宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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 サブタイトルを変更しました。
 前回(すでに変更済み)に予告では最初に『黒いガンダム』としようとしたらマークⅡと被ったので『死神と呼ばれたガンダム』にしました。するとガンダムWのサブタイトルに…
 と言う事で二つを合わせたサブタイに変更しました。


グリプス戦役前…
第18話 『死神と呼ばれた黒きガンダム』


 漆黒で覆い尽くされたとある宇宙空間を艦隊を組んで進む一団が居た。

 アクシズより地球圏に到着し、月で事件を起こしたカトウ艦隊である。月での一件はジオン残党が起こしたテロで連邦軍の不手際が露にされたのが一般人の知っているニュースだろう。ティターンズが参加していたなんて事実は隠蔽されてそれを知っている月に在住していた上の者は全員責任をとらされるのを免除される代わりに口を閉ざしている。中には発表しようとした者が居たが発表する前に行方不明となった。

 艦隊指揮を執っている加東 鏡士郎はMSデッキでニタリと笑っていた。その締まりのない笑いを冷めた目でイリアが見ていた。

 艦隊構成はムサイ級巡洋艦後期生産型『アルト・ハイデルベルク』を旗艦として『パルジファル』と『モルゲンローテ』、そして新たに戦列に加わったパプア級補給艦『ヘンゼル』と『グレーテル』である。

 『星の屑』最終作戦の際に使える物は茨の園よりもって出たデラーズ・フリートだったがさすがに戦闘で使えない物は置いていったようでパプアニ隻を放棄して行ったのだ。その後はアナハイムの方で使用されていたので手入れも行き渡っており、危険物やウイルスの有無も確めたのでそのまま艦隊で使うことに。特に今回の作戦では多くの人を乗せる事になるだろうから。

 ちなみに使える艦船はパプアニ隻を除いて無かったが大破中破状態でデブリ内を漂っていた初期型のムサイ二隻とチベ一隻を修理している。資源に困っていたデラーズ・フリートが内部のパーツをいくらか他の物に使ったらしく完璧な状態に戻すまで時間がかかるらしい。

 

 「いつまでその顔をするつもりですか大佐…」

 「むふふ~、だって嬉しいんだもん♪」

 

 鏡士郎のニヤケ面を見飽きたイリアが声をかけるとそのままの面でこちらを向いてきたのでアイアンクローを喰らわす。

 

 「は、はにゃあああ!?痛いってばイリアちゃん!!」

 「整備の人たちの迷惑です。静かにしましょうね」

 「りょ、了解だから止めてててて」

 

 少尉が大佐に手を挙げるなんて普通の軍隊では考えられない事ではあるがこのカトウ艦隊所属ではもはや日常の風景であった。今までは胃薬を飲む事と相手は上官と言う事で我慢していたイリアだったが我慢には限界がある。ゆえに暴力と認識されるほどではなく周りから見たらじゃれ合い(一方的)程度の力加減で手を挙げる事にしたのだ。鏡士郎も別に文句を言う事無く受けているから黙認と言う事で周りに浸透したのだ。

 

 「ったく、どれだけ好きなんですかアレが…」

 「だって好きな物は好きなんだからしょうがないじゃん」

 「しょうがないで済ませないで下さい。あれは軍の資材で製作されたのですよ。ならばゲルググとかドムを生産した方が戦力にもなってたでしょう?」

 「いはいいはい、すみばぜん(痛い痛い、すみません)」

 

 むにむにと頬を引っ張られる鏡士郎の背後にはその機体が最終調整に入っていた。

 EMS-10『ヅダ』の改修機。材質や構造のほとんどそのままで姿勢制御バーニアを多数取り込んで機動性を上げて、マグネット・コ-ティングで反応速度を上げた機体だ。今はコクピット周りを鏡士郎使用に弄っている。

 放された頬を擦りながらヅダをまた見やる。イリアは大きくため息をついて諦めたような笑みを浮かべる。

 

 「そんなに見ても作業は早まりませんよ」

 「んー…そうなんだけどさ」

 

 ヅダから目を放してジュースでも飲もうかと休憩室へと向かう。当然イリアも付いて行く。

 

 「ガンダムと戦うだろうから」

 「え!?今なんて言いました!大佐!!」

 

 30バンチ事件は反連邦政府デモを鎮圧する為に密閉空間であるコロニーで毒ガスを撒いたと到底世間に公表できない内容の作戦である。この作戦の指揮を執っていたバスク・オムや一部の人間は毒ガスの事を知っているだろうが知らされてない者も居る。その中にはアレキサンドリア級アスワンも居り、ガンダムへイズルが運用されている。

