宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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 やはり後編じゃなくて中編になってしまいました…


第15話 『月からの脱出 中編』

 深夜を過ぎた月面都市の大通りをジム改二個小隊。つまり六機が隊列を組んで闇夜を進んでいた。

 月面都市もコロニー同様で時刻によって灯りを調節して夜にする。が、今日の夜はいつもとは違う。発電所と変電所を爆破されたおかげで病院や軍施設など発電施設を持たない施設はすべて停電になっているのだ。

 月面都市第三駐屯地所属のMS部隊は攻撃を受けたとされる第四駐屯地へ向かっている最中だ。

 

 『た、隊長!!』

 「…なんだ新米」

 

 索敵を厳にしてモニターを見つめていた静寂を破ったのは最近編入された第一小隊三番機のリド准尉だった。

 声色より不安や恐怖を感じ取った隊長であるロイル大尉はため息を付きつつ視線を向けずにめんどくさそうに反応した。

 自分が訓練学校を卒業して戦地へ向かう道中は身の丈に合わない妄想に期待を浮かべたりして意気揚々と出撃して行ったのを思い出す。当時の戦友の多くはそうだったし、同じ隊に配属された奴らは皆そうだった。准尉みたいに怯える奴なんて一人も居なかった。

 相手を見下すように考えていた思考を破棄して思い出す。あの頃はオデッサを奪還してジャブローでは返り討ちに合わせて戦況は連邦軍に有利でジオンは風前の灯と言う心的余裕を生む要因があった。今の状況はそのときとは一変していた。本部である月面基地は混乱状態にあり、これから向かう第四駐屯地は半壊状態だと言う。現地の味方はボロボロで敵の武装から数まで全てが不明、頼みの月面基地からの援軍は望み薄。怯えるなと言う方が無理か。

 

 『じ、自分達は勝てるのでありますよね?』

 「准尉、戦場で絶対なんてものは無い。勝つも負けるも分かるわけねぇだろ?ルウムを思い出してみろ。連邦軍は勝てる勝てるて言ったけども事実は間逆でジオンの勝利だ。絶対なんて無い」

 『そんなぁ…』

 「ハハハ、そうビクついてんじゃねぇよ。逆にチャンスだと思えよ。ここで手柄を上げたらお前さんが入りたがってるティターンズの目に止まるかもしんねぇんだからな」

 『あ、そ、そうですよね』

 

 まぁ、無理だと思うがなとは言わずに気丈そうに振舞おうとする新米に笑いかけた。ここで不安のまま戦われてもめんどうだしな。

 

 「敵なんてどうせデラーズ・フリートの残党かなんかだぜ。残党の残党なんかに何が出来るんだっての。だからな、新米…」

 

 元気付けようと語りかけてくるロイル大尉の声はそこで止まった。同時にコクピット内まで轟音と振動が響き渡る。

 驚き目を閉じてしまったリド准尉は恐る恐る目を開けると頭を吹っ飛ばされた隊長機が映った。さっきまで話していた隊長が死んだ。正確にはメインカメラをやられただけで死んではいないのだが戦場を知らない彼が勘違いをしてパニックになるまで時間はかからなかった。

 

 『う、うわあああああ!?』

 

 訳も分からず後ろに下がりつつ銃を何処に向けて良いかも分からずに向ける。図らずも相手はその銃口の先にいた。ザクとは容姿が違う青い機体が猛スピードで突っ込んでくる。モニターが機体照合を済ませて機体名である『ケンプファー』と表示する。機体名が分かった所で彼には理解する事も無理であったろう。狙いをつける事無く装備していたマシンガンを乱射する。相手は避ける動作も行なわず持っていたバズーカを放つ。当てずっぽうの弾が当たる事は無く、放たれたバズーカの弾頭が横に居た二番機の胴体を吹き飛ばす。

 

 『慌てるな陣形を…』

 

 咄嗟に指揮を執ろうとした第二小隊の隊長の声が途絶えた。敵は目の前の一機だけでなく横道にもう一機居たらしい。横合いから突き出されたヒートサーベルがコクピットを貫通していた。

 逃げようと振り返った時には後方はグフが退路を塞いでおり、足元には一撃で仕留められたジム改が横たわっていた。自分以外に残っていたもう一機はケンプファーに至近距離からショットガンを放たれ撃破された。

 情けない話だが銃を向けられた時にはマシンガンを手放しに命乞いをしていた。隊長を撃った相手に。

 

