GARO/Grand Order   作:響く黒雲

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黒化

マシュが盾を触媒にして霊脈に設置すると、霊力がその場に溢れだし、青白く光輝く空間を形成した。

 

「これは……! カルデアの召喚ルームと同じです」

 

マシュが形成された空間に驚いていると、ロマンからの通信が甦る。

霊力を安定させた事により、カルデアとの通信が復旧したらしい。

 

『シーキュー、シーキュー。良かった繋がった!ご苦労様、二人共。お陰で通信が回復した―――』

 

「ロマン!? これはどういうこと!? 何故医療セクションのトップである貴方が管制室にいるの!レフ、レフはどうしたのよ!! レフを出しなさい!!」

 

『―――― うひゃあぁあっ!?』

 

ロマンが二人に労いの言葉をかけていると、突然オルガマリーが爆発、そのままロマンを叱りだした。

 

大方、別の人間が出ると思っていた所に、自分が待機を命じたロマンが出るとは思っていなかったのだろう。

 

ロマンもロマンで、突然オルガマリーが出てすっとんきょうな声を上げて驚いていた。

 

『しょ、所長!? 嘘っ!? 何でそこにいんの!? てか、あの爆発で無傷!? どんだけ!?』

 

「どういう意味ですか!! …… それより、何故貴方がそこにいるの!? ロマン!」

 

『―――― 人手不足です。現在、カルデアで生き残っているのは二十人足らず。その中で僕より上の階級の人間が残っていないんですよ』

 

ここに来てようやく手に入ったカルデアの情報は最悪なものだった。

生き残り僅か二十人…… そんな状況で一体何が出来るのか、オルガマリーは躍起になって尋ねた。

 

「そんな…… レフも? な、なら、他のマスター候補者達はどうしたのよ!?」

 

『現在、47人。全員が危篤状態です…… 何人かは助かるかもしれませんが…… 設備と人員の不足のせいで、全員は助けられません』

 

そこに更に舞い込んだ、絶望の情報。

それを聞いた途端、オルガマリーは顔を青くし、冷や汗をかき始める。

 

そして、普通の人なら考えられない指示をロマンに下した。

 

「なら今すぐコフィンの機能で冷凍保存しなさい!」

 

『!そ、そうか!! その手があった!直ぐに手配します!!』

 

そこで一時的に通信が切れた。

おそらく先程オルガマリーが出した命令をこなすためだろう。

 

「本人の許可なしに冷凍処置をするのは立派な犯罪です。所長は人命を優先したのですね」

 

マシュはオルガマリーの采配に驚いていたが、尊敬の眼差しで見つめていた。

しかし当の本人はというと……

 

「冗談じゃないわよ……! お願いだから死なないでよ…! 背負える訳無いじゃない…… 47人の命なんて……!?」

 

未だに顔を青くしながら、責任の重責に囚われていた。

人の命を預かる立場だと理解していても、実際にそんな事になるとは思っていなかったのだろう。

 

「……… 背負う必要はない……」

 

「えっ……?」

 

そこで今まで黙っていた優牙がようやく口を開いた。

 

「背負う必要なんて無いんですよ、所長。人の命なんて簡単に背負っちゃいけない。人間っていうのは、一度背負ったら死ぬまで捨てられない生き物なんです。だから、背負う必要ないものまで、背負う事は無いんですよ」

 

優牙なりの慰めだったのか、それとも優牙自身が感じた事なのかは分からない。

しかし、それは結果的にオルガマリーの精神的負担を軽くさせていた。

 

「そ、そんな事分かってるわよ!! 貴方達は所詮、私の道具なんですから!」

 

「はいはい」

 

「なによ!そのしょうがない人みたいな顔は!」

 

『所長!手配完了しまし―― あれ?二人で何楽しそうにしてるの?』

 

再びロマンからの通信が入る。

 

「なんでもありません!…… それよりロマン。現在のカルデアの状況を報告してちょうだい」

 

『分かりました。今、カルデアでは―――』

 

そして、ロマンによる現在のカルデアの状況について説明が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――― と、これが現在のカルデアの状況です。今はカルデアスとシバの維持、そして故障してしまったレイシフトの修理を最優先にしています』

