魔法大戦リリカルなのはWizardS   作:かぜのこ

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#7

 

 

 

 クラナガン近郊の総合病院、とある一室。

 薄く開いた窓の外は生憎の曇り空。時刻は宵の時。すでに太陽は、地平線の向こうへと隠れ失せてしまっていることだろう。

 背もたれのない丸イスに座ったなのはが、フェイトの置いていった資料を精彩を欠いた空虚な瞳で読んでいる。自慢のサイドテールの髪も今はどこかくすんで見えた。

 細い指がページをめくり、紙と紙が擦れる音が静々と鳴る。

 印刷された文だけではなく、蛍光ペンを用いた手書きの注釈が丁寧に書き込まれたレポートは、制作者である親友らしい心配りの現れ。

 すぐ近くのボードには、折り紙で折られた花と紅玉のネックレス――解析を終えて返却されたレイジングハートが静かに座して、主を見守っていた。

 

「……」

 

 冊子に記された文字を一心不乱に拾う瞳の周りには、おどろおどろしいほどに深い隈が刻まれている。

 彼女は、フェイトが訪れた後もほとんど寝ていない。巡回に訪れた看護師にやんわりと注意されても、愛想笑いを浮かべてごまかすだけだった。

 今のなのはの興味は、未だ目覚めないこの部屋の主の安否と、資料の内容――特に自分が堕され、嵌められた件の“魔王”の情報にのみに注がれていた。

 けして薄くはないレポートを、穴が開くほど必死の形相で読み込む姿は、温厚篤実が取り柄の――ごく普通の少女とは思えないほど鬼気迫るものがある。

 それほどなのはを苛む後悔と焦燥は強烈だったのだ。

 

「――」「――――」「――」

 

 ふと、なのはが冊子から視線を上げた。

 

「……?」

 

 何やら外が騒がしい。

 不思議そうに小首を傾げ、なのはが席を立つ。白い引き戸を開けると、電灯のついた廊下に顔をひょこっと出した。

 キョロキョロと、小動物のようにしきりに首を回して辺りの様子を窺う。

 遠くで話し声や、ざわざわとたくさんの人が動いているような喧噪のようなざわめきが耳朶に届いた。

 

「なんだろう……?」

 

 すると廊下の先から、パタパタパタとスリッパでリノニウムの床を叩いて女性の看護師が慌ただしく駆けてくる。目的地は、ちょうどなのはの居る病室のようだ。

 

「ああ、よかった」

 

 息を切らせた二十代前半ほどの年若い看護師が、なのはの姿を確認するとほっと胸をなで下ろしたよう見えた。

 

「あ、あの……どうかしたんですか?」

「それが、詳しい事情はわからないんですけど政府から避難勧告が出ていて、いま患者さんの移送をしているんです」

「避難……」

 

 オウム返しをしたなのははやや困惑顔だ。看護師も同じく少し困惑したように頷いた。

 

「ええ、パニックを起こさないように各病棟順番で。それで、この階が最後になっているので、いつでも動けるように準備しておいてもらえますか?」

「あ、はい、わかりました」

 

 看護師は答えに満足して、愛想良く微笑んだあと再びパタパタと音を立てて駆けていった。おそらく、ここはなのはに任せて他の病室の準備に向かったのだろう。

 彼女を見送り、んーっと強張った身体を伸ばしたなのは。真剣に資料を読みふけっていたせいで、体中の筋肉はガチガチに凝り固まっていた。

 その時――

 

「きゃっ」

 

 突如、地震のような激しい地鳴りがなのはを襲う。足を取られ、軽くもつれさせて小さく悲鳴を上げる。

 

「な、なんなの――ッ」

 強い――いや、そんな陳腐な表現など生易しいほどに巨大な魔力の波動を感じ取り、なのはの肌がやにわに粟立つ。

 ――――この禍々しい魔力を、()()()()()

 弾かれたように病室へ取って返すと、なのはは彼女にしてはいささか乱暴すぎる手つきで窓を大きく開け放つ。

 そして、窓枠の外へと身を乗り出した。

 遙か視線の先、高層建築が建ち並ぶ都心部の彼方に、雲を割り、天を突き、成層圏を超え、宇宙まで届かんとするほどに巨大な紅い光の柱が伸びている。

 それを護るように浮遊するのは、漆黒――

 砲戦魔導師としての必須スキルとも言える――実戦ではデバイスの補助があるとしても、だ――魔力で視力を水増したアメジストの瞳が()れ《・》の姿を捉えた。

 

「ベール、ゼファー……!!」

 

 黒煙の空に座す“蠅の女王”。

 煌々と燃え盛る爆炎に照らされて、女王の冠るティアラの如き見事な銀髪が妖しく揺らめいていた。

 なのはは、ぎゅっと唇を強く噛み締めると、ボードの上のレイジングハートを手に取る。

 この紅い貴石は、ベッドで眠り続ける少年との思い出の証。そして、“魔法”と出会った後のなのはの全てだった。

 

「ごめんね、ユーノくん。……私、行かなくちゃ」

 

 悲壮な表情で、悲痛な声で、呼びかける。応えはない。

 瞳を閉じて、レイジングハートを握りしめた両手を胸に抱いたなのはを包み込むように桜色の光が溢れ出し、部屋いっぱいに渦巻いた。

 謹慎中の身である自分がこんなことをすれば、今度こそただではすまないだろう。管理局をクビになるかもしれない。

 だが、それでも。“彼女”との決着は、自分の手でつけなければ。そう堅く決心し、純白の戦闘服(ドレス)を纏った少女は大空へと飛び出した。

 

 ――――そして、なのはの去った病室。

 開けっ放しの窓から吹き込んだ冷たい風が、レースのカーテンを虚しくも物悲しく煽る。

 

「…………」

 

 尽きない微睡みの底に墜ちていた少年の、堅く閉じられていた瞼がピクリと揺れる。

 透明な呼吸器に包まれた口がわずかに開いた。

 

「…………なの、は」

 

 

 

 

 

 

 

 

  ♯7 「“再誕” ~祝福の風が吹くとき~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 灰色の夜空を四騎の“箒”が翔る。

 先陣を切るのはテンペスト、騎手はエリス。タンデムしたはやて――彼女自身が飛ぶよりも遙かに速いため、相乗りとなった――と同じく、帽子が吹き飛ばされないように片手でしかと押さえていた。

 小柄な女性はいえ二人の人間を乗せてなお、速度を維持している点はさすが高機動型の面目躍如といったところか。

 少し遅れて灯と命を乗せた飛行形態〈ストライクモード〉のガンナーズブルームが、後部に展開した機構から箒状のブラストを吹き出して飛翔し、同じく飛行形態となったそれぞれの“箒”に跨る翠とスルガが追従していた。

 

「はわわっ、速すぎですっ」

「エルフィ、危ないから顔出さんといてな」

 

