GARO/Grand Order   作:響く黒雲

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絶影

ラ・シャリテから逃れた優牙達は、テンションが高いドレスの少女と、その少女を見てニコニコしている長身の男と共に、丘陵地帯へと来ていた。

 

「ここまで来れば安全かしら?」

 

「ドクター?」

 

『大丈夫、サーヴァント反応は無いよ。ついでに、そこから少し行った森に霊脈の反応がある』

 

なんとか黒いジャンヌ達から逃げられた事に安堵する優牙達に、ドクターは霊脈の存在を話す。

 

「分かりました。それでは、皆さん。これから拠点の確保の為に霊脈へ行こうと思いますがよろしいですか?」

 

「ええ、構いませんわ。ねぇ、アマデウス」

 

「だから僕に意見を求めても無駄なんだってば。何時もの様に好きにするといい、マリア」

 

少女と男に賛同を得られたマシュは、霊脈の確保の為、森へ向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

「むっ、霊脈に群がるエネミーが居ますね…」

 

「スケルトンなら…… ハッ!」

 

霊脈に向かう途中、スケルトンに遭遇した一向。

優牙は魔戒剣を振り抜き、衝撃波でスケルトンを消滅させた。

 

「まあ!凄いわねマスターさん。触れずにあの幽霊さんを仕留めるなんて」

 

「ええ、流石黄金騎士です」

 

少女とジャンヌから称賛を受ける優牙だが、その顔は驚きに包まれていた。

 

「あら?どうかしまして?」

 

「あ、いや。お礼を言われるのに馴れてなくて……」

 

「どうしてだい?」

 

「元々、魔戒騎士は闇に紛れて生きる者。こうして、英雄達と共に戦うなんて事がそもそも異常なんだ」

 

そう言う優牙の横顔は、何処か陰り、悲しみを秘めた様なものだった。

 

「所で、どうしてジャンヌは牙狼を知っているんだ?」

 

「私ですか? 子供の頃助けて貰ったんです。黄金の騎士に。ただ、優牙さんと違うのは瞳の色でしょうか?私を助けたあの騎士は、炎の様な真紅の瞳をしていました」

 

「真紅の瞳をしたガロ…… まさかな」

 

子供の頃に助けて貰ったと言うジャンヌの見た牙狼の容姿に、へルマンは心当たりがあったのか、小さく呟いていた。

 

「霊脈に着きました。それでは、召喚サークルを確立させます」

 

「ああ、頼むよマシュ」

 

霊脈に辿り着いた優牙達は冬木でしたように、霊脈にマシュの盾を設置し、召喚サークルの作成に入る。

 

やがて、設置した盾から霊子を吸い上げ、カルデアの召喚ルームと繋げ、青白く輝く空間を形成した。

 

「召喚サークル確立完了。どうですか?ドクター」

 

『うん、感度良好。問題ないよマシュ。これで優牙に補給物資が送れる』

 

一通りの作業を終えた所で、まだ少女と男に明確な挨拶をしていない事に気づき、自己紹介が始まった。

 

「では、改めまして。私はマリー・アントワネット。クラスはライダー。マスターはいませんわ」

 

「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。確かに僕は有名だけど、正直僕に英雄の自覚はない。クラスはキャスター、マスターに関しては右に同じ」

 

少女の真名は、フランス王妃のマリー・アントワネット、男の真名は世界的に有名な音楽家のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトだった。

 

そして二人にはマスターが居ないと言うのだ。

 

「私はマシュ・キリエライト。シールダーのデミ・サーヴァントです。こちらがマスターの冴島優牙」

 

「よろしく、二人共」

 

「俺はへルマン・ルイスだ」

 

「私はルーラーの……」

 

ジャンヌが自己紹介をしようとした時、マリーは急にテンションを上げてジャンヌの手を取り、捲し立てた。

 

「知ってますわ!憧れの聖女ジャンヌ・ダルク!」

 

「……… 私は聖女なんかではありませんよ」

 

「ええ、皆もそれは分かっていたと思います。ですが貴女は聖女と呼ばれるに相応しい功績を残した。オルレアンの奇跡。ジャンヌ・ダルク」

 

顔を赤くして、聖女であることを否定するジャンヌだが、マリーはあくまでもジャンヌは聖女だと言う。

 

