃん、攸夜くん!」
一転、声を張り上げ、二人に警告を発した。
今まで沈黙を保っていた巨大傀儡兵が背負った大筒を展開、その暗い淵のような砲口から禍々しい光の濁流を吐き出した。
「ッ! なのは!」
「フェイト!」
「ちぃッ!」
ユーノがなのはを、アルフがフェイトを、攸夜をアイン・ソフ・オウルが盾となって巨大な魔力砲撃から庇う。
塔内に充満する魔力が、強烈な衝撃が五人を襲う。
「っ! ……あれの障壁、かなり堅そうだ」
「うん、なのはたち三人の全力砲撃を合わせても抜けるかどうか怪しいね」
フェイトの言葉に、障壁で耐えながら器用に答えるユーノ。
「私が全力全開で撃ち抜けば!」
なのはの些か物騒なセリフに、黙っていた攸夜が口を開いた。
「まあ待ちなって。高町さんたちはアレに魔法をぶち込むことだけ、集中していればいいよ。……道は、僕が斬り拓く」
そんなことを一分の迷いもなく宣言した攸夜の背中を見て、フェイトがクスリと笑う。
「どうしたの、フェイトちゃん?」
「うん、あのときと一緒だなって」
あのとき? と首を傾げるなのはが攸夜に視線で問いかける。肩越しで見やる彼は得心がいった様子だった。
「ビル街のときに、ね」
「むっ! 私だっておなじようなことあったの!」
何故かなのはが張り合う。それが、フェイトに対してなのか攸夜に対してなのかは彼女自身わかっていないらしい。
攸夜はといえば巨大樹を封印した際のこと、ジュエルシードを鎮めた時のことを思い返して苦笑していた。自分はつくづくこういう役回りなのだな、と。
「私とフェイトちゃんは魔法を撃てばいいんだよね」
「……私、がんばるよ」
白と黒、対照的な装束の少女たちがそれぞれのデバイスを構える。
「ユーノとアルフはサポートを頼むよ」
「うん、わかってる」
「しょうがないねえ」
頷くユーノと不承不承に了承するアルフ。
攸夜は皆の顔を見渡して、コートを翻す。その眼差しは、白亜の楯の向こう側――真っ直ぐに巨大傀儡兵を捉えていた。
そして砲撃が止んだ瞬間、即座にアイン・ソフ・オウルが分離して再び翼となり、攸夜が仲間たちを先導するように前へと出る。
「これで、フィナーレだ!」
膨れ上がる戦意、解き放たれる魔力。
足元に描かれる七角形七芒星を中央に抱いた蒼銀の魔法陣が、強く強く煌めく。
「真なる力をッ!!」
『リミットブレイク!!!』
攸夜が背負う三対の翼を構成する魔力光が増大し、二倍強に延長。白き“羽根”からは蒼銀の燐光に混じって、生命の根源たる
「アイン・ソフ・オウルッ!!」
左手を天に差し上げる動作に合わせ、七枚の“羽根”が天に昇る。
藍色の宝玉を抱いた羽根を頂点に青色と紫色が並列、その下に黒色と緑色が直列、橙色と赤色が末広がりに連結。完成したそれは、Y字を逆にした形の巨大な一振りの剣だった。
その場に居た全ての者の目に天からこぼれる天使の橋と、舞い落ちる純白の羽毛の幻影が映る。
『“正義の宝玉”、解放』
切っ先から形成される藍色に輝く光の刃。
光刃に宿るは無慈悲にして苛烈、極大にして無上の力。無限の光の一端がここに開帳された。
陶酔したように閉じた瞳を見開いて、攸夜が蒼白い結晶体で構成された柄を両手で握る。
――――そして攸夜は、力ある“言葉”を世界に宣言した。
「『すべてを貫く私の光」』
振り下ろされた白亜の大太刀を機兵へと突きつける。
刹那よりも速く――、音速を超えたスピードで全てを置き去りにして、一匹の“獣”が眼前に立ちふさがる障害へと吶喊した。
「――押し通るッ!!」
急速接近する
そこから白煙を引いた半実体式の魔力誘導弾――いわゆるミサイルを数え切れないほどに発射した。