 

 荒々しく鼻を鳴らしながらレンチェフはつまらなそうに生き残ったジム改を見つめた。

 本来なら止めを刺すところだが指揮権を預かるファビアンがそれを良しとしなかった為にとりあえずこのままと言う事だ。

 

 『さて、これで時間稼ぎにはなるだろう』

 『後はあちらが上手くやっているかですね』

 

 ファビアンとソフィが言っているのは第四駐屯地へ向かった部隊のことである。艦隊の攻撃を受けた月面基地は立て直し中でまだ時間はあるとの事で問題となったのがこちらに向かっているMS部隊と半壊したといえまだ力を持っている第四駐屯地である。

 脱出の要であるドックは中古品のMSと廃品の盾や鉄材を装備したプチモビを主軸とした主力部隊で何とか制圧は出来た。他のエリアの制圧までは手が回らなかったが通路を塞いだり、兵士を配置したらで凌いでいるらしい。運が良いのか悪いのか目的のドックにはサラミス改級宇宙巡洋艦二隻が入港していた。燃料・弾薬も十分でここにいる仲間を連れ出すには十分すぎる品物だ。だが、当初の予定では一隻だった為に急いでもう一隻を動かす人員とシステムのハックが必要となった。人員と機材の積み込み以上に時間がかかる。

 

 『そろそろ俺は行かせて貰うな』

 「ああ、いろいろ助かった。礼を言う」

 『なぁに、すべてはあの大佐殿に言ってくれ。じゃあな。健闘を祈ってる』

 「そっちこそ」

 

 通信を終了したファビアンはこの場を離れる。なにやら事情があって俺らとは行動できないらしい。これ以上騒ぎが大きくなる前に独自の脱出ルートでここを離れるらしい。スラスターを噴かして去って行くケンプファーを見送る。

 

 『こちらもドックに急ぎましょう』

 「そうだな。…ん?」

 

 ドックへと移動を開始しようと歩み始めようとした時に手を挙げるジム改以外に立ち上がっている機体に気が付いたのだ。初撃で頭部を吹き飛ばされたジム改が銃口を向けようとしていた。

 

 『貴様らジオンが…何人…何十人…何百人…何万人も殺しといて…まだ殺したり無いか畜生共めが!!』

 

 軽く舌打ちをして転がるように動き、落ちているマシンガンを拾う。射線上に手を挙げたままのジム改がいることで敵は撃てずに動きが止まる。そんな隙を悠々と見逃すほどレンチェフは甘くなかった。ジム改の頭部を掴んで盾にしたまま頭無しにマシンガンの弾を撃ち込む。無残に蜂の巣へと変わって行くことに頬が緩む。

 

 「アースノイドが何千、何万死のうが知ったことじゃねぇんだよ」

 『た…隊長!!』

 「あー…一人殺すのに一発使うのは勿体無いって言われたっけな」

 

 空になったマシンガンを捨てて無抵抗のジム改のコクピットにヒートサーベルを突き刺した。思いっきり引き抜くと力を失ったのかその場に崩れ落ちた。

 

 『…レンチェフ』

 「行くか」

 

 6機の残骸をその場に残してグフとドムは本隊との合流するべく移動を開始した。

 倒れたジム改からは血のようにオイルが漏れ出ていた…

 

 

 

 「何だこの有様は!!」

 

 基地の主だった能力を奪われた第四駐屯地で唯一無傷だった5階建ての司令塔司令室ではここの指揮を預かっていたグラス中佐は顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていた。それを聞かなければならない各部署担当者は内心うんざりした気持ちを抑えて真剣に聞いている振りをいていた。

 

 「貴官らがしっかりしてないからこうなるのだ!!」

 「お言葉ですが今回の奇襲は相手が十分な戦力と情報分析を行なった用意周到なもの。それを防ぐというのは…」

 「黙らんか!!」

 

 理不尽な怒りに意を唱えた仕官は怒り狂っている中佐に殴られ地面に転がった。口を切ったらしく垂れる血を袖で拭きながら元居た位置へと戻る。

 

 「確かにそうだろう。難しいんだろう。だがな!!その結果、駐屯地の機能を奪われ、ドックを制圧されたなど上層部に言えるわけが無いだろう!!」

 

 ひびが入った窓際に立ったグラス中佐は忌々しく駐屯地入り口に集められたMSに目をやる。ここには三小隊が配置されていたが、格納庫も襲われ無事だったのは練習用のザクⅡが二機にジム改が一機。

