ざわざわ……ざわざわ……。
授業の合間の休み時間。生徒たちは思い思いに過ごしている。
――そんな教室の一角。
「「「えーっ! 告白されたーっ!?」」」
金色の少女の席を囲む茶色と黄色と紫色の少女から、悲鳴のような黄色い声が上がった。
「こ、声が大きいよっ」
何事かと不審がるクラスメートからの視線を一手に集めてしまい、四人揃って首をすくめた。
ふってわいた親しい友だち同士の色恋話はあまりにも衝撃的で。小学三年生の、純真無垢な少女たちにはいささか刺激が強かったようだ。
なお、その告白したとされる当人――攸夜は、担任の先生に頼まれた授業の教材を運ぶ手伝いで不在だった。
何気に学級委員を引き受けてる彼。「自分でやった方がマシ」として始めた仕事だったが、持ち前の強引さとリーダーシップを存分に発揮して上手くやっていた。
「……で、それっていつの話よ」
「おとといの夜だよ」
「わたし、そんな話聞いてない」「まあまあ」むくれるなのはをなだめながら、すずかが核心に触れる質問を投じる。
「それでフェイトちゃん、正直なところ攸夜君のこと、どう思ってるの?」
「ふぇっ!? そ、その……すき、かな……」
へにゃあ~緩んだ頬を薄紅に染め、もじもじと制服の裾をいじくりながら伏し目がちで答えたフェイトの反応に充てられて、少女たちもまた赤面する。
「ふ、ふーん……そ、そうなんだ……ま、まったくあんなへそ曲がりのどこがいいんだか――」
「そんなことないよっ、ユーヤは強くて、やさしくて、頼りになって、かっこいいもん!」
何故か激しく動揺しているアリサのこぼした憎まれ口を、結った髪を振り上げる勢いで強く否定するフェイト。あまりの剣幕にぽかんとした三人だったが、次第に彼女へ生暖かい視線を向け始めた。
「え、なに? どうしたの?」
視線の意味がわからず、フェイトは不思議そうに小首を傾げる。頭上には、クエスチョンマークが乱舞である。
「だって……ねぇ?」
「まあ、ね」
「にゃはは……」
苦笑して互いの顔を見合わせるすずか、アリサ、なのは。ほとんど惚気に近いセリフに返す言葉がなかった。
「ん~……なら、フェイトちゃんの気持ちをちゃんと攸夜くんに伝えるべきだよ。わたし、応援するよ?」
「なのは……。そ、それはうれしいけど、でも、恋人さんになるって、私よくわからないというか、その…………あ、ユーヤだ」
「え?」
友だちを――いや、親友を祝福し、花のような笑顔を浮かべるなのはの気遣いに感動し、しかし、もっともな意見には答えを窮したフェイトが何の脈絡もなく
すると――
「おっす。楽しそうに何の話をしてるんだい、お嬢さんたち」
絶妙のタイミングで、身長よりも大きな丸めた地図――中身は日本地図――を肩に担いだ攸夜が、なのはとフェイトの間からひよっこりと顔を出した。
「はにゃあっ!? 攸夜くんがほんとに出たぁっ!?」
どんぐりまなこをまんまると見開き、びっくりして後退ったなのはが叫ぶ。
アリサとすずかも似たような表情をしているが、フェイトだけは攸夜の接近を予期していたようでうれしそうに表情を緩めているだけだ。
「出たとは何さ、出たとは。僕を妖怪か何かとでも思ってるの?」
けっこう失礼ななのはのセリフに攸夜はむっと眉間に皺を寄せ、地図を両肩に担ぎ直す。
それなりの重量があるだろうに、軽々と扱って見せる辺り伊達に鍛えていないというべきか。
「あ、ごめんね。攸夜くんが近づいて来るのをフェイトちゃんがズバリ当てて、それでおどろいちゃったんだよ」
「ふーん。何で?」
「えっと、足音とか気配?」
攸夜の疑問を疑問系で返すフェイト。
どうやら一緒に暮らしているうちに、彼の気配を感じ取れるようになったらしい。さすが魔導師としての英才教育を受けているだけのことはある。
「気配って……フェイト、あんた何者よ」
呆れた顔で言うアリサの鋭いツッコミに、概ね真相を理解しているなのはと攸夜は苦笑いするしかなかった。
♯19 「ハッピー・バースディ」
すずかの友人――八神はやてのお見舞いに行くことになった一同は道すがら、花屋を訪れていた。もちろんお見舞いの品を買い求めるためである。
明るく、モダンな造りの店内には、彩り鮮やかな花々が自らの美しさを見せつけるかのように咲き誇っていた。
そんな店内をうろうろと、興味深そうに見て回っていたフェイトは、真っ白な大輪の花束が入った容器の前で足を止めている攸夜を発見し、てててっと近寄って声をかけた。
「わぁ~、きれいなお花だね。これってバラかな?」
「ん、そうだよ。……母さんが好きなんだ、白いバラがさ。だからちょっと気になったんだよ」
「そうなんだ」
フェイトはふと思い立ち、以前から気になっていたことを思い切って尋ねた。
