GARO/Grand Order   作:響く黒雲

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堅陣

ティエールの街から丁度西側にある街に、ジャンヌ達は居た。

そこで彼女達は、銅の鎧を纏った聖人騎士と接触しといた。

 

「そこで止まってください。貴方達は何者ですか?」

 

聖人騎士が、腰に差した聖剣の柄に手を掛けながらジャンヌ達に問う。

 

「私はサーヴァント。クラスはライダー。真名をマリー・アントワネットと申します」

 

「俺はへルマン・ルイス。同じサーヴァントだが、クラスは無い」

 

マリー、へルマンが己の素性を明かすと、聖人騎士は聖剣から手を引いて、警戒を解く。

 

「…… どうやら狂化は施されていない様子。私と同じ、聖杯から召喚されたサーヴァントの様で」

 

「えぇ、そして此方の彼女が……」

 

マリーは聖人騎士にジャンヌを紹介しようとすると、聖人騎士はジャンヌの顔を見て、マリーを制した。

 

「成程、こちらがかの聖女…… ならば、名は明かさぬ方が宜しいですな。街の人々を混乱させてしまいます」

 

「すみません……」

 

「いえ、お気に為さらず」

 

竜の魔女である黒いジャンヌのせいで、聖女であるジャンヌまでもが、今やフランスの敵だ。

そんな状態で名を明かせば、街中の混乱は避けられないだろう。

 

「では自己紹介を、我が名はゲオルギウス。クラスはライダーです。所で、貴方達は何故ここに?」

 

「実は、仲間の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)が竜の魔女によって複数の呪いを掛けられている状態です」

 

「そいつを治すにはジャンヌちゃんだけでなく、ゲオルギウス、あんたの力が必要なんだ」

 

聖人騎士、ゲオルギウスはジャンヌ達の目的を聞いて、大体の事を把握して頷く。

 

「そうでしたか、大まかな事情は分かりました」

 

「はい。ですから、私達と共に来てくれませんか?」

 

「それはいいのですが、まずは街の人々を避難させてからでよろしいかな?」

 

ゲオルギウスは快く協力を約束してくれたが、彼の言う通り、街からは人々が避難を始めていた。

 

「この街は既に一度、竜の魔女の襲撃を受けています。一度目は私が追い払いましたが、次の襲撃には耐えられないでしょう」

 

「分かりました。そういう事でしたら、私達も手伝います」

 

「護衛位なら、俺達にも出来るからな」

 

「ありがたい!それでは早速、避難の誘導を」

 

「はい」

 

ゲオルギウスを筆頭に、ジャンヌ達は街の避難作業を手伝い始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンヌ達がゲオルギウスと接触した頃。

その街へ続く道を、一人の壮年の男が歩いていた。

 

「………」

 

男の名はラファエロ・ヴァンデラス、フランス軍で優牙達を助けた堅陣騎士 ガイアの魔戒騎士だ。

 

「…… 強大な邪気が街に向かっているな、急がねば……」

 

ジャンヌ達が避難作業をしている街に、強大な邪気が向かっている事を察知したラファエロは、街に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃優牙達も、ティエールの街から撤退し、ジャンヌ達がいる街へ向かおうとしていた。

 

『さて、向こうで聖ゲオルギウスが見つかったみたいだし、優牙君達も、ジャンヌ達と合流しよう』

 

「了解しました、ドクター。先輩」

 

「うん。…… 大丈夫か、ジーク」

 

優牙は未だ呪いの解けぬジークフリートを気遣い、ティエールの街に残ろうと提案しようとしていた。

 

しかし、そんな優牙の心情を察したのか、ジークフリートは合流の意思を見せた。

 

「気遣い感謝する、優牙。だが、俺は大丈夫だ。歩くだけならまだな。戦闘は、相変わらす君達に任せきりだが……」

 

「……… 分かった、それじゃあ行こう。嫌な予感もするしね」

 

「同感だ。僕も音楽家としての勘がそう言っている。早くマリア達と合流しよう」

 

優牙は、己の勘が鳴らす警鐘を不安に思いながら、ジャンヌ達と合流するためにティエールの街を出発した。

 

「ねぇ、あたし達どうする?」

 

「私は勿論、あの素敵な殿方に着いていきますわ。そう言うエリザベートさんは?」

 

「そうね…… あたしも暇だし、着いて行こうかな!」

 

