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J.ARMY 第2章
暗躍篇
第29話「悔い」
地から浮かび上がり今にも飛び立とうとする二つの戦艦型宇宙船。
その上に聳え立つ屋敷の天井から笑顔を浮かべた神威と、上空に浮かぶ超サイヤ人2状態の孫悟飯が見合う。
神威は殺しの作法としている不気味な笑顔を口元から外さず、それと対面する少年孫悟飯は、幾ら強靭な敵・フリーザやセルと戦ったとは言え心はまだ幼少にあるためか、頬には少し汗が流れ息を飲み、内心漂う恐怖を抑えている。
神威の笑みが、不気味なあまり悟飯の身体を凍てつかせている。
悟飯の手は震えあがり「(違う...。今までの敵とは違う......。
確かに気はあまり大きくない......。だけど、幾千の戦場をまるで散歩程度で歩いている様な笑み......。こんな笑みはフリーザにも、セルにも無かった)」内心の恐怖に揶揄される孫悟飯。
────その耳に届くささやき
「どうしたんだい?早くかかってこないと行っちゃうよ?」
ハッとなった悟飯が空を見上げると既に二つの宇宙船は宇宙を目指し飛び立っている。
その宇宙船の上に聳える屋敷の天井に堂々と立つ神威の声が悟飯を呼び覚ます。
悟飯は息を飲み込み「今は恐れている場合じゃない......。
例え戦闘の楽しみだろうと恐怖だろうと乗り越えて敵を倒さなければならない......。もう父さんの時みたいに......、誰も死なせない!!!!」
その記憶には亡き悟空の優しい顔が連想された。
今まで対峙した事のない巨悪の恐怖を己の過ちの悔いが制し、悟飯は超サイヤ人2の気を全開に高め、空高く飛び立つ宇宙船へ突進する。
すると神威の微笑みは眼を血走らせた満面の笑顔に変わり、傘を畳んで武器として構え「ようやく渇いた喉を潤せる...‼︎」丸で獣が呻き声を上げる様な枯れた声で口走る。
神威に接近して行く悟飯、傘を構え待ち構える神威。
悟飯の超スピードを眼で追っている神威は微笑みを浮かべる。
すると神威の眼前に現れた悟飯はその力余る右拳を振り下ろす。
ズドォオン!!!!
と轟音が空に轟き船に聳え立つ屋敷が一撃で天井を破壊された。
だが悟飯はその拳に手応えを感じない。
すると見上げると一歩先の距離に傘を振り下ろす神威がいた。
防御が間に合わず頭上に神威の一撃を浴び、頭から血を吹きながら船から吹き飛ばされる。
船内から戦いを拝む阿伏兎は「あーあーあー......。ったく新調した船を壊して......」とため息を吐き出す。
すると悟飯は空中で受け身を取り頭から流れた血が顔に現れる。
神威は船の甲板の上に立ち「さっきも思ったけど空中を浮けるんだねあの子......。船から落ちて空中戦になったらヤバイかも......。何より勝っても置いてかれちゃうしね」と笑みを絶やさず一人で喋る。
すると船は宇宙空間に出はじめた。
神威は驚き「へぇ、どうやらこの世界は星の周囲にも空気があるらしい」と新たな出来事を目の当たりにする。
そうして再び突進して来る孫悟飯。
気弾を神威に向けて何発か放ち、神威は傘でそれを容易く弾く。
そして接近する勢いのまま神威の顔面に左拳を放ち、神威はそれを右下に逸れてかわし、右手の傘で悟飯の顔面を打つ。
すると悟飯は空いた右ひじ神威の傘を受け止める。
だが悟飯の右肘の皮膚が裂け血が滲み出る。
そのまま悟飯は神威の腹を目掛けて左膝の蹴りを放ち、それが直撃すると神威は血を吐き出す。
だが狂気に満ちた神威の眼が萎える事は無くそのまま額を強く悟飯の顔面に打ち付ける。
悟飯の頭から再び血が溢れ出て吹き飛ばされる。
また神威も額に傷が出来、血が出始める。悟飯に強く攻撃した時に出来た傷だ。