そんなマリーにアマデウスは戒めるのだった。

 

「マリア。君のその長所を見るのは美点だが、同時に短所でもある」

 

「そんなこと貴方に言われるまでもありません!」

 

「あの…… そろそろ話をしてもよろしいでしょうか。マリーさん」

 

マシュがいったマリーさん。

この一言が、マリーの標的をジャンヌからマシュに移してしまうきっかけとなった。

 

「マリーさん!素晴らしい響きだわ!耳から飛び出る位に可愛いし!ねぇ、マシュさん。もう一度言って下さらない?」

 

「ええっと…… ミス・マリーやマドモアゼル・マリーでは駄目でしょうか?」

 

「駄目よ!全然可愛いくないわ!」

 

どうやらマリーさんと言うのが彼女の琴線に触れたらしく、マシュを激しく動揺させていた。

 

「マリーさん。いい響きよね、羊さんみたいで!」

 

「じゃあよろしく。マリーさん」

 

「はい!はいはいはい!マリーさんです。話の解る殿方ですね。もしかしておもてになったでしょう?」

 

「なぁ、お前ら。話に夢中になるのもいいが、そろそろ話をしようぜ」

 

こうしてマリーの暴走は、へルマンの一言で終わりを告げた。

 

「そうですね、まずマリーさんとアマデウスさんに私の目的を伝えなくては」

 

そしてマシュは二人に、自分達の目的を話し始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――― そう、フランスだけでなく。世界が焼却されてしまうなんて……」

 

「マスターが居ない状態で召喚されるから、どんな危険な音かと思ったら、予想以上だな」

 

「おまけに、向こうは強力なサーヴァントを従えているから質が悪い」

 

マシュに説明されたマリーとアマデウスは、事の重大さを正しく認識し、更には危機的状況である事を理解した。

 

「ヴラド三世にエリザベート・バートリー。一方は英雄として、一方は殺人鬼として歴史に名を残した英霊達です」

 

「へぇ~、あの二人そんな有名なんだ」

 

「先輩は口を閉じて下さい」

 

先程挙げた者の他に、まだ黒いジャンヌとセイバー、ライダーがいる…… いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。

 

「ルーラーの能力の一つ、真名看破は使えませんが、一つ分かった事があります。彼らは狂化が施されています」

 

『おそらく聖杯の力だろう。狂躁の伝承が無くとも狂化を施される代物なんて、それぐらいしか浮かばないし』

 

加えて彼らはステータスを上げる狂化が掛けられている。

これ程絶望的な状況はないだろう。

 

「これは私の推測なのですが…… マリーや私達が召喚されたのは、彼女達に対するカウンターなのではないでしょうか?」

 

「と言うと?」

 

「聖杯戦争が始まる前から聖杯の所有者が決まっていると言うバグに対するものと考えます。もしかしたら……」

 

ジャンヌの考えを聞いた優牙達は、ジャンヌが何を言いたいのかを理解し、口を揃えて言った。

 

「「「他にもサーヴァントが召喚されているかも!?」」」

 

そう、黒いジャンヌがどれだけのサーヴァントを召喚したかは分からないが、彼女に対するカウンターを聖杯が発動させているなら、まだ他にもサーヴァントが召喚されている可能性があるのだ。

 

「でも、また狂化された状態だったら?」

 

「それはあり得ません。何故なら私達がその例ですから!」

 

「君の根拠の無い自信は何処から湧いてくるんだい?マリア。まあ、もしそうだとしても急がなきゃ。黒いジャンヌ達に見つかる前に」

 

アマデウスの言い分に、皆が頷く。

たとえサーヴァントが召喚されていても、ジャンヌに見つかっては意味が無いのだ。

 

「まっ、今日は戦闘があったんだ。いい加減ユーガを休ませねぇとな」

 

「俺はまだ行けますよ?へルマンさん」

 

「アホ、休める時に休んどけ。体調管理も騎士に必要なものだ」

 

「そうですよ先輩。さっ、寝袋へどうぞ」

 

「分かった分かった。自分で行けるから」

 

しかし、もうすぐに日が落ちるため、今日はここまでにして、マシュは優牙を寝袋に連行していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日もどっぷり沈み、辺りが静かな闇に包まれた頃、優牙は目が覚めた。

