GARO/Grand Order   作:響く黒雲

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遠征

「……… 大きな山ですね」

 

「噴火とかしないだろうな……」

 

『その点は大丈夫だよ。その時代でエトナ火山が噴火した記録は無いからね』

 

優牙とマシュは、現在ローマを南に下った所にそびえ立つエトナ火山に来ていた。

 

何故こうなったかと言うと、今朝まで遡る。

 

 

 

 

 

『皇帝陛下、実は頼みたい事が御座いまして』

 

「むっ?なんだ?申してみよ。余は寛大故、大抵の事は許すぞ?」

 

宴の翌日、宴の席であれだけ唄って踊ったにも関わらず、ピンピンしているネロにロマンはある頼み事をしていた。

 

『はい。優牙君とマシュをエトナ火山に向かわせたいのです』

 

「エトナとな?あれには連合帝国に関わる何かがあるのか?」

 

「違いますネロ陛下。エトナには強力な霊脈があります。そこで私は霊脈の力を安定させ、力を引き出したいのです」

 

端的に言えば、オルレアンの時のように霊脈に召喚サークルを設置し、カルデアからの追加物資を受け取ろうと言うのだ。

 

「エトナか…… そう言えば宮廷魔術師もよくエトナには赴いていたな。其奴が居れば、姿の見えぬ魔術師殿と話が合ったかもしれぬ」

 

『エトナはこの時代の魔術師にとっても重要な場所だったんだね』

 

「……… もっとも、その者は伯父上の手に掛かって殺されてしまったがな……」

 

ネロは、とても悲しそうな顔でその時の事を語った。

 

「余もよく魔術を見せてもらったものだ…… おまけに死を克服したとも言っていたが…… 伯父上の凶刃を前にあっさりと死んでしまった。死を克服した筈の魔術師が……」

 

「ネロさん……」

 

「……… 奴等がいつ襲ってくるか分からぬ故、心して行くのだ二人共。余は一緒には行けぬが、ガリアへの遠征準備を整えておく。そなた達が戻ったら出発だ」

 

ここまでが、優牙達がエトナ火山に向かった経緯である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても…… ここはゴーストやらスケルトンやらが多い…… なっ!」

 

『シャアァァァァァ……!!』

 

優牙は山を登る最中、脇道から飛び出してきたゴーストを魔戒剣で斬り裂いた。

 

「霊脈が近いせいで、悪い物が紛れ込んでいるのでしょうか?」

 

『お嬢ちゃん。いい機会だから覚えておくといい。霊脈と言うのは気やら魔力何かの源泉だが、同時に邪気をも取り込んでいる事をな』

 

「そうなんですか?」

 

『魔戒騎士の使命の一つにエレメント浄化と言うものがある。ゲートを浄化し、ホラーが現れないようにする作業だ。大抵のゲートは霊脈の流れに添って存在している』

 

「だから俺達はエレメントを探す時は、霊脈の流れに添って探すんだ」

 

マシュに魔戒騎士の使命について教えていると、目的地の霊脈に辿り着いた。

 

「それでは、召喚サークルを設置します」

 

霊脈の中心に盾を置くと、カルデアの召喚ルームに接続し、通信状況が良好になった。

 

『よし、これで霊脈の確保は完了だ。悪霊系エネミーに気を付けながらローマに戻ろう』

 

「了解。行こう、マシュ」

 

「はい。ネロさんが待っています」

 

そうして二人はネロの待つローマに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!優牙提督にマシュ。よくぞ戻った。遠征の準備は出来ておる。あとはそなた達が乗る馬を手配するだけだぞ」

 

ローマに戻ると、ネロは非常にやる気に満ちた表情で、軍勢を整えていた。

 

「そこまでしてくれなくていいのに」

 

「何を言うか、提督ともあろう者に馬の一つでも無いのは滑稽であろう?」

 

「先輩、ここからガリアまではエトナ火山よりも距離があります。お言葉に甘えて、馬を貰いましょう?」

 

「うーん…… 二人がそこまで言うなら、頼むよ」

 

優牙は自分で歩いた方が速いし、戦闘で有利かと思いもしたが、今回は前回のオルレアンの戦闘を越える戦争になるので、体力消費は極力避けたかった。

 

優牙はしぶしぶ、ネロに馬を用意してもらった。

 

「うむ!では参るぞ!我がローマ精鋭の兵士達よ!これより、皇帝ネロ・クラウディウス自ら、ガリア攻略戦線に赴く!」

 

「「「「ウオオオオオオオオオ!!!!!!」」」」

 

