GARO/Grand Order   作:響く黒雲

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一章 邪竜百年戦争 オルレアン
聖女


「――― 抑止の環より来たれ、天秤の守り手よ!!!!」

 

その掛け声と共に光が溢れ、収まると現れたのは男女合わせて七人。

それぞれ人種も服装も違うが、全員に共通している事が一つ。

 

―――――― ()()()()()()()()()()

 

そしてそんな彼らを呼び出したのは、黒い修道女風の甲冑を着た少女。

 

「フフフ――― 素晴らしいわ。そう思わない?ジル」

 

「ええ、本当に」

 

少女にジルと呼ばれた男は、そんな彼女に満足そうに頷く。

 

「それで?連れてきたの?まさか殺してないでしょうね」

 

「それは勿論。私が貴女の願いを聞き違える筈があろうか?聖処女よ」

 

そう言われたジルは、奥から一人の司祭を連れてくる。

 

「こ、ここは何処だ!? 私をどうしようというのだ!?」

 

「ごきげんよう、司祭様。私を覚えていますでしょうか?私は貴方を忘れた事は一度もありませんが」

 

「バ、バカな!? お前は…… お前は三日前に死んだ筈だ!! 魔女ジャンヌ・ダルク!!」

 

司祭は少女をみると驚愕の表情で、彼女をそう呼んだ。

 

――― 聖女 ジャンヌ・ダルク。

 

それこそが彼女の真名である。

 

「ええ、貴方が異端として処刑したジャンヌですよ?まさかお忘れですか?」

 

「…… けて」

 

「ん?」

 

「たすけてー!!!!」

 

その事実を目の当たりにした司祭は無様に泣き叫ぶ。

その姿を、黒き聖処女は嘲笑う。

 

「プッ、アハハハハハハ!聞いた?ジル。たすけてー、だって! 異端の私に許しを請うと言う事は自分が異端と言った様なもの。異端はどうなるか分かりますよね?」

 

「……! 嫌だ…… 嫌だ! たすけてー たすけてー!!」

 

「私を聖なる焔で焼いたならば、貴方は地獄の焔で焼かれろ!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

そう言って黒きジャンヌは司祭を業火に包み、司祭は灰すら残さず焼かれた。

 

「フフフ… アハハハ! 愉しい!愉しいわジル!こんなに愉しいのは初めて!」

 

「そうでしょう、そうでしょう。それでこそジャンヌ!我が真の聖処女よ!」

 

「さあ!バーサーク・サーヴァント達!このオルレアンを蹂躙なさい!」

 

黒いジャンヌの号令と共に、オルレアンの……… フランスの凄惨な蹂躙劇が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《…… 目覚めよ》

 

不意に優牙の意識に誰かが呼び掛ける。

 

《目覚めるのだ…… 黄金騎士 牙狼よ……》

 

「…… 俺を呼ぶのは誰だ?」

 

優牙が目を覚ますとそこはカルデアのマイルームではなく、無限に広がる真っ白な空間だった。

 

その空間に紅い血の様な霧が現れ、それが巨大なドクロを作り出す。

 

「ガジャリ!? お前が俺を呼んだのか」

 

《そうだ。若き黄金騎士よ》

 

そのドクロは大魔導輪ガジャリ。

魔戒騎士の力を人間に与えた超常的な存在、魔界と人間界を繋ぐ抑止力にして、地球の原初の一(アルティミット・ワン)、タイプ・アースである。

 

《今、お前に見せた夢は実際に起こった事》

 

「あれが、実際に起こった事だと!?」

 

《そうだ。お前が次に光を齎すべき場所》

 

「特異点のことか?」

 

その質問にガジャリは答えない。

そもそもガジャリは魔戒騎士にすら、ただでは力を貸さない、ある意味中立の立場にいる存在。

 

そんな存在が、何故自分に協力するのか優牙には分からなかった。

 

《我は人間界と魔界を繋ぐ者。故に両方が滅ぶ結末を望まぬ》

 

「…… 俺はどうしろと?」

 

《言った筈、光を齎せと。だが、お前一人では無理だろう。故に各特異点に、黄金騎士に縁のある騎士達をサーヴァントとして使わそう》

 

「サーヴァントとして?」

 

《後は自ら切り開き、行くがいい》

 

そこまで言うと、ガジャリは再び紅い血の霧となって消えた。

 

「待ってくれガジャリ!まだ聞きたい事が!?」

 

《さあ、行くのだ。黄金騎士 牙狼よ。守りし者として……》

 

そして空間に光が溢れ、優牙の意識は再び闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデアのマイルーム、そこに備え付けられたベッドで優牙は目覚めた。

 

「……… フォウ?」

 

いつの間にか優牙の膝に乗っていたフォウが心配そうにこちらを見てくる。

 

「大丈夫だよフォウ…… ちょっと変な夢を見ただけだ」

 

「フォウ、キュー! キャウキャーウ!」

 

すると突然フォウが跳び跳ねて、マイルームの扉に飛びかかる。

 

「先輩、おはようございま…… きゃっ!? フォウさん!?すみません…… 避けられませんでした……」

 