 さすがにガンダムとの戦闘は初めてなので多少焦っているのだ。

 

 『大佐。カトウ大佐』

 

 艦内放送で呼びかけられ休憩室へ向かう前に近場の受話器をとって艦橋へと繋げる。最初は使い方を記したメモを見て行っていたのがもう何も見ずに行なえるほどに慣れた。

 

 「もしもしエイワン兄?」

 『友軍を確認。共同戦線を申し込んできていますが』

 「確認は終わった?」

 『照合は終了しました。乗組員のデータリストに不審な点はありません。ですが念の為に担当場所を分ける事を進言します』

 「ん、じゃあそれで行こう」

 

 本当ならガトー中佐にも参加して貰いたいのだがキルマイヤー大尉の部隊の勧誘を命じたと言うか頼んだ為に参加させれなかったのだ。早くしないとアスワンの部隊と交戦して大尉は捕まってしまう。だから艦隊で一番足の速いザンジバル級機動巡洋艦『ブレーメン』で向かってもらったのだ。カリウス曹長にもそちらの応援を頼んだ。今頃は次の任務であるガブリエル大尉達を探しにソロモン宙域へ向かっている頃だろう。

 正直にカトウ艦隊は人材が不足しているのだ。いや、初期の任務だけを考えると月面で仲間を増やした分、有り余っているはずなのだが如何せん歴史を知っている為にそこに人員を裂いてしまい足りなくなったと言うのが正しい。

 リリア小隊とフィーリウス小隊にはアナハイムから買い取ったコロンブス級宇宙輸送艦『シュトーレン』にてデブリの使えそうな廃材回収と傭兵みたいな事をして貰って資金を稼いでもらっている。アナハイムからテストパイロットを頼まれている話があるとか無いとか…

 何にしても手持ちの部隊で何とかしなきゃ…と気合を入れようとした瞬間に警報が鳴り響いた…

 

 

 

 元ジオン公国軍ガブリエル・ゾラ大尉は後期生産型ザクⅡのコクピット内の映像を艦とリンクさせて現れた味方の艦隊に目をやる。

 

 「まだアレだけの力を持っている奴らも居るのだな」

 

 ただの独り言だった。過去のジオン軍を思い返し懐かしむ。ただそれだけだった。

 

 『どうした?また思い出していたのか?』

 

 聞かれていたのだろう。後ろのリック・ドムに乗っている一年戦争時からの戦友であるカザック・ラーソン大尉が無線を入れてきた。

 

 「ソロモンが我々の手から離れて五年も経ったのだな」

 『ノルスタジーか?くだらん』

 「あぁ、そうだな…」

 

 今は感傷に浸っている時ではない。ティターンズと名乗る組織が行なおうとしている作戦を何としても阻止せねばならない。その為に我らはここに来たのだ。

 戦力は乗艦しているザンジバル級機動巡洋艦にMSが五機とこの作戦阻止の為に呼びかけたジオン残党軍のムサイ級軽巡洋艦とその部隊が駆けつけてくれた。これで守りきれるかと言うと不安が強かった。だが、同じ目的でこの宙域に来た艦隊を見て少しほっとした。まさかムサイ級三隻にパプア級二隻も引き連れてくるなど誰が想像できたか。

 もうじきサイド1・30バンチが望遠モニターに映し出されるだろう時になって警報が鳴り響いた。どうやら正面にMS隊が展開しているらしい。

 

 「ハッチを開けろ。ガブリエル・ゾラ出るぞ」

 『ゾラ大尉!?まだ出撃命令は…』

 『ここはもうティターンズの作戦宙域だ。十中八九奴さんだろうよ』

 「ショーターはザクⅡ隊と艦の護衛、または予備戦力として待機しろ」

 『なら俺とお前で正面を突破するか?』

 「ああ…」

 

 ザンジバルのハッチが開放されたことでゾラとラーソンのMSが飛び出していった。

 モニターにはあの艦隊より発進したであろうMS隊が映し出されていた。水色のザクをスリムにした機体とケンプファー、他にはムサイに積んであるだけのリック・ドムⅡが出撃した。

 すでに先行していたムサイよりザクⅡ一機とドラッツェ4機が発進していた。

 レーダーを確認してみると戦艦とMS反応が示されていた。しかしどちらもデータに該当するもの無しでたったの一隻と一機だけだった。

 

 『全機後退!!奴に近付いちゃあ駄目だ!!』

 

 先行部隊が敵機に接触するであろう瞬間に無線から少年の声が響いた。その声色から嫌な予感がした。

 

