GARO/Grand Order   作:響く黒雲

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錬鉄

優牙達一行は、キャスターの案内もあり、遂に大聖杯のある大空洞に辿り着いた。

 

「着いたぜ、この先が大聖杯だ。ちぃとばかし入り込んでいるんで、はぐれない様にな」

 

その洞は、大聖杯があると言われれば、説得力のありすぎる雰囲気を醸し出していた。

 

「ここは、自然に出来た所なのでしょうか?」

 

「半分はそうね。もう半分は魔術師が手を加えて少しづつ広げている魔術工房になっているわ」

 

大空洞は、人の手が加わっているのかと聞かれれば、否と答えられ、自然のままかと言われれば、即答出来ない造りになっていた。

 

「そう言えばキャスター。貴方、セイバーの真名に心当たりがありそうだったけど、どうなのよ」

 

「おう、確かに知ってるぜ。てか、奴の宝具を見れば誰だって分かっちまう威力だったからな、ありゃ」

 

この先に待ち受けているであろうセイバー。

その正体と真名を知るキャスターの情報は、この上ないものだった。

 

「その宝具は?」

 

「この世でもっとも有名な聖剣。王の選定に使った岩の剣のふた振り目。その宝具の名は――――」

 

『――――約束された勝利の剣(エクスカリバー)。かの騎士の王が使った聖剣』

 

キャスターが、セイバーの宝具の正体を告げようとした時、キャスターではない男の声が、セイバーの宝具を言った。

 

『かの騎士王の真名はアーサー王。それが、今回セイバーとして現界した英霊の名だ』

 

「お出でなすったぜぇ。騎士王の信奉者がなぁ!」

 

すると優牙達の行く道に、影を纏い、弓を携えた男が一人やって来る。

 

「アーチャーのサーヴァント……!」

 

「よぉ!相変わらず聖剣使いを護ってんのかい?」

 

『別に信奉者と言うわけでも無いのだが…… それでも、招いてない客を追い返すのが役目でね』

 

「けっ、門番って事かよ。お互いに飽きたろ?そろそろ終わりにしようぜ。この染みったれた聖杯戦争をよぉ!」

 

『成程、事情は把握済みと見えるが…… こんな状況でも己の欲の為に戦うとは…… この剣で打ち直す必要がありそうだな』

 

今までのサーヴァントよりは、幾らか理性があるようで、キャスターとアーチャーはまるで犬猿の仲の様に口喧嘩していた。

 

「アーチャー。そこを退いてはくれないのか?」

 

『君がマスターか。出来ればそうしたいのだがね。如何せん、体が言うことを聞かないのでね。諦めてくれ』

 

「……… そうか」

 

それを聞いた優牙は、静かに剣を抜く。

そしてマシュ、キャスターに指示を飛ばす。

 

「マシュは俺のフォロー、キャスターは魔術支援を、所長は隠れて…… こいつは今までとは違う!」

 

「良いぜ、後ろは任せな」

 

「先輩は必ず守ってみせます!」

 

『…… 馬鹿か君は?サーヴァントにただの人間が敵う筈は―――ッ!?』

 

アーチャーが呆れた様に首を振り、落胆していたが、直ぐに考えを改める事になる。

 

「ハアッ!!」

 

『クッ!?』

 

優牙は既にアーチャーの前まで飛び出し、剣を振り下ろしていたのだ。

アーチャーは、直感で弓を盾にして事なきを得たが、後ろに下がってしまった。

 

『…… 貴様、何者だ』

 

「ただの人間さ」

 

『戯け、サーヴァントを後ろに下がらせる者がただの人間である筈がなかろう』

 

そうしてアーチャーは弓を消し、両手に白黒の夫婦剣を出現させる。

 

「アーチャーなのに…… 弓を使わない!?」

 

「あれがあの野郎の戦闘スタイルだ。全くふざけた野郎だぜ」

 

オルガマリーとマシュは、アーチャーが弓を使わない事に驚き、キャスターはそれを忌々しげに見る。

 

「アーチャー…… だよな?」

 

『無論、クラスはアーチャーだ。だが、弓兵が剣を使わない等という道理はあるまい?』

 

「ごもっともで……」

 

