ハルゼーが戦死した。
キンメルはこの出来事に狼狽した。
「まさか・・・ハルゼーが先に逝くとはな・・・」
「提督・・・」
猛将ブル、そう呼ばれた男、W・ハルゼーは乗艦レキシントンと運命を共にした。
その事が、キンメルの精神に特大の損傷を与えていたのである。
「・・・提督!、キンメル提督!」
「どうした?」
「第二艦隊からの通信です!!」
「何だと!」
余りのショックに一時塞ぎ込みかけたキンメルを奮い立たせたのは、通信がなかった第二艦隊からの通信だったのである。
「話によると第二艦隊は無傷ながら、敵第三艦隊の形式的撃退に成功、ハワイへと向かっているとのことです。」
「すぐにロレッタ司令と繋げてくれ!」
「了解!」
「ロレッタ司令、無事だったか!」
「申し訳ありません、先ほどまで通信不可の状況に至っておりまして。」
「そんなことはどうでも良い、何があったんだ?」
「霧に包まれ適当に航行していたところ、敵第三艦隊とばったり出会いました、んで、取り敢えず双方一時停戦で話を切り上げ、先ほど霧が晴れた段階で帰還し始めた、と言うわけです。」
「そうか・・・その様子だと敵側も無傷のようだが、目的を達成しただけて十分だ、ロレッタ司令、まず最初に伝えるべきは、ハルゼーが戦死したことだな。」
「えっ!?ハルゼー提督が!?」
「ああ、敵の高速戦艦から逃れられず、補足されてな・・・、レキシントンとワスプ含めた主力艦は全滅、残ったのは数隻の駆逐艦のみだ、私と君の艦隊が頼りとなる。」
「そんな・・・」
「でだ、今さっき敵艦隊を発見し、迎撃する為にいま、カウアイ海峡へと向かっているんだ、そちらからはどうかね?」
「・・・後三時間ほどで海峡へとたどり着けます。」
「よし、両艦隊で敵艦隊を叩こう。」
「了解しました。」
「敵艦隊、我々と同じくカウアイへと向かっています。」
「第三艦隊が不幸にまみれて退いたが第二艦隊はこっちへと来るようだな。」
だが、この時また、この通信が日本軍の偵察機、星電に傍受され、カウアイ海峡に向かっていた第一艦隊の他に、第二艦隊、第八艦隊から切り離した「相模坊」以下駆逐艦数隻、そしてもう二つ、海中からの刺客などがカウアイへと向かっていったのである。
数時間後。
「主砲戦用意!」
「砲撃始めぇ!」
カウアイ海峡揃った両国艦隊、空母を待避させた両艦隊は、そのまま、後に20世紀最大の艦隊決戦の一つと呼ばれた艦隊戦へとうつる。
さて、この海戦は後に「カウアイ沖海戦」と呼ばれるのであるが、せっかくなのでこの海戦の両軍主力艦(戦艦)をざっくりと見ていこう。
日本海軍側。
第一艦隊。
「金剛」「比叡」(旗艦)「榛名」「霧島」、計四隻。
第二艦隊、「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」
計四隻
第八艦隊援軍「相模坊」
一隻。
合計9隻。
対する米海軍。
第一艦隊
《アイオワ》《カリフォルニア》《メリーランド》《テネシー》《アリゾナ》
《オクラホマ》《ウエストバージニア》《ぺンシルヴァニア》《ネヴァダ》
の9隻
第二艦隊
《コンスティチューション》《ユナイテッド・ステーツ》《コンステレーション》 《ユタ》 《ニューメキシコ》《サウスダコタ》
の6隻
合計15隻。
航空機の要素をぶっこ抜いた戦力差では圧倒的に米海軍の方が上である。
日本には高速戦艦相模坊がいるが、9対15では些か厳しいものがある。
・・・が、キンメルがこの戦力差に勝利を確信するなかに、ロレッタは不安を覚えていた。
ここで、前回の話でロレッタと創作の間で結んだ停戦協約のなかに、こんな条項がある。
3、上記の状況中、他艦隊と遭遇した場合は交戦を可とするが、交戦した場合相手側も交戦を可とする。
これは
1、日第三、米第二両艦隊は、それぞれトラック、西海岸軍港付近まで、両艦隊への攻撃を禁止する。
と言う条項に対してのつけられた内容であったのだが、このまま言ってしまえばロレッタ艦隊はこれから日本艦隊に攻撃を仕掛けようとしても構わない・・・がその時は創作艦隊もロレッタの艦隊に殴り込みかけてもよい・・・と言う風になる。
コレから察せる「危険性」はコレから起こる海戦に第三艦隊が横殴りを仕掛けてくる可能性だったのである。
キンメルは日本艦隊が「バカ正直」だからその心配の必要はないと断じたが、ロレッタからすればこんな条項ブチ込んでいる時点でこの可能性を考慮すべきだと感じてはいた。
