ご都合主義第一弾ともいえます。
~蒼井夫妻が転生したその日の早朝、横浜のとある剣道場にて~
神奈川県横浜市、横浜港近くのとある剣道場、創設は日露戦争後と言う浅い歴史ながら、予備役入りした帝国陸軍大将が開いているものであり、彼によりミッチリと鍛え上げられる事ができたため、帝国陸軍士官を目指す俊英が何人か通いつめており、この日も朝から約30人近くもの門下生が鍛練を積んでいた。
そんな朝から鍛練を積む男達の中に、ただ一人男達に混ざり鍛練を積む少女の姿がそこにはあった。
「絢香、そろそろ一旦休んだらどうだ?父さんはお前がケガしないか心配で心配でしょうがないんだが・・・・」
「お父様、お気持ちはよくわかりますが、まだまだ続けさせてください、この程度でへばっていてはダメだと私は思うのです。」
「ふふふ、絢香らしいわね、体には気を付けるのよ?」
「わかっています、お母様。」
この道場の経営者にして、かつての奉天開戦での突出した功績により、「奉天の雄」と呼ばれた男、南丞 貞夫(なんじょう さだお)とその妻、南丞 留美子(なんじょう るみこ)が見守っているのは、他の門下生よりもかなり激しい鍛練を積む一人娘、南丞 絢香(なんじょう あやか)であった。
彼女の両親は、お見合い結婚が主流であったこの時代には珍しく恋愛結婚をした仲であり、一人娘の絢香も、貞夫による、時代と釣り合わぬ柔軟な教育方針により、非常に武芸に秀でた少女に成長していた。
その他、貞夫からは歩兵の運用と、海軍の運用に一日の長を認められている程の秀才であり、時代を考慮するに、女性であるのが惜しいくらいなのであった。
・・・・ん?、陸軍軍人の家系なのに海軍の運用に一日の長があるのはなんかおかしくね?
と思われる方もいるかもしれない、と、言うのも実は大きな理由がある。
(数年前に武芸と軍略を学びたいと言ったときは無謀かな~と思ったけど、あんなにあっさりとOKしてくれるとは思わなかったわね、
そう、この人物、南丞絢香は俗に言う転生者なのである。
いつ転生したの?と言えば17年ほど前、まだ赤ん坊だった頃へである。
この人物、前世では海上自衛隊の前線指揮官として長らく活躍し、遂には女性初の統合幕僚長にまで上り詰めた程の女性だった程の人物であったりする。
そんな超大物が記憶を引き継いで転生したのだから、海軍運用に一日の長を見いだされるのはあり得ない話では無いだろう。
だが、この日、彼女はこれからを生きる上で使えるかもしれない、史実の歴史知識の有用性を粉微塵にしてしまいかねないほどの大事件を引き起こすことになろうとは、誰も思わなかった。
「・・・・ふぅ取り敢えず朝はこれくらいですかね、父上、少し休憩しましょうか。」
「わかった、留美子が今朝食を作ってくれているから、食卓で少し待つとしよう。」
「全員、これから1時間程の休憩とする!一旦帰宅するなりで朝食をとっとけ!」
ここの門下生は、殆どが地元の人か、此処へ通うために近くで下宿している者であり、休憩に入ると同時に殆どは一時帰宅し、食事をとってから再び道場へとやってくる。
その間に南丞一家は朝食を済ませるのである。
「・・・・ほうほう、ムッソリーニが勝ったか、コレは凄いことになったぞ。」
「あの・・・・お父様、少し聞きたいことがあります。」
「どうした絢香?何か頼み事か?」
「・・・・私を
「!!!!」
常日頃から男達に混ざって鍛練を積み、自身の教えを吸収していた絢香のこの頼み事は貞夫にとっては簡単に予想できた事であったが、改めて娘に堂々と言われるとやはり驚きを隠せるものでは無かった。
だがしかし、予想できた事を改めて言われただけで、戸惑って回答につまる帝国陸軍予備役大将ではなく、落ち着いた素振りを見せつつ、直ぐにこう返した。
「
「・・・・、私のようにお国の為に前線で働きたいと考える女性がいるかも知れないからです、側面に私も前線で働きたい意志があるのは否定しませんが、陛下の為に前線で戦う意思を持つ女性は私だけではないと私は考え、私のように前線で働きたい女性が軍人として働くには、志願者として軍に身をおけるようにするのが、現在の男女間風潮からしての限界ラインだと判断しました。」
(相当に危ない橋だな、だがテキトーだとしても理由付けられるようになっているのだ、私も動くときか・・・・海軍に優秀な女性士官が入れば、女性に負けてる海軍仕官の姿を見て煽り立てることもどきるしな・・・・)
「・・・・・・どうされました?お父様?」
「いや、わかった、私も昔の友人達を少し頼ってみるよ、その件に関しては、数日まって見てくれ。」
「?、わかりました。」
一ついってしまおう。
南丞貞夫は親バカである。
娘の為に己のコネをフル活用することなど当たり前の事だと考える程には娘が好きである。
そんな人物が偉い立場にいて、コネをフル活用したらどうなるか?
貞夫は、絢香とやり取りし、午前の鍛練について簡易的に指示を済ませると、一目散に
そしてその数週間後。
先程の答えはとても簡単であった。
その日、発行されたとある新聞の一面には
「女性志願者特例仕官法成立ス、此ヲ以テシテ、女性志願兵ノ特例募集ヲ開始ス。」
とデカデカと書かれていた。
そう、絢香の頼みを聞き入れた貞夫がコネで全力投球した結果、制限があるものの、女性の軍人の存在が認められるようになったのである。
「ん……!!コレは急がないと!」
「まさか士官のチャンスがこんな早くにやってくるなんてね・・・・」
「私の前世潜水艦運用スキル活用の時代キター!!!」
(やっばー、お父さん物凄い張り切ったみたいね・・・・まぁでも海軍に入れるし、これで良いか。)
「な、なんだってー!!」
「嘘だろ・・・・ホントに歴史知識外の出来事が起こったぞ・・・・。」
この時、やらかした原因である絢香や色んな所にいる男性転生者達が困惑する中、多数の元女性軍人転生者達が狂喜乱舞したのは、誰も知らぬところであった・・・・。