「……ねえ、ユーヤ。ユーヤのお母さんってどんな人なの?」
躊躇いがちに発せられた質問。八重咲きの花弁を指先でつついていた攸夜が、不思議そうに振り返る。
「そんなこと聞いて、急にどうしたんだ?」
「あっ、いやならいいんだ。ごめんね、変なこと聞いて」
「ん、そんなことないけど」
そうだな……、と大切な思い出を振り返るように蒼い瞳が伏せられる。
「母さんは優しい人、かな。ルー姉さんは“キレイ”だけど、母さんは“カワイイ”って感じ」
フェイトみたいにね、と見染めた相手へのヨイショも忘れない。照れているフェイトの反応に満足げにしている辺り、天然ではなく確信犯らしい。
「あと、料理がすごく得意でさ。トマトとタマネギのタルトが絶品なんだよ。それからマドレーヌ、僕もたまに作ってはみるんだけど母さんのには全然届かなくてね。料理じゃ一生叶いそうにないよ」
明るく、楽しそうに母親のことについて語る攸夜と反比例するように、フェイトの気持ちは暗く澱んでいく。
「……ユーヤより料理が得意なんて、すごいね」
「僕の腕はともかくとして、母さんはすごいひとだよ」
親愛の込められた屈託のない笑顔を前にして、フェイトはずきりと胸の奥が痛むのを感じた。
――フェイトは思う。
自分はきっと、彼に嫉妬しているのだと。“母さん”に好きなだけ甘えられて、愛されて……どれだけ願っても、もう絶対に手に入らない幸せ。
替わりのモノは見つかるかもしれない――だけど失ったモノとは別の、自分と同じ“代替品”でしかないと。
それは身勝手な思い込み。
だが、今の彼女にとっては紛れもない真実だった。
「――ユーヤ……、お母さんのこと、好き?」
絞り出すように紡がれた言葉。少女の胸の内に降り積もり、澱んだ屈折した感情が自らの心を傷つけていく。
「ああ、好きだよ。大切だと思ってる」
「そう、なんだ」
フェイトが苦しげに相づちを打つ。その混沌とした心中を見透かしたかのように、攸夜は軽く微笑んでぽんと彼女の頭に左手を置いた。
「でも母さんと同じくらい、フェイトのことも好きだよ」
「え……?」
金糸の髪を指先に絡め、慰めるように梳きながら、蒼く透き通る視線は一点を、紅玉の瞳を見つめ続ける。
「じゃなきゃ、告白なんてするわけないだろ」
「ぁ、あうぅぅ……」
耳まで盛大に茹で上がったフェイトは、ネガティブな思考をいったん放棄して、撫でられる心地よい感触と心の底から湧き上がる幸福感に身を任せるのだった。
何やら別の買い物をしている攸夜を置いて、一足先に店外へ出た一同。四方山話で――主になのはとアリサが――盛り上がっているところに、。
「悪い、待たせた」
会計を終えた攸夜が何かを携えて合流する。
彼はフェイト
「はい、フェイト」
「えっ……、これって……」
合流するやいなや、攸夜は携えていたものをフェイトにそっと差し出した。
それは、白いセロファンとサンライトイエローのリボンでかわいらしくラッピングされた、一輪の白いバラ。
「ん? プレゼント。花屋に来ておいて何もなしってのは、僕的にちょっとね」
黒髪の少年が苦笑する。
プレゼントを受け取った金色の少女はしばし呆然とし、それを大事そうに抱きしめて感激に瞳を潤ませた。
「ユーヤ……ありがとう」
「喜んでもらったみたいで、僕もうれしいよ」
見つめ合い、甘ったるい桃色空間を形成するバカップル予備軍に若干退きつつ、アリサが攸夜に問う。
「一応聞いてみるけど、私たちの分は?」
「ない」
バッサリと、彼女の問いをにべもなく切り捨てる。そのあと、攸夜が酷い目に遭わされたのは言うまでもない。
* * *
斜陽の光が射し込む病室。
リクライニングさせたベッドの上で上体を起こし、にこやかな表情で応対する茶髪の少女――八神はやて。同じ年頃の人間に囲まれてよほどうれしいのか、入院中にも関わらずやけにはしゃいでいる。
きっかけを作ったすずかはもちろん、なのはとアリサも積極的に口を開く。普段は女の子同士の会話には口を挟まない攸夜も、相手がはやてとあっては別なようでそれなりに発言している。
そしてフェイトはひとり会話には参加せず、はやてと攸夜の様子をチラチラと伺い、警戒していた。彼女は以前、二人が電話口で楽しそうに会話していたことを気にしていたのだった。
「でもほんと驚いたよ。攸夜君がはやてちゃんとお友だちだったなんて」
「せやねぇ、私もすずかちゃんが聖祥大附属小に通ってるて聞いて、もしかしてって思っとったけど」
言いながら、はやてはジト目を攸夜に向けた。
「攸夜、はやてのことをもっと早くに紹介してくれればよかったのに……ってなによ、“その発想はなかった!”って顔はっ」
ぽかんと間抜けな表情をしていた黒髪の少年の頬に、アリサの指が伸びる。
ぎゅむっ!