 好奇心に駆られ、(はやて)の帽子の中からひょっこり顔を出したリインフォースⅡが、どこかの巫女さんぽい鳴き声をあげて引っ込んだ。

 彼女らは、突如としてクラナガン中央部を囲むように現れた四本の光の柱の内の一本に向けて急行していた。

 天文学的魔力を有するそれらは次元震の予兆を伴って鎮座しており、一時間もすれば極大の次元震となってこの世界を覆うだろう。そうなれば、大惨事は免れない。

 すでにフェイトは“魔王”と交戦を開始してしまっている。折り悪く、クロノが本局に召還されてしまっていたのも痛い。

 そして、ヴォルケンリッターの四人もまた別の柱へと向かっている。戦力を分散して両面作戦を採った、というよりも、単純に彼女らでは“箒”の速力に追いつけなかったからだ。

 歴戦の騎士といえども、ファー・ジ・アースの英知の結晶“箒”の飛行能力には敵わないようだった。

 

「すごい圧力ですね、“アレ”。……魔法の使えない私でも、危険だってわかります」

「まったく、なんてせっかちなやっちゃで。魔王ってみんなそうなん?」

 

 クラナガン市内に正四角形を描く光柱から放たれる異様な威圧感を肌で感じ、エリスに応じるはやての言は軽々しいが、表情は硬い。

 

「少なくともベール=ゼファーは気の長い方ではないわね」

 

 灯が淡々と言えば、

 

「そうですよ~。どうせ、「あたしには小細工って合わないのよっ!」とか言っちゃったりなんかしてるんですっ!」

 

 翠がベルの声真似をして混ぜっ返す。双子的な意味で似ていたりいなかったり。

 

「ともかく、あれを放置していたら大変なことになっちゃいます。なんとかしないと!」

「セオリー通りなら、どれかを停止することで阻止できるはずです。もっとも、魔王の妨害が予想されますが」

「場合によっては全て停止させなきゃ駄目かもしれないね。くっ、時間が足りないな……」

 

 エリス、スルガ、命が各々意見を述べ――

 

「まさしく“世界の危機”、やな」

 

 はやてが締めくくった。

 そうこうしてる内、“箒”は日の落ちた夜空を裂き、ぐんぐんと光の柱が近づいていく。

 

「見えた……!」

 

 一キロほど先、光の柱の前にたゆたう魔王の姿を確認し、狙撃体勢に入ろうと灯がガンナーズブルームのグリップに手をかける。

 相乗り中の命は前傾姿勢になった彼女の腰に軽く抱きついている。若干、情けない。

 

「ッあかりん、避けてっ!」

 

 ふと頭上を見上げた命の警告。それを灯が認識した刹那――突如として積層した雲を切り裂き、紅黒い光柱が七条、天から真っ直ぐに降り注ぐ。

 皆の顔が一瞬にして青ざめる。

 すぐさまの散開、ギリギリのタイミングでの回避運動。光条の端が、ガンナーズブルームのスタビライザーを掠めた。

 

「くっ!」「うわあっ!?」

 

 小さな爆発。黒煙を吹き、“箒”が推力を失う。

 

「灯ちゃん! 命くん!」

 

 エリスの呼び声虚しく、二人は重力の腕に捕まって物理法則に従い墜落していく。

 彼らもウィザードであるからには、常人を越える身体能力なり月衣による限定的な物理法則遮断なりで切り抜けるとわかっていても、心配してしまうのが人情と言うものだ。

 

「いったい、誰や――」

 

 はやてが呟く。

 消し飛んだ雲の合間――ミッドナイトブルーの空をバックに、閉じた純白の“羽根”が悠然と降臨する。

 下々の者に偉容をまざまざと見せつけ、“羽根”が開く。

 無数の白い羽毛の幻影がゆらゆらと舞い散った。

 

「ルー=サイファー!」

 

 七枚の“羽根”が構成した一対の大きな翼。その中心に抱かれていたのは、白いワンピースを纏う小柄な少女――テスラ=陽炎=フラメルの姿をしたルー=サイファーであった。

 

「それ以上の進入は罷り通らぬ」

 

 魔王の魔王たる所以、莫大な魔力を笠に着た超大な重圧をエリスたちにぶつけつつ、尊大にルーが言い放つ。

 

「今度はひとりなん? 私らもずいぶんとなめられたもんやな」

「フン。たかがヒトの群れ、我独りで事足りるわ。それに――パールたちなら、今頃そちの騎士とやらの相手をしているやもしれぬぞ?」

「なんやて!?」

 

 挑発的な軽口をしたたかに言い返され、はやては“箒”の上から落ちてしまいそうなほど動揺する。

 安定を欠き、ガクンと揺れる“箒”を「ちょ、はやてさん、暴れないでくださいっ」とエリスが慌てて立て直す。

 そして気を取り直し、魔王に毅然と問い質す。

 

「なにが目的なんですか、ルー=サイファー」

「知れたこと。目障りな冥魔諸共この宇宙を破壊する。奴らがこの“世界”を喰らい、力を付けられては面倒なのでな」

 

 にわかに一同の顔色が変わる。“世界の危機”が現実味を帯びてきたのだ、無理もない。

 

「我とベル、パール……、そしてシャイマール。この四者の魔力を流し込んだ“楔”を大地に穿ち、それらを共振させ、この星――ひいては次元そのものを打ち砕く」

 

 不吉に輝く紅い巨大な“楔”が煌々と、灰色の夜闇を照らす。

 

「あの柱――“楔”が最低二つ健在なれば我らの勝利……、臨界までに我らへ致命の傷を与えらればそちらの勝利。ベルではないが、簡単なゲームであろう?」

 

 可憐な容貌を妖艶に彩り、黄金の魔王が微笑を浮かべる。

 “ゲーム”のルールと難易度に皆の表情が引きつった。

 

「ゲーム、なあ……。そら好都合や」

「何……?」

 

 そんな中、ひとりはやてはニヤリと不敵に笑みを零し、“箒”から降りて自らの翼で浮遊する。

 

「なんせ――」

 

 待展開した剣十字の錫杖――〈シュベルトクロイツ〉をルーへと突きつけ、彼女は高らかに言い放った。

 

「私の悪運は最強や! エルフィ!」

「はいですっ」

 

 いつの間にか帽子から這いだしていたリインフォースⅡが元気よく応答し、自らの分身たる真新しい装丁の蒼い魔導書――蒼天の書を開く。

 そして、はやての開いた豪奢な装丁の施された紅茶けた書物――夜天の魔導書の(ページ)が白銀に輝いた。

 

 

   *  *  *

 

 

「あかりん、怪我はない?」

「ええ、ありがとう」

 

 アスファルトの地面に強かに打ちつけた命は背中をさすりつつ、珍しく尻餅を突いて座り込んでいた灯に手を差し伸べ、助け起こした。

 “箒”ごと墜落した二人は、ぐずる“箒”を宥めすかしてどうにかこうにか滑空させていたが、結局踏ん張りきれずに地上へと落下。はやてたちと分断されてしまった。

 上空では幾つもの爆発が起き、幾本もの光の筋が交錯している。

 はやてたちとルー=サイファーの戦闘が始まったのだろう。

 

「でも、この子はもう飛べないわ。武器としてならまだ使えそうだけど」

 