マイルームの扉にが開いて、そこからマシュが入ると同時に、フォウがマシュの顔に乗った。

 

「おはよう、マシュ」

 

「おはようございます。グッスリ眠れましたか?」

 

「んー… そこまで…」

 

「すみません、先輩が布団派というのを考慮するのを忘れてました」

 

「いや、俺はベッド派だから大丈夫。変な夢を見ただけだから」

 

変な夢を見た、そう言ったらマシュの顔が少し曇った。

 

「変な夢…… もしかして私の夢でしょうか?」

 

「なんで?」

 

「契約関係のサーヴァントとマスターは、互いの夢を見る事があるそうなのです」

 

「へぇ~…… 生憎、違う夢だよ」

 

「そうですか。それでは、ドクターの所へ行きましょう」

 

マシュの夢は見ていないと優牙が言うと、マシュは少しホッとした表情になり、二人はロマンの所へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームに入ると、ドクターと以前優牙の部屋にいた女性がいた。

 

「やあ、おはよう優牙君。グッスリ眠れたかな?」

 

「おはようドクター。それなりに」

 

「そっか。じゃあ早速で悪いけどブリーフィングを始めよう」

 

そう言うとロマンはカルデアスを起動させる。

 

「まず僕達の目的は、大きく二つ。特異点の修正、そして聖杯の探索だ」

 

「聖杯…… ですか?」

 

「うん、君も見た様に聖杯は莫大な魔力を持つ魔術炉だ。恐らくレフは聖杯を使って世界を焼却したんじゃないかなぁ…… そうでもしなきゃ説明つかないし」

 

ロマンはカルデアスの世界地図、丁度ヨーロッパの辺りにある光点を拡大した。

 

「今回僕達が修正する時代は、中世のフランスだ。ここにレイシフトし、聖杯を回収、または破壊してもらう」

 

「ちょっとロマン。そんなのいいから早く私の紹介をしなさいよ」

 

その時、隣にいた女性が駄々を捏ね始める。

 

「ああもう、ちょっと待ってよ!? ええと…… 彼女は…… 彼? ソレ? まあいいや。彼はカルデア技術部門のレオナルド。そして…」

 

「大変です先輩!? この方はサーヴァントです!」

 

同じサーヴァントであるマシュが、女性の存在に気が付くと、女性は何故か得意気になっていた。

 

「そう!私が稀代の天才発明家にして芸術家!レオナルド・ダ・ヴィンチさ。気軽にダヴィンチちゃんって呼んでね」

 

「レオナルド・ダ・ヴィンチ…… 誰?」

 

「「「えっ?」」」

 

「えっ?」

 

しかし優牙のこの発言で時間が数分程止まった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「あり得ない…… 信じらんない…… 私の事を知らない人がこんな身近にいたなんて……」

 

「だ、大丈夫ですよ!これから分かって貰えばいいんですから!?」

 

しばらくのフリーズから立ち直ったダヴィンチは、自分が優牙に知られていなかった事実に落ち込み、マシュがそれを慰めるという謎構図が出来上がっていた。

 

「なんか悪い事しちゃったかなぁ……」

 

『だから言ったんだ。この手の女は面倒な事になるってな』

 

「アハハ、レオナルドの事は気にしなくてもいいよ」

 

だが薄情な男性陣は、そんなダヴィンチを放って置くのだった。

 

「さて、今回は二人用のコフィンを用意してあるから安全にレイシフト出来る。向こうに行ったら前回同様、霊脈で召喚サークルを設置してくれ」

 

「分かりました。大切なのは暖かい場所、マイホームという訳ですね」

 

「うん。帰れる場所があるのは、それだけで心強いものだ。マシュはいいこと言うね」

 

「ありがとうございます……」

 

「うん、それじゃあ行こうか!」

 

二人はそれぞれのコフィンに入ってレイシフトに備える。

 

「二人共いい?始めるよ」

 

 

『座標、時間軸固定完了。レイシフトまで、3、2、1』

 

『レイシフト開始』

 

 

その音声と共に二人の体は霊子に変換され、特異点へとレイシフトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開くとそこは草原だった。

二人は無事レイシフトを完了し、フランスの地に降り立った。

 

「レイシフト完了。時代は西暦1431年です。丁度百年戦争の時ですね」

 

「そんなに長い間戦争してたのかよ」

 

「戦争、と言っても緩やかなもので、身代金さえ払えば捕虜を解放なんてざらにあったみたいですし」

 

「へぇー…… え?」

 

そんな時代の説明をマシュから聞く優牙だったが、ふと空を見上げて優牙は固まった。

 

「どうしたんですか?先輩」

 

「マシュ…… アレ何?」

 

「? 空に何か…… !」

 

マシュも優牙に言われ、空を見上げると優牙と同じ様に固まってしまった。

 

『よし、繋がった。あれ?どうしたの?二人して空を見上げて』

 

「ドクター、映像を送ります。これは何でしょうか」

 

『どれどれ…… これは!?』

 