「い、いひゃいいひゃい。ほのへふんへれへ、ほうひょふはんはいっ!」
アリサにつねられた攸夜の両頬が、マシュマロのような弾力で形を変えた。
「なに言ってんのかわかんないわよ。……ていうかあんたのほっぺ、案外やわらかいのね」
「あ、わたしもやりたい。わー、ほんとだ、やわらかーい」
「ひょっ、はかはひはん、ほっへふねらないへふへはいへ」
「なのはちゃん、アリサちゃん……」
悪ノリしたアリサがグリグリと攸夜の頬をいじるところに、なのはも楽しそうに便乗する。
すずかは苦笑を漏らしているものの思うところがあるようで、おもちゃにされている攸夜を助ける気はさらさらないらしい。
「むぅ……」
完全に出遅れた感のあるフェイトがぷくっと頬を膨らまし、いじり倒されている攸夜をうらめしそうに見つめていた。
(ふぅん……なるほどなぁ)
そんな四人の様子を興味津々に観察していたはやては、人間関係を把握してニヤリと笑みをこぼした。その表情を攸夜が見ていたならば、「子だぬき」と評していたことだろう。
――それから。
ひとまず場が落ち着いたところで、はやてと攸夜の出会いについて話が及んだ。
「こっちに来てすぐくらいのころだったかな、はやてと知り合ったのって。それからダラダラと腐れ縁が続いているわけで」
「腐れ縁ってなんや、失敬な。まぁそれはともかく、車イスが動かんくなって難儀してるとこを助けてもらってな~」
少女たちから、「人助けするなんて意外」などと冗談混じりの評価をいただいた攸夜は最近、自分の扱いがよくないと内心で憤慨する。もっとも、そんなことを口にする彼ではないが。
黒一点の宿命である。
「じゃあ、ユーヤと知り合ったのって私がこの中だと最後になるのかな」
「ん、フェイトの方が少し先だよ。四月になのはたちが温泉へ行ったことあって――いや、僕は行かなかったんだけど、その間にはやてに会ったからね」
あー、と当事者の三人が揃って納得の声を上げる。
回りくどい言い方で、フェイトが現地にいたことを匂わせないようにするあたりなかなかの策士である。
(……私の方が先。ふふっ)
ご機嫌斜めだったフェイトもようやく嫉妬の炎が鎮火したのか、以後は彼女も積極的に語らいに参加するようになる。
こうして打ち解けた六人は、面会時間ギリギリまで親睦を深めるのだった。
* * *
フェイトたちがはやての病室を訪れる少し前。
赤く荒涼とした台地に、桃色の髪をなびかせる一人の女剣士――シグナムが愛剣を青眼に構え、紫の魔力光を放つ魔法陣を足下に敷いて佇んでいた。
ふと、閉じられていた切れ長な冷たいブルーの瞳が開かれる。
《何? テスタロッサたちがどうしたって?》
《だからっ、テスタロッサちゃんと、なのはちゃん、それにあの黒い子が――管理局の魔導師が、今日、はやてちゃんのおみまいに来ちゃうのっ、すずかちゃんのお友達だから!》
どうしようどうしよう、と支離滅裂な言葉を吐いて慌てふためくシャマル。念話越しでも、彼女の慌てようが伝わってくる。
対するシグナムは当初こそ動揺を覗かせたものの、すぐに普段の調子を取り戻す。
《落ち着け、シャマル》
切れ者の割りにどこか抜けている同胞に小さく溜め息をついて、シグナムが持論を告げる。
《そんなもの、宝條攸夜が主はやてのご友人だということがわかった時点で、すでに想定していたことだろう? 遅かれ早かれこうなっていたのは明白だ》
《それは――! そうだけど……でもっ》
《むしろ、ここまで保ったのは我らにとってはただの僥倖。幸い、主はやての魔法資質はほとんど闇の書の中、詳しく検査されなければバレはしない。つまり、私たちと鉢合わせなければいいだけだ》
《……そうね。んー、顔を見られちゃったのは失敗だったわ。出撃したときに変身魔法を使っていればよかった》
《今更悔いても仕方あるまい。ご友人のお見舞いのときは、我らが席を外そう》
――思念通話での打ち合わせを切り上げたシグナムの脳裏に、紅黒い邪光を纏う黒衣の少年の姿がちらつく。
砂漠での遭遇戦――フェイト・テスタロッサとの戦いは第三者の乱入で台無しにされた。シグナムは決闘に泥を塗られたことを不愉快に思っていたが、その乱入者も虫螻のように蹴散らされていた。そのせいで彼女の溜飲は大いに下がっているものの、それとこれとは話が別だ。
あの乱入者が使い魔――ベルカでいうところの守護獣だったということは彼女も知るところであり、その主が何らかの理由で闇の書の完成を望んでいることも少し考えれば思い当たることだ。