 言いながら、灯は飛行ユニットからスパークと黒煙を上げるガンナーズブルームを拾い上げる。故障した愛機の惨状に、どこか悲しそうに眉を下げた。

 もともと内部構造が比較的単純で頑丈に造られている機種ではあるのだが、さすがにあの光に接触は拙かった。

 辛うじて砲身などは歪んでいないので灯はそのまま使用するつもりでいるが、もしもの時は()()()()()()を使うことになるかもしれない。

 

「困ったな……上のみんなには合流できそうにないし」

 

 少し頼りない声を出して、命が空を見上げた。

 月衣の力で浮遊くらいは出来るが、それと空中での戦いが可能どうかは別の問題だ。“箒”の補助なしに空戦を熟せるウィザードなどそうは居ない。まあ、とある魔剣使いの男くらいにもなれば、倒れる鉄塔を駆け上って空中へ飛び出すくらいのことはやってのけるのだが。

 ともあれ、自分たちの行動を苦慮する命は困り顔で戦いの光を見つめる。

 ドン、と爆轟を響かせ、一際大きな爆炎が巻き起こる。金色の炎が小さな太陽となって闇を照らした。

 点いたままのネオンが灯の美麗な造形の横顔を暗闇の中から映し出す。それに気づいた命は、やにわに顔を赤らめて、魅入ってしまう。

 

「……なら、あの子――フェイトと合流しましょう」

「――え?」

「命、どうしたの?」

「あっと、フェイト、っていうと……あの金髪の子?」

 

 一瞬凝固した命。不思議そうに小首を傾げる恋人の姿に、さらに動揺を重ねるが何とか精神を再構築して、取り繕う言葉を何とか紡ぎ出す。

 そんな醜態を知ってか知らずか、いつもの無表情で灯は首肯する。

 

「ええ。どうやら地上で、それも独りきりでシャイマールと戦っているそうだから」

「シャイマール、か……わかった、そうしよう」

 

 二人は頷き合うと、禍々しい光を放つ紅い“楔”の一つへ向かって走り出した。

 

 

   *  *  *

 

 

 灼熱を帯びた剣閃が走る。

 しゃらん。澄んだ鈴音が鳴り、金の尻尾をなびかせる白い影が鋭利な一閃の隙間を掻い潜った。

 懐に飛び込み放たれた鉄拳が紅蓮に燃え盛る炎を纏い、刹那よりも速く展開した鞘がそれを迎え撃つ。

 鈍い激突音が響く。

 間髪入れず長剣が閃いた。内部機構に込められたカートリッジが炸裂し、紫電の速度で斬り返される。

 達人の研鑽し尽くされた妙技により繰り出される斬撃は、空間を斬り裂くかのごとく鋭く、それでいて美しい。

 しかし、必殺と思われた斬撃は身を反らすことで紙一重に躱される。白刃に触れた金糸の髪が数本弾け飛び、宙を舞った。

 りりん。鈴の音とともに緋袴の裾がひらりと揺らめき、純白のニーソックスに包まれたか細い脚が弓のようにたわむ。

 崩れた体制から無理矢理に放たれた蹴撃が、がら空きの脇腹に突き刺さる。

 蹴りの反動で、両者の間合いは大きく離れた。

 紅い火の粉が散る中、相対するのは白の陣羽織と赤紫の甲冑姿を身に着けた“烈火の将”と、白の振り袖に短く切られた緋袴を纏う“東方王国の王女”。

 

「ふ、はっ、あははははっ!」

 

 ミッドチルダを破壊せんと穿たれた四柱の“楔”を守護する四柱の魔王――その一人、パール=クールが無邪気に哄笑する。

 その黒くつぶらな瞳は、愛剣レヴァンティンを青眼に構えながらまんじりともしないシグナムへと送られていた。

 周囲ではヴィータ、ザフィーラ、シャマルのヴォルケンリッター三騎とアゼル、エイミィ、リオンの裏界魔王三柱が激しい火花を散らして激突している。

 ヴォルケンリッターと裏界魔王による遭遇戦。リオン=グンタお得意の“書物”を用いて先読みした魔王側の待ち伏せ、というべき形で始まった激闘は早くも最高潮を迎え、大地に穿たれた柱を巡る攻防は集団戦の様相を呈していた。

 

「あんたさ、結構やるじゃん。ルー程度に負けたって聞いてたから期待してなかったんだけど」

 

 弱体化したとはいえ、未だ裏界最強を誇るルーを“程度”扱いするパールは、壮絶な笑みを浮かべる。

 死と硝煙の匂い香る戦場に血がたぎり昂揚したのか、可憐な面差しは喜色満面、嬉々として輝いた。

 彼女ら魔王の本性は、闘争と破壊、背徳と快楽、欲望と――造物主に反逆し、“悪”の烙印を押された堕落した存在である。普段の頭の軽い言動や可憐な姿から一見人間味や親近感を感じられても、根元的なところは人外――ヒトではないのだ。

 そんな人外の狂気を充てられても、シグナムは不動のままだった。

 

「むー。なぁにぃ、黙りしちゃってノリ悪ぅーい。問答無用ってわけなの? パールちゃん、そういうのイケないと思いまーすっ」

 

 リアクションがないことにぶーたれるパールをシグナムは切れ長の怜悧な瞳で一瞥すると、突然反転。弾かれるようにぐんと上昇した。

 

「って、ちょっと! あたしを無視する――」

「ラテーケン!」

 

 直上から戦槌に取り付けられたロケットブースターを噴かせて、小柄な深紅――ヴィータがシグナムと入れ替わるようにして、急速落下してくる。

 

「ハンマァァァアアアッ!!」

 

 推進器の加速に、落下の重力が加算された速度でヴィータが特攻。雄叫びを上げながら、鉄槌が振り下ろされた。

 

「ちっ!」

 

 ぶん、と無造作に払われる手。咄嗟に張られた障壁が、ハンマーヘッドのスパイクを弾き返す。

 そこらの雑魚魔王ならばバリアごと粉砕していたであろう強烈な攻撃はしかし、“楔”の維持による減退を感じさせないパールの大魔力――ベルいわく馬鹿魔力――により創り出された付与魔法により、いとも簡単に逸らされてしまった。

「ちっ、これでもダメか」渾身の一撃が容易く弾かれたヴィータは飛び退きながら内心で戦慄を覚え、吐き捨てる。

 

「おまえらみんなして頑丈すぎんだよっ。なんなんだ、その装甲!」

「知るか、ちびっこ! アゼルっ、ちゃんと足止めしとかなきゃだめじゃない。殺すよっ!?」

 

「ごめんねー」上空でぽやっと滞空していたアゼルがその剣幕にびくりと身を竦め、済まなそうに手を合わせる。

「ちびっこ言うなー!」しれっと吐かれた暴言に、ヴィータが激して気炎を上げた。

 

「おまえだって私とほとんど変わらないじゃん!」

「ふんっ、あんたの目は節穴? どこに目ぇつけてんのよ」

 