 

 「たった三機では追撃も出来やしない!!こんな無様な結果を私はどう報告すれば良いのだ…」

 

 自分の地位の事しか考えてないグラス中佐に心の底から苛立ち今すぐ殴りたい気持ちでいっぱいだった士官らは入り口から入ってきたMS部隊に気付いて歓喜の声を挙げる。グラス中佐だけは気に入らなさそうだったが。

 

 「これで今回の手柄は第三に盗られる訳か…つまらん」

 「あれ?第三はジム改を揃えてたんじゃなかったか?」

 

 一人の仕官が言ったとおり、第三駐屯地MS部隊はジム改で統一されておりそれ以外の機体は無い。しかし今入ってきたのはジムにジム・コマンド、量産型ガンタンクである。

 抱いた違和感から起こった嫌な予感はすぐに現実のものとなる。

 最初に動いたのはジム・コマンドだった。ジム改のコクピットを顔も向けずに撃ち抜き、ザクⅡのメインカメラを頭部バルカンで潰した。行き成りメインカメラがやられた事で動揺したパイロット達はそのままコクピットを撃ち抜かれた。ジムはMSの横で待機させていた装甲車や61式戦車など戦闘車両に対して攻撃を開始した。

 

 「な!?何をやっとるか!!」

 「中佐!!あれは第三の連中じゃありません。ジオンです!!」

 「なんだと!!」

 「ガ、ガンタンクの砲がこちらに!!」

 

 残った駐屯地建造物に攻撃を開始したガンタンクの砲により司令塔が吹き飛び。第四駐屯地は文字通り壊滅したのである。

 任務を終えたフィーリウスはガイウスとバネッサと共に撤退を開始する。

 

 

 

 ファビアン隊とフィーリウス隊が時間稼ぎで戦闘を開始した頃、加藤 鏡士郎はアクトザクに乗り街中を歩いていた。

 

 「僕たち…コホン、我々はジオン軍所属の者です。月面都市にお住まいの方にはご迷惑をかけます。戦闘が終わるまで建物から出ないで下さい」

 

 外部スピーカーを通して民間人に呼びかける。この戦いはジオンと連邦のもので民間人には怪我人一人出したくないと考えている。ゆえに建物から出ずにいて欲しいのだ。へたに道端を歩かれると踏んでしまいそうで怖いのだ。

 アクトザクの後方にはリリアのゲルググにユンマイのザクⅠ、ギュスターのザクⅡが続いている。機体的に宇宙戦闘も行なえるので鏡士郎の部隊はこの後、戦艦の護衛を行ないつつここを離れる予定となっている。外の追撃には多分MS隊が出てくるだろう。それの排除が自分の役目だと理解している。

 それはそうと民間人への呼びかけももう良いだろうと判断して気を楽にする。それとドックに向かうだけなので音楽でも聴こうと音楽プレイヤーへと手を伸ばす。もう前のような失敗をしないように今日はヘッドホンを用意したのだ。これで音漏れの心配は無い。無線が聞こえるようにヘッドホンを耳より上の位置にセットして再生する。曲は『Zips』である。本当は本人の声で聞きたいのだがこの世界にはない曲なので自分で歌った曲である。歌詞に合わせて口を動かしながらMSを操作する。

 ふと、通行人が目立ち始めたことが気になった。何故か家から出て来てこちらを見ているのだ。それも恐怖なのではなく楽しそうに。疑問を抱いて首を傾げていると無線が入った。

 

 「カトウ大佐」

 「あ、はい。なんでしょうかリリアさん?」

 「今、何か音楽を聞いてますか?」

 「はい…聞いてますけど…」

 「音が漏れてます」

 

 言われた言葉が一瞬理解できなかった。だって音が漏れないようにヘッドホンを用意したのだと慌てて音楽プレイヤーを見るとコードが刺さりきっておらず音が駄々漏れであった。しかも外部スピーカーのままで。

 

 「にゃあああ!?」

 「た、大佐!?」

 「忘れて!!忘れてくださいぃ!!」

 

 顔を赤面させる鏡士郎は今すぐに駆け出したい衝動を抑えつつゆっくりとドックへ向かうのであった。

 




 月からの脱出を開始した鏡士郎達の前に月面基地MS隊が立ちはだかる。

 次回『月からの脱出 後編』
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