一部余計な竜女(ドラゴンガール)を引き連れて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ジャンヌ達は、街の人々を殆ど避難し終えていたが、ワイバーンの襲撃を受けていた。

 

「くそ、相変わらず無尽蔵に湧いてくる奴等だな!」

 

へルマンが悪態を吐きながら、二刀の魔戒剣でワイバーンを斬り裂く。

 

「ワイバーンの数が何時もより多い…… 一体、これは?」

 

「……… 違います。彼女、竜の魔女が近づいています!」

 

「なんですと!?」

 

ゲオルギウスが何時もより多いワイバーンに疑問を持つが、ジャンヌはこの事態を察していた。

竜の魔女、黒いジャンヌ・ダルクが近づいてきているのだ。

 

「逃げましょうゲオルギウス!今の私達では、彼女には勝てません!」

 

「…… それは、出来ません」

 

「何故!」

 

未だ戦力の揃い切らない自分達では、現状黒いジャンヌに対抗する手段はない。

一刻も早く逃げなければ、今まで優牙達としてきたことが無駄になってしまうのだ。

 

だからこそジャンヌは逃げる事を選んだのだが、ゲオルギウスはそれを良しとしなかった。

 

「まだ、避難しきれていない人々が居ます。その人達を置いて、私は逃げられません」

 

「ゲオルギウス……」

 

「私は――― この街の市長から民を頼まれたのです。その約束を破って生き延びるとは、何が聖人か!」

 

「……… 本気、なんだな?」

 

「ええ、これが私の、聖人としての生き方です」

 

聖人として、また一人の人間としてした約束を、ゲオルギウスは破りたくはなかった。

破ってしまえば英雄として、聖人として何かを失なう事が分かっていたから。

 

「あらあら、ゲオルギウス様は頭と身だけでなく、お髭も堅いのね」

 

「なんですと?」

 

「そんな所がたいへんキュートで感動しました。ですので、貴方のその役目、私に譲ってくれないかしら?」

 

しかし、そこでマリーがゲオルギウスの役割を変わって、この街を守ると言い出したのだ。

 

「しかしそれでは王妃が……!」

 

「待って、ねえ、待ってよ、マリー!」

 

当然待ったを掛けるのはこの二人。

 

当事者のゲオルギウスと、マリーと友達になったジャンヌだ。

 

「なら一緒に戦いましょう!そうすれば、せめて時間は稼げる筈……!」

 

「いいえ、駄目よジャンヌ。貴女とゲオルギウス様が居なくては、ジークフリートに掛けられた呪いは解けません」

 

「でも……」

 

ジャンヌにとって掛け替えのない友達になったマリーを死なせたくは無い。

しかし、自分の使命も果たさねばならない。

ジャンヌはそんな板挟みを感じていた。

 

「私はフランスの女王。民を守るのは私の使命。それは未来も現在も、そして過去でも変わらない」

 

「マリー……」

 

「行くぞ、ジャンヌちゃん」

 

「へルマンさん!」

 

「これは、マリーちゃんの心が決めた事だ。心が決めた事には誰も逆らえない」

 

そう言ってへルマンはマリーから背を向けた。

 

「へルマン様の言う通りよジャンヌ。だから行って…… あと、アマデウスにごめんなさいって言って置いてくれるかしら?」

 

「…… 分かった、マリー。待ってます」

 

「ええ、また後で」

 

「では王妃、感謝の言葉は後程」

 

「任せたぜ、マリーちゃん」

 

そしてジャンヌ達は優牙と合流し、ジークフリートの呪いを解くために、街を出た。

ただ一人、マリーを残して……

 

「さて、居るんでしょう?サンソン」

 

ジャンヌ達が去った街でマリーが呟くと、影から、優牙達を襲撃したサンソンが現れる。

 

「やあ、マリー。会えて嬉しいよ。また君の首をギロチンで斬る時がきた。君は僕に処刑される資格があり、僕は君を処刑する資格があるんだから」

 

「……… えぇ~と? サンソン、貴方が素晴らしい処刑人だと言うのは理解しているけれど、処刑に資格なんてあるのかしら?」

 

狂化された影響か、サンソンは訳の分からない事を口にし、マリーを混乱させた。

 

「あるさ。僕はその為に腕を上げたんだ。人を処刑し続けてね。僕の処刑は既に快楽の域にまで到達している」

 

「ごめんなさい。倒錯主義の人はもう間に合っているの」

 