故に、シグナムたちは警戒を強めている。敵の敵は味方とも言えるが相手の目的が見えない以上、用心するに越したことはない。
そしてもう一つ、警戒しなければならないのは、砂漠の戦闘の際に垣間見た攸夜の圧倒的で非常識な戦闘力だろう。
ただの人間一人が持ちうるには不可解な量の、相対する者の精神を蝕むような異質の魔力――側で感じていただけだというのに、シグナムは恐怖で肌が粟立ったのをよく覚えている。あれを直接向けられて、自分はまともに戦えるのだろうか、と彼女は自問した。
「……いや、考えても無駄だな。何者であろうと、主のためならば斬って捨てるのみ」
シグナムの思考に引っかかっていることはもっと別のこと。
あの常闇のごとき魔力を、以前にどこかで――
「――そうだ、あの金髪の女魔導師の魔力によく似ている。奇妙なデバイスを使うところも同じ、か……奴は確か、長剣だったな」
――なのはと攸夜を襲撃する少し前。同じく地球にて、シグナムはとある女性魔導師と戦闘を行っていた。
魔力の蒐集のためではなく、シグナムたちの周囲を探っている素振りを見せた“彼女”を排除するべく発生した遭遇戦。
頭まですっぽりと覆うフードのついた紅い外套。人相はわからなかったものの、そこから覗く金色の髪は艶やかで美しく。鍔の中心部分に瞳の意匠が施され、波打つような刀身に見慣れぬ
特に魔法を使うわけでもなく、それでいて魔力量もさして多くないにも関わらず、その女魔導師はただ剣技のみでシグナムを今一歩のところまで追いつめた。
最終的には、カートリッジによって増幅された一撃により女は負傷、撤退という結果に終わったのだが、一歩間違えばシグナムの方が斬られていたかもしれない。
「同じ世界での出来事なのだから、両者は肉親――家族ということもあり得る」
“家族”、という単語にずきりとシグナムの良心が痛む。
それは今の主に教えられた、今の彼女を突き動かす根源的な概念だ。護るべき信念ともいえるものかもしれない。
“大切な者のために全てを壊し尽くす”と臆面もなく言い放つあの黒髪の少年がこのことを知った時、どう思うのだろうか。
やはり自分たちを滅ぼそうと――
「いかんな、少し感傷的になり過ぎている」
思考を覆っていた暗雲を払うように頭を振ると、シグナムは成すべきことを成すために、魔力の集中を再開した。
* * *
12月16日 金曜日
アースラが駐屯地としていた海鳴市のとあるマンション。
司令部がアースラに戻っても、ここがフェイトの家であることに変わりはない。少なくとも彼女は、この場所こそが自分の帰るところ――居場所であると決めていた。
「…………」
リビングのソファーに陣取り、黙々と、だが極めて丁寧に作業をするフェイト。脇目もふらず没頭するその表情は真剣そのものだ。
現在フェイトは、明日に迫った攸夜の誕生日に向けて、最後の追い込みにかかっていた。
大切なひとを心に想って、懸命に頑張る少女の姿はとてもいじらしい。
近くで伏せるアルフが、退屈そうにあくびした。
「……むぅ……」
両手に持った金属製の棒針を器用に操り、藍に近い青の毛糸と水色の毛糸を交互に編み込む。フェイトの足下には、編み上がったものが無造作に広がっていた。初めて作ったにしてはなかなか上出来だと言えるだろう。
テーブルに置かれた手つかずの牛乳プリン――攸夜謹製品――と、すっかり冷めてしまったオレンジ色の鮮やかなアプリコットティーが、寂しげに作業に没頭する彼女を見守っていた。
「……なあ、エイミィ。フェイトはいったい何をしてるんだ?」
作業に一段落つけ、休憩にやってきたクロノが怪訝な顔でキッチンで夕飯の準備をしていたエイミィに問いかける。
「ほら、明日は攸夜君の誕生日でしょ?」
「なるほど、それで編み物か」
家事全般に明るい攸夜は、当然ながら手芸の腕もかなりのものだ。かく言うフェイトも、彼が所有していたぬいぐるみと一緒に手製のあみぐるみをいくつか譲ってもらっている。
そんな相手に手編みのプレゼントなど無謀なチャレンジもいいところなのだが、フェイトとしては近頃目覚めてきた“オンナノコ”のプライドが市販品でお茶を濁すことを許さなかったらしい。
「いやー、フェイトちゃんてば、ホントよくがんばってるよ。私と艦長が最初だけ手伝ってあげたんだけど、あとは全部自分の力だけでやってるからね」