ネロはローマの軍勢を引き連れて、優牙とマシュはその戦列に加わる形で参加したガリア遠征は、ネロのカリスマ溢れる演説から始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝ネロ・クラウディウス率いるガリア遠征軍は、ローマから北上し、ガリアで戦線を維持している部隊に合流するために、森の中を突き進んでいた。

 

「ほほう。優牙は指揮や武術だけでなく、乗馬の心得も有ったのだな!」

 

「驚きです。先輩はカルデアに来る前はアウトドア派だったのですね」

 

「いや、魔戒騎士の修行の一環で乗馬があっただけで、実際に馬で戦うのは初めてで、俺は拳で戦うから結局馬から降りるけど」

 

そう言うと優牙は拳をバチンと打ち付ける。

 

「フォウ?」

 

「フォウさんが「さっきみたいに魔戒剣は使わないのか?」と聞いています」

 

「うむ、それは余も思った。何故優牙は剣ではなく拳で戦うのだ?」

 

「それは……」

 

優牙は少し言い淀んだが、マシュはこれからも一緒に戦うパートナーだし、ネロもこれから一緒に戦う仲間だ。

 

理解はされなくとも、理由だけでも話して措こうと、優牙は遥かなる古から続く魔戒騎士の掟を話した。

 

「掟なんだ……」

 

「掟、ですか?」

 

「そうだ。古から魔獣を狩り、人々を護ってきた我ら魔戒騎士は、守るべき者である人間を傷つけてはならない。…… だから、俺は対人戦闘で剣は使わない。本当なら、拳で戦う事すら禁じられているけど、今回は事案が事案だ。そうも言ってられないのさ」

 

「魔戒騎士とは、まだるっこしいのだな。ちなみに破ったらどうなるのだ?」

 

ネロが好奇心で聞いたこの質問、マシュは聞かなければ良かったと後悔することになる。

 

「寿命を数十年削られるか、騎士の称号と鎧を剥奪される」

 

「なんと!?」

 

「寿命を!? 先輩!どうして今まで言ってくれなかったんですか!?」

 

「言う必要が無かったからな」

 

驚きに満ちた声で優牙に叫ぶマシュだが、優牙はその事をなんとも思っていない様に答える。

 

「そんな…… 先輩はそれでいいんですか!?」

 

「もう決めた事だからね。このグランドオーダーを受けた時に……」

 

「先輩……」

 

「フォーウ……?」

 

「むっ?そなた達、もめている所済まぬが、そろそろ駐屯地に着くぞ」

 

ネロがそう言う中、マシュはある決意をしていた。

例えそれが優牙の道を邪魔するとしても、彼女はもう絶対に優牙に戦わせないと誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガリア遠征駐屯軍の諸君!! 拝聴を赦す。たった今、ローマ本隊が合流した!諸君らの働き、誠に感謝する!! 今日は遠征軍も本隊も存分に休んでくれ!!」

 

駐屯地に着いたネロは、皇帝としてまず兵士達に労いの言葉を掛ける。

 

すると、疲れていた兵士達に活気が戻り、直ぐに大騒ぎになった。

 

「や、ネロ・クラウディウス皇帝陛下。随分速い到着だったね」

 

「うむ、ここまでの戦線維持、よくぞやってくれた」

 

すると、ネロは盾と剣を持ち、軽装でいる女性と何やら会話していた。

 

女性が此方に気づくと、ニコニコしながら此方によってきた。

 

「へぇー、君が噂の提督? 戦争は初めてっぽいけど、そっちの盾の同様に結構やるみたいだね」

 

『優牙。その女と後ろの男はサーヴァントだぞ』

 

「分かった」

 

「私の名前はブーディカ」

 

女性サーヴァント、ブーディカの名前を聞いたマシュは、心辺りが合ったのか、訝しげな表情をする。

 

「ブーディカ?」

 

「そ、元ブリタニアの女王だよ。そっちのおっきいのが……」

 

ブーディカがそう言って後ろを向くと――――

 

「圧政に反逆する同士よ。私は君達を抱擁する」

 

―――― まごうことなき筋肉(マッスル)がそこにいた。

 

「(フォォォォォォウゥゥゥゥゥゥ!?)」

 

『間違いなく、彼は筋肉(マッスル)…… じゃなかった!? バーサーカーのサーヴァントだよ!』

 

「わぁ… スパルタクスがこんなに喜ぶなんて初めて、ううん、喜んで襲いかからないなんて初めてだよ」

 

どうやら目の前にいる灰色筋肉達磨はスパルタクスと言うらしく、バーサーカーであり、清姫と同じく言語を話すが、カリギュラと同じく、意味のある言語を話していなかった。

 