 さりげに豊満な胸を強調するように堂々と張り、パールがヴィータを挑発した。

 ヴィータはついーっと頭を垂れて、自分の首から下を見やる。

 はやてデザインの紅いゴシック調の騎士服が真っ直ぐ延びている。視界はそのまま、眼下のビルへと届いた。

 頭を鉄槌で打たれたようなショックを受けたヴィータは「――う、うう~っ! 私は八歳相当で造られてるんだからこれでいいんだよ!」と、血涙を流さんほどの勢いで吠える。まさしく負け犬の遠吠えである。

 

「知らんな~。そんなにちびっこがイヤならぺたん子よ。おお、これ名案っ。よし、あんたのあだ名、ぺたん子でけってーい」

「ぬあっ!? て、てめぇ、もう許さないからなっ」

 

 精神年齢が近いからだろうか、ギャーギャーと傍目にはじゃれ合いにしか見えないやり取りをする同朋に、密かに呆れ顔をしたシグナム。そんな彼女の行く先は、分厚い書物を開いて戦況を見下ろす青いドレスの魔王――リオン。いつもの内心が見えない微笑で書物を紐解き、時折味方に指示を出している。

 リオンが敵集団の頭脳だと見抜いたシグナムは、彼女を討ち取ることで形勢を引き寄せようという腹積もりだった。

 カートリッジを炸裂させ、蛇腹状の連刃剣となったレヴァンティンが蜷局を巻く。

 〈飛竜一閃〉――シグナムの決め技が、その名の通り天翔る竜のように夜空に唸る。

 

「覚悟!」

「なるほど、先ずは私を討つと。悪くない判断ですが――」

 

 紫色の魔力光を巻き上げて眼前に迫る連結刃。だが、リオンの澄まし顔はぴくりとも動かない。

 当然だ。彼女はシグナムの思惑などとうに()()()()()のだから。

 

「それも……、この書物にある通り」

「やらせないっ!」

 

 尖端とリオンの間を塞ぐべく、アゼルが腿のブースターを激しく噴かせ、躍り出た。

 横薙ぎに払われたアゼルの突撃槍(グライディングランサー)が、飛竜一閃(シュランゲフォルム)を叩き落とす。

 続けてアゼルは槍を持たない左手を突き出すと、腕の中に仕込まれた四本のボルトが皮膚から突き出て、巻きついた帯ごと展開。青白い輝きを発する電気エネルギーが、そこに帯電する。

 

「!?」

 

 派手な音とともにボルトから放たれた幾条もの電撃が、硬直して動けないシグナムに襲いかかった。

 

「ぐ、があああああああっ!」

 

 〈パニッシャー〉。腕に内蔵した機構から、生体電気を増幅した高圧電流を放って相手を感電させる生体兵器(バイオオーガン)である。

 強烈な――それも魔法的な付加効果を持つ――電撃により麻痺して動けないシグナムを見やり、リオンは目の前に魔法陣を発生させる。

 その中心に孕んだ闇の塊が圧縮されていく。

 〈ヴォーテックスランス〉。形成された黒き槍の尖端、捻くれた切っ先が真っ直ぐシグナムに向いていた。

 おもむろに頭の上へと持ち上がる右手。

 

「はらわたをブチマケろッ! ……なーんて」

 

 とてもふざけたセリフと同時に、白魚のような指先が烈火の騎士を指し示す。それを合図に、〈ヴォーテックスランス〉が射出された。

 シグナムは未だ動けない。麻痺した身体で必死にもがき、苦痛の表情で美貌を穢す。

 阻むもののない空を漆黒の槍が飛翔する。黒き闇の一投が、標的に到達する刹那――

 

「シグナムは」「やらせませんっ!」

 

 ザフィーラとシャマルが庇い出て、青磁と藍白の魔法障壁を張り巡らす。

 着弾。解放された闇が黒い球体となり障壁に喰らいつく。しかし、両者によって展開された多重多層のバリアを貫くことは出来ず、暗黒の槍は魔力の残滓となって霧散した。

「あらあら」自分の魔法を防がれたに対し、リオンがさして残念そうでもない感想を漏らした。

 

「……なかなかのコンビネーションです。流石、と言うべきでしょうか」

「く――っ、不覚をとった……! すまない、シャマル、ザフィーラ」

「気にするな。元より俺の役目は、仲間の盾になることだからな」

「困ったときはお互い様よ」

 

 ようやく麻痺が解け、持ち直したシグナムは仲間に礼を言い、愛剣を構え直してリオンを見据える。

 護衛のために進み出たアゼルの影で、“秘密伯爵”が妖艶な笑みを浮かべた。

 

「ですが、こちらにももう一人居るのをお忘れですか?」

 

 不意に感じた膨大な魔力の奔流――

 意味深な笑みの真意を悟り、シグナムたちが天を仰ぐ。

 皆よりもやや上空に座したエイミーの指先が、複雑な紅いルーンを宙に描き出していた。

 

「逆巻け風よ!」

 

 両手が天に差し上げられ、その中心に七芒星の巨大な魔法陣が発生。

 頭上の魔法陣はぐんぐん上昇し、限りなく広がるように見える雲の天蓋に張りつく。

 

「ハリケーン!!」

 

 灰色の暗雲に幾つもの渦が巻く。そして、渦が大地に向かってゆっくりと伸び、高速で回転する螺旋の柱が――極太の竜巻が降りてくる。

 上空の雲を引き連れて、巨大な竜巻が戦場を敵味方お構いなしに貫いた。

 

 

   *  *  *

 

 

 空域一帯を包み込んだ凍えるような冷気を一息に吹き払う灼熱の嵐。火球の弾幕が凍てつく飛礫の群れを一瞬にして蒸発させる。

 間髪入れず剣十字を模した錫杖が横薙ぎに払われ、発生した不可視の刃が大気を斬り裂く。しかし音速で滑る空気の刃は、七枚の白い盾が組み合わさって構成された大楯に阻まれ、霧散した。

 空気の振動が収まらぬ中、澄んだ音を鳴らして白亜の大楯が分離し、三枚を主の側に残して射出される。

 標的は氷結と烈風を操る黒翼の魔導師――八神はやて。彼女の空色の瞳は普段よりも色合いが濃く鮮やかに、栗色のセミロングは煌めくプラチナブロンドに染まっていた。

 融合騎(ユニゾンデバイス)たるリインフォースⅡとの“ユニゾン”――膨大な魔力を持つが故に、微細な制御を苦手とするはやての戦闘形態である。

 

「――っく、しつっこいなぁ!」

 

 紅い尾を引いて突進してくる白い“羽根”。迫り来る脅威に思わず吐き捨てたはやては、リインフォースⅡに魔力障壁の展開を指示し、自らは回避運動に努める。

 しかし、元より空戦機動など門外漢。簡単に追いつかれ、障壁を叩かれる。

 瞬く間にひび割れるシールド。すると、紅い弾丸が横合いから“羽根”にぶち当たり無理矢理に軌道を変えた。

 左腕から砲身を生やしたスルガが生体弾を乱射して、はやてをフォローしたのだ。

 

「ありがとな」

 

 軽く礼を言い、はやてが目配せする。頷いたスルガは一心不乱に生体弾をルーへ乱射し始めると、彼女はそれに同調して1メートルはあろうかという氷柱の槍を撃ち放った。

 攻撃は最大の防御。回復役が貧弱な――はやてと翠は一応使えるものの、本職ではないので効果のほどはいささか心許ない――パーティーでの長期戦は不利と判断。最大火力で畳み掛け、一気に勝負を決めようと熾烈な攻勢を仕掛ける。

