60
J.ARMY 第2章
「F」復仇戦争篇 第60話
頂上死戦篇
第84話「最強の鴉────」
"倒す"ことの出来ない敵────
男は、何も無かったかの如く立ち上がる。
「こんなんで俺を殺せるかァァァァァァァ!!!!」
そう言い捨てたカイドウの声に込められた力は、絶望となって心に突き刺さる────
虚と対峙する悟空とベジータ。
絶望の鐘が響く
風が凍てつく体をもっと竦ませる
なんだ?
この敵は?
カイドウと戦う銀時側も気になるはずなのに
今は、それを考える余裕すらない
大地?海?星?世界?
何なんだ────⁇
目の前にいる
この巨悪
まるで、何も無くて
まるで
宇宙そのものが、ドンと目の前に立ち開かる
虚
鴉の仮面に身を纏う漆黒のマント
風に靡く灰色の長髪
笠を被った、この巨悪は、そこに何もない悪が眼の前に立つ。
「また君たちですか────」
ゾク!!!!
感じた事のない寒気が体を過る。
悟空もベジータも、嘗てない敵の波動に手を震わせる。
だが、身体を狩る恐怖に負けない
その一心でベジータは「またとはどう言う事だ?」と虚へ問う。
その視線がベジータへ向かれる。
「っぐ!!」
今にも座り込みそうな身体を必死に立たす。
戦いのダメージもあるが、数十分で気もそこそこ回復した。
まだ立てるんだ。
だがこの男の恐怖が黙っていろと直接本能に語りかけて来る。
「ここ200年、"皇帝"の頼みで6つの"領域"の中で幾多の"宇宙"を旅し、君達の様なサイヤ人や侍を根刮ぎ殺し回っているものでね......
同じ顔を見ると、多少の慈悲を覚える」
何だ?
何を言ってる?
バカにしているのか?
カイドウとやらがそう言えばバカにしか見えない
だが!!
こいつがそれを言えば
別世界とやらで俺たちがこいつに何度も殺されたなどとほざいても
信じてしまう────
虚(このおとこ)の威圧が、それが真実だと証明している。
「なるほどな......
俺たちを唐突に殺しに来たとほざくか......
だが
ふざけるな」
ベジータの頬には確かに汗が垂れている。
だが、口元には、絶望と戦うと言う反乱の笑みが浮かび上がる。
両手を握り、黄金のオーラを纏い、火花を散らす超サイヤ人3へ姿を変える。
悟空も同じだ。
まだめいいっぱいやれるほどの気はない。
だけど、本気でやらないと
殺されてしまう
本能が悟空とベジータにそう告げている。
「......戦えると思っているのかい?
君たちの羽根は、どれだけ天高く飛ぼうと
私には
"真の八咫烏"には......届きはしない」
眼の前に虹の残像が残る。
最後の行が
自分の背後から聞こえた。
全く見えない。
虚の刃が、背中に突き立てられたのに
それを認識する事すら
ベジータには出来ない。
力強い虚の右手に宿る黒刀が、ベジータの背中を目掛け左薙られる。
まるで死神がその命を浚うかの如く。
ドン!!!!
激しい衝突音が周囲を取り巻く。
悟空が身体を蝕む恐怖に寸で打ち勝ち
両肘を×状に重ね虚の刃を受け止める。
何ともない力のはずなのに
身体が背後へ引きずられる悟空は「うぉりゃァァァァァァ!!!!」抵抗する咆哮と共に悟空は両肘をバッと開き虚の剣を弾く。
だが!!
悟空の左脇腹から身体へ広がる痛みの津波。
目線を下すと、虚の右足が左脇腹に直撃している。
ブシャァァァァ!!!!
その一瞬の中の世界
血が溢れた
だが蹴られた箇所からじゃない。
全く逆の、右脇腹の皮膚が裂け、血を嘔吐の様に吐き出している。
どう言う事だ?
考える間も無く、虚の蹴りで血を吐く悟空は吹き飛ばされる。
岩場に直撃し、埃を巻き上げる。
背後へ振り向いたベジータは「クソォ!!」と苛立つ声をあげ、悟空を蹴って間も無い虚の腹に右蹴りを入れる。
決まった。
だが、その一瞬の中
僅かな波動が駆け抜けるのがベジータの眼に映る。
すると、蹴りを入れたベジータの右膝の皮膚が深々と裂かれ、大量の血を噴き出す。
その傷口から、砕けた骨の欠片も飛び出す。
なぜ?
