「金が足りないだぁ!こんなにあってもたんねぇってのか!」
「ああ、1万ドル程度じゃぁペガサスを調べる種金にもならない。少なくとも10万ドルはいるぞ。仮にも元全米チャンピンだろう。その位ポンと出せるだろう?」
「ふざけんな!これ以上は払わねぇぞ。お前なら1万ドルあればそれを10万ドルどころか1000万ドルまで増やせるだろうが。じゃあペガサスのイカサマの件頼んだからな!」
キースはそれだけ言い残すと足早にバーから去っていってしまった。残ったのは1万ドルと40枚のデュエルモンスターズカードデッキだけである。
「はぁ。この俺を1万ドルで雇うなんて贅沢な奴だぜ。しかし14まで育てられた借りもあるからなぁ。クソッ、気分が悪いぜ。それに加えてデュエルモンスターだと?こんなお遊びになんで熱を入れにゃならん。覚えていろよ親父」
青年はカウンターに積まれた1万ドルをコートのポケットにしまうと、キースにもらったデッキを入念にシャッフルして5枚を手札に加えた。
「強欲な壺が5枚か・・・今日も絶好調だぜ、くくっ」
………………
…………
……
アメリカのニューヨーク、クィーンズ・ビレッジにあるベルモントパーク競馬場はアメリカのサラブレッドレースのメッカである。そして同時に賭けデュエルが大々的に行われていることでも有名であり、カードプロフェッサー であるシーダー・ミールも入り浸っているとして、アメリカでも有数の
元全米チャンピオンの息子であるキース・カナードは昨夜受け取った1万ドルを増やすべく、ベルモンドパーク決闘場を訪れていた。
受付嬢に入場料として10ドル渡し、賭けデュエルにエントリーして10分ほどすると名前を呼ばれる。
「ヘイ!カナード。あなたの試合相手が決まったから5番アリーナに行ってちょうだい。もし試合に勝てばあまたが賭けた5000ドルが1万ドルに。負ければ没収となるよ。準備はいい?」
「元論だぜ嬢ちゃん。この試合で儲けたければ俺に賭けな。いい夢を見させてやるぜ」
「あらそんなに余裕なのは今だけよ。対戦相手はテッド・バニアス。最近調子のいい賞金稼ぎよ。きっとあなたじゃ負けるわ。デュエル前にデッキのチェックもしないなんて初心者もいいところよ」
「どうだかな。デュエルモンスターってのはかなり運も左右するゲームみたいだからな。全てはカード次第、だろ?」
………………
…………
……
カナ―ドが5番アリーナにつくなり対戦相手、テッド・バニアスは机に脚を投げ出しながら大声でしゃべり始めた。
「おいそこの変な格好のにぃちゃん。てめぇも一発旗上げようとしてここに来た口だろ?よくいるんだよなーこういうやつ。何にも力ないくせに自信だけはある奴。俺はサ、そういうやつボコボコにするのが大好きなんだよねぇ」
「ほぅ。俺もよく見るぜ。体や声は無駄に大きいのに肝っ玉と脳みそが哀れなぐらい小さい奴をなぁ。くくくっ、あれだろ?ビビっちまってるから声ぐらい大きく張らないと今にも逃げ出しちまいそうなんだよなぁ。同情するぜ」
「んだとぉ。これからビビるのはお前の方だぜ」
「「デュエル!」」
キース・カナード LP2000
テッド・バニアス LP2000
「先行は当然テッド様だ!ドロー」
デュエルは先行の方が有利とされている。が遊戯王を初めて1日のカナードはそんなことを当然知識として持っておらず先行を許してしまった。
「俺はスパイク・ライノセラスを召喚」
スパイク ・ライノセラス
通常モンスター星4/地属性/獣戦士族/攻1800/守1600
体中に棘をはやしたサイ。
すべての障害をタックルで粉砕する。
「さらに俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。こいよニュービ―君。」
「俺のターン、カードを1枚ドロー」
なるほど、どうやら最初の手札は5枚で毎ターン1枚ドローできるんだなという至極あたりまえのことを今理解しながらターンを進める。
「ところでテッド君、一つ聞きたいのだが、伏せているカードはいつでも発動できるのかね?昨日からこのゲームを始めたばっかりでね、ルールをいまいちわかっていないのさ。すまないな」
「はぁ?まるで話にならねぇな。お前にはストリートでやってる野試合がお似合いだな!まぁ、それぐらいなら教えてやる。つかえるタイミングならいつでも発動できるぜ。伏せたターンは発動できないけどな」
「なるほど、なるほど。では手札から気まぐれの女神を召喚」
気まぐれの女神
星3/光属性/天使族/攻 950/守 700
1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
コイントスを1回行い、裏表を当てる。
当たった場合、このカードの攻撃力はターン終了時まで倍になる。
ハズレの場合、このカードの攻撃力はターン終了時まで半分になる。
あくびをしているけだるそうな女神が現れた。
「女神の効果を発動するぜ。コイントスを当てれば攻撃力は2倍になるぜ」
「しょっぱなからギャンブルカードとは、運に頼らなきゃ勝てまちぇんってかぁ?無様だなぁ素人くん」
カナードがポケットから取り出した1セントコインをトスする。コインが空中にある間に表を宣言したが結果は裏。ギャンブルは失敗だ。