飽和攻撃じみた大量の魔力弾が味方の傀儡兵までお構いなしに襲いかかる。
散開したフェイトたちが各々に魔弾の豪雨に対処する中、攸夜は白亜の大剣から噴き出す魔力をブースターにしてさらに加速し、勇猛果敢に突撃していく。
残像を創り出すほどの速度で上下左右、慣性を完全に無視した不規則的な機動を駆使して弾雨を掻い潜る。残された幾つもの残像に惑わされ、誘導弾が空を虚しく穿った。
因果の地平の彼方、“世界線”を異とする世界で〈防御魔装〉というカテゴリーに分類される魔法――〈イリュージョナルスキン〉は、身体に刻み込んだ簡易な術式から視覚的魔術的な攪乱効果を持つ幻影を生み出す付与魔法だ。
本来の正しい使い方は、術者の周囲に幻影を投影することで攻撃を逸らすことにあるのだが、攸夜は高速で機動する自分の背後に投影し、擬似的な質量を持つ残像としていた。
「おおおおおオオオオオオォォォ――――ッッッ!!!!」
獣じみた裂帛の砲哮を上げて、藍色の光刃が魔力の城壁に突き刺さる。冷たい炎を灯した蒼い瞳は、真っ直ぐ前だけを見据えて。
強固な障壁に亀裂が入り、白亜の大剣の間で激烈な藤色の光と蒼白いスパークが発生、見るものの目を焼く。
後方、華奢な身体には不釣り合いに膨大な魔力を秘めたふたりの乙女が、携えた
白衣の少女の足元に発生する澄んだ桜色の円状魔法陣。金色の杖の尖端を、環状魔法陣が取り巻く。
黒衣の少女が、掌の中に創り出した金色の小さな魔法陣を投げ打つ。変形した黒き杖の
「ディバイィィィィィン!!」
「サンダァァァァァーー!!」
結晶体で構成された柄を握る攸夜の両手に、更なる力が込められた。
「はああああああ――――ッッ!!!」
突き刺した傀儡兵の巨体ごと大剣のき
蒼銀の光翼が、本来持ちうる耐久力の限界を大きく超えて明滅。間欠泉のように止めどなく“羽根”から噴出する黄金の粒子が勢いを増して。
「――貫けッ!!!!」
時の庭園全体に轟くほどの大音響。大気が震え、世界が揺らぐ。
ついに障壁を破り、一筋の閃光が天を割り裂く。藍色の光の柱が塔の遥か天井を突破して、傀儡兵の腹部を深々と貫いた。
撃ち貫かれた部分から機械部品やオイルが零れ出し、盛大に火花が散る。
それでも、かの傀儡兵は動きを止めない。最後の足掻きとばかりに大筒を眼下の攸夜へと向け、禍々しい光を砲口から溢れさせた。
しかし――
「やらせないっ!」
「アンタはここで終わりだよ、デカブツ!」
緑とオレンジ、二本のチェーンバインドがその大筒を雁字搦めに絡め取り、砲撃の発射を阻害する。
貫く光刃。絡まる二本の鎖。
空中に張りつけとなった傀儡兵へ、フェイトとなのはが限界まで高めた魔法の力を解放した。
「「バスタァァァァァァァーーーーッッッ!!!!」」
閃光を輝かせる桜色、稲光を纏わせる金色――二色二条の破城砲が機兵の巨体を覆い尽くす。
「せーのっ!」
なのはが発したかけ声で二人の魔力光が混ざり合い、マーブル状の極大な奔流となって傀儡兵の堅牢な装甲を撃ち抜く。
巨大傀儡兵は清らかにして激越な光の中で消滅、灰燼と化した。
そして、それだけでは到底消費し切れない圧倒的な魔力の渦は時の庭園を鳴動させ、巨大な風穴をぶち開けたのだった。
* * *
瓦礫の散乱した広間。
光の翼〈インビジブルウィング〉を収納し、七枚の“羽根”を引き連れた攸夜がコートの裾をなびかせてふわりと降り立つ。
先に降りていたフェイトたちが小走りで近寄ってきた。
「えっと…………」
「攸夜くん……」
「ああ……」
三人の間に沈黙が流れる。
しかし、それはネガティブな性質のものではなく、現に少女たちの表情は明るい。特になのはは花が咲くような満面の笑顔を見せていた。