 しかし、相手は他ならぬ“金色の魔王”ルー=サイファー。如何に“楔”の維持によるリソースの低下と、未だ癒えぬ傷によって全盛よりも力を減退させているとはいえ、易々と倒されてくれるような存在ではない。

 

「次はこちらの手番だな?」

 

 はやてらからの総攻撃をアイン・ソフ・オウルにてあっさりやり過ごすと、黄金なる魔王は音なき声で詠唱を図る。

 ヒトには真似のできない高速詠唱。瞬く間に複雑な術式が完成した。

 

「受けよ、ドラゴンフレイム!!」

 

 宣言とともに、魔力が火焔となって散る。

 高速回転する炎の円環〈ドラゴンフレイム〉が辺りを焼き払い、巨竜の息吹にも似た灼熱が吹き荒ぶ。

 広がる爆炎の波に、はやてたちの姿は飲み込まれた。

 

 

「みんな……」

 

 繰り広げられる激闘を、離れた場所で見ていることしかできないエリスは、悔しそうに唇を噛む。

 力がなくても世界は救えるけれども、仲間を助けることはできない、と自分の無力さを改めて噛み締めて。

 

 

「やらせません!」

 

 搭乗状態のまま前方に大楯を展開したアイゼンブルグを前面に押し出し、スルガが一同の前面に立ちはだかって熱風を受け止める。

 その背後から、虎視眈々と機を窺っていた翠がウィザーズワンドに跨って飛び出した。

 

「タンブリング、ダウン!」

「ぬ……!」

 

 突き出した指先から延びる冥闇の侵蝕。魔法を放った隙を突かれ、抵抗(レジスト)し切れず意識の一部を刈り取られたルーは、一瞬だけぐらりと体勢を崩す。

 わずかな隙。だが、それは格好のタイミング。

 

「穿てッ!」

『ブラッディダガーっ!』

 

 うわずり気味の声を合図に十本の短剣が、朱色の光を引いて追撃する。

 十の短剣が飛翔し、十の炸裂を引き起こした。

 爆発。爆炎。

 咄嗟に割って入った三つのアイン・ソフ・オウルを引き連れて、ルーが噴煙を切り裂く。

 

「ち……、鬱陶しい羽虫共め。先ずはそちから消えてもらうとしようか、真壁翠!」

 

 苛立ったようにルーは、両手の親指と人差し指で作った三角を、標準に見立てて翠に合わせた。

 指で作られた三角形の中に開く異界の扉――

 

「ま、またあたしですかーっ!?」

 

 自身がウィザードとして覚醒することとなった一件、“合わせ鏡の神子事件”の最終局面でルーから受けた即死級の一撃を思い出し、顔を青ざめさせる翠。

 〈ワールドゲイト砲〉。前世の記憶を受け継ぎ戦う〈転生者〉と呼ばれるものたちが用いる、必殺必中絶対不回避の一撃である。

 

「さあ、我が光にて消え失せよ!」

 

 眩いばかりの金色――天地を揺るがすほどの莫大な魔力が“世界門”から溢れ出す。ルーの眼前に発生するのは、五つの円から成る七芒星の複雑な魔法陣。

 高まる光が臨界を越え、灰色の夜を一瞬だけ明るく染め上げる。

 逃れ得ぬ死を前に、翠はぎゅっと瞳を閉じた。

 

「きゃあああっ……って、あれ?」

 

 いつまでたってもやってこない痛みに、不信を感じた翠が恐る恐る瞼を上げる。目の前には、アイゼンブルグを飛行形態からガントレットに切り替え、その全身を覆い隠すほど巨大な盾を眼前に翳す、スルガの大きな背中。

 “箒”に増装された対魔・対物複合式のバリアシステムがフルパワーで起動し、淡い虹色の幕を発生させて必滅の光を軽減していたのだ。

 

「ぐ――、ア……ッ」

 

 圧倒的な〈ワールドゲイト砲〉の威力をその一身で引き受けるスルガの全身を、恒星の灼熱をも凌ぐ光の奔流が焼き尽くす。

 避けられないのなら、受けきればいい。身を挺して仲間を護ることを自らの存在意義とする彼は、〈ワールドゲイト砲〉の想像を絶する威力を苦悶の表情で耐え忍ぶ。

 アイゼンブルグ最大の特徴、積層構造シールドが悲鳴のような軋みを上げた。

 ようやく霧散する光。全身から煙を立ち上らせるスルガは、仁王立ちのまま、巌のように微動だにしていなかった。

 

「スルガさん!」

「ぼ、僕は、だい、じょうぶ……です……」

 

 息も絶え絶えなスルガの姿にはやては怯んだ表情を見せる。しかし、未だ健在な“魔王”の存在を思い出すと思考を切り替え、ルーに錫杖の尖端を向けた。

 夜天の魔導書が白銀に輝き、記された魔導式が唸り声を上げて起動する。

 

「汝、美の祝福賜らば、我その至宝、紫苑の鎖に繋ぎ止めん!」

『いくですっ! アブソリュート――、ゼロ!!』

 

 はやての詠唱とリインフォースⅡのかけ声を引き金に、大気中の水分が凝固し、ルーを封印してしまうかのような白く儚い氷の棺桶が生まれる。

 とある異世界より蒐集した絶対零度の名を冠した大魔法。常識であるならば、これ一撃で地に沈むことだろう。

 だが――

 砕けた氷塊の中から現れるのは、ほぼ無傷な金色の少女。黄金色の巻き髪に残った氷が虚しく散った。

 

『そんな、うそですっ』

「アレ喰らって、無傷かいな……!」

「この程度で我を滅ぼそうなど、笑止」

 

 渾身の魔法が効果をなさなかったことに動揺する魔導師を鼻で笑い、上昇していく魔王はトドメを刺そうと魔力を高める。

 発露した金色の輝きが、深紅へと染まっていく。

 

「身の程を知らぬ愚か者共め。裁きの時は来た――、存分に報いを受けるがいい……!!」

 

 七枚のアイン・ソフ・オウルが連結し、一対の翼を形成する。純白の装甲に挟まれた紅い結晶が、激しい閃光を放った。

 

「受けよ、極光の洗礼ッ!」

 

 以前、力に飲まれたエリスが暴走し、木星を囲む衛星の一つ、パンドラを分断したのと同種の“光”。中途半端な覚醒だったその時ですら、天体を断ち切るほどの破壊力を持っていた。

 ならば、正当後継者たるルー=サイファーがそれを放てば、どうなるか――

 

「全てを滅ぼす破滅の光――――!!」

 

 透明な声を引き金に、滅びを呼ぶ極大の光が天から降り注いだ。

 世界を覆う真紅の極光。

 大地に突き刺さった破滅光は、建築物を次々に粉砕し、跡形もなく消滅させる。それにより作り出された光景はまさに煉獄を思わせるような劫火の海だった。

 