毛糸を相手に奮闘しているフェイトを眺めながら、「睡眠時間もけっこう削ってるんじゃないかな?」と感心したようにエイミィが言う。
実際、砂漠での一件からここ数日、フェイトは攸夜の家へ遊びにも行かずほぼ全ての自由時間を編み物に費やしている。
その執念たるや凄まじく、適切な表現ではないかもしれないがやはり彼女はプレシア・テスタロッサの“娘”であった。
「それで身体が保つのか? あまり無理はさせない方が――」
「だいじょーぶ♪ 恋する女の子はムテキなのだよ、クロノ君」
「恋……? 何の話だ?」
「あれぇ? そういえばクロノ君は知らなかったっけ。フェイトちゃん、攸夜君に告白されたんだって!」
きゃー、と黄色い悲鳴を上げてしなを作って見せるエイミィ。彼女も年頃の女の子、こういったゴシップの類は大好物なのだろう、やけにテンションが高い。
「なっ、それ本当かっ!?」
「本当だとも。本人から直接相談されたしね」
フェイトが攸夜の家に顔を出していない理由は、プレゼントの制作に追われているというだけではない。「一度時間を置いてみて、自分の気持ちを見つめ直してみたら?」というリンディのアドバイスを素直に実践しているためだ。
とはいえ、登下校やら休み時間やらで終始べったりでは、あまり意味がなさそうだったが。
「……やっぱり気になる? そうだよねー、もしかしたらフェイトちゃんは義理の妹になるかもしれないわけだし?」
否定も肯定もせず、無言でフェイトの方へと視線を移すクロノ。一生懸命に鉤針を動かして編み物をする彼女を、何やら微笑ましげに見つめている。
どうやら、彼の中で兄としての自覚が芽生えてきているようだった。
「んー……そうなると、攸夜君の
エイミィの冗談混じりな言葉。その可能性に初めて思い当たって、クロノは盛大に顔をしかめる。
「へー、そんなに攸夜君のこと嫌いなんだ」
「嫌いってわけじゃない。ただ馬が合わないだけだ」
興味深そうに目を細めたエイミィ。クロノは彼女の発言にむっつりと、攸夜と似たようなセリフで返す。
意外に子供っぽい態度に軽く息を吐くと、エイミィは一転して仕事用の真面目な表情を作る。
「……それで、クロノ君。提督の足取り、掴めた?」
「いいや、まだだ。……ただ、彼の目的は概ね判明した――だからこそ、早急に身柄を拘束しなきゃならないんだが……」
思い悩むように言葉尻が濁される。ギル・グレアム追跡の状況はあまり芳しくないようだった。
「ユーノ君も“無限書庫”でひとりがんばってるみたいだし。……早く何とかしなきゃだよね、闇の書もグレアム提督のことも」
「そうだな……」
んんーっ、と大きく伸びをして、身体の強ばりを取っているフェイトへ、クロノとエイミィは暖かな眼差しを向けていた。
* * *
深夜。
日付は変わって17日――攸夜の誕生日当日。
間接照明だけが点灯した薄暗い室内に、小さな人影が揺れた。
「……うん、できたっ」
ベッドの上に座り込む黄色いパジャマ姿のフェイトは、眠ってしまったアルフを起こさぬよう声を潜めながら、しかし感極まった様子で完成した品を高々と掲げた。
「……ユーヤ、よろこんでくれるかな?」
彼への贈り物を抱きしめて、明日の――いや、今日を想う。
ふと、脳裏に拒絶されてしまうネガティブな想像が浮かび、幸せそうに緩んでいた表情が見る見るうちに曇る。
「――ううん……だいじょうぶ。きっと、だいじょうぶ」
不安に押しつぶされそうな自分へ言い聞かせるように呟き、フェイトは努力と想いの結晶をじっと見つめた。
あの夜、月光の下。
攸夜に気持ちを告げられて、フェイトの心はそれまで以上に彼のことでいっぱいになっていた。
焦がれて。
焦がれて。
恋、焦がれて――日に日に想いは募っていく。
――――私……やっぱり、ユーヤのこと、好きなのかな。恋、しているのかな。
「っ」
不意に過ぎったストレートな思考に赤面して、フェイトはベッドに身体を投げ出した。
ぼすっ。柔らかなマットレスが華奢な身体を受け止める。
「はぅ……――ああっ」
シーツの上で一通り悶えるフェイト。プレゼントを押しつぶしてしまっていることに気つき、慌ててうつ伏せから仰向けに変えた。
「……」
白いシーツに、絨毯のように広がる金砂の髪。真紅の瞳を閉じて、フェイトは激動の日々を思い返す。
攸夜との出会い。
なのはとの出会い。
そして、“母”との別れ――ジュエルシードを巡って戦ったあの日々を。