マシュがロマンに送った映像には、空にオーロラの様な巨大な環が出現したものだった。

 

『何か強大な魔術式の様だ。これも人類焼却に関係しているのか…… 取り合えずこっちで調べるから、二人は召喚サークルの設置を頼むよ』

 

「分かりました。では行きましょう、先輩」

 

ロマンから指示を受けた二人は、霊脈を目指して歩き始める。

しかしフランスの土地勘なんて皆無な二人、何処をどう歩けばいいかなんて分からなかった。

 

そんな時、行く先に人を見つけた。

 

「先輩!人です!人がいますよ!」

 

「ああ、彼らに道を聞こうか」

 

その人の元に行くと、なにやら言い争っているのが聞こえてくる。

 

「何でしょうか?」

 

「さあ?」

 

取り合えず近づき、話を聞いてみると……

 

「だから!服は持ってるんだってば!」

 

「嘘を吐け!間男は皆そう言うんだ!大人しくしろ!」

 

兵士と全裸の男が争っていた。

 

「せ、先輩……」

 

「見るな、知らんぷりで行こう……」

 

優牙はマシュの目を隠し、遠ざかろうとするが……

 

「あーっ!そこのうら若き少年少女よー!この哀れな男を助けくれー!」

 

目ざとく見つけた変態に見つかってしまった。

 

「どうしようもない変態の間違いでしょ?」

 

「頼むー!金以外なら何でもするからー!」

 

と言って全裸で土下座する変態。

 

「先輩…… どうしましょう?」

 

『僕はさっさと見切り着けたほうが良いと思うけど……』

 

「はぁ…… 仕方無いな!」

 

優牙は飛び上がって、兵士に蹴りいれて気絶させた。

 

「おお!助かった、ありがとう少年!」

 

「…… 約束は守れよな」

 

「はて? 何の事やら?」

 

「惚けんな、金以外なら何でもするって言ったよなぁ……」

 

そうして……

 

「ガハハハ!!!! いやー、あんな迫力で言われたから何すんのかと思ったら道案内だったとはな!」

 

「ああ、俺達あんまり土地勘無くてさ」

 

すっかり仲良くなった変態…… もとい、服が生えた中年の変態は、優牙とマシュを案内することになった。

 

「実はな、俺もこの先の砦に用があったんだ。ちょっと聞きたい事があってな」

 

「じゃあ、目的は俺達と同じなんだ」

 

「ああ。俺はへルマン・ルイス。お前とそっちのお嬢さんは?」

 

「冴島優牙だ」

 

「マシュ・キリエライトです。へルマンさん」

 

「ユーガにマシュちゃんね。途中までだが、よろしくな」

 

そうして仲良く談笑しながら歩いていると、砦に着いた。

しかしその砦はボロボロで、兵士達も傷だらけだった。

 

「…… ひっ、敵襲か!?」

 

門番の兵士に見つかり、怯えながらも優牙達に武器を向けてくる。

 

「落ち着け、俺達は敵じゃない」

 

「…… 本当に、敵じゃないのか?」

 

「ああ。それより、フランスで何があったか教えてくれないか?」

 

なんとかへルマンが兵士を落ち着かせ、どうしてこんな状況になっているのかを聞いた。

 

すると兵士は、怯えながらもその状況を話し始めた。

 

「…… あの方が甦った…… 竜の魔女になって、帰って来たんだ!」

 

「…… 誰だ、そいつは……」

 

「その御方は……!」

 

兵士が竜の魔女について話そうとした時―――

 

「敵襲だぁぁぁぁ!!!!」

 

――― 最悪のタイミングで敵が現れた。

 

『優牙。弱いが邪気が複数近づいてくるぞ』

 

「何!?」

 

その敵は空からやって来た。

強靭な顎と翼を持つ、この世には絶対にいない幻想種、ワイバーンがそこにいた。

 

『キシャアァァァァァ!!!!』

 

「ワイバーンだと!?」

 

「へぇ…… こりゃ凄い」

 

「関心している場合じゃないですよへルマンさん!先輩、ワイバーンが十五世紀に居たという記録はありません。恐らく……」

 

「レフの仕業か…!」

 

ワイバーンがいる特異な現象に、すぐ黒幕がレフと判断する二人。

 

そしてワイバーン達は、砦を攻撃し始めた。

 

『キシャアァァァァァ!!!!』

 

炎を吐き、砦や人を燃やしていくワイバーン達。

兵士の誰もが諦めた時、救世主が現れた。

 

「諦めてはなりません!水を被って下さい!それで炎は凌げます」

 

「あ、貴女は…!」

 

その姿を見た時、兵士の誰もが驚いた。

救国の旗を掲げ、フランスを救おうとした大英雄。

 

「動ける人は負傷者を砦の中へ!ここは、私にお任せ下さい!」

 

聖処女ジャンヌ・ダルクその人であったからだ。




人間ってのは、つぐづく分からねえな。

必要も無いのに憎み合う。

たとえ、自分と等しい存在だとしてもな?


次回 第二節 魔女


聖女対魔女、生き残るのはどっちだ!
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