「ほう……、我が光を受けてまだ息があるか。存外にしぶといらしい」

 

 感心したように、しかしどこか侮るようにルーは妖艶な笑みを浮かべる。

 はやての帽子は吹き飛び、ユニゾンが解け、翠は“箒”の上で力なくうなだれ、スルガに至っては致命傷に近い。直撃したわけでもないというのに、皆は襤褸切れのように疲弊し息も絶え絶えだ。

 すでに敗北は寸前、打つ手はなかった。

 

「――その眼、気に入らぬな」

「……ッ!」

 

 だというのに、自らを毅然として睨み続ける魔導師の少女に、ルーは不愉快そうに眉を顰める。

 彼女の手の中には、くたりと力なくうなだれるリインフォースⅡが庇われていた。

 

「力の差は歴然、余力はもう無かろうに。大人しく諦めて、滅びを享受したらどうだ? 死と滅びは、誰しもに分け隔てなく訪れる唯一平等の安らぎぞ」

 

 尊大に、傲慢に――それは誘惑。幻想的な死をいざなう、蜜のように甘い呼び声。

 しかし、それに抗う者がいた。

 

「諦めへん! 諦めたらそこでなんもかもおしまいや!」

 

 冷たい白銀の眼孔を見返すのは青空色の双眸。そこには、強大な絶望を前にしても消えることのない、熱く燃えたぎる炎が爛々と灯っていた。

 

「私は――、私はこの子に、お姉ちゃんと会わせてたるって! 約束したんや!」

「はやて、ちゃん……」

 

 はやての胸の中で、疲弊し、意識が朦朧とするリインフォースⅡが譫言のように呟く。

 六年前、クリスマスの日、はやては眠りにつく“彼女”と約束をした。

 壊れたところを治してあげる、と。ずっとひとりぼっちで泣いていた“彼女”に、どれだけの時間がかかろうとも必ず家族を、幸せをあげると約束した。

 だから――――

 

「――もう一度……、笑顔で逢おうって、誓ったんや! そしたら、みんな笑顔で、完全無欠なハッピーエンドやって!」

 

 再びまみえるその時まで、倒れるわけにはいかない。

 それがはやての戦う意味。武器を執る理由。大切な家族と共に歩み、共に生きると誓った彼女の“愛情”だった。

 

「そちの事情など知ったことか。どれだけ叫ぼうとも、これで終わりという厳然たる事実は動かぬ」

 

 血を吐くような魂からの叫びを冷酷に切り捨てて、ルーは小さな掌に光明を集める。

 〈フラッシュエンド〉。高密度の灼光により、対象を焼き尽くす攻性魔法。彼女の“弟”が近接戦で変則的に放つのとは違う、本来の使い方によって目障りな魔導師を焼き尽くさんとする。

 

「さようなら?」

 

 黄金の少女が見た目相応に稚い仕草で小首を傾げ、無邪気な死をもたらす。

 

「く……っ」

 

 真っ白な輝きが、はやてを焼き尽くさんと放たれた。

 

 ――約束守れんで、ごめんな。

 

 瞳を見開いたまま、心の中で謝って。はやては、せめてこの子だけでもと小さな末っ子を抱き庇う。

 刹那――、夜天の魔導書が強く煌めいた。

 

「何だと……!」

 

 夜空に一陣の風が吹く。

 余裕綽々の表情を取り払い、ルーは驚愕に目を見開いた。

 満天に煌めく星々を抱き、流麗な月が静かにたゆたう夜空のように深い“紺青”の光が破滅の閃光を遮断した。

 漆黒の羽がふわりと軽やかに舞い踊る。

 はやての前に立ち塞がり、灼光を退けた黒衣を纏う長身の女性が三対の黒翼をはためかせ、ゆっくりと振り返る。

 

「リイン、フォース……?」

 

 どこか夢見心地ではやては、その名前を呼ぶ。

 

「遅くなって、申し訳ありません」

 

 ふと夜風が流れ、銀色の綺麗な髪を優しく撫でる。

 それは旅立ちの風。

 旅路の最初、惑う旅人の背中をそっと押す、はじまりの風――

 いつか別れた、きっとまた出逢えると笑い合った優しい祝福の風。

 

「夜天の魔導書管制人格リインフォース、只今帰還しました。主はやて……大きく、成られましたね」

 

 万感の想いを言葉に込めて、彼女は――リインフォースは、愛しい主の名を呼んだ。

 

「っほんまや……リインは寝坊助さん、やなあ」

「すみません……」

 

 懐かしい声、懐かしい姿。

 ずっと逢いたかった愛しい家族――はやては、ぽろぽろと止め処ない大粒の涙と、透き通るように屈託のない笑顔をこぼす。

 六年間の悲願が成就したことで感極まったのだった。

 

「お姉、ちゃん……ですか……?」

「そうですよ、エルフィ。後は私が引き継ぎます。ですから、あなたはゆっくりおやすみなさい。起きたらたくさんお話をしましょう、ね?」

「……は、い」

 

 優しく諭す姉の言葉に安心して微笑み、妹は目を閉じる。

 

「せやな、感動の再会にはまだ早やかったわ」

 

 ぐいっと袖で涙を乱暴に拭い、はやては顔を上げた。

 彼女の眼差しの先には白い羽根を侍らす“金色の魔王”。苛立ちを露わにし、強大な魔力を惜しげもなく発露させていた。

 

「行けるな、リイン!」

「はい」

 

 従者の淀みない答えに頷いき、若き王は金色の錫杖を天高く差し向ける。

 りんっ、と白銀の魔法陣が輝いた。

 

「夜天の光よ、この手に集えっ!」

 

 彼女らを祝福するかのように降り注ぐ季節外れの真白な粉雪。あの聖なる夜の続きを始めるようにして。

 高らかに、祝詞が天に響く。

 

「祝福の風、リインフォース! セーット、アップッ!!」

 

 光り輝く白銀の風が夜を覆い尽くし、新たな未来を祝福する風が吹く。

 悠久の時を経て――、ここに“夜天の王”が再誕した。

 

 

「ああああッ!」

「っ、チィ!」

 

 清涼なる白銀の風が夜空に煌めく。

 それは、全てを焼き尽くす熾烈な黄金の光に匹敵するほどの輝きだった。

 

『ジェット!』

 

 シュベルトクロイツの尖端、剣十字を象った飾りから金色の魔力光が吹き出す。高圧電流を帯びた魔力が、リインフォースの制御により両刃の剣の形に形成。はやてはそれをややぎこちない手付きで頭上に持ち上げ、振り回した。

 彼女の親友――黒いドレスの少女の如く、長物を軽々というわけにはいかないようだ。

 

「ザンバーッ!!」

「ぬ……!」

 

 力任せに叩きつけられた雷霆の大太刀が、防御に入ったアイン・ソフ・オウルとぶつかり合い多量の電撃を撒き散らす。

 しかし、巨大な魔力刃は純白の大楯を断ち切ることができず、接触とともに砕け散る――否、()()砕けた。

 

「ぬっ――!? こざかしい真似を!」

 