 「―っ!?散開!!」

 

 何かが飛んで来るのが見えて部隊を指示を出す。一瞬何か丸い物が機体の側を通過した。目で追ったそれは手裏剣のように回転しながら追尾してきた。機体を安定させて銃を構えるが先に先ほどの水色の機体が撃ち落した。

 

 「助かった」

 『いえ、お怪我がなくて何よりです。それよりも…』

 

 先行した部隊はと視線を向ける前にモニターに閃光が映し出された。

 

 

 

 「敵はドラッツェ4にザクが1か…しょぼいなぁ、おい」

 

 ソウジロウ・ミヨシはコクピット内で呟いた。戦闘前だというのに肩を落としてため息が出るほどあからさまにがっかりしていた。

 

 『何を言っているミヨシ中佐!後続が来ているのだ。そんな事も言ってられまい!!』

 「うるせえぞ髭芋。後ろってもドムにザクに…ヅダなんかじゃあ相手にならねえよ」

 

 バスク大佐の命令であのジャマイカンを乗艦に乗せたが今からでも降ろしてやろうかと思う。

 ミヨシの部隊の戦艦は特別にあしらえて貰った戦艦だ。

 マゼラン級高速戦艦『ホワイトチャペル』

 全体を白く塗装したマゼラン級にペガサス級強襲揚陸艦の四連装熱核ハイブリッド・エンジン・システムを機関熱核ロケット四機の左右に設置して速度を上げた艦である。連装メガ粒子砲は従来の正面側の物と四連装熱核ハイブリッド・エンジン・システムの上下横とで主砲副砲合わせて12門搭載している。ただ燃料や弾薬など積む為にMSデッキなど無くメインデッキ下のサブデッキ裏に置けるスペースを作っているだけだ。ミヨシにとって『ホワイトチャペル』は足の速い馬であり戦力として考えてないのだ。

 

 『こちらは護衛が居ないのだ。貴官が発進したらこの場を離れるぞ!!』

 「へいへい、迎えだけは頼むぞ」

 

 ったく、これだから腰抜けは。先駆けは戦士の誉れだろうが。

 決して口からは出さないが心の中でジャマイカンに対する評価を何段階も下げた。

 理性的な軍人であるならばジャマイカンの考えが正しいだろう。現在この宙域にいるティターンズは『ホワイトチャペル』以外に居ないのだから。アレクサンドリア級のネームシップのアレクサンドリアも同じくアレキサンドリア級アスワンも宙域到着までは時間がかかる。もしここで艦が襲われたら撃沈される恐れすらあるのだ。

 白い艦体上で黒いマント羽織った黒いMSが立ち上がった。赤い二つの眼が戦場を睨みつけていた。

 

 「ソウジロウ・ミヨシ行くぜオラァ!!」

 

 軽く跳んだ機体が背中から赤く輝く粒子を放ちながら真っ直ぐMS隊に突っ込んで行く。とりあえず後続の足を止める為にザクとドムを葬る為に両腕に装着されていた武装『トライブレード』を起動させる。中心の円盤から伸びた三本の刃が回転しながら向かって行く。これで後方の足は止まるだろう。視界の端でトライブレードが撃ち落されるまでは…

 

 「かぁ~、やるじゃねぇか。こりゃ面白そうだ」

 

 先行してきていたドラッツェ一機とザクⅡの足が止まったが残りの三機は射撃しながらそのまま突っ込んでくる。避ける事もせずにそのまま突っ込むが機体にダメージは無し。近付いて一機の頭部を握りつぶして盾にする。

 二機は横に逸れようと機体を動かす。

 

 「そんな前だけに早い欠陥機に乗ってっと…」

 

 ドラッツェはガトル戦闘爆撃機の推進機関を転用している為にリック・ドム同等の速度を持つ。だが運動性はそれほどではない。補う為に肩にスラスターポッドを設置しているがMSには遠く及ばない。高速機動中に急停止や機敏な急旋回が出来ないのだ。

 握っていたドラッツェを左に投げ捨てて持っていた刃までも黒く塗りつぶされた太刀を右に突き出す。急な方向転換が出来なかったニ機は飛び出されたドラッツェとぶつかり、出された太刀に自ら突っ込んで爆発した。

 

 「こうなんだよ。良い勉強になったか?…って聞いちゃあいねえか」

 

 背後の爆発の閃光で黒い機体が浮かび上がる。

 この世界には存在しないガンダムの姿が…




 サイド1・30バンチを巡ってティターンズとジオン…ガンダムと鏡士郎がぶつかる!!

 次回『イレギュラー』
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