少し離れた場所で三人を暖かく見守るユーノとアルフ。どちらも程度の違いはあれど、微笑ましく眺めている。
「……ふたりは」
くすぐったい沈黙を破り、攸夜が口を開いた。
「ふたりは、これからどうするつもりなんだ?」
「わたしは、この時の庭園の動力炉を止めに行くよ、次元震を防ぐために」
攸夜の質問になのはが答える。その表情は今までの緩んだものではなく、強い決意で引き締まっていた。
「それなら、私が途中まで道案内するよ」
「フェイトちゃん、ありがとう!」
フェイトの言葉にうきうきとうれしそうな声を上げるなのは。
まだ少しぎこちないが、ふたりが仲が良さそうにしている様子を見守る攸夜は、満足そうに微笑む。そんな彼に、アルフが問う。
「アンタこそ、どうするつもりなんだい?」
「僕は……プレシアのところへ向かう」
“プレシア”という言葉に反応したフェイトの表情は瞬く間に曇り、俯いてしまう。
なのはが心配そうに見やる中、攸夜は言葉を続けた。
「まだ、言い足りないこともあるし……何より君との約束もあるからね」
「アタシとの約束?」
ニヤリと口角をつり上げる攸夜。端で見ていたユーノは、「またロクでもないことを考えてるんだろうなぁ」などと苦笑を忍ばせている。
獰猛な笑み。笑顔の本来の使い方は攻撃――、それを体現したかのような表情だった。
「何、“代わりに一発殴る”のさ。この前は返り討ちにされちゃったからね、このまま勝ち逃げされちゃあ収まらない」
冗談とも本気とも取れるセリフを吐いた攸夜は一転して獰猛かつ挑戦的な笑みを消し、真面目な表情で俯いたままのフェイトに向き直る。
「……だからもし、プレシアに伝えたいことがあるのなら彼女が逃げてしまう前に、僕がぶん殴る前に追いつくんだね」
はっ、と顔を上げたフェイト。攸夜はそれ以上何も言わず、ただ彼女に笑いかけただけ。
彼は言外に「さっさと追いついて来いよ」と告げているのだ。
フェイトは、その皮肉めいた言動の裏にある器用な優しさを感じとっていた。
「うん、わかってる」
だからフェイトは、飾らない本心のままを言葉に紡ぐ。
「ちゃんと自分で終わらせて、それからはじめるよ。ほんとうの私を。……なにもできないのも、諦めてしまうのももうイヤだから」
「そっか」
短く応えて、柔らかい笑みをフェイトに見せる攸夜。その笑みにつられてフェイトもぎこちなく微笑む。
本来、他人の心の機微にやや疎いフェイトが攸夜の回りくどい気遣いを読みとれたのは偶然か、あるいは……。
名残惜しさを残して。攸夜が再び創り出した蒼銀の翼が彼を重力の軛から解き放つ。
「さて、僕はそろそろ行くよ」
攸夜は柔らかい表情を変えずに、皆の顔をゆっくりと見回す。一人一人と視線を合わせ、少女たちの砲撃によって拓かれた進むべき路を望む。
「精々派手に大暴れして、君らの陽動をしてやるよ!」
『どーんと、憂さ晴らしですよっ!』
ふてぶてしくのたまう主に倣って、アイン・ソフ・オウルが軽妙に息巻く。
周りを滞空していたアイン・ソフ・オウルが、攸夜の背後の空間に接続する。さらに七枚の“羽根”は、背中の一枚を中心にして後方を尖端が指し示す。その形態はさながら“箒”――古の魔女が夜闇を飛翔する
加速装置となった白き“羽根”が涼やかな唸りを上げ、冷艶な蒼白い燐光が漏れ始めた。
「ユウヤ!」
「ん?」
飛び去ろうとする攸夜に、ユーノが声をかける。
「気をつけて。それと、またなのはを泣かせるようなことしたら、承知しないよ?」
挑戦的な笑みでそんな言葉を口にするユーノ。もちろん彼は、攸夜を責めてるわけではない。これは彼なりのエールだった。
「……とーぜん。そっちも、気をつけてな」