 砕けた破片が大小の魔力爆発を引き起こす。

 刀身の引き替えに生まれた強烈な衝撃で大楯は強制的に分解され、はやてはその反動を利用して一気に距離を取る。

 後退しながらも、両手で槍のように握ったシュベルトクロイツの先端部を眼前に突き出した。

 その構えは、彼女のもう一人の親友――白いドレスの少女によく似ていた。

 

「まだや! ディバイィィィイイン!」

『バスター!!』

 

 桜色に輝く魔力が収束し、一筋の光芒となって放たれる。

 オリジナルにも勝るとも劣らない大魔力の砲弾が、煌めく流星のように空を切り裂く。再度防御に入ろうとする盾の間をすり抜けて、砲撃が魔王を強かに撃ち抜いた。

 耳をつんざく轟音、爆炎の華が暗い夜空に咲き誇る。

 

「よっしゃ! ぶっつけ本番でもうまく行くもんやな」

『主、油断は禁物です』

「わーとるて。リインは心配性やなぁ」

 

 親しみが込められた軽妙な掛け合い。

 六年の時間を感じさせない抜群のコンビネーションで、はやてとリインフォースは黒き翼を羽撃かせて夜空を翔る。

 管制人格が起動したことにより解放された夜天の魔導書の真の力が、異界の魔王を――古き神を抑え込んでいた。

 

「ぐぅぅ……、馬鹿な……! たかがヒトが、我を――この“金色の魔王”を此処まで追い詰めるとは!」

「はんっ、そのたかがヒトやと油断しくさとったんはどこの誰や」

「貴様……!」

 

 ――――はやての魔力は今、精神の高揚によりかつてないほどに高まっていた。

 湯水のごとく溢れる全能感が彼女の指先――、肉体を構成する細胞の一つ一つにまで行き渡り、限りない力を与えている。まるで今の自分なら奇跡の一つや二つ、鼻歌混じりに起こせてしまいそうな、そんな感覚に身を任せてはやては魔法を操る。

 

「まだや! 行ったれ、リイン!」

『穿て!』

 

 追撃のブラッディダガーが閃き、炸裂した。

 

「ええい、図に乗るでないッ!!」

 

 魂まで震え上がるような一喝。白いワンピースを僅かに焦がしたルーが叫ぶ。

 爆風を切り裂いて、七枚の“羽根”が放射状に飛翔。紅い尾を引き、はやてに迫る。

 

「リイン!」

 

 瞬時に創り出された数十本の短剣。不可視の速度で射出されたそれらが“羽根”に衝突し、軌道をわずかに逸らす。

 その間を掻い潜って、はやては一息で相手の懐に潜り込む。有り余る大魔力にあかせた無理矢理の高速機動だ。

 

「ちぇりおーーっ!!」

「がっ……!?」

 

 そのままの勢いで、妙なかけ声とともに繰り出される左の拳。銀色の魔力が拳を纏う。

 ゼロ距離、避けようのない突きがルーの胴に深々と突き刺さった。

 大砲じみた炸裂音と共に、魔王の小さな身体は高々と打ち上がる。

 吹き飛び、上空に打ち上げるルー。「ぐ、う……ッ」呻き声をもらして苦悶に表情を歪めながらも、瞬く間に魔力を集中する。

 

「ッ、最早加減はせぬぞ、小娘ッ!」

 

 プライドをかなぐり捨て、ルーが吼える。

 宙返りをして体勢を整え――

 

「天より落ちよ、太陽の輝き!」

 

 眼前にかざした両手の前方に発生した三重魔法陣から、直径50メートルの大光球(ディヴァインコロナ)を撃ち落とした。

 

『“盾”!』

「……ッ!」

 

 咄嗟に張られた障壁ごと、“聖なる太陽の冠”がはやてを飲み込む。悲鳴すらも上げることのできない圧倒的な光の奔流。

 歯を食いしばり、はやては光の猛威を耐え忍ぶ。障壁には罅が入り始め、魔力で編まれた甲冑が莫大な熱量に耐えきれず削り取られる。

 それでも何とか凌ぎ切り、光が霧散した時、彼女の目に飛び込んできたのはもう一つの“太陽”だった。

 

「んな……!?」

「我が灼熱の劫火にて、塵芥(ごみあくた)に還るがいい――!! 消し飛べッ、ブラストフレア!!!!」

 

 続けざまに放たれた大魔法。はやての目の前で収束する金色の魔力、巨大な熱量は人知を遙かに超えていた。

 太陽よりも烈しく燃えさかる極大な爆発が、灰色の夜闇を一瞬だけ真昼へと変える。

 極大爆炎魔法〈ブラストフレア〉。〈ディヴァインコロナ〉が魔法的に集束された閃光の塊であるならば、こちらは純粋な火炎と灼熱を縒り集めた塊である。魔法的に制御されたそのエネルギーは、戦術核にも匹敵するほどの大熱量と大破壊を巻き起こす。

 ファー・ジ・アースに数多(あまた)存在する術の中で、純粋な破壊力でなら十指に入る森羅万象を燃やし尽くす黄金の炎が、夜空に荒れ狂った。

 

 ――――そして、世界に静寂が訪れる。

 

「フンッ、これで少しは大人しく――ッ!?」

 

 神がかった造形の面立ちを破壊の火で照らし、満足そうに浮かべた艶やかなルーの微笑はすぐに崩れた。

 天焦がす大火の残り火が夜の闇に溶けて――

 

「ご生憎様、やな」

 

 騎士甲冑を大きく損傷させ、ほとんどインナースーツ姿のはやてが銀の魔力光を放ち、現れる。

 ユニゾンによって変化した淡いブロンドは一部が炭化し、所々が焼け焦げた顔の皮膚は痛々しい様相を呈している。

 しかし、彼女は笑っていた。

 重度の火傷を負い、ひどく焼け爛れた顔で笑っていた。

 一分の諦めや怖れを感じさせない笑顔。それは自らの信念と、自らの仲間を信じて王道を往く“王者”の笑みだった。

 

「!?」

 

 刹那、銀色の闇から鎖が生み出され、ルーの四肢を絡め捕る。

「こんなもの!」覇気の込められた魔力により瞬く間に砕かれた拘束(バインド)。だがしかし、はやてが打つ最後の一手にはその瞬間があれば事足りる。

 

「行くで、ありったけ!!」

 

 そう叫ぶと、はやては魔力を解放可能な限界ギリギリまで一気に放出した。

 リインフォースがその制御を受け持ち、複数の術式を連続・連結して起動する。融合(ユニゾン)という規格外の力を持つ彼女たちだからこそ出来る規格外の力(ユニークアーツ)――“連結魔法行使”。

 閉じていた魔導書がおもむろに開かれ、涼やかな白銀に煌めく。

 かつてその身に宿した“闇”、破壊神の力の残滓すらも呼び覚まし――――

 

『唸れ、炎よ!!』

 

 錫杖を縦一閃に振り下ろす。

 その動作に併せて上空から無数の火炎弾が撃ち出され、唸りを上げる。

 

「舞え、吹雪よ!!」

 

 続いて左に向けての横薙ぎ。

 一気に冷やされた空気が作り出した細氷が、冷気の渦となって舞い踊る。

 