「さあ、声高らかに汝らの名を宣言するとき。どうか、反逆の同士に幸あらんことを」

 

「え? え?な、なんて聞かれているのでしょうか?」

 

『任せろ。こう言う言い回しは過去にローマを守護していた黄金騎士で経験済みだ。どうやらこいつは名前を聞いているようだぞ?』

 

「あっ、そうなんですか。私はマシュ・キリエライトです」

 

「俺は優牙だ」

 

ニッコリと笑みを浮かべながら名前を聞くスパルタクスに混乱しながらも、二人は何とか自己紹介を終えた。

 

「歓迎しよう。反逆の同士よ」

 

「よろしく、だって。それにしても凄い子達を拾ってきたねぇ、ネロ公は」

 

「……… ん?何か言ったか?済まぬが余は頭が痛い。少し床に着く故、戦況を聞かせてやってくれ」

 

ネロは、ボーっとしたあと、頭痛がすると言って自分のテントに入っていった。

 

「さて、戦況を説明する前に、ちょっと腕試しをさせて貰ってもいいかな?」

 

「腕試し…… ですか?」

 

「そ、頼りになる加勢か、それともただの援軍か。それを確かめたいの」

 

そう言うと、ブーディカとスパルタクスは剣を抜く。

 

『ええっ!? やっぱりブーディカも剣で語る系の英霊!?』

 

「アハハ!! 分かってるじゃん。我が真名はブーディカ、クラスはライダー!私の戦車はとっっっても堅いよ!」

 

「行くぞ!反逆者の卵よ!我が愛は爆発する!」

 

名乗り口上を告げ、ブーディカとスパルタクスは突撃してくる。

 

「仕方な――「いえ、先輩は手を出さないで下さい」――― マシュ?」

 

苦笑いしながら魔戒剣を抜こうとする優牙を差し置いて、マシュは優牙に手を出すなと言って二人に向かっていった。

 

「はぁあああああっ!!!!」

 

「ゴメンね、疲れてるのに。終わったらブリタニアの料理作って上げるから!」

 

「良いぞ!共に汗を流そう。それが反逆の一滴となる!」

 

マシュは盾を巧みに操り、ブーディカとスパルタクスを寄せ付けないような戦いをしていたが、ブーディカが盾で防ぎ、カウンターでスパルタクスがマシュに斬りかかる。

 

元々二対一と言う状況下、マシュが不利になるのに時間は掛からなかった。

 

「きゃあっ!?」

 

「うーん…… マシュちゃん、なんだが無理してない?」

 

「どうした?反逆者の卵よ。汝の力はその程度か」

 

加えてマシュの動きが何時もより可笑しい。

何か焦っているようにも感じる。

 

「まだ、まだ!」

 

「ここまでだ。マシュ」

 

「ッ!? 駄目です先輩!ここは私が!」

 

「これ以上、傷つくマシュを見たくないんだ」

 

そう言うと優牙は魔戒剣を抜き、天に翳して円を描く。

 

剣が描いた円の軌道が光のゲートになり、円が砕けて金色の光が優牙を照らし出し、牙狼の鎧が召喚されて優牙に纏われた。

 

『ハアァァァァ…… ハアッ!!』

 

「凄い…… 少し見くびってたかな?君の事」

 

「おおっ!これぞ正しく、究極の反逆の狼煙!!!!」

 

牙狼の鎧の威光に圧倒された二人は鎧に魅入ってしまい、その隙を優牙に突かれた。

 

『ハアッ!!』

 

「ゴハッ!?」

 

「キャッ!?」

 

牙狼剣を鞘に納めたまま、スパルタクスを突き飛ばし、ブーディカを刀身の腹で殴り付けた。

 

そして鎧を解除し、魔戒剣をブーディカに突きつける。

 

「これでいいかな?」

 

「はふ… 予想以上だよ二人共。これなら安心できる…… ねっ、スパルタクス」

 

「新たなる反逆の輝き…… したかと見届けた」

 

これで二人は優牙とマシュの事を認めてくれた訳だが、この結果にマシュは納得していなかった。

 

「先輩! どうして手を出したんですか!? 出さないで下さいと言ったじゃないですか!」

 

「あれ以上はマシュが危険だった」

 

「私はデミ・サーヴァントだからどうなろうと関係無いです!私は先輩を守る事が使命なんです!先輩は戦ったら…!!」

 

 

パチン!!