「知っているさ、だからこそ、僕が君を処刑するんだ!」

 

言っている事がまるで噛み合っていなかったが、サンソンはギロチンを構えてマリーに飛びかかり、マリーもそれに応戦した。

 

ここに、王妃の孤独な戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度その頃優牙達は、マリーが孤軍奮闘している街に向かって猛進撃していた。

 

「今ならまだ間に合う筈です」

 

「だな、俺のせいで彼女達を失ってしまっては大損だ」

 

「うん。兎に角、急ごう」

 

その時、ロマンから通信が入る。

 

『皆、ワイバーンだ。真っ直ぐこっちに向かってくる!』

 

その通信と同時に、優牙達の目の前にワイバーンが現れ、行く手を遮った。

 

「迎撃します!先輩!」

 

「ああ!ジークは後ろに!さあワイバーン共…… そこを退けぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

優牙は魔戒剣を抜き放ち、マシュと共にワイバーンに斬りかかっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはっ!? 何故だ、何故僕が打ち負ける!?」

 

マリーとサンソンの街での決闘は、サンソンと圧倒的に愛称の悪い筈のマリーが勝利を納めた。

 

「君に気持ちよくギロチンを味わって貰うために、僕は何人も処刑したんだ!それなのに…… 何故……」

 

何故負けたのか分かっていないサンソンに、マリーは優しく語りかける。

 

「そこよ、サンソン。貴方は確かに誇り高い処刑人だった。けれど処刑人と殺人者では本質が全く異なる。貴方が罪の無い人々を殺す度に、貴方の処刑人としての救う刃が鈍っていったのよ」

 

「そんな…… マリー、マリア!僕は、君を前よりもっと巧く処刑しなくてはならないのに…… そうでなくては僕は、君に許されない……」

 

マリーの語るサンソンの敗因。

それは生前のサンソンの在り方とは、180度違うものであり、それを自覚してしまったサンソンは地面に崩れ落ちた。

 

「―――― おバカね、そして可愛い人。いいのよサンソン。貴方は私に許される必要なんてない。だって私は、貴方の事をこれっぽっちも憎んでなどいないのだから」

 

「――― あぁ、ああ!」

 

そうしてサンソンは涙を流して消えた。

しかし霊核が破壊された訳ではなく、また金色の粒子も出ていなかった。

 

おそらく精神的に耐えられなくなったサンソンは霊体化してこの場を離脱したのだろう。

 

「さて、随分と遅い到着ね?竜の魔女さん」

 

「――― おや、愚かな私は逃げましたか」

 

サンソンの居なくなった街で、マリーは空に呼び掛ける。

すると空が陰り、悪竜ファヴニールに乗った竜の魔女、黒いジャンヌ・ダルクが現れた。

 

「逃げた?ノン、違うわ。彼女は希望を届けに行ったのよ」

 

「たかだか、サーヴァント一騎程度で?馬鹿馬鹿しい」

 

黒いジャンヌはマリーを見下し、嘲笑するが、その表情を憎悪にまみれたものに変えていく。

 

「馬鹿馬鹿しいと言えば貴女もです。愚かな私と共に逃げればいいものの、そんなに民を守る事に酔いしれたいのですか?貴女を嘲笑い、そして処刑した民達を!」

 

「あら、魔女と言うのはそんな事も分からないのかしら?」

 

そんな黒いジャンヌに、マリーは何を当たり前の事を、と言わんばかりの雰囲気で告げる。

 

「確かに私は、民の手によって処刑されました。ですが後悔も恨みもありません。民なくして国はなく、国になくして民はない。それらを守る事こそが、私の役割」

 

そしてマリーは、自身の魔力を解き放ち、宝具を発動させた。

 

「民を守る事こそが王妃の務め、何時だってフランス万歳(ウィヴ・ラ・フランス)!――― 宝具解放。『愛すべき輝きは永遠に(クリスタル・パレス)』!!!!」

 

マリーの回りに、正にクリスタルのごとき城壁が顕現する。

 

「憧れの聖女の為に…… いえ、友達のジャンヌの為にこの命を使えるのなら、こんなに嬉しい事はないわ!」

 

「戯れ言を!そのちんけなガラスの城ごと燃え尽きろ!ファヴニール!」

 

黒いジャンヌの号令にファヴニールは、口に炎を溜め込んで、マリーに放った。

 