「こわいけど……伝えなきゃ。私の、ありのままの気持ち」
――――かっこよくて、つよくって、ちょっといじわるで……でも、やさしくて。
――――私のことを、好きだって言ってくれたあなたが……、
――――私に“はじまり”をくれたあなたのことが、大好きです。
瞳を開く。
彼女の小さな胸には、確かな希望を宿っていた。
「よし」
綺麗に畳んだ贈り物を枕元に。寝癖がつかないように髪を纏めると、少し冷たい布団の中に滑り込む。
灯りが消え、仄かに暗い闇の中、フェイトは訪れるであろう幸せな
* * *
12月17日 土曜日
翠屋を貸し切った攸夜のバースディパーティー。
メインであるケーキはもちろん、ピザやフライドチキン、各種お菓子など、子どもが喜びそうな品々がテーブルいっぱいに用意されている。
攸夜は大掛かりなことに珍しく恐縮していたものの、概ね楽しんでいた。
にはいつものメンバーだけではなく、他のクラスメートも結構な人数が訪れている。フェイトたちとばかり連んでいると思われがちな彼だが、不思議と男女を問わず交友関係は広い。
もともと彼は社交的な方であるし、行事などでは不承不承に――周りから見れば、自分から率先して――リーダーシップを取る姿を披露して、クラスの信頼を勝ち取った。生まれ持ったカリスマ性のなせる業だった。
「ありがとう、アリサ、すずか。大事に使うよ」
「そうよ、ありがたく思って大事に大事に使いなさい」
アリサの憎まれ口に苦笑しながら、攸夜は二人からのプレゼントを受け取る。
中身は宣言通り、蒼い万年筆と世界の料理のレシピが纏められたら本だった。
「あ、あとこれがはやてちゃんの分だよ。かわりに渡しておいてって、頼まれたんだ」
ライトグリーンの包装紙に包まれた、分厚い長方形の何かがすずかから手渡された。
「これ、小説本?」
「うん。はやてちゃんのおすすめなんだって」
ハードカバーらしい本をしげしげと眺めた後、攸夜は「あとでお礼言っとかないとな」と独り言ちた。
続いて、ぴょこんと特徴的なツインテールを揺らして進み出たなのはの番だ。
「わたしからは、これだよ」
「ノート?」
なのはが取り出したのはピンク色の、女の子が使うようなごく普通のノート。
何気なくページをめくると、色鉛筆で描いかれたかわいらしいお菓子の絵や、そのレシピがノートにびっしり詰まっていた。どちらもなのは直筆である。
「えっとね、なにがいいかなーっていろいろ考えてて、攸夜くん前に「翠屋のシュークリームはマネできないくらいにおいしい」って言ってたのを思い出したんだ。それでね、おかーさんからレシピを聞いて、ノートに書いたんだよ」
「すずかちゃんとかぶっちゃってるけどね」舌を軽く出して自信がなさそうに笑う。
離れたところで見守ってしている親たちの方を見た攸夜と、リンディと世間話をしていた桃子の視線がかち合う。にこりと微笑んだ彼女に軽く会釈し、なのはに向き直った。
「いや、わざわざ用意してくれたんだろ? ありがとう、なのは。いつか作ってごちそうするな」
「うん!」
今日ばかりはと無限書庫からやってきたユーノも、なのはの肩の上で自分のことのように誇らしげに胸を反らした。
なお、ユーノからのプレゼントは古代ベルカの歴史書入門編。彼らしいチョイスの一品である。
そして本日のメインイベント。
「ほら、フェイトちゃん」
「う、うん……」
なのはに促され、おずおずと攸夜の前に進み出るフェイト。極度に緊張した面もちで、スカイブルーの包みを胸元に抱えている。
「そ、その…………わっ、私の気持ちです! 受け取ってくださいっ!」
お辞儀をしながら、勢いよくプレゼントを差し出したフェイト。テンパりすぎて、おかしなセリフを口にしている。
「あ、ありがとう?」
やにわに頬を薄く染めながら、攸夜は疑問系の感謝とともに受け取る。盛大に目を泳がせてらしくない。
直に自分の失言に気がついて、フェイトも耳まで真っ赤に茹で上がった。
「えと……開けてもいいか?」
「うん」
ラッピングされた包装紙を丁寧に取り去る。中に入っていたのは濃い青と水色の毛糸のマフラーだった。
やや長めな、丈夫そうだと一目でわかるしっかりとした作りは、少しでも長く使ってほしいという作り手の想いの現れ。丁寧に編まれた毛糸の一本一本に、彼女の愛情が編み込まれているようだった。
「マフラー、手作りかな。……うん、よくできてると思う。がんばったんだね、フェイト」