そして口元から流れた血を手の裏で拭き取りそれを見て「あの時、蹴りを受けそうになった瞬間、反射的に後方に逸れて威力をほぼ0にしなかったら身体がバラバラにされてたねェ...。流石この世界の戦士だ」と笑みを浮かべながら死と交錯した男が口走る。
すると悟飯が再び受け身を取ると、呼吸が荒さを増す。
眼が霞んで来る悟飯は右拳を強く握りしめ「負ける訳には行かないんだ...!!父さんが残した地球を守るために!!」と意思を再び固めて眼を神威に向け再び突進する。
甲板に立つ神威は再び傘を構えて、悟飯を迎える。
神威の眼前の空中に現れ渾身の力を込めた右拳を神威に打つ。
すると神威は傘を横にしてそれを受け止め、神威の背後を悟飯の一撃の襲撃が駆け抜ける。
満面の笑みを悟飯に向けて「強い力があっても安定してなければ意味がないよ?」と彼に言葉を向ける。
悟飯はそのままバク転して再び神威に接近し、右足の踵落としを放つと神威は笑みを消し「まだ甘い...‼︎」と即座に反応して攻撃を回避し、船体に当たる寸前の悟飯の右足に傘を突き刺す。
今まで味わった事のない痛みに悟飯は「うァァァぁああぁぁあ!!!!!!」悲鳴をあげる。
神威はそのまま傘を引き抜き、貫かれた足の下腿の傷を両手で抑え跪く悟飯の額に己の額を静かに付けて「こんな痛みで音をあげる様じゃ、俺には勝てないよ」と微笑みと共に呟く。
歯軋りして涙を浮かべる悟飯の首の右側を傘で殴りつけて吹き飛ばし、柵を壊して船外に放り出される悟飯を拝み「早く地球に帰った方が良い。空気が薄くなって来てる。このまま死なれちゃ君の将来を見れなくなっちゃうからね」と情けをかける様に口走る。
悟飯は再び受け身を取る。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はっ」
首の肉が裂けて血が溢れ、頭から流れた血が額を真っ赤に染め顔の右側に5つの線を描く。
宇宙空間で舞う己の血を見て孫悟飯は「まだ、まだぁ!!!!」と顔を振り上げ、かめはめ波の体制を作る。
「フルパワーだ!!!!」と己の全てを込めたパワーを両手の間に集中させ「かめはめ波ァァァァァァ!!!!!!」と白く巨大な光線を神威に放つ。
神威は笑みを浮かべ「星すら壊しそうな勢いだね。だけどダメだし......」
そしてセルをも打ち負かしたかめはめ波が神威の眼前に迫った時、神威は傘で容易く弾き神威を境に左に方向が変わり進んで行きやがて消える。
怪我の痛みとフルパワーを使い果した悟飯は「なっ......」としか呟けずにいた。
神威は笑みを浮かべ「力が一つの方向じゃなく不安定なんだ。だから星すら壊せるエネルギーでも簡単に弾けるんだよ」と語る。
今にも超サイヤ人2が解けそうな悟飯の眼は霞み、神威の姿すらはっきりとらえられない。
それでも憔悴したその身体でふらつきながら神威を、追おうとする。
すると悟飯の右胸を弾丸が撃ち抜く。
悟飯の超サイヤ人2はそれを境に消え「かっ!!」と血を吐き出す。
弾丸を放った後の煙を放つ傘の先端を悟飯に向けながら神威は
「ほら、敵を倒すのに囚われ過ぎて防御すら0になってる。
そろそろ空気が消える。だから撃ち抜いたんだ...。
気絶する程度にね。まだ君には強くなる余地がある......。このまま弾丸の勢いで君は地球に戻れる。
未来で会おう」と傘を畳んで背中にあるの傘専用の鞘にそれを収め、船内には入る。
悟飯は弾丸の勢いで重力の無い宇宙空間で吹き飛び地球に接近して行く。
去っていく神威達の宇宙船を霞む眼で見ながら「く......そ......」と意識が朦朧とする中で悔しさを口にし、気を失いそのまま地球に落下して行った────
続く......。
次回予告
第30話「未来への同盟と蠢く謎」
6/12 朝10時更新予定