『そういう訳だ。ここからは全力で行く。簡単に死んでくれるなよ!』

 

アーチャーの足下が爆ぜ、一気に優牙に肉薄する。

 

『ツアッ!!』

 

「グッ!? ……… クッ、重い…!」

 

両手の夫婦剣を同時に優牙の剣に叩きつけ、その重い一撃を、優牙は受け止めるので精一杯だった。

 

『この中で一番危険なのは君だ。排除させて貰う!!』

 

アーチャーは休む事なく剣を優牙に打ち付ける。

一撃一撃の重さが、徐々に優牙を蝕んでいく……

 

『これで…!』

 

そして必殺の一撃が放たれようとした時――

 

「やあっ!!」

 

『クッ!? もう一騎のサーヴァント!?』

 

―― マシュが乱入し、アーチャーを突き飛ばす。

 

「食らいなぁっ!!」

 

間髪入れずに火球がアーチャーを襲う。

 

『チィッ!! キャスターめ!』

 

しかし、アーチャーは夫婦剣を投げて火球を爆発させて回避した。

 

「先輩、大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫…… 助かったよ。マシュ、キャスター」

 

「気を付けな、坊主。奴のペースに呑まれると一気に詰むぜ」

 

「ですが、これでアーチャーに武器は……!?」

 

マシュがアーチャーに武器は無いと言おうとした矢先、アーチャーの手に、新たな夫婦剣が現れる。

 

「そんな!? どうして!」

 

『投影魔術だ!』

 

そんなアーチャーの不思議を、ロマンは一発で言い当てた。

 

「嘘よ!宝具を投影するのは不可能だわ!?」

 

『ですがそうとしか……』

 

『ご名答だ。そちらには優秀な魔術師がいるようだな。指摘の通り、私の宝具は全て投影によるもの。故に、弾切れは期待するな』

 

あり得ないと言う所長に、アーチャーは臆面もなく言い放つ。

彼にとって投影の仕組みがバレる事は重要では無いらしい。

 

「……… アーチャー。何故お前はセイバーを守ろうとする?」

 

『さてね。君達になんの関係がある?』

 

優牙は、戦闘中に気になった事をアーチャーに聞いた。

しかしアーチャーは話を濁すだけでまともに答えない。

 

「俺は…… 過ちを繰り返さない様に必死になってる様に見えたんだがな」

 

この一言がいけなかった。

 

『―― 聞き捨てならんな』

 

この一言が、アーチャーのスイッチを呼び覚ましてしまったのだ。

 

『必死だと?馬鹿馬鹿しい。そんな事を言う暇があったら―――― 私を倒してみたらどうだ!』

 

再びアーチャーが、優牙に飛びかかる。

それをマシュが黙っている訳がなく―――

 

「やらせません!」

 

――― 盾でアーチャーを迎え撃つが―――

 

『遅い!』

 

「きゃあっ!?」

 

――― 盾を踏み台にされて、マシュは地面に叩きつけられてしまった。

 

『ハアァアァアッ!!!!』

 

「オオォォォオッ!!!!」

 

 

ガキィィィンッ!!!!

 

 

鋼と鋼がぶつかる音が響く。

向かってくるアーチャーに、優牙は正面からぶつかった。

 

『貴様こそ、何故セイバーを倒そうとする!』

 

「特異点を修復するためだ!」

 

『修復してどうする!』

 

「全ての人類を救う!」

 

『ハッ――― 笑わせるな!』

 

「ガッ!?」

 

競り合いはアーチャーが勝ち、優牙は地面に落ち、優牙の胸を、アーチャーは力の限り踏みつけた。

 

「グアァァアァアアッ!!!!!?」

 

「先輩!?」

 

『全ての人類を救うだと?そんなものは幻想だ!全てを救う事など出来ん!そんな理想が過ちを作り上げる!! そんな理想しか抱けぬのなら…… 理想に溺れて溺死しろ!』

 

夫婦剣の白い剣を振り上げ、優牙に目掛けて振り下ろす。

 

 

グシャッ!!

