今更ながら阿頼耶識システムとリユース・サイコ・デバイスをとっても同じ効果なら重複しない事を知った。
…鏡士郎も知らないもよう…
連邦軍とジオン残党である『デラーズ・フリート』が最後の戦いを行なっている宙域近くで一機のモビルスーツがデブリ帯を飛び回っていた。
ランダムに配置された隕石や戦艦やモビルスーツ残骸…少しのミスで機体とパイロットはデブリの仲間となる。そんな危険地帯を飛び回っているのだ。正気の沙汰ではない。頭のネジがニ、三本外れているレベルではない。イカれている。これを見た人間は誰しもそう思うであろう。
ま、実際ネジが全部ぶっ飛んでいるのだが…
「うほおおおおお!!」
間抜けな声がコクピットを満たす。これが頭のおか…コホン。先ほどからデブリ帯を神懸かり的な操縦で回避する加東 鏡士郎である。
今の段階でも腕の良いパイロットでも難しいギリギリの軌道を描いているはずなのにペダルをさらに踏み込む。
「のおおおおお!!Gすげええええ!!」
速度がさらに上がり、デブリが急接近するが難なく回避して行く。デブリ帯から抜けたところで機体を急停止させる。
顔は青ざめ手で口元を覆う。
「うえ…酔った…Gが痛い」
当たり前である。尋常ではないGを受けながらさらに速度を上げたのだ。肉体が千切れてないことこそが不思議である。
エチケット袋を探していた鏡士郎はモニターに何かが点滅している事に気付いた。
「なんだあれ?モニター最大望遠っと」
コンソールを弄って光の下をズームアップする。
そこには手持ちのマシンガンを乱射するザクが映った。
「うっほ!あれザクⅡじゃね!?あのフォルムから見て後期生産型か…カッコイイ!!」
急ぎコンソールを動かし辺りを見渡す。
「お!あれはドラッツェにリック・ドムⅡ!ムサイ級巡洋艦最後期型までいるじゃん。ここは僕にとっての天国か何かですか!!」
大好きなジオン系モビルスーツが目の前で戦っている所を見てご満悦になったがある事に気がついた。キラキラと光るソーラーパネルが配置されていることに。
宇宙要塞を焼いた連邦軍の兵器『ソーラーシステム』。見間違えようがなかった。アレによってソロモン戦で多くのジオン将兵が焼き殺されていったのだ。『ガンダム』の作品はモビルスーツが活躍してこそと考える鏡士郎はあんな大量殺戮兵器が好きではなかった。もちろん『ソーラーレイ』も含まれる。
「寝惚けてたとしてもリアル過ぎるよなぁ。ガンダムの世界と仮定したとしてここは何処だろう?ソーラーシステムがあることからあの艦隊はティアンム艦隊かな?」
ソーラーシステムの辺りを拡大すると確かに艦隊は存在した。しかし予想とは異なり過ぎていた。ジム、もしくはジム・コマンドが居るものだろうと思っていたのだがそこにはジム改を主力としたモビルスーツ部隊だった。それにソーラーシステムはボロボロで機能しないと分かるほど壊れていた。そこから推測して0083『スターダストメモリー』の世界と判断した。
「ちょっと待てよ?ソーラーシステムが壊れているって事はデラーズ・フリートが撤退中…だったよね」
先ほど見ていた場所を拡大するがそこにはあのザクⅡは居なかった。あったのはザクマシンガンを握り締めたままの腕が一本…
戦争も戦いもゲームの中でしか知らない人間がいきなり戦争に参加できるかと聞かれれば無理だと判断する。誰だって自分の命が大事だ。普通は逃げる。この少年も…
「突貫します!!」
…まったくこの少年は考えなしに…コホン。
モニターには大破状態の大型モビルアーマー『ノイエ・ジール』が残ったジオン軍モビルスーツ隊を率いて連邦艦隊へ突撃をしようとしていた。
連邦軍は大きな壁のように部隊を配置していた。戦力が広がっているから一点集中で突破しようという考えなんだろうが戦力差が激しくて抜けない。しかも狙っている一点以外からも砲撃が行なわれている。生き延びるには反対側にまだ居るアクシズ艦隊に合流しなければならない。その艦隊だってその内、退避勧告が通達される。
ペダルを思いっきり踏み締める。
鏡士郎は武装やシステムを確認している内にある事に気付いた。装備やシステムが自分がプレイしていたヅダと同じことを。もしかしたらその通りなのかもしれない。ヴァリアブルフェイズシフト装甲だってあったはずだがゲーム内では物理耐性20%アップでアニメなどの性能とは違う。過信は出来ない。
ノイエ・ジールが加速してサラミス級に突っ込む。
「当たれ!!」
ヅダの装備の一つである対艦ライフルを構えて迷う事無くトリガーを引く。ライフルから発射された弾丸は狙った通りの軌道を描きサラミス級に直撃した。船体が大きな衝撃を受けて折れ曲がりながらノイエ・ジールの下方へと沈んでいく。