「ありがとうジャンヌ、私の友達で居てくれて。約束は守れそうにないけれど、これが私の生き様――― 誰かの為に命を捧げる、フランス王妃の使命!」

 

そうして、ファヴニールの業火がマリーのクリスタル・パレスごと呑み込――――

 

「――― ならば、盟友との約束。果たす為に生き残らねばなるまい、王妃よ」

 

「―― え?」

 

―――― まれる事はなかった。

何故ならマリーの前には壮年の騎士、ラファエロが立っており、その剣の一振りでファヴニールの業火を打ち消したのだった。

 

「何!? ファヴニールの炎を!! 貴様、サーヴァントか!…… そんな!? 真名が、見えない!?」

 

「その程度の炎、業火とは言わん。私はもっと激しい炎を知っている」

 

「貴様、何者だ!」

 

不測の事態に取り乱す黒いジャンヌが、ラファエロに怒鳴り散らすが、ラファエロはその問いに敢えて答えず、剣を空に掲げた。

 

「ムゥン!」

 

そして大振りに剣を円状に振り回すと、赤紫の円から光が溢れ、剣を振り下ろすと同時に鎧が召喚され、ラファエロの体に纏われた。

 

 

―――― ズン!

 

 

纏われた衝撃で、地面が陥没し砕け散る。

赤紫の鎧に所々に金銀の装飾、三つの水晶の紋章、長大な両手剣に重厚な装甲。

 

そして青いマントを靡かせ、橙の瞳を輝かせた魔戒騎士、堅陣騎士 ガイアが薔薇の王妃の危機に現れた。

 

『堅陣騎士ガイア…… 参る!』

 

「貴方がフランス軍に加担していた騎士ですか…… その程度のこけおどし、ファヴニールの前では!」

 

「ガァアァアァアァアアアッ!!!!!!」

 

咆哮と共にファヴニールが、ラファエロを潰そうとその巨大な足を上げるが……

 

『ムン!』

 

 

ズドン!

 

 

「ガァアァアッ!?」

 

ラファエロは、堅陣剣ではファヴニールの足を弾き返し、転倒させた。

 

「何をしているのですファヴニール!あのような者、さっさと灰にしてしまいなさい!」

 

ジャンヌの怒号に、再び口に炎を溜め込んでいくファヴニールだったが、ラファエロはただ見ているだけでなく、堅陣剣を地面に擦り付けて回り始める。

 

『オオオオオオッ!!』

 

やがて堅陣剣に緑色の魔導火が灯り、烈火となって迸る。

 

「ガァアァアァアァアアアッ!!!!!!」

 

『ハアァアァァアアアッ!!!!!!』

 

そしてファヴニールが再び業火を吐き出すが、ラファエロが堅陣剣を振るうと、魔導火が業火を焼き尽くして呑み込み、ファヴニールに直撃した。

 

「ガァアァアァアァアアアッ!!!??」

 

「ファヴニール!? バカな!? 最強の竜種が!!!?」

 

『我が魔界の炎は物質全てを焼き尽くす。さあ、竜の魔女よ、まだやるか?』

 

ファヴニールが競り負けた事実に黒いジャンヌは驚きを隠せなかった。

そんなジャンヌを、ガイアの橙色の瞳が射抜く。

 

「くっ、今ファヴニールを失なう訳にはいかない…… 覚えて置きなさい!」

 

そう言ってジャンヌは、ファヴニールと共にオルレアンの城に飛び去っていった。

 

それを見届けたラファエロは、ガイアの鎧を解き、魔界に返還した。

 

「ありがとうございました、名も知らぬ騎士様。とてもお強いのね」

 

「何、魔戒騎士ならあの程度は容易い。さて王妃、貴女の盟友の元に合流しましょう。おそらく、そこに黄金騎士を継ぐものも居る筈……」

 

「優牙さんの事かしら?分かりましたわ。所で、お名前を伺ってもよろしいかしら?」

 

「これは失礼した。我が名はラファエロ・ヴァンデラス。魔戒騎士だ」

 

そうしてラファエロと、ラファエロに救われたマリーは、優牙達と合流するために、街を離れた。




出来るようになる事が急に増えると、人ってのは何をしていいのか分からなくなる。

どうやら盾のお嬢ちゃんも、そんな悩みを抱えているようだぜ?


次回 第九節 自由


忘れるなお嬢ちゃん。お前さんには、黄金騎士がついている事をなぁ!
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