 

 

そして辺りに、肉を裂く音が響き渡る。

 

『……… な、に!?』

 

そして……

 

「悪いけど…… 理想なんかに溺れては死ねない……!」

 

優牙は、突き刺さる直前に夫婦剣を掴んでいた。

 

「確かに…! 今は、理想かもしれない!でも、俺には、それを成し得る力がある…! それに…… キャスター!」

 

「あいよ!アンザス!!!!」

 

優牙の言葉に気をとられていたアーチャーはキャスターの火球を避ける事が出来ずに、まともに受けた。

 

「ハッ!!」

 

『ヌッ、クッ……!』

 

優牙はその隙にアーチャーを蹴って、胸から足を退かし、マシュとキャスターの前に立ち、剣をアーチャーに突きつけた。

 

「それに…… 俺は一人じゃない!マシュがいる、キャスターがいる、所長がいる、ロマンがいる、フォウがいる! 皆が力を貸してくれる限り、俺は諦めない。前に進み続ける!」

 

『(考える事が同じでも、人が違えばこうも違うのか……)ではどうする』

 

「決まっている…… サーヴァント アーチャー!!!! 貴様の陰我、俺が断ち切る!!!!」

 

『良いだろう…… 来い!人類最後のマスター!』

 

その叫びと同時に優牙は剣を構え、アーチャーは再び弓に持ち替え、禍々しい形をした剣を投影、矢として弓に番えた。

 

『この投影に耐えられるか!――― 赤原を行け、緋の猟犬!『赤原猟犬(フルンディング)』!』

 

「ウオォォォォオオオッ!!!!」

 

魔剣の矢、赤原猟犬(フルンディング)は、禍々しい魔力を纏いながら優牙に飛んでいく。

 

「ハアァアァアッ!!!!」

 

優牙は、矢の側面に当てる形で、矢を撃ち落とした。

 

―――が、直ぐに方向を変えて、再び優牙に襲いかかる。

 

赤原猟犬(フルンディング)…… それは、英雄ベオウルフが用いたとされる、必中の呪いが掛けられた魔剣。

 

持ち主が健在である限り、何処までも標的を追い続ける魔剣。

 

しかし優牙はそんな物に見向きもせず、真っ直ぐにアーチャーに向かっていく。

 

『(バカな、このままでは死ぬぞ!)』

 

だが、アーチャーの予想は外れる事になる。

何故なら……

 

「はあっ!!!!」

 

当たる直前に、マシュが撃ち落としたからである。

 

「先輩!」

 

そして―――

 

「オオォォォオッ!!!!」

 

 

ザンッ!!!!

 

 

――― 優牙の刃が、アーチャーの体を斬り裂いた。

 

「……… 俺の、勝ちだ。アーチャー!」

 

『ああ…… 私の、敗北だ』

 

そう言い残し、アーチャーは今までのサーヴァントと同じように、黄金の粒子となって消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、くっ……」

 

「先輩! 大丈夫ですか!?」

 

「なんとか…」

 

アーチャーは消えたが、受けたダメージは、今までのを合わせても優牙には大きかった。

 

「ドクター。優牙のバイタルチェックはしてる? さっきよりも顔色が悪いわよ」

 

『うぇ!? あ、本当だ! レイシフトにサーヴァントとの戦闘、特にアーチャーのダメージが大きかった。マシュ、直ぐに休憩の準備だ!蜂蜜入りの甘い紅茶もね』

 

「はい。先輩をこのままにさせて置くわけには行きませんし、何よりティータイムは賛成です!」

 

「フォウ♪」

 

そんな優牙の為に、急遽休憩が入る事になり、マシュは蜂蜜入り紅茶を作り始めたのだった。

 

 

 

 

 

暫くして、マシュの紅茶を飲みながら、優牙はダメージを癒していた。

 

「ふぅ……」

 

「お加減はどうですか?先輩」

 

「うん、ありがとマシュ。もう大丈夫だよ」

 

「………」

 

そんな優牙をオルガマリーはじっと見詰めていた。

 

「…… あの、所長?何か付いてます?」

 

「い、いえ!? そんなこと無いわ!?…… こほん。改めて優牙、カルデアの所長として礼を言います」

 

「良いですよそんなの、所長の柄じゃないし」

 

「どういう意味よ!?」

 

威厳たっぷりに礼を告げたオルガマリーだったが、どうやらどう足掻いても弄られる、所謂美味しいキャラらしい。

 