大粒の瞳を潤ませて不安がる少女の想いに、少年はとびきりの笑顔で応えた。
「――ユーヤ!」
「おわっ、と」
感極まり、飛びつくフェイト。攸夜は少女特有の甘い香りにクラクラとしつつも、抱きしめてやることは忘れない。
今日は一段と愛らしく見える少女の魅力に、少年の自制心はギリギリだ。
「」
「」
を置き去りにして、二人の世界を形作るバカップル(仮)。周囲の子どもたちは恥入るかと思いきや――「あー、はいはいラブラブですねー」と言わんばかりに白けている。どうやらこの光景、彼らのクラスでは日常茶飯事と化していたようだった。
その後、ひどく気を良くした攸夜はその後のカラオケ大会で持ち歌の一つ「Burnin'X'mas」を歌い、一同から「小学生の歌う歌じゃない」とツッコまれていた。
なお、フェイトは「赤いスイートピー」と「津軽海峡・冬景色」で美声を披露し、拍手喝采を受けていたことを追記しておく。
楽しかったパーティーもお開き。
いつものなかよし四人組+1は、後片付けを手伝ってから解散した。
「あ、あのっ!」
「ん? どうした、フェイト」
そして店外、にわかに曇り始めた空の下、フェイトが攸夜を呼び止める。プレゼントは結界の中に放り込んでいるので手ぶらだ。
「えと、ユーヤに、話したいことがあるんだけど……このあと、だいじょうぶ?」
控えめだけれど、強い決意の込められた言葉。しかし攸夜は申し訳なさそうにあたまをかいて、苦笑した。
「あー、ゴメン。今からルー姉さんとはやての所に顔を出そうと思ってるんだ」
「そ、そうなんだ……」
とても残念そうに眉を下げてしゅんとするフェイト。ご主人様に構ってもらえない子犬みたいな仕草に、攸夜はかわいいなぁ、と萌えつつ代替案を提示する。
「帰ってからでいいか?」
「うん、それでいいよ」
その答えに満足すると、攸夜は左手をひらひらと振りながら「じゃあ、またあとでな」と言い残し、足早に歩き去る。
「あっ……」離れていく少年の背中へ、名残惜しそうに伸ばした少女の手は虚しく空を掴んだ。
* * *
リノリウムの廊下を軽快に歩く攸夜。彼の首にはフェイトから贈られたマフラーが巻かれていた。
思い出したように道に迷った彼だったが、特に気にした様子もなく。足取り軽く上機嫌で、はやての病室を目指す。
丁度、彼女の病室が見える角を曲がった時、
「!!」
攸夜は反射的に物陰に身を隠した。
視線の先には、赤い髪をおさげにした同世代の少女と、蜂蜜色のショートヘアの二十代くらいの女性がはやての病室に入っていく後ろ姿があった。
そのどちらにも、攸夜には見覚えがあった。それは当然だろう。何故なら彼女たちは――
「……そうか、なるほどね」
納得の込められたつぶやき。
いくつかのピースが組み合わさり、一つの回答が浮かぶ。蒼い瞳を細めると、攸夜は数瞬物思いに耽る。
幸い、攸夜が一番警戒している剣の騎士の姿はは見当たらない。
ならば、はやてを人質にとって拘束か? はたまたここで殲滅か? あるいは――
「まあ、いいか」
思い浮かんだいくつかのプランを破棄し、攸夜はとりあえず彼女らのことを捨て置くことに決めた。
普段の彼なら、少なくともアースラに報告くらいはしただろうが、機嫌のすこぶるいい今はそんな無粋な真似をする気にはなれなかったから。
「……ありがとうな、はやて」
心の中ではやてに直接礼を言えないことを謝罪し、攸夜は踵を返した。
「姉さん、入るよ」
ルーチェの病室の前。
控えめなノックの後、扉の向こうから「どうぞ」とくぐもった声が聞こえた。
子どもの身には少し重たい引き戸を引き、室内に入る。
「いらっしゃい、攸くん」
電灯の、空虚にも感じられる白い光がこの部屋の主――ルーチェの美貌を照らす。彼女の焦燥し切った様子に、一瞬だけ攸夜は眉を顰める。
だが、それを悟られないないよう、すぐに消し去った。
「誕生日おめでとう、攸くん。誕生会は楽しかった?」
「ありがとう、ルー姉さん。楽しかったよ、とびきりのプレゼントももらえたしね」
攸夜はベッドサイドのパイプ椅子に腰掛け、ひどく晴れ晴れとした表情で首に巻いたマフラーを示した。
「それって……?」
「フェイトからもらったんだ。手作りなんだよ、これ」
叔母の問いに、攸夜はうれしそうな口調で答える。
甥の笑顔につられて、ルーチェが微笑む。
「ふふ、よかったわね。そのマフラー、よく似合ってるわよ」
「うん、僕もそう思う」