 

「当然ね。私でもその判断をしていたでしょう。したかないわ。ロマニ・アーキマン、貴方に私が戻るまでカルデアを一任します」

 

ロマンによるカルデアの状況説明が終わったあと、改めてカルデアの指揮をロマンに委ねられた。

レイシフトが起動しない以上は、この異質な冬木に留まるしかなく、当然の処置だろう。

 

「レイシフトの修理が終わるまで、私達は特異点Fの探索を続けます」

 

『うえぇぇっ!? 所長本気ですか!? チキンなのに!?』

 

「貴方は何時も一言余計ね!? 」

 

「だ、大丈夫ですよドクター!ここのエネミーは比較的危険度の低めのしか居ませんし!」

 

「そ、そうよ!デミ・サーヴァント化したマシュがいるし大丈夫よ! という訳だから、優牙。貴方にも付き合って貰うわよ!」

 

「せめて確認ぐらいは取りましょうよ所長…… ま、行きますけどね。いざって時は守りますから」

 

こうして強引に探索に付き合わされる事になった優牙は、二人と共にこの変わり果ててしまった冬木を探索する事になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから三人は市街地、教会、漁港と探索し、今は外れにある大橋に向かおうとしていた。

 

「それにしても…… 見事に何も無いですね、先輩」

 

「うん。何かあっても、こんなのしか出てこないしなッ!!」

 

 

ズバッ!!

 

 

『キシャアァァァ……!』

 

優牙は、飛び掛かってきたスケルトンを一刀両断し、スケルトンを消滅させた。

 

「お見事です。先輩」

 

「もう、どれだけ探しても見つかるのは化け物ばかりじゃない!?」

 

「言い出しっぺは所長でしょうが……」

 

「お黙りなさい!喋る暇があったら早く何か見つけなさい!」

 

「はいはい…」

 

結果的に何処に行っても人影すら見つからず、徘徊しているのは、スケルトンや骸骨兵のみ、目ぼしいものは今の所見つかっていない。

 

『(この小娘…… 一度噛みついてやろうか?)』

 

「(止めときなよザルバ)」

 

オルガマリーは結果らしい結果が見つからない事に憤慨し、その捌け口は全て優牙とロマンに行ってた。

ザルバはそんなオルガマリーに辟易していた。

 

『(優牙。物凄い邪気がこっちに向かって来るぞ)』

 

「(何だって?)」

 

その時、ザルバが邪気を感知する。

 

『皆!そこに何か迫って来てる!今までとは桁外れの反応だ!』

 

「何ですって!?」

 

丁度ロマンも感知したらしく、その事をマシュとオルガマリーに伝えていた。

 

そして目の前に影を纏った何かが、降り立った。

影でよく見えないが、その背格好から女性と推測出来る。

 

「あ、あれは…?」

 

『サーヴァントだ……』

 

影を見てマシュは困惑していたが、モニターしているロマンが、あり得ないように呟いた。

 

「サーヴァント!? あれが!?」

 

「兎に角迎撃します!お二人は下がって!」

 

『ダメだマシュ!君にサーヴァント戦はまだ早い!』

 

「でもそうも言っていられる状況でも無いよ。ドクター」

 

謎のサーヴァントを迎撃しようとするマシュだが、ロマンがそれを制する。

しかし優牙が言うように、謎のサーヴァントは武器らしき短剣を二つ持って戦闘体制に入っていた。

 

「マスター、指示を」

 

「勝とう、マシュ」

 

「了解―――― 貴方に勝利を」

 

短い応答だけすると、マシュは戦闘体制に入る。

それを確認した優牙は簡単に指示を出す。

 

「今まで通りにやれば、勝てない事はないと思う。だから焦らずに対処しよう」

 

「分かりました! やあっ!」

 

それを聞いたマシュは、サーヴァントに飛びかかり、盾を振りかざして頭に叩きつける。

 

『■■――■■■!』

 

しかしマシュの攻撃は躱され、今度はマシュが攻撃されていく。

 

「うっ!くっ…… やあぁぁああ!!!!」

 

『■■■ !?』

 

短剣を盾で何とか受け止め、サーヴァントに振り抜き、サーヴァントの胴体に当てる。

 