言って、攸夜はぐっと握りしめた左拳をユーノに突き出す。向けられた当の本人は一瞬きょとんとするがすぐに意図に気づき、右の拳を掲げることで応じた。
男子たちが意味ありげに笑い合うが、女性陣には意味が通じず首を捻っている。世の中には、男にしかわからない世界というモノがあるのだ。
「じゃあ、またね」
「またね、攸夜くん」
「……すぐに追いつくよ」
近所に散歩へ行くような、気軽な口調。フェイトとなのはが思わず頬をほころばせた。
攸夜はふたりの少女にもう一度、微笑みかけ――
そして次の瞬間、純白の“羽根”からアフターバーナーような蒼白い光焔を吹かせ、黒の
残された蒼銀のフレアはまるで“箒”星のようだった。
* * *
高位次元空間を映した床板。マーブル模様の不可思議で不気味な色彩でたゆたう。
岩壁の上、緑色の液体と生命の輝きを喪失した少女が詰まったシリンダーの側に、プレシアは佇んでいた。
彼女はすでに疲れきっていた。
攸夜との死闘で残り僅かだった余力を使い切っていたのだろう。しかしその瞳だけは昏い、妄執という名のどす黒い炎が揺らめいていた。
『失った時間と、犯した過ちを取り戻すとでも言うの?』
告げられた最後通告をにべもなく切り捨てて、彼女は狂気に満ちた瞳をギラつかせリンディの問いに答える。
「そうよ……私は取り戻す。私とアリシアの過去と未来を! 取り戻すの、こんなはずじゃなかった世界の全てを!!」
否、それはプレシアの独白だった。数十年という長き月日をかけ、自らの命を限界まですり減らして追いかけた唯一無二の“理想”を。
刹那、青い強烈な閃光が瓦礫の山を吹き飛ばす。魔法によってできた道からクロノが姿を現した。
額からは鮮血が流れ、バリアジャケットは所々で赤黒く変色して。まさしく満身創痍といった様子で、激戦を潜り抜けてきたことがうかがい知れる。
「世界はッ、いつだって……こんなはずじゃないことばかりだよ! ずっと昔からいつだって、誰だって、そうなんだ!」
血を吐くようにクロノは言葉を紡ぐ。
それはプレシアにだけ向けた言葉ではなく、彼が自分自身に誓った信念そのものでもあった。
「ッ……」
「こんなはずじゃない現実から、逃げるか、立ち向かうかは個人の自由だ! だけど、自分の勝手な悲しみに、無関係な人間まで巻き込んでいい権利はどこの誰にもありはしない!!」
クロノが自分の思いを吐露しきった時、彼の魔力光である水色よりもさらに薄い白に近い蒼銀色の閃光が迸り、轟音を立てて天井を突き破った。
そこから、十三枚の羽根を背負う黒衣の魔法使いが姿を現す。彼が纏う戦装束にもまた、無数の傷が刻まれている。
「アンタの絶望、わからないでもないよ。世を儚んだって仕方ないとも思う……でもなァ、その絶望を、身勝手な幻想のツケを他人に押しつけるな! アンタは、アンタが産み出したものへの責任と、犯した罪の重さから目を背けて逃げているだけだ!!」
攸夜がプレシアに厳然たる視線を向けて言い放つ。
プレシアは彼を見て、僅かに眉を動かした。
しかしすぐに少年への興味を消え失せた。なぜなら、もはや彼女には愛する娘のこと以外に意味などないのだから。
プレシアが激しく咳き込む。口の端からは紅い筋が零れ落ちた。
そして最後に、アルフを引き連れたフェイトが降り立つ。
澄んだ真紅の瞳は複雑な心中を映して揺れ動き、端正な造りの顔立ちには迷いと不安、それらを覆い尽くすような強い決意が浮かんでいた。
「母さん……」
絶望に堕ちた大魔導師と、彼女に生み出された少女。今を見据える執務官――そして、哮る夜闇の魔法使い。
――――かくして役者は舞台に揃い、ジュエルシードを巡る最後の物語が幕を開けた。