不意にルーチェは笑みを消し、真剣な表情をして攸夜を見据える。
穏やかで和やかだった室内の雰囲気が一気に冷え込んだ。
「姉さん……?」そのただならぬ雰囲気に飲まれて、攸夜は動揺し、狼狽した。
「…………ねぇ、攸くん。あなたのことを大切に思っているはずのご両親が今の今まで何の便りも寄越さないなんて、おかしいとは思わない?」
「えっ?」
突然の言葉。唐突な指摘。
その意味を認識した攸夜の思考に、ざらりと不愉快なノイズが走る。
「あなたのお母さんの名前は? お父さんがどんなヒトだか、言える? 海鳴に来るまでどこに住んでいたのかしら?」
「それ、は――」
言葉に詰まる。返す言葉が見あたらない。
そんなこと、今の今まで考えなかった。
考えることすらなかった。
――だってそう“創られている”から。
聡い――いや、聡く“創られている”攸夜には、叔母とされる女性が次に紡ぐ言葉が容易に想像できる。
――嘘、だ。
「答えられなくて当然よね」
――嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ…………
「だって両親なんて“最初から居ない”んだから」
――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、嘘だッ!!
「最初から最後まで、全部、偽りだったんだから」
視界が、暗転。
「手荒な方法でごめんなさい。でも、もう私には時間がないの。……本当は、あなたが大人になるまで、一緒にいてあげたかったのだけれど……」
ルーチェは左手を、茫然自失した攸夜の額に乗せる。
「戦闘用の〈現し身〉じゃないにしろ、あの程度の相手に後れを取って……我ながららしくないわ。その上、受けた傷が深すぎて
絶世の美貌を自嘲で歪めると、攸夜の額に置いた左手に仄かな金色の光が灯った。
それは暖かな、万物の根源たる命の光。砕けた攸夜の魂の“隙間”にするりと入り込み、彼が知らなければならない“記憶”と“知識”を無理矢理に書き込む。
「〈欠片〉の波動を追って
次第に強さを増す黄金の光の中、ルーチェは過去を懐かしむかのように微笑んだ。
「私は最初、あなたを利用するつもりでいた。……でも駄目ね、あなたを望んで創ったのも確かに“私”だもの。そんなこと、できるはずもない」
ボサボサな黒い髪を愛おしげに撫でながら、彼女は独白する。それはまるで、残り少ない時間を慈しむかのようで――
「これは、最後まで一緒にいてあげられない私からの、最初で最後のプレゼント」
ルーチェはそう言って、どこからともなく取り出した銀の鎖のネックレスを攸夜の首にかける。その首飾りには、破片から削り出したような
その時、光を失っていた蒼い瞳が出し抜けに生気を取り戻した。
「ねえ、さん……姉さん!」
「……っ! まだ、私を“姉さん”って呼んでくれるのね」
「だって――、僕は……僕は……っ」
黒髪の少年は、蒼海の瞳に止めどなく涙を溢れさせる。
注ぎ込まれた膨大な“記憶”と“知識”は、すでに攸夜の中に根付き始めていた。それらが、これから起こるであろう“別れ”を教えていた。
泣き虫さんね、と苦笑を漏らしたルーチェは言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「私はここでお別れ。もともと、私たちは“この世界”にとってイレギュラー。……私が消えれば、直に矛盾が無いように修正されるでしょう」
少年の髪を撫でていた白魚のような指先が、金色の粒子に変わる。
しかし彼女は自身の消滅などものともせず、毅然として言葉を続けた。
「〈結界〉がなくとも、“世界”は矛盾を厭う生き物だから。歪めていたモノがなくなったのなら、あるべき姿に戻るのは必然」
「そんな、そんなのって……!」
嗚咽して、言葉にならない攸夜へ万感の思いを込めた祝福を贈る。
「――願わくば、あなたに不変なる幸せを。尽きることのない希望を。“奇蹟”が生んだ“希望の魔王”たるあなたに」
それは祈り。
本性を、傲慢にして尊大な彼女の、偽りのない“母親”としての言葉だった。
「あぁ……攸くんと、クリスマスのお祝い、したかったなぁ……」
涙で滲む視界。
黄金の粒子となって“還っていった”愛する女性に、寂しそうに微笑む紺色の髪の少女の幻影が重なった。
少し開いたカーテン。寒々とした曇天から、冷たい雫が降り注ぐ。
聖なる夜まで、あと――――