「・・・俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
ギャンブルに失敗したギャンブルカードは無力。やれることはない
「しょうもない不安定なカード使ってるからそうなるんだよ。 俺のターンドロー。いいカードを引いた。俺は密林の王者、アサルト・リオンを召喚する」
アサルト・リオン
通常モンスター星7/地属性/獣戦士族/攻2600/守2500
密林に住む巨体のライオン
近くにすむ獣を喰らい尽くしてしまうほどの凶暴性を持つ
「さらにこいつとコンボでしまいだ。伏せていた薬食いを発動する」
薬食い
魔法カード
レベル5以上のモンスターを召喚する際、モンスター1体を生贄に捧げて発動する。生け贄に捧げたモンスターの攻撃力と守備力の半分と効果を、生け贄召喚したモンスターに付加する。
このコンボによってアサルト・リオンはスパイク・ライノセラスを喰らい、巨体をさらに大きくした。
「これによってアサルト・リオンの攻撃力は2600+900で3500だ。気まぐれの女神じゃぁ到底勝てねぇ。これがデュエルってもんだよ。分かったかい初心者くん?分かったらとっとと負けな。バトル!アサルト・リオン、気まぐれの女神を攻撃しろぉぉ」
アサルト・リオンの噛みつき攻撃が気まぐれの女神を襲う。誰しもがアサルト・リオンの勝利を確信している中、カナードがにやりと笑った。
「賞金稼ぎのテッド君。1つ教えてあげよう。ギャンブルは最後まで何が起こるかわからないんだぜ」
「何言ってやがる。 この攻撃でお前のライフは0。負けが確定してんだよ。」
「こいつを見てもそんなことが言えるかな?伏せてある悪魔のサイコロを発動する」
悪魔のサイコロ
罠カード
敵モンスターが攻撃を宣言した時、サイコロをふり、出た目をxとする。
相手の攻撃力が1/xとなる。
黒いサイコロを持った悪魔がケタケタ笑いながらアサルト ・リオンの前に現れる
「こいつで6の目が出ればお前のモンスターの攻撃力は6分の1、つまり583になるってわけだ。どうだ?まだ勝負は分からないだろ?」
「そんなギャンブルカードが成功するわけがないだろ!さっさとサイコロを振りやがれ!
カナードはコートの胸ポケットからサイコロを取り出すと、勢いよく振った。
結果は6。大成功である
「畜生俺のリオンの攻撃力が気まぐれの女神より低くなっちまった。まぁいい次のターンにもっと強力なモンスターを出す準備はある。てめぇの負けは変わらねぇ」
「次のターンがあればいいなぁ。俺はさらに伏せてあった収縮と天使のサイコロを発動するぜ」
収縮
魔法カード
フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの元々の攻撃力はターン終了時まで半分になる。
天使のサイコロ
魔法カード
攻撃力500以下のモンスターを対象にサイコロを振り
目の数だけ攻撃力を倍加する
白いサイコロを持った天使が気まぐれの女神の回りをクルクル回る・
「収縮で俺の女神の攻撃力は475、つまり天使のサイコロの効果が使えるってわけだ。ここで天使のサイコロが6の目ならお前の2000ライフは0になるぜ」
「ふざけんなよ!そんな都合よく6が出るわけがねぇだろうが」
「どうだろうなぁ、振ってみないことにはわからんなぁ」
運命のダイスロール。カナードのサイコロは勢いよく宙を舞い…転がり・・・
6が出た。6の目によって気まぐれの女神の攻撃力は2850。相手のアサルト・リオンの攻撃力は583。テッド・バニアスの負けである。
「いい結果だ。ビギナーズラックってやつかもしれんな」
「ふざけんなぁぁぁぁ。ただ運がよかっただげじゃねぇか。次に戦う時はぜってぇ俺が勝つからなくそがぁぁぁ」
「何回戦っても結果は一緒さ、なんせ幸運の女神が俺にはついてるからな。その軽そうな頭に物を詰めてからきてくれ」
………………
…………
……
デュエルモンスターの賞金稼ぎとやらは親父、キース・ハワードも含め、警戒心というものがないらしい。6が出るようにおもりを入れたサイコロを何回使っても運がいいという事で片づけてくれる。ポーカーやブラックジャックといったトランプゲームでイカサマを続けてきたキース・カナードにとって、賞金稼ぎは常にぞろ目が出るスロットマシーンと大差なかった。この調子で稼げば1週間もあれば10万ドルほどにはなるだろう。
「ちょうど今詐欺師タイタンもここで仕事しているらしいな。俺も詳しくはペガサスについて知らないから奴への情報料10万ドルは仕方ない出費だが…ハァ、まったく、嫌になるぜ」
現在夕方6時。今日あのデュエルの後2戦して儲けは1万5千ドル。ポーカー等デュエル以外で儲ければ当然楽に10万ドルほどなら稼ぐことができるが、デュエルのプレイングを鍛えるとなるとそうもいかない。キース・カナードにとって刺激の全くない作業は苦痛以外の何物でもなかったが、そこに関しては1週間耐えることで納得した。
「なぜ俺がこんな面倒くさいことをしているんだろうか・・・ああ・・・」
カナード苦難の道は続く
イカサマのダイス
ダイスの中心に重りを入れ、意図的に出目をコントロールできるようにした賽のこと
カイジの班長や、FF6のセッツァー・ギャッビアーニが有名か