 

「……… ザルバ」

 

『ああ、囲まれてるな』

 

妙な違和感を感じた優牙は、念のためザルバに問いかけると、ザルバは周囲を囲まれてる事を察知した。

 

寝袋から出て、マシュ達が警戒していた辺りに行くと既に戦闘になっていて、ワイバーンやスケルトン、ゾンビ等が襲ってきていた。

 

「マシュ!」

 

優牙は魔戒剣を抜きながら走り出し、飛び上がって此方に向かってくるワイバーンを斬り、マシュの後ろに着地した。

 

「先輩、すみません。直ぐに報せたかったのですが…」

 

「やあ、優牙。眠りを妨げてしまったかな?」

 

「へルマンさんは?」

 

「へルマンさんは薪を取りに行ってます」

 

優牙は状況を理解すると、直ぐに指示を飛ばし始めた。

 

「マシュ、ジャンヌは敵の迎撃!マリーさんとアマデウスは後方から援護だ!」

 

「分かりましたわ!先程見せられなかった私の戦いっぷり、見せて差し上げます!」

 

そうして優牙達は、へルマンを欠いたままエネミー達と戦い始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…… はぁ…… っ、これで最後か?」

 

「はい…… そのようです」

 

暫く戦いは続き、ようやく全てのエネミーを殲滅し終えた時には、優牙達は疲労困憊だった。

 

そんな時、最悪の報せが彼らに届く。

 

『不味いサーヴァント反応だ!』

 

『優牙。サーヴァントの邪気だ!真っ直ぐ此方に来るぞ!』

 

そんなロマンやザルバの報せと共に、森の奥から人影がやって来る。

 

やがて、月の光でその姿が顕になった時、そこにいたのは、黒いジャンヌにバーサーク・ライダーと呼ばれていた少女だった。

 

「……… こんばんわ。寂しい夜ね」

 

「生憎と、此方はさっきまでパーティだったけどね」

 

現れたライダーに、優牙は魔戒剣を構える。

ジャンヌは、一縷の望みを懸けて少女に問いかけた。

 

「貴女は、私と共に来ては貰えないのですか?」

 

「残念だけど、壊れた聖女に狂化を掛けられている私では貴方達と共には行けません。後ろから襲うかもしれないサーヴァントなんて危なっかしいでしょ?」

 

そして帰ってきたのはやはり拒否。

彼女とは、戦うしかないのだ。

 

「それに、私に残された僅かな理性が貴方達を試せと囁いている。本気で来ないと死ぬわよ?」

 

その瞬間、彼女から魔力が溢れ出る。

 

「我が真名はマルタ!そしていでよ我が宝具、『愛知らぬ哀しき竜(タラスク)』!」

 

そして彼女の呼び掛けに答えて、巨大な亀のような竜、タラスクが召喚された。

 

『聖女マルタ!悪竜を祈りで説き伏せたと言われた聖人にしてドラゴンライダーだ!』

 

「私ごときに勝てぬ様では、竜の魔女には勝てませんよ」

 

「ま、そりゃそうだわな……」

 

タラスクに乗ったマルタが、優牙達を挑発すると、森の中から二振りの短剣を携えたへルマンがやって来た。

 

「へルマンさん!」

 

「悪ぃな、ワイバーンやらなんやらに襲われちまってな。だがまぁ…… ここは俺に任せてくれないか?」

 

「へルマンさん一人で!? 無茶です!」

 

なんとへルマンは一人でマルタとタラスクを相手にすると言うのだ。

 

「駄目ですへルマンさん。皆で掛かれば……」

 

「そうは言っても、お前達ヘロヘロじゃないか」

 

へルマンの指摘通り、ジャンヌもマシュも戦い通しで動きがかなり鈍っていた。

 

それはサーヴァント同士の戦いにおいては致命的な差となってしまう。

 

「心配すんなって。負ける気はねぇからよ」

 

「…… わかりました」

 

「先輩!?」

 

「へルマンさんを信じよう」

 

そうしてへルマンは無言でマルタの前へと歩き出す。

 

「……… 貴方が真名が不明なサーヴァント。間近でみても、解らないわね」

 