「全く…… それよりロマン。優牙に何か物資を送って上げなさい。折角本人が頑張っているのに、準備不足で失敗なんて可愛そうだわ」

 

『可愛そう?所長が?ほほう…… 優牙の事を心配しているんですか?』

 

「そ、そんな訳無いじゃない!? だ、第一貴方達は、私の駒なんですからね!」

 

そんなオルガマリーの言い訳に、隣にいたスケルトンがうんうんと頷いた。

 

「ほ、ほら!こんな訳の分からない生き物だって頷いて…… って、ひいぃぃっ!?」

 

隣にいたスケルトンに気がついたオルガマリーが悲鳴を上げながらマシュの後ろに隠れる。

 

「アンザス!!」

 

『シャアァァァァ……』

 

しかし強さ事態は大した事はないので、キャスターにより直ぐに鎮圧された。

 

『全く…… お嬢ちゃん。もっと気を保ったらどうだ?』

 

「そうだなぁ…… 仮にも組織のトップなんだ、もちっとどっしり構えて―――― あん?」

 

鎮圧の後、直ぐにオルガマリーにダメ出しする二つの声、一つは勿論キャスターの物だが、もう一つの声は……

 

「ザ、ザルバ!? なんで喋ってんだよ!」

 

『いい加減窮屈なんだ。俺様にも喋らせろ!』

 

優牙の着けていた指輪から出ていた。

 

「ひ、ひいぃぃっ!? ゆ、指輪が喋ったぁっ!?」

 

「せ、先輩!? 何なんですか!? その指輪は!?」

 

『え?何!? 何があったの!?』

 

その瞬間、優牙が危惧していたように、カルデア勢がパニックを起こしていた。

 

『失敬な!ただの指輪じゃない。魔導輪だ!』

 

「へぇ…… 魔導輪か、久々に見たぜ」

 

『おい、気安くつつくな』

 

だが、キャスターだけは懐かしそうに、ザルバを指でつついていた。

 

「キャスターは魔導輪を知ってるの?」

 

「ああ。生前、知り合いが着けていてな。良くからかったもんだぜ。それに、お陰で坊主の正体も分かったしな」

 

「出来ればまだ内緒にして欲しいな…… 皆あれだし」

 

「ああ、その方がいいな」

 

優牙の正体に気がついたキャスターだったが、周りの状況を考えて、この場で正体をバラすのは止めて置くことにした。

 

「せ、先輩…… その指輪は……」

 

「ああ、魔導輪だよ」

 

『ザルバだ。よろしくな、盾のお嬢ちゃん』

 

「あ、はい。よろしくお願いします。ザルバさん」

 

順応性が高いマシュは、指輪が喋っている現実に、割りと直ぐに馴染んだ。

 

「それより、私がお嬢ちゃんってどういう事よ!?」

 

『俺様から見れば、大体の奴は小僧小娘だ』

 

「なんですってぇ~!」

 

逆にオルガマリーは、自分がお嬢ちゃん呼ばわりされた事が気に食わないらしく、ザルバに食ってかかっていた。

 

『それより優牙。今までとは比べ物にならない邪気がこの先に集まっているぜ』

 

「何だって? ということは……」

 

「ああ。奴さん、確実に待ち受けてやがる」

 

ザルバが感じた邪気のある場所は、丁度大聖杯付近。

そこで邪気を感じたということは、セイバーが優牙達を待ち構えているということになる。

 

「……… 行こう。大聖杯へ!」

 

優牙が最後の確認を取ると、皆頷いた。

そして優牙達は、セイバーが待ち受ける大聖杯へと、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

しばらく進むと、開けた空間に出た。

そこは邪気が充満していて、息苦しささえも感じる程である。

 

そして、優牙達の目の前に立ちはだかるのは―――

 

「あれが…… 最優のサーヴァント…… セイバー」

 

冷たい瞳で此方を見下ろす、漆黒の騎士王だった。




遂に始まる決戦!

光の盾が暗闇を弾き、炎の巨人が影を砕く!

黒き聖剣が、極光を呑み込む!


次回 第五節 元凶


金色の狼が、漆黒の騎士を斬り裂く!
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