 

 

最後まで言う事なく、マシュは優牙に頬を叩かれた。

 

「…… 先輩」

 

「マシュ、守る人間がどうなろうと関係無いだなんて言うな。俺はそんな奴に守られたくない。分かってくれ、俺はマシュには傷ついてほしく無いんだ」

 

「分かって無いのは先輩の方じゃないですか!」

 

「マシュ!?」

 

「フォウ!!」

 

マシュは優牙にそう叫んで森の中に入っていった。

優牙の牙狼と同じ、紫の瞳から涙を流して……

 

「くそっ!」

 

「待って、ここは私に任せて」

 

「ブーディカさん…」

 

優牙はマシュを追いかけようとしたが、ブーディカに止められた。

 

「喧嘩した時は、直ぐに追いかけちゃ駄目。時間を置いてちゃんと謝ること、いい?」

 

「…… はい」

 

「よろしい♪ じゃ、行ってくるね」

 

ブーディカはそう言って優牙の頭を撫でた後、マシュを追いかけて森の中に入った。

 

森に入ったブーディカを見た優牙は、その場で座り込む。

 

「……… はぁ」

 

『お前さんらしくもないな』

 

「分かってるよ…… クソッ、優しい魔戒騎士になるって決めたのに…… 女の子一人の笑顔すら守れないなんて……」

 

「今は安息の時、思案するのだ、同士よ」

 

『まだ時間はある。ゆっくり考えればいい。だそうだ』

 

「…… ありがと、スパルタクス」

 

優牙はスパルタクスに慰められながら、マシュにどう謝るかを考える事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ブーディカはマシュを探して森の中を歩いていたが、マシュは大きな木の下に座り込んでいて、直ぐに見つかった。

 

「見ーつけた」

 

「ブーディカさん……」

 

「さっ、戻ろ?彼が心配してるよ」

 

「分かっているんです…… 私の我が儘だと言うことは……」

 

その時、マシュはポツリポツリと話し始めた。

 

「先輩が人と戦うと、寿命を削られてしまうかもしれないって…… 私それを聞いた時、申し訳なくなりました。私が弱いから先輩は戦って…… それがきっかけで先輩の命を削るかもしれないと思ったら、私耐えられなくて……」

 

「そっか…… それでさっきあんなに無理していたんだ」

 

「ブーディカさん。私、間違っているのでしょうか!?先輩に生きていて欲しい。だから守りたいと思うのは…… 間違っているのでしょうか……」

 

マシュの瞳から、ポタポタと涙が溢れる。

ブーディカはそんなマシュの隣に座り、マシュの頭を優しく抱き寄せた。

 

「あっ…」

 

「そうだよね。マシュちゃんは間違ってないよ?でもね、彼が怒ったのは其所じゃないと思うんだ」

 

「やっぱり…… 私が弱いから……」

 

「違う違う!もう一度彼の言葉を思い出してみて?」

 

「えっ?」

 

マシュは先程優牙が言った言葉を思い出す。

 

 

 

 

――――― 『マシュ、守る人間がどうなろうと関係無いだなんて言うな。俺はそんな奴に守られたくない』

 

 

 

 

「あっ…」

 

「それにマシュちゃんは「私がどうなろうと関係無い」って言ったよね?彼が怒ったのは其所じゃないかなぁ~」

 

「でも、どうして……」

 

マシュは優牙が自分が戦うのを邪魔されたから怒ったと思っていたが、実際はマシュが自らを省みない発言をしたから怒ったのだ。

 

「それは、彼も私達と同じで守る者だから。マシュちゃんが彼を守りたいように、彼も、マシュちゃんが大好きで守りたいから言ったんだと思う」

 

再びマシュの瞳に涙が流れた。

マシュは深く自分を恥じた、自らの至らなさのせいで、守る対象である筈の優牙に世話を掛けてしまった事を……

 

「いいんでしょうか……? 私なんかが、先輩に守られて…?」

 

「いいんだよ。彼がマシュちゃんを守って、マシュちゃんが彼を守る。そうやって二人で強くなればいいんだ。難しい事なんて何もないよ」

 

「ブーディカさん……」

 

「だから、今は泣きな?彼にまた笑顔を見せられるように……」

 

「うぅ……… うわあああああん!!!!」

 

そうやって我慢の限界がきたマシュは、ブーディカの懐に顔を埋めて泣きじゃくる。

 

ブーディカはそんなマシュを、聖母の様な眼差しで見つめ、マシュが泣き止むまで頭を撫でるのだった……




お前達ゲームは好きか?

ゲームにはイカサマが付き物だ。

今度の相手は、気を許すと直ぐに丸め込まれるぞ?


次回 第四節 攻略


騙されるなよ? 俺様は化かされたくないからな。
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