「これで…… 倒れて!!」

 

カウンターが効いたのか、サーヴァントはよろめき、隙が生まれ、マシュはその隙を逃さず、的確に急所に強力な攻撃を加えた。

 

『――― サク、ラ』

 

小さく呟いたかと思ったら、サーヴァントはバタリと倒れた。

 

「ハァ…… ハァ…… や、やりました!せんぱ――」

 

「後ろよ!! マシュ!」

 

「えっ?」

 

オルガマリーに言われ、後ろを振り向くと、サーヴァントが立ち上がり、マシュに短剣を突き立てようとしていた。

 

「(そんな…… ここで、終わり?)」

 

『■■■■――!!!』

 

マシュが死を覚悟し、サーヴァントの短剣がまさに突き立たれようとしていた。

 

短剣は、吸い込まれるようにマシュの白く無垢な体に突き刺さ―――

 

 

ガキンッ!!

 

 

――― ることは無かった。

 

『■■■!?』

 

「悪いな。大事な後輩(マシュ)を失なう訳にはいかないんだ」

 

優牙が、マシュの体に突き刺さる前に赤鞘を盾にして短剣を防いでいた。

 

「オォォォオッ!!」

 

ただの人間に受け止められた事に驚いているサーヴァントを他所に、優牙は剣を抜き、サーヴァントを切り裂いた。

 

『■■―――――』

 

胴体を切り裂かれたサーヴァントは、体を真っ二つにずらしながら、黄金の粒子になって消えていった。

 

それを確認した優牙は剣を納めながらマシュに近づく。

 

「…… すみません、先輩。お手を煩わせてしまって……」

 

「詰めが甘い。一歩間違えていたら死んでた」

 

「はい……」

 

優牙の最もな指摘に、表情を暗くするマシュ。

 

「でも、最後の連撃は良かったよ、マシュ」

 

「……… はい!」

 

落ち込んだマシュに良いところを言ってフォローしながら頭を撫でる。

頬を染めながらも、マシュの表情は何時ものに戻っていた。

 

「マシュ。さっきの戦闘で怪我したでしょ? こっちにいらっしゃい」

 

「あ、ありがとうございます。所長」

 

「か、勘違いしないで頂戴!! 貴重な戦力が減るのは好ましくないだけよ!」

 

と、悪態をつきながらも、マシュに魔術で治療を施すオルガマリー。

そんな時、ロマンから通信が入る。

 

『不味いぞ皆! さっきと同じ反応がこっちに向かっているぞ!? しかも二つ……』

 

それは再びサーヴァント反応が現れた事を告げる最悪の知らせだった。

 

『(もう遅いな。優牙、邪気が二つ、その一つはもう……)』

 

「ああ、確認した」

 

ザルバからも同じ報告を受けた優牙は、剣を抜き、構える。

 

「…… ハッ!」

 

 

ガキンッ!!

 

 

「えっ!?」

 

「せ、先輩!?」

 

突然剣を振り抜き、何かを弾いた優牙に驚く二人。

そんな二人を尻目に優牙は、剣を振り続ける。

 

「クッ… 切りがない…… 二人とも!橋に走るぞ!」

 

「ちょっと!? 説明しなさい!」

 

「サーヴァントだ。すばしっこく動いて―― クッ!! こっちを狙ってる!!」

 

姿を見せないサーヴァントを誘き寄せるために、大橋へ走り始める三人。

優牙とマシュは、投げつけられる短剣を防ぎながら走っていた。

 

「どうしてサーヴァントがいるのよ!! マスターらしき人なんて居なかったのに!?」

 

『恐らく、聖杯がまだ残っているんだ。特異点になった影響で誤作動を起こしているのかもしれない』

 

「所長!喋ってないで走ってください!」

 

二人はなんとかオルガマリーを守りながら橋にたどり着き、オルガマリーを挟むように構える。

 

そこに、またもや影を纏ったサーヴァントが現れた。

 

『――― ミツケタゾ。我ガ獲物。聖杯ヲ我ガ手ニ!!』

 

先程とは違い、明確な言葉を発しているが、どう考えても話を聞いてくれそうにはなかった。

 