驚いた。
撃った本人が一番驚いている。たった一発のモビルスーツの攻撃であんなになる描写なんて無かった。ガンダムでも無理だろうと思っている。
だがこれが当然の結果である。鏡士郎が使った対艦ライフルはレベル22まで上げたものだ。ガンダムのビームライフルが1500以下の威力に対して6倍近くの8800手前である。これだけでもどれだけ規格外の品物であるかは理解できるだろう。
「はにゃ~♪すげい…」
驚きのあまり戦場で停止する。
先の一撃を目撃した両軍の兵士の視線が集まっている。同時に複数の銃口が向いている。
『後ろから来る』
よくわからないがそんな気がした。スラスターを吹かして今居た位置から飛び避ける。後方に周ったジム改の銃撃が通り過ぎて行く。
軌道修正して頭部にライフルを押し当ててトリガーを引いた。膝から下を残してジム改が散った。
オープンチャンネルを開いてモビルアーマーのパイロットに呼びかける。これがあの世界ならばパイロットは…
「ノイエ・ジールのパイロットさんご無事ですか?」
『ああ…』
おお!痺れるようなボイス。ソロモンの悪夢『アナベル・ガトー』の声だ。
心の中で感動しながら会話を続ける。
「まだ行けますか?」
『いや、もうノイエ・ジールでは突破は難しい。だがアクシズ艦隊へ味方が辿り着く手助けぐらいは…』
「分かりました!そこのリック・ドムⅡのパイロット君。ガトー少佐をコクピットから救出して」
『は?自分ですか』
「イエース。早く早く」
『待て!?この状況下でそんな事…』
戦場のど真ん中で停止すると言う事はただの的になるという事。それを理解している者は不安な声を出す。だが…
「シールドビット展開!」
ヅダのバックパック右側に取り付けてあった3枚の緑色の板が遠隔操作により動き出しノイエ・ジールを狙った攻撃を弾いていく。
『これはいったい…』
驚きの声を漏らすガトー少佐をリック・ドムⅡがノイエ・ジールより助け出す為に鏡士郎はここを死守する事を決める。
「行けファンネルたち」
両肩に設置された『ヤクト・ドーガ』に装備されていたファンネル6機が飛び立ち、近づく連邦モビルスーツを蜂の巣にして行く。そして高威力を見せ付けた対艦ライフルが何機も貫通して…いや、何機も粉々にして行く。
コクピットに収納された事を確認すると先程より大声を上げる。
「勇敢なるジオンの有志達よ。僕に続いてください!!道を切り開きます」
オープンチャンネルで叫ぶと同時に腹部に設置しているメガ粒子砲を正面へとぶちまける。直撃を受けたり、近くに居て溶解したモビルスーツが爆発し、真っ直ぐと伸びた道が出来た。
「MSの性能の違いが、戦力の決定的差であるということを教えてやる」
赤い彗星の異名を持つシャア・アズナブル少佐…大佐の台詞を言い換えてただ突っ込む。
近づく物はグフのヒートサーベルで切り裂き、中距離戦を挑んでくる者は6機ファンネル達が打ち抜き、長距離で構えている者には対艦ライフルで木っ端微塵にして行く。その後ろをシールドビットに守られつつ残ったジオンモビルスーツ達が続いていく。
一隻のサラミス級巡洋艦が正面より突っ込んできた。特攻してくる気だ。そう理解するとコンソールを操作してバックパック左側に設置していた6連装ミサイルポッドを放つ。放たれたミサイルはぶつかる前に散開して四方八方よりサラミスに命中して爆発を起こす。艦は機能停止したのだが進行方向にあって邪魔だったから体勢を変えて両足で踏みつける。寸前でスラスターをより強く吹かしてぶりをつける。残骸と化したサラミスは蹴られた方向へと飛ばされていく。そこに居たモビルスーツを巻き込みながら。
あまりの無双っぷりに連邦軍の方から道を譲っていく。
「やった!突破したどー」
連邦軍の壁を突破したジオン軍はアクシズ艦隊へと向かって前進して行く。鏡士郎は自ら殿として援護攻撃を行なう。そして最後に何とか抜けれたムサイ級に着艦して戦場を離脱した。
この戦闘により連邦軍は一機の機体により多大な被害を被ったのだが、デラーズ紛争と共に歴史の表に出さないように封印したのであった。ただし兵士の噂として『水色の閃光星(すいしょくのせんこうせい)』の異名と共に流れていくのであった。
デラーズ・フリート残存兵力とガトー少佐生存!!
この兵力と共に鏡士郎は地球圏外へ向かっていく。あの戦いを見たジオン兵は彼に何を見るのか?
次回『ジオンの新星』
『ザクとは違うのだよ。ザクとは』
ではまたお会いしましょう。