『切り裂け、風よ!!』

 

 右に返す一振り。

 双頭の竜巻が融合し、巨大な衝撃波を巻き起こす。

 

「――これで、しまいやっ!」

 

 さらに金色の錫杖が頭上に大きく振りかぶられると、分厚い雲の天蓋に剣十字の魔法陣が発生。主の脇で浮遊していた夜天の魔導書がさらに強く、清らかに発光する。

 

『響け、終末の笛!!』「ラグナロクッッ!!!!」

 

 勢いよく振り下ろされる錫杖に導かれ、ベルカ式の魔法陣から巨大な銀光の柱が解き放たれた。

 天から降り注ぐ贖罪の剣が“金色の魔王”へと一直線に落下する。

 破砕し、粉砕し、爆砕する光の剣――、込められた莫大な魔力が輝き、白銀色の大爆発が魔王の姿を飲み込んで欠き消した。

 

 

「はぁ……、はぁ……」

 

 ゼイゼイと肩で荒い息をするはやて甚大なダメージを受け、尚且つ全力で魔法を行使した彼女はもはや、精魂尽き果てたと言っても過言ではない状態だ。

 しかし、彼女は戦闘態勢を崩さない。自身の全力全開全身全霊の魔法を受けたとて、あの強大な魔王を斃せたとは到底思えなかったから。

 果たして、光が収まる。

 

「――おのれッ、人間の分際で……!」

 

 流血した左腕を無事な方の腕で庇うルーは、鬼の形相を見せて怒りに身を震わせる。

 銀色の瞳孔が興奮したように開き、耽美な容姿には紅い血の化粧が施されていた。

 

「そんならこう言ったるわ。カミサマだか魔王サマだか知らんけど……ヒトサマなめんな、ってな」

 

 肩で息をするはやてはしかし、満身創痍なにもかかわらず怒れる魔王へと不敵に言い返した。

 その時、クラナガン中央区を囲むように発生していた紅の“楔”、その一柱が光を失い消滅していく。

 術式を維持する魔力の供給が途切れ、安定を失って崩壊したのだ。

 

「私らの勝ち、やな」

 

 それを確認したはやては、疲労の色濃い面立ちでニッと破顔して、勝利を宣言した。

 

 

   *  *  *

 

 

 時は、ルー=サイファーの敗退から僅かに遡る。

 空中に腰掛け、気怠げに頬杖を突く紫の制服姿のベール=ゼファー。風にはためく茶色のポンチョもどこか締まりがない。

 背後には、紅い燐光を発する“楔”がそびえ立っていた。

 

「ヒマねえ……」

 

 ベルは小さく呟くと、あふ、と大きな欠伸をして瞳を薄める。

 ついと、視線を踊らせば街の至る所で幾つもの光が瞬いている。どうやら彼女以外の魔王たちは派手に戦っているようだ。

 “楔”の守護をしている、というわけではないのだが、わざわざ戦う相手を求めて彷徨うなど彼女の人一倍高いプライドが許さない。「魔王は迷宮の奥深くで悠然と構えて下々の者を待ち受けるものだ」、とは今回の事件を仕組んだ少年の言葉だ。

 

「……ヒマだし、ちょっと遊んでみようかな」

 

 独り言ち、ベルがおもむろに立ち上がる。

 軽く突きだした両手に、天光と虚無の力が生み出された。

 二種類の魔力を胸の前で合わせ融合、産み出されたのは魔法的な核融合を引き起こし、万物を消滅させる高位消滅魔法〈ニュークリアヴァニッシャー〉。退屈紛れの戯れにしては、あまりにも物騒すぎる破壊を持つ魔法だ。

 

「ニュークリア――ッ!?」

 

 混沌の光が解き放たれる刹那、数キロ離れた地点が光る。

 針穴を通すかのような精度で狙撃された桜色の光芒が、真っ直ぐな軌跡を描いてベルに襲い掛かった。

 彼女はすぐさま魔法を破棄すると、身を逸らして回避。目標を失った魔力光は“楔”に衝突して霧散した。

 

「……へぇ、やってくれるじゃないの」

 

 遙か彼方、魔法が発動した方向に視線を送り、ベルは犬歯を剥き出しにした獰猛な笑みを浮かべる。その金色の瞳は、ギラギラと暴力的な光で輝いていた。

 たちどころに周辺の光景が歪む。人智を越えた力によって、歪められた空間が遠く離れた場所を繋ぐ。

 一般的な転送魔法とは術理の異なる尋常ならざる“路”を潜り抜けた先にあったのは、廃棄都市地区。大魔法の傷跡が生々しく残る廃墟――人気のない無人の街は、決戦の舞台に相応しい場所だった。

 

「趣向を凝らしたご招待ありがとう。……久しぶりね、またあたしと遊くれるのかしら?」

 

 待ち受けていた()()に、ベルはかわいらしく小首を傾げて愉快そうに語りかける。

 

「…………」

 

 妖艶に嘲う“蠅の女王”と対峙するのは、金色の穂先を持つ突撃槍を携えた魔導師。

 幼き頃に纏っていたそれを思わせる、ロングドレス風のデザインの白い戦装束(バリアジャケット)――省魔力、高機動の概念を切り捨てた完全なる戦闘形態〈エクシードモード〉を身に纏うなのはだった。

 彼女の憎悪にも似た激情が込められた視線を浴びて、魔王の愉悦はますます高まってゆく。

 

「クスッ……、あたし好みの顔になったわね。感情に――、チカラに身を委ねるのは気持ちがいいことでしょう?」

「…………」

 

 なのはは答えず、唇を真一文字に閉じて無言のまま、限定解除形態のレイジングハート・エクセリオンを突きつけた。

 求めた反応が返ってこないことに“蠅の女王”は軽く肩を竦める。

 

「ま、いいわ」

 

 ヴン、と音を立てて彼女の服が分解。魔力で編まれた繊維の一本一本が一斉にばらけ、一瞬にして編み直される。

 大胆なまでに丈の短いスカートに、すらりとした細い足を包むニーソックス、高いヒール。短めのマントと所々にあしらわれた紅いリボン――輝明学園のセーラー服は、大きく背中の開いた漆黒のバトルコスチュームへと瞬く間に様変わりした。

 ふわりと柔らかい銀髪を艶めかしい仕草で掻き上げて、ベルがその身に宿した莫大な魔力の一分を解き放つ。漆黒の炎をイメージさせるエネルギーが、ゆらりと陽炎のように揺らめく。

 それに呼応したかのように、なのはの白いショートブーツから発生する桜色の翼〈アクセルフィン〉に大量の魔力が無理矢理に流し込まれ、通常の二倍ほどの長さにまで肥大化。極限まで圧縮され、オーバーフローを起こした魔力により翼は(くれない)に染まり、激しいスパークを夜闇に撒き散らした。

 

「――それじゃあさっそく、愉しい殺し合い(ゲーム)を始めましょう?」

 

 打ち捨てられた廃墟を舞台に、見事なまでに配色の対照的な衣装を纏う魔導師と魔王の戦いが――天地を揺るがす激闘の火蓋が今、切って落とされた。

 

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