「マシュ、行けるか?」

 

「はい。今度は大丈夫です」

 

「頼む」

 

「お任せを!」

 

優や否や、マシュはサーヴァントに向けて飛びかかる。

 

サーヴァントは短剣を投げて応戦するが、盾のあるマシュに対しては少々不利なようで、後退しながら応戦していた。

 

「これなら…!あっ!?」

 

「マシュ!?」

 

善戦していたマシュの背中に攻撃が入れられた。

 

「なっ!?」

 

その攻撃を入れたのは、マシュの背後に現れたもう一人のサーヴァントだった。

 

「か、囲まれた!?」

 

『ハハハハハハハハハハハハハハ!!!! ソノ通リヨ小娘!! 貴様ラハ、誘導シテイタツモリダロウガ、誘導サレテイタノハ貴様ラダッタノダ!!』

 

『サッサト終ワラセルゾ、ランサー。何処ノ英霊カハ知ランガ、御首ニ違イアルマイ』

 

距離的に、優牙でも間に合わない位置にマシュは誘導されていた。

絶望的だ、どうすることも出来ない。

 

「それでも…… 私は……!」

 

それでもマシュは希望を捨てはしなかった。

サーヴァント二騎に対しても、臆する様子は微塵もない。

 

『―――― ハ、死ンダゾ。娘…!』

 

そんなマシュの様子を嘲笑い、殺すために武器を振り下ろす二騎のサーヴァント。

覚悟を決め、盾を構えたその時―――

 

「いいねぇ。小娘かと思ったら、中々の兵じゃねえか。なら放っとけねぇな、アンザス!!」

 

サーヴァントとマシュの間が爆発し、サーヴァント二騎が吹き飛んだ。

 

『ヌゥ…! 何者ダ!』

 

「何者って…… お宅らと同じさご同輩。それとも、泥に溺れて目ン玉まで腐っちまったか?」

 

『貴様…! キャスター!!』

 

サーヴァント二騎の視線の先には青いフードを被り、杖を携えた男だった。

キャスターと呼ばれる以上は、彼もサーヴァントだろう。

 

「ハアッ!!」

 

『ヌオッ!? 貴様、何時ノ間ニ!?』

 

そんな問答をしている間に、優牙は彼らに迫り、ランサーのサーヴァントに斬りかかっていた。

 

「マシュ!無事か!?」

 

「は、はい、マスター。それより……」

 

マシュの視線がキャスターに向く、キャスターはこちらを向くと満足そうに笑った。

 

「おお。坊主がマスターか。さっきの太刀筋、超一流の剣士と見る。いいねぇ嬢ちゃん、マスターに恵まれてよ」

 

「あんたは?」

 

「キャスターだ。訳あって今は奴らと敵対中でな、悪いが手を出させて貰うぜ」

 

「信用しても?」

 

「それはお前さんらの判断だ」

 

『キャスター!貴様、何故漂流者ノ肩ヲ持ツ!?』

 

サーヴァントの問いに、キャスターは何を言っているんだと言わんばかりの顔をして答えた。

 

「あ? んなのテメェらよりも何十倍もマシだからに決まってるだろうが?」

 

『貴様モ聖杯ヲ求メルサーヴァントノ筈!!』

 

「生憎聖杯に興味はねぇ。坊主、指示をお前に任せる。仮契約だが、よろしく頼むぜ」

 

キャスターは優牙の隣に立ち、肩を叩いて杖を構える。

優牙はそんなキャスターを見て、迷いなく言った。

 

「ああ、頼むよキャスター」

 

「良いんですか?先輩」

 

「大丈夫、キャスターは信用できる」

 

「先輩がそう言うなら……」

 

少し不安に感じたが、直ぐに表情を改め、盾を構えるマシュ。

そして、赤鞘から剣を抜く優牙。

 

「…… 行くぞ!」

 

そして、キャスターと二人は、サーヴァント二騎に向かって走り出した。




お前達、自分にとっての象徴はあるか?

特技、特徴なんてのがそれに当てはまるかもしれない。

だが人によっては、それが判らない奴もいるみたいぜ。


次回 第三節 宝具


一番悲惨なのは、それを出し切れない奴だと思うがな?
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