攻撃を食らわせたベジータの右足が逆にやられた。
そう考える間も無く、ベジータの左肩を虚の剣が貫通する。
「うぐ!!」
噴き出る血に痛みの声をあげる。
するとベジータの顔面を虚の左拳が直撃する。
顔から血を噴きながらベジータは岩場に直撃する。
悟空は怒りを覚えながらまた立ち上がり、超サイヤ人3のフルスピードで虚へ突進する。
「ウォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
吠える悟空
虚はただただ悟空を見遣る。
冷たい殺気だ
一瞬の中で悟空はそう思った
死に引き寄せられる
このまま抱きつき、楽になろうか?
「どこを見ている?」
背中に寒気が走る。
今、悟空自身が死と向き合っていた
本能が虚の冷たい眼で死を悟ったのだ
全く分からなかった
いつ左横に、虚が現れたのか
凍てつく悟空の身体、首を鮮やかに攫おうと、左手の剣を振るう。
血が溢れる
終わらない長い一瞬の中、血が散乱して行く。
悟空の首が取られた?
違う
虚と悟空の間に入り、ベジータが虚の剣を両手で掴んで受け止めた。
ベジータの両手の皮膚が裂けた事で溢れ出た血だ。
その一瞬で悟空も眼を見開いた
何をやってるんだ!!
自分に言い聞かせた。
ベジータに剣を止められ、動きの取れない虚。
ただ跳躍しているだけなのに、一瞬の中での葛藤が多過ぎて、まるで虚が左横に浮いている様に見える。
左足を振り上げ、虚の腹へ振るう。
バサーーー
今まで聞いたことの無い音が聞こえる。
あれ
オラ
斬られてる
あれ
ベジータが、斬られてる
あれ────?
超サイヤ人3の悟空とベジータは血を吹きながら吹き飛ばされ、岩場に衝突し、埃を巻き上げる。
仁王立ちする虚。
剣から垂れ落ちる血を振り払う。
あの一瞬、左手の剣がベジータに止められ、悟空の左蹴りが迫る一瞬の中
虚はただただ
ベジータと眼を合わせた。
ベジータの眼には、まるで空っぽの星が自分と対峙するかの様な、恐怖がベジータの身体を凍てつかす。
その一瞬、虚は止められた左手の剣をそのまま振るい、左斜め上に振り上げる。悟空とベジータを斬り裂いた。
ベジータは無意識に、勝手に両手を退き、悟空も足を勝手に退いた。
身体が勝手に反応したのだ。
代わりに2人の腹が深く斬り裂かれた。
獣軍団はただ観戦し「流石は虚様だ!」と絶賛が飛び交う。
超サイヤ人3になった悟空とベジータをこうもあっさりと?
悟空が最初に感じたばかでかい気の持ち主
それに相応しい実力だ。
倒れたベジータは眼前に飛び交う埃を見ながら
「(攻撃や防御する瞬間、妙な波動を放っていやがる
攻撃は身体の内部を崩し
防御は、こちらの攻撃がそのまま跳ね返る
そして、あいつの眼に宿るあの恐怖......
なんなんだ、この化物は...!!)」
虚の攻防の性質をあの僅かなやり取りで見切る。
だが理屈が分かっていても、崩せる場所もないと言う事実も降り掛かる。
すると、倒れた悟空へ虚が駈け出す。
ヤバイ
止めを刺す気だ。
ヤバイ
このままじゃ
殺される
悟空が、殺される。
だがベジータも悟空も、身体が言う事を聞かない。
眼前に迫った虚
ここまでか!!??
虚の眼前に閃光が迸る。
良く見遣ると
まるで空から降ってきた、銀時が剣を地面へ突き刺した。
「ウォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
複数の叫びが、虚の耳へ届く。
獣軍団を、先の攻撃で生き残った僅かな夜兎と鬼兵隊の兵士が襲う。
そして、銀時を挟んで、遠くに見えるのはカイドウに追われて迫り来る高杉とヒナタ。
銀時・高杉・ヒナタ
自分の教え子達が、あの男ではなく、松陽(うつろ)に刃を突き立てるか。
それを知った様にか、悟空とベジータがカイドウの眼前に現れ、彼を蹴り飛ばす。
獣軍団は、生き残った夜兎とサムライとの攻防戦に入る。
虚は、剣を地面へ突き刺し、片膝をつき怒りの眼を向ける銀時
そしてその横に立った高杉とヒナタと対峙する────
続く......。
完結まで残り5話
次回予告
第85話「万事休す」
11/30 朝10時更新予定!