が、キンメルは第三艦隊は横殴りに来ないとあくまで断じ、そのまま艦隊戦へと移ったのである。
さて、話が長くなってしまったが、話を戻し、両艦隊の艦隊決戦へと視点を戻すこととしよう。
まず、海戦が始まると同時に、早くも両軍の動きに違いが出始めた。
アメリカ側は駆逐艦を先頭に、小型艦が敵艦隊へと突貫していったのだが、対する日本艦隊は軽巡洋艦以下の艦艇を一纏めにし、艦隊と分離、敵艦隊の側面を突くように動き出したのである。
分かりづらいであろう簡略図を示せば
日本艦隊、→→→→→→→→→(重巡以上)
↓(軽巡以下)
↓
↓
(米第一艦隊からの混成)↑
(米第二艦隊からの混成)↑
(米両艦隊がまぜた編成)↑
→→→→→→→→→→→→→→→(米艦隊)
見辛くはあるがこのような形になる。
んで、砲撃戦に入るのだが日本艦隊は終始距離を取ることに重点を置いたため、アメリカ側の猛攻にも関わらず、攻めきれずにいた。
飛び交う砲弾、沈む艦艇の数々、艦橋が吹き飛び、主砲塔を弾が突き抜けて行く。
開戦から4時間が経つが、この時両軍は攻めあぐねていた。
日本側は「榛名」と「陸奥」が被弾し中破したが、アメリカ側は主力ではなく、重巡洋艦以外に大きめの被害が出ており。
日本側の回り込みは失敗、アメリカ側も突撃部隊がほぼ壊滅するなど、この時点では決定打を打ち込めていなかったのである。
尚、この戦闘に唯一紛れていたエンタープライズ(旗艦のため参加する羽目に、)はこの時点で被弾してはおらず、戦艦も無事なためアメリカ側有利に見えていた。
・・・・・・のだが。
「・・・!、右舷方面から敵航空機接近中!、数70!距離6千!」
「同じく敵艦隊接近中!距離2万、編成、戦艦5・・・いや7!空母2、重巡多数!まだまだいます!高速戦艦を先頭に急速接近中!」
「・・・何だと!?」
「・・・やっぱりこうなっちゃったか。」
ここで、アメリカ艦隊にとって不幸なことに、ロレッタの懸念が見事的中、日本第三艦隊がカウアイに進出、アメリカ両艦隊を挟み撃ちの形へと持ち込んだのである。
「間一髪って所ですな、危なかった。」
「いやいや、丁度と言ったところです、お見事と言う他ありませんな、蒼井提督。」
「これで戦艦の数も互角以上、質はまぁ・・・ご愁傷様と言うことで。」
明暗此処に別れたり。
第三艦隊の増援により形勢は一気に米海軍不利へと傾き、勢いづいた日本側の猛攻に米海軍は晒される事となったのである。
第三艦隊到着から2時間、海戦開始から6時間がたった頃には、米海軍は壊滅的被害を負い、米両艦隊は退却にと移っていた。
この時第一艦隊は中破多数が混ざった戦艦しか残っておらず、ざっと9隻も残っているのに戦闘可能なのは小破した「アイオワ」と、副砲が全滅している「ペンシルヴァニア」だけであり、第二艦隊に至っては、無傷だが直接戦闘能力皆無の「エンタープライズ」を除くと「コンステレーション」「ユタ」「ニューメキシコ」「サウスダコタ」ついでに重巡洋艦「インディアナポリス」が残っていたが、どれも砲が全滅したり、弾薬が尽きたりで戦闘不可に追い込まれていたのである。
おまけに両艦隊が退却した方向が別だったのである。
そして・・・。
「・・・何とか退却出来たわね。」
「もうすぐ港が見えるはずです。」
ロレッタ率いる第二艦隊はオアフ島のハワイ基地まで退却することに成功していたのだが。
「さて、流石に疲れたわ、けど、戻ったら至急今後の方針をーーーーッ!?」
ハワイ基地へとたどり着いたロレッタ艦隊が見たのは、基地に多数昇っている日本の旗。
港の前で艦隊に向け砲を構える「天魔坊」。
そして港にて、艦隊へ向け射撃体制を整えた多数の日本軍の自走砲の姿。
「・・・・・・此処までのようね、白旗の準備、発行信号で降伏すると伝えて。」
「了解です、お疲れ様、ロレッタ。」
「まぁ、南丞達相手ならコレが限界でしょうね。」
「司令、キンメル艦隊とロレッタ艦隊が投降しました。」
「そうか、ん?ロレッタ艦隊が降伏したと言うことは・・・」
「エンタープライズを鹵獲したことになりますね・・・・・・。」
「・・・・・・・・・わーお。」
こうして、太平洋艦隊は壊滅し、ハワイは日本軍の物となった。
だかしかし、キンメル艦隊の降伏原因と、オアフ島占拠の裏はまだ知られていない。
次回は同時期の時間帯へ話を移し、オアフ島占拠とキンメル降伏の信実に踏み込むとしよう。
~次回へ続く~