「そうかい、なら教えてやろう。俺の名はへルマン・ルイス―――」

 

へルマンは二振りの短剣を逆手に持ち、頭上に掲げて交差し、振り回す。

 

すると銀色の光の円二つが出現して重なりあい、銀色の光がへルマンを照らし出す。

そしてその円から銀色の鎧が召喚され、へルマンを包み込んだ。

 

『――― 又の名を魔戒騎士、ゾロ!!!!』

 

その姿は正に銀狼。

優牙の牙狼よりも更に狼らしく、金色の瞳が輝き、二振りの短剣は鎖鎌状の魔戒剣、絶影剣に変化していた。

 

「あれは!? 先輩と同じ!」

 

「魔戒…… 騎士?」

 

オルレアンに二人目の騎士、絶影騎士 ゾロが月夜に颯爽と現れた。

 

「それが貴方の宝具ですか」

 

『そういうこった。ハアッ!!』

 

短い問答の後、へルマンは絶影剣をマルタに投擲するが……

 

「無駄よ。タラスクの甲羅には傷一つ付きません」

 

堅すぎるタラスクの甲羅を前に、敢えなく弾かれてしまう。

 

『なら何度でもだ!』

 

しかしへルマンは諦めず、腕から延びた鎖を巧みに操り、絶影剣をタラスクの甲羅に何度も当て続ける。

 

「鬱陶しいわ!」

 

流石にうんざりしたのか、マルタはタラスクに攻撃をし続けているへルマンに魔力弾を放つ。

 

『フッ、ハッ、デェヤァアァアァアッ!!!!』

 

しかしへルマンは熟練の騎士、慌てず絶影剣を操り、魔力弾を叩き落としたと同時に飛び上がって、マルタに強襲を掛ける。

 

「くっ、手強い…… あっ!」

 

堪らずタラスクから飛び降りるマルタだったが、狂化された影響か、自らの失策に舌を巻いた。

 

『ゴガァアァアアア!!!!』

 

「タラスク!?」

 

へルマンの真の狙いはマルタではなくタラスク。

その堅すぎる甲羅はあまりの衝撃に皹が入った。

 

「そんな!? タラスクの甲羅は鉄壁の筈…… まさか!!」

 

『その通り。俺が何の策もなくただ闇雲に剣を振るうと思ったか?』

 

堅すぎる甲羅に皹が入ったのは、単にへルマンの衝撃が重かっただけでなく、今までの攻撃を全て同じ箇所に加えていたのだ。

 

狼狽えるマルタを、金色の瞳が捉え、ゾロの口がニヤリと唸りを上げる。

 

「調子に乗るんじゃないわよ!――― 愛を知らぬ哀しき竜よ。星の様に!」

 

遂に狂化が回ったのか、完全に口調が変わったマルタは、タラスクの真名解放を使い、全力のタラスクをへルマンにぶつけようとする。

 

それを見たへルマンは、絶影剣を大木の高い場所に打ち付け、後ろに大きく飛び、パチンコの様な状態になる。

 

「『愛知らぬ哀しき竜(タラスク)』!!!!」

 

そしてタラスクは光を纏って、回転しながらへルマンに向けて放たれ――――

 

『……… ハッ!!』

 

―――― へルマンも己を弾丸に見立てて、迫りくるタラスクに突撃した。

 

ぶつかり合う二つの光、遂に激突するその瞬間―――

 

『カァアアアアアアアア!!!!!!!!』

 

―――― ゾロの兜の口が開き、まるで狼が吼える様な咆哮を挙げ、へルマンは絶影剣を突きだしてタラスクに対抗するようにドリル回転した。

 

そして………

 

 

ドオォォォン!!!!!!

 

 

「………… 嘘」

 

『足下がお留守だぜ!聖女様よ!』

 

 

ザンッ!!!!

 

 

タラスクは皹の入った甲羅を貫かれ、その先にいたマルタは、へルマンの絶影剣によって、十字に斬り裂かれた。




鉄の聖女は倒れた。

希望と言う名の灯りだけを残して。

それは文字通りの希望か、はたまた絶望に変わるのか?


次回 第五節 謝罪


おいおい、本当にこんな奴で大丈夫なのか?
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