ただ、それだけ。
だが、それがいいっ!
足柄のカツ丼
「やっちゃった……」
私は妙高型三番艦の足柄。
なぜ、私がこんなナイーブな気持ちなのかというと、今日の出撃で無理な攻撃をして、味方に損害を出してしまったからだ。
「私は大丈夫ですから……」
私のために健気に振る舞う妙高姉さんが余計に心を苦しめた。
そんな私に提督は息抜きに外出を許してくれた。そして、今に至る。
「こんな時はガツンと食べるに限るわね」
意外に艦娘というものは人より存外、食事は多く取る。実際に私も重巡の中ではよく食べるほうだ。
「なんか、良いお店ないかしら?」
なんとなく鎮守府に居にくい雰囲気だったから町に飛び出しちゃったけどよくなかったわ。今度は羽黒にちゃんと聞かないと。
そんな感じで町をうろうろしているとちょうど良く、お店を見つけた。
「なんか、しっくりきた。他にお店なさそうだし、行ってみよ」
私はその場のノリでお店に飛び込んでいた。
ガララ
「いらっしゃい!」
店内に威勢の良い声が響く。なるほど、これは当たりかもしれないわね。
席はお昼を過ぎていてそこまでお客さんはいない。
私はカウンター席が空いていたのでそこに掛けた。
「へぇ、定食メインなのね」
メニューは木札に書かれ、壁に取り付けてある。
何にしようか思案しているとあるメニューが目に入った。
「カツ丼……!」
私はカツが好きだ。鎮守府でも良く食べている。
これにしよう。一切の迷いなどなく注文をした。
「すみません、カツ丼ください!」
「はいよ」
店主らしい、板前は私の目の前でさっそく調理を始める。
なぜか、この料理が出来上がるまでの工程はとてもワクワクする。
艦娘になる前からも知っているような気分だ。
調理に見とれていると、店主らしい男が質問してきた。
「あんた、艦娘かい?」
急に声を掛けられ、ビクッとしたが質問に答える。
「はい、私は重巡の足柄です」
それを聞いて店主は満足そうな顔をしていた。
すると、私の前に大きめのカツ丼が置かれた。
「あんたたちには感謝してる。俺たちがこうして、商売できんのもみんな、艦娘のおかげだ。これは俺の気持ちだ。受け取ってくんな」
どうやら、これは感謝の気持ちらしい。私たち艦娘は戦うことが使命なだけにこうした感謝は嬉しい。
「ありがとうございます」
■カツ丼
大きくカットされたカツがご飯のベッドの上にドッシリ構えている。
こいつはすごいぜぇ……!
「わぁ!すごい……!」
私の目の前に置かれたカツ丼はシンプルでありながら見事な完成度を誇っているように見える。
「これは、元気が出るわね!」
さっそく、一口。
「美味しい!」
柔らかく煮込まれたカツはほどよい、噛み心地でありながら、しっかりと主張している。
「今度は……!」
ご飯と一緒に口に運ぶ。
「んんー!」
たまらない!カツとご飯の相性は抜群に良い。
これなら、何杯でも食べれる気がする。
「ふぅ、とても美味しかったわ」
気がつくとあっという間に食べ終えてしまっていた。これじゃ、赤城さんたちのこと言えないわね。
「ごちそうさまでした!」
「嬢ちゃん、良い食べっぷりだったね。また来てくんな!」
「はい!今度は姉を連れて来ます」
お勘定を置いて店を出ると、何故か虹が外に出ていた。
「ふふ!今度はみんな連れてこなきゃ!」
鎮守